e-bike試乗レビュー
ヤバいe-bike!? 試乗後に貯金が始まったトレック「Rail 9.7」
2020年1月24日 00:00
なんとっ!! トレック(TREK)から発売されるっ!! e-MTBのっ!! 「Rail 9.7」にっ!! ガッツリ乗れることにっ!! って興奮してワケわかんない感じで失礼しました。
冷静に書きますと、目下ウルトラ注目されているトレックの「Rail 9.7」を借りられたんです。「Rail 9.7」はMTBタイプのe-bikeで、いわゆるe-MTB。アシスト部にボッシュ(Bosch)の最新&最強ユニットこと「Performance Line CX(パフォーマンス ライン シーエックス)」を採用。車体はMTBとしては本格的なフルサス(前後にサスペンションを装備)のモデルで、フレームはカーボン。最強ドライブユニット×カーボンフレーム本格フルサスMTBの夢のコラボ♪ 夢だけに価格は790,000円(税抜)!!
余談ですけど、現在e-bike部員が声を揃える「いちばん欲しいe-bike」がこの「Rail 9.7」。知れば知るほど、調べれば調べるほど、「いーなーRail 9.7~」って部員全員でハモる感じです。
メーカー名 | トレック |
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製品名 | Rail 9.7 |
実売価格 | 790,000円(税抜) |
非常に良さそうですよね、「Rail 9.7」。というか、既に試乗を終えてこの原稿を書いているので、イイのかイマイチなのかをイキナリ書けば、最高です最高!
試乗を終えたその日から「Rail 9.7」貯金が始まりました。そのうち絶対買う!! そしてMTBパークに通う!! と決意させるほど、ステキなe-bikeです。ともあれ以降、「Rail 9.7」について見ていきましょう♪
「Rail 9.7」はどんなe-MTBか?
まずは「Rail 9.7」の概要から。MTBとしては「オールマウンテン」というカテゴリーに入ると思います。いろいろなダート走行に対応できるよう設計されたMTBで、上りも下りもOKといったバランスがあります。どちらかといえば競技志向ではなく、オフロード走行を楽しむために作られた「どこでも走れるマウンテンバイク」です。
そんなMTBに、強力なアシスト力があるドライブユニットを搭載しています。トレイルまでの自走や急峻な上りを余裕をもって走れつつ、ハードな下り坂にも対応できる、おいしいどころ取りのe-MTBというイメージ。ともあれ、細部を写真と説明文で見ていきましょう。
といった感じで、装備はかなりゴージャスです。ちなみに、トレック製の人力フルサスMTBで「Rail 9.7」に似た装備のバイクの値段を見ると、700,000円以上するというのが筆者のイメージです。ので、「Rail 9.7」って、そちら方面の人が見ると“格安e-MTB”なのかもしれません。
MTBパークで練習&トレイルライド!!
さてさて、「Rail 9.7」の試乗。本格派のオールマウンテンe-MTBですから、やはりそれなりのトレイルを走ってみたいもの。ということで、都内唯一のMTBパーク「Smile Bike Park」で走ることにしました。
また試走当日、コラテック(corratec)のe-bike開発・設計に携わっているプロライダー・兼岡 邦旭氏がSmile Bike Parkにやってくるとのこと。コラテックの新型e-MTB「E-POWER X VERT CX-P」のテストライドだとか!?
さらには関係者のご紹介により、プロライダー兼岡氏にトレイルライドの基本を教えてもらえることになりました♪ そんな様子を写真と説明文で見てみましょう。
いや~プロに習うのってイイですね~。「なるほど!!」という気づきがたっぷりです。にしても、パンプトラック走行、思いっきり全身運動なのでメチャメチャ疲れました!
乗ればわかる「Rail 9.7」の凄さ!!
