e-bike試乗レビュー

【野沢温泉e-bike旅】e-MTBでダウンヒルに続いてヒルクライムレースも走って大満足!!

今年の夏に「乗鞍スカイラインサイクルヒルクライム」のe-bike部門に参戦して、e-bikeレースの楽しさを体感。さまざまなe-bikeオーナーとの出会いも楽しく、その勢いのまま今度は「野沢温泉自転車祭2022」にも参戦。トレックのフルサスe-MTB「Rail 9.7」でダウンヒルとヒルクライムの両レースを走ることに。前回はゲレンデを下るダイナミックなダウンヒルレースのレポートをお届けしましたが、今回はヒルクライムレースとレースの合間に楽しんだ野沢温泉サイクリング情報などをご紹介します。

ヒルクライムレースをe-MTBで楽しむ

2日目はオンロードを上るヒルクライムレース。ゴール地点はダウンヒルのスタート地点あたりなので標高差は同じく800mですが、舗装路を上るので13km走ることになります。前回走った乗鞍スカイラインのヒルクライムに比べると、距離も標高差も小さいので「e-MTBなら行けるだろう」と軽く考えていたのですが、試走したe-bikeオーナーに聞いたところ「乗鞍よりスピードが出てe-bikeのメリットが活きる場面が少ないからキツいよ」とのこと……。大丈夫なのかと不安になってきます。

スタート地点に集まった参加者たち。前日よりも人数が多いし、みんな速そう……
e-bikeクラスの参加者でスタート前に記念の1枚。ほとんどの人が乗鞍でもお会いしているので、勝手にもう仲間だと思ってます
e-bike Watchは乗鞍と同様に増谷と清水で走ります
筆者は前日のダウンヒルと同様にトレックのフルサスe-MTB「Rail 9.7」、清水はコラテックのクロスバイク「SHAPE PT500」。どちらもボッシュ製のドライブユニットですが違いがあります
乗鞍スカイラインサイクルヒルクライムでは3位のトレック「Powerfly」のオーナーさんも。同じトレック同士がんばりたいところ
レース前には和太鼓のパフォーマンスも。テンションが上がってきます(公式Facebookより)
e-bikeの女子クラスは20分早くスタート

“e-MTBペダリング”でヒルクