e-bike試乗レビュー

初心者もレンタルe-bikeで参戦可能!! e-MTBのレース「ENS-e」を走ってみた

e-MTBレースに参戦

e-bikeにはいろいろなタイプがありますが、そのメリットを一番体感できるのは山道(トレイル)を上ったり下ったりするe-MTBだと思っています。アシストがあるので、普通なら押し歩きしないと上れないような激坂も乗ったままクリアできますし、最近のフルサス(前後にサスペンションを装備)モデルなら、下りもガンガン行けるのでめちゃめちゃ楽しい。トレイルでもコースでも走るのは楽しいのですが、楽しみ方の幅をもっと広げたいなと考えているところに、e-bike部の清水氏から1本の電話がかかってきました。「e-MTBだけのレースがあるんですけど出ませんか?」とのこと。詳細は聞かないまま、即答で「出ます!!」と返事をしていました。

楽しい下り区間だけでタイムを競うレース

参戦を決めてから、レースの詳しい情報を調べてみました。参戦するのは「ENS-e」というエンデューロレース。「ENS(エンデューロ・ナショナル・シリーズ)」は従来からシリーズ開催されているエンデューロレースですが、e-MTBオンリーの「ENS-e」は今回が初開催となります。開催場所は茨城県のダイナコパーク。トレックやスペシャライズド、ファンティックのレンタルe-MTBも用意されていたので、今回はそれを借りての参戦です。自分でe-MTBを持っていなくても参加できるなんて最高ですね。

トレックやスペシャライズド、ファンティックの高性能なe-MTBがレンタル可能
今回はトレック「Rail9.7」の2021年モデルをレンタルして参戦

MTBのレースといえば、上りでも頑張ってタイムを短縮しなければいけないようなイメージがあるかもしれません。しかし、エンデューロレースというのはタイムを競う区間と移動区間に分かれていて、タイムを競うのは基本的に下りの区間なので、上りを頑張る必要がありません。移動区間の上りもe-MTBなら体力を使わないので、下り区間に集中できることも体力低下が気になるおじさんにはありがたいレースフォーマットです。

整備されたダイナコパークの下りを満喫できるレース

しかも、ENS-eには「ファーストタイマー」という初心者向けのクラスが設けられており、このクラスの参加者にはレース前に走り方などのレクチャーが用意されています。エンデューロレース参戦もダイナコパークを走るのも初めての筆者には心強い限りです。

レース当日。会場に到着してみると、すでに多くの参加者が集まっていました。もちろん、すべてe-MTBです。これだけ多くのe-MTBが揃っている機会はなかなかありません。しかも、レンタル車両を除けばすべて個人オーナーの所有車ですからね。これだけe-MTBを楽しんでいる人たちがいたのかと感動すらおぼえました。

さまざまなブランドのe-MTBがズラリと並ぶ景色は壮観
しかもフルサスがほとんど!!
カスタマイズされているオーナーさんがほとんど
こちらはe-MTBオーナーだけのチームだそう。充電用に太陽光パネルまで用意しているのには驚かされました。とても楽しそうでした(笑)
親子でやってきた参加者も。空き時間は一所に走って、お子さんも楽しそう

レンタルe-MTBを受け取って受付でゼッケンをもらいます。エンデューロレースはタイム計測区間のスタート時間が1人ずつ決まっているので、その時間をゼッケンに記入しておきます。移動に時間がかかってしまったりして、その時間に間に合わないとペナルティが加算されるシステムですが、今回の移動区間は短かったので、遅れる心配はなさそう。

今回は3つの計測区間を午前と午後でそれぞれ1回ずつ走るので、6回分のスタート時間を記入しておきます
ゼッケンを車体に装着。今回、筆者は28番ゼッケンでした

車両の準備ができたらコースの試走時間。「ファーストタイマー」クラスの参加者は、この時間にレクチャーを受けることができます。最上位のAAクラスに参戦するライダーの三上 和志選手が、e-MTBならではの坂の上り方からコーナーの曲がり方まで、丁寧に分かりやすく教えてくれて、とても勉強になりました。

実際のコースを走りながら、攻略ポイントだけでなく基礎的なMTBの乗り方も教えてもらえます。レクチャーを受けて良かったと実感
朝一番に行なわれるので、スタート前に体をほぐすストレッチから始まります
ENSのAAクラスライダーである三上 和志選手。埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」の店主でもあります
コースの要所々々で止まって、コーナーの曲がり方や下りでの乗車姿勢などを丁寧に解説してもらえるので勉強になりました
解説だけでなく、実際に乗って見本を見せてくれるのでわかりやすい!! 写真は下りでの姿勢を見せてくれているところ
こちらの動画はコーナーでの曲がり方と、その後の加速の仕方を教えてくれているところ。説明が上手で理解しやすかった
こちらは移動区間の激坂を上りながら解説してくれているところ。アシストのあるe-MTBも乗車する位置によって登坂力が変わってくるんですね