練習後は自由にSmile Bike Parkを走ることに。Smile Bike Park内には、様々なコースがコンパクト気味にまとまっているので、好みのコースを繰り返し楽しめます。どんな雰囲気か、ちょっと写真と説明文で見てみましょう。
こんな感じの、泥と落ち葉と坂だらけの各種MTBコース。そして当日はコースがウェット気味なので、ツルツルヌルヌルと滑りがちでした。そんな中での「Rail 9.7」試乗。以降、いろいろ実感したことがありますので、それぞれ区切って挙げていきます。
滑るダートの上り坂でもトラクションが超イイ
まず痛感したのは、「Rail 9.7」のトラクションの良さ。後輪に十分な駆動力があり、ダート路面をガッツリ掴んで力強く前進してくれることがよくわかりました。
筆者はハードテイルのe-MTBであるミヤタ「RIDGE-RUNNER(リッジランナー)」に乗っていますが、このe-MTB、上り坂にて「トラクションがイマイチかな?」という瞬間があります。状況にもよりますが、ダートロード上り坂などで後輪が空転することが少々。これは筆者の姿勢やペダリングにも問題があると思いますが、ダートロード上り坂などではスリップしないように少々注意して漕ぐ必要があります。
「Rail 9.7」の場合、そういう点をかなり“バイク任せ”にできる気がします。というのは、リアサスペンションの働きがまずひとつ。サスが緻密で適切な動きをしているのだと思いますが、常にリアホイールが接地している感覚。ハードテイルMTBと違ってリアホイールが上下に暴れにくいので、タイヤと路面のグリップがより高くなっているわけですね。
ドライブユニット「Performance Line CX」のeMTBモードが超イイ
ドライブユニットであるPerformance Line CXも秀逸です。このドライブユニットのアシストモードは、電池節約のEcoモード、節電とパワーのバランスがあるTourモード、MTB走行向けのeMTBモード、アシスト力最大のTurboモードの4つ。今回のライドではeMTBモードを中心に使いました。
eMTBモードの特徴は、ペダルを踏む強さによってアシスト力が二次曲線的に変化すること。eMTBモードでのアシスト力は、最小がTourモードと同等、最強がTurboモードと同等。つまりはTourモードからTurboモードまでの範囲で、アシスト力が二次曲線的に変化するという動作です。ペダルを軽く踏めば弱めの力でアシストし、少し強く踏めば少し強くアシストし、強く踏めば最大の力でアシスト。
MTBパークでのダート走行で、アシストが欲しくなるのは上り坂です。そしてそういう上り坂はだいたい激坂。時速10km以下で走ることが多いシチュエーションです。この速度域では、メーカーを問わずアシスト力が法定の最大値である人力の2倍。足で1の力を加えれば、2のアシスト力が加わる。ドライブユニットの力を最大限に発揮できる速度域です。
で、ダートの急な上りをeMTBモードでアシストさせると、ダート激坂登坂のハードルがかなり下がる。傾斜や路面状態に合わせて“踏む力で微妙なアシスト力コントロールができる”からです。「このままアシスト力がかかり続けると滑る!」と思った瞬間、ちょっとだけペダルを踏む力を弱めると、スリップせず上り続けられる。逆に「この先の一瞬の激傾斜は力いっぱい踏み込んでクリアだ!」と思って踏めばアシスト力全開で上り切れます。
つまりeMTBモードだと、人力自転車のペダリングと同様の感覚で“傾斜や路面状態と相談しながらのペダリング”が可能。しかも速度域的に、人力1+アシスト2の合計3人力の力でのペダリング。ダート走行には非常に実用的で効果的だと感じました。
やや余談ですが、例えばクロスバイクやミニベロのe-bikeに搭載されているボッシュ製ドライブユニットのActive Line Plusの場合、激坂では最大アシスト力が働くTurboモードを使いたくなります。が、路面状況によっては後輪が空回りすることも。例えば林の中のヒルクライムの峠近くとかだと、路面が濡れていたり小砂利があったり。Turboモードで走るとアシスト力が強すぎてスリップしちゃうんですね。そんな場合はひとつ下のSportsモードに落とす……けどまだスリップするから、さらに下のTourモードに落とす、といったアシストモードの切り替えをします。それを考えると「あーActive Line PlusにもeMTBモードみたいな出力が二次曲線的に変わるモードがあればいいのにな~」と思ったりします。
トレックのフルサスやっぱすげぇ!
