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パナソニックだと備蓄米もおいしい? 10万円の炊飯器で試食した

パナソニック炊飯器の最上位モデル「可変圧力IHジャー炊飯器 ビストロ X9Dシリーズ」

パナソニックが9月に発売する炊飯器の最上位モデル「可変圧力IHジャー炊飯器 ビストロ X9Dシリーズ」。備蓄米などの古い米を含め、どんなお米でも誰が炊いても甘みのあるおいしいご飯になるという点を特徴としている。

X9DシリーズのラインナップはSR-X910D(5.5合炊き)と、SR-X918D(1升炊き)の2機種で、価格はオープン。市場想定価格は順に99,000円前後、105,000円前後。

10万円クラスの高級機種が、どんな工程によっておいしく炊くのか? 炊いたご飯はどれくらい違いがあるのか、実際に体験してきた。

5.5合炊きのSR-X910D。本体カラーはブラック、ライトグレージュの2色

古米も甘くおいしく炊く仕組みとは?

新米だけでなく、備蓄米のように収穫から期間が経った米や、家庭内での保存状態が良くない米など、家にあるお米は水分量などの品質は様々だ。そうした中で、状態に合わせて最適に炊き上げるための精度を高めたのが新モデルの特徴。

重要となるのが、炊飯中の温度の細かな測定とAI機能だ。従来のセンサーに加えて「リアルタイム赤外線センサー」を新たに搭載することで、約9,600通りの中から最適な火加減や圧力加減を自動で調整して炊飯する「ビストロ匠技AI」の精度が向上。さらにお米の状態に合わせた「Wおどり炊き」の火力/圧力の制御が可能になり、従来比で約8%甘みを引き出せた(2024年産の新米の場合)という。

新米の炊きあがり比較

リアルタイム赤外線センサーは、非接触でリアルタイムに温度変化を読み取れるため、主に昇温時に効果を発揮。釜底の温度センサーは、安定している状態の温度を見る調整時に役立つ。

新搭載のリアルタイム赤外線センサーによる進化

ビストロ匠技AIは、炊飯工程のうち前炊き(弱火)の時に、高速交互対流IHによってお米が甘くなる温度へ素早く到達させることや、中間の沸騰維持状態(中火)で、水の残り具合を高精度に推定してバルブによって従来より早いタイミングで急減圧させることができるようになった。急減圧すると、より爆発的な沸騰でお米が高く持ち上がり、一粒一粒に熱をしっかり伝えられるメリットがある。その結果、より甘みを感じるご飯に仕上がるという。

炊飯工程の、前炊きと沸騰維持の部分で進化点が活きているという
前炊きで米が甘くなる温度帯へ素早く到達させる

この圧力技術と制御技術により、新米だけでなく古米もおいしく炊き上げるのがポイント。精米から時間が経過した状態の古米は含水率が低下しているが、「ビストロ匠技AI」で米の含水率を検知し、自動で「Wおどり炊き」の炊き方を調整。「ビストロ匠技AI」を使用しない場合に比べて約9%甘みを引き出し、ふっくら炊き上げるという。

食べてみた。備蓄米も甘みと水分しっかりのねばり

新モデルで炊いたご飯を早速試食した。今回いただいたのは、2022年産の政府備蓄米(ブレンド米)と、2024年産の新米である会津産コシヒカリ。

備蓄米は、まず前述の「ビストロ匠技AI」機能を適用したものと、あえてオフにした状態の2種類で比較した。

左が「ビストロ匠技AI」機能あり、右がなしのごはん

同機能をオフにしたお米は、炊いてからそれほど時間が経っていないにも関わらず食感はしっかりした硬めで、表面の粘りは少なめな印象。しっかり噛むと甘みは出てくるものの、一般的な“炊きたてご飯”を期待すると、やや物足りなさもあった。

「ビストロ匠技AI」をオンにしたご飯だと、わかりやすかったのは粘りがしっかりしていた点。噛むと甘みもしっかり出ていて、水分はしっかり浸透しているけれどもべちゃっとしていなくて、粒の中に甘みとうまみが閉じ込められていると感じた。

24年産の新米を食べてみると、やはり新米のコシヒカリならではのしっかりしたもっちり感や甘みが出ており、香りも高い。特に新米は、甘みやうまみが、口に入れた瞬間にすぐ広がる印象を受けた。

24年産の新米は白さもクリアな印象で、味にもやはり違いが感じられた

備蓄米のビストロ匠技AI適用時もおいしいご飯だったため、日常的に食べるご飯として十分。新米は余計な雑味のない良さをさらに引き立てておいしく炊けるため、値段が高くても銘柄米や新米が食べたい人にとっても、米の特徴を活かしてくれる炊飯器としておすすめしやすいと感じた。

炊きたての白い湯気が上がる瞬間。香りも豊か

気になるこれからの米、2025年予測は?

備蓄米は店頭でも販売されるようになり、一時期に比べて騒動は落ち着いたようにも見えるが、気になるのは2025年新米以降の動きだ。

かつて“ライスレディ”の名で活動していた、調理科学を専門とするメンバーで構成する研究開発や社会貢献活動を行なうチームPanasonic Cooking@Lab。同ラボの萩 成美主任技師は、2025年の新米について、引き続き厳しい状況になる可能性を指摘している。

2025年新米予測。Panasonic Cooking@Labによる8月5日時点のもの

新米のできばえについては、今年も梅雨が短かったことなどで降水量が少なく、高温のためでんぷん量が少ない白いお米になる“高温障害”が起こる可能性が高いという。

また、価格は24年産の銘柄米が下がっていないこともあり、新米も現状価格のため、5kgで4,000円以上など、引き続き高値が予想されている。

流通量も、既に24年産の古米が前倒しで消費されていることから、2026年の夏ごろにまた不足する可能性があるという。

こうした厳しい状況下でも、Panasonic Cooking@Labでは新米だけでなく政府備蓄米や外国産米、国産米などを評価しながら、実際に使う人が「ただ普通に炊飯ボタンを押して炊飯するだけでおいしく炊けるような炊飯器の開発を、これからも進めていきたい」との考えを示した。

Panasonic Cooking@Labの萩 成美主任技師