レクチャーが終わっても時間があったので、コースを試走。AAクラスのライダーでダイナコパークの管理人でもある内嶋 亮選手が作ったコースはテクニカルな部分がありつつも、難し過ぎないので気持ち良く走ることができます。タイム計測区間を走るためには、結構な激坂を上る必要があるのですが、e-MTBだとあまり疲れずに上れるので、何度も上ってチャレンジできるのが最高です。本番に向けて体力を残しておくとか考える必要もないので、ついついたくさん走ってしまいました。

細い移動路を上って計測区間のスタートまで走っていきます
ここは足を付かずにクリアするのが難しい激坂ですが、何度か走っているうちにクリアできました
3つある計測区間の中には、こんなスタート台から走れるところも。ちょっと緊張しますが、気分は盛り上がります
同じコースを何度も練習できるので、楽しくて走りまくってしまいました

いよいよ本番!! 果たして結果は!?

試走だけでお腹いっぱいになるくらい走れましたが、本番のレースはこれから。といっても、参加者に緊張している感じはありません。レースに来ているというより、同じコースに遊びに来た仲間といった雰囲気。時間になると名前がコールされ、ひとりずつコースに向かって行きます。一斉スタートではないのも“競い合い”という雰囲気にならない理由のひとつかもしれません。

スタート前にはひとりずつマイクに向かって意気込みを述べる演出も。これが一番緊張したかも……
スタートしたら移動路を計測区間に向けて走って行きます。ここは急ぐ必要はありません

計測区間も、ひとりずつ1分置きにスタートするシステムなので、前のライダーに詰まってしまうようなことはありません。自分の走りに集中できるので、ライバルは自分のみ。練習で何度も走りましたが、本番はまた違った適度な緊張感があります。

スタート台に立ち、時計を見ながら自分のスタート時間になったらスタートします
誰にも邪魔されることなく自分のラインを走れるのは気持ちいい!!
スピード感はまったく違いますが、阿藤選手のようなプロライダーと同じコースを走れるのも最高です
阿藤選手のレース中の動画
朝のレクチャーでいろいろと教えてくれた三上選手の走りもカッコいい
今回の主催者であり、コース製作者でもある内嶋選手も走ります。速い!!

順位は3つの計測区間のタイムの合計で決まります。この日はそれを午前と午後の2回走れるので、合計6回タイム計測があることに。普段、トレイルを走ってもタイムを計測することなんてないので新鮮でした。

午前中を終えて、タイムと順位が貼り出されます。なんと「ファーストタイマー」クラスで2位

ただ、これまでMTBに乗っていてタイムを測ったことも縮めようと思ったこともないので、どうやってタイムを短縮すべきかがわかりません。特に、下りは“せっかく上ったのだから、できるだけ長く楽しみたい”と思っていたので、どうすれば速く走れるのかさっぱり……。とりあえず、朝のレクチャーで教わったことを思い出しながら午後も楽しんで走ることにしました。

一応、頑張ってみたつもりでゴール。めっちゃ楽しめました

朝のレクチャーから練習走行。そして、レース本番とたっぷり走れましたが、レース後には試乗もできるということでスペシャライズドの「LEVO SL」に乗ったりして、結果発表を待ちます。

結果は……、頑張ったつもりでしたが、1つ順位を落として3位。でも、表彰される順位なのでかなりうれしい。初参戦としては上出来な順位でした。

人生の中で表彰される機会なんてあまりないので、とてもいい気分でした
クラス別の順位だけでなく、女性部門や各年代別など、いろいろな区切りで表彰してもらえるのもこのレースの良いところ
AAクラスの表彰式は賞典外の内嶋選手も加わって豪華なメンバーが揃っています

初めて参加したエンデューロレースでしたが、レクチャーや練習走行も含めて非常に楽しい時間を過ごせました。トレイルを走るのは好きだけどレースはちょっと……と思っている人でも、ひとりずつタイム計測する形式なので自分の走りに集中できますし、参加者同士もライバルという雰囲気はなく、一緒に遊びに来た仲間のような感覚なので、きっと楽しめると思います。

特にe-MTBは入手したけど、一緒に走る人がいないというような人は、e-MTB仲間に出会えると思います。レース会場はオーナーズミーティングのような雰囲気もありましたが、そこはe-bike好きの集まり。レンタルe-MTBでの参加者もあっという間に溶け込んで楽しんでいました。筆者も次回も絶対参加したい!! と思っていますので、ぜひ一緒に走りましょう。

[「ENS-e」その他の写真]
増谷茂樹

乗り物ライター 1975年生まれ。自転車・オートバイ・クルマなどタイヤが付いている乗り物なら何でも好きだが、自転車はどちらかというと土の上を走るのが好み。e-bikeという言葉が一般的になる前から電動アシスト自転車を取材してきたほか、電気自動車や電動オートバイについても追いかけている。