今回の試走はウェットコンディションのSmile Bike Parkだったわけですが、走り始める時に「今回は1回か2回やらかすんだろうな~怪我しないように気をつけよう」と思った筆者です。トレッキングシューズで踏んでもツルッと滑るようなダートがコースなので、まあ自転車で走ったらコケるだろうな、と。
しかし「Rail 9.7」で走ってコケそうになることはありませんでした。一度、コースの横方向が斜面になっている逆バーム(?)で前輪が滑って足を着きましたが、それ以外ではまったくコケそうになる感じナシ。
これ、たぶん、「Rail 9.7」の前後サスペンションの秀逸さなんでしょうね。走っている途中から「これでもコケない?」「こうしても滑らない?」と車体の扱いをエスカレートさせても大丈夫でした。そうなのか~優れたパーツで作られたフルサスMTBって、その時点でいろいろ有利なんだ~、と感じた次第です。
トレックのABPはイイな
トレック独自のブレーキングシステムであるABPも効いていた、と思います。多くのMTBの場合、走行中にリアブレーキがかかるとリアサスペンションの可動範囲が著しく狭くなったり動かなくなったりするそうですが、ABPの場合それがない!
今回のコースは初めてで、また、けっこう急な下り坂も多々あり、そんな状況で筆者はリアブレーキでスピードをかなり落としました。地元のダートロードで同じようなことをすると、たいていリアタイヤが上下に暴れて、同時に中途半端にロックして「ズッズズッ」と路面を削る感じでしたが、「Rail 9.7」では「いつもやらかす下りでの後輪ズッズズッ」の記憶がありません。ABPイイなぁ、と思いました。
やっぱりフルサスe-MTBはペダリングが簡単
これは「Rail 9.7」に限ったことではありませんが、やっぱりe-MTBはフルサスがいいな~と再認識しました。MTBは山を走るから衝撃吸収性が高いほうがいいというのもありますが、e-MTBだとフルサスMTBの難しさが緩和されるようにも思います。
人力のフルサスMTB自体、ペダリングが難しいと思うんですよね。路面に合わせて意識してうまくペダルを踏まないと、途端に足の力が前後サスペンションの上下の動きとして吸収されてしまう感じ。平地でも起こることなので、ペダリングがうまくないと「も~全然前に進んでくれないなぁ人力フルサスMTBは~」と思ってしまいます。
なので「MTBはハードテイルがいい」「タイヤが太いならフルリジッド(前後ともサスペンションなし)がいい」と考えていました。でもe-MTBだと違う印象が。何台かフルサスe-MTBに乗ったら「e-MTBは絶対フルサスがいい」と思うようになりました。
その理由は、「筆者のペダリングのムラをドライブユニットが吸収してくれた」という実感があるからです。フルサスe-MTBに乗るといつもそう。フツーにペダリングしていれば、ペダルを踏む力の強弱的なムラを、ドライブユニットが吸収して均等にならしてくれているという強い実感があります。「e-MTBなら足の力がサスペンションの上下運動へと無駄に変換される初心者あるある的残念感がない」という感覚。もちろん「Rail 9.7」にもそういう実感があります……今まで感じた中で最高レベルの実感が。
なお、「Rail 9.7」は乗り心地も最高。サスペンションがしっかりと衝撃を吸収してくれるのに加え、タイヤがより大径で凹凸を越えやすく、さらにはカーボンフレームが細かな振動を打ち消してくれます。「ていうか完全にオフロードなのに何なのこの乗り心地~♪」と痛感し、この時点で「e-MTB買うならフルサスだし、どうせ買うならRail 9.7だから、Rail 9.7貯金しなきゃ!!」とか思った筆者なのでした。
といった感じで、ものすご~く良かったトレックの「Rail 9.7」。ほかにも小さな美点がたくさんありました。細部までかなりイイ。
やっぱり本気の完成車メーカーが気合入れて作ったe-bikeって、軽く試乗した程度で“クラッとして購入算段モードに入っちゃう”もんなんですね。でも税込みだと869,000円だぞオイ。これ買おうと考えてる俺って危なくね? 拙宅の財政的に。
とマジで思う程度ヤバい「Rail 9.7」。春からは兵庫県神鍋にある「UP MTB PARK IN KANNABE」でレンタルが始まるそうですが、トレック専門店BIKE PLUSにも試乗車が入ってきているそうです。超絶欲しくなってヤバいので試乗しないほうがいいと思いますが、非常に刺激的なe-MTBなので刺激を求めるならぜひご試乗を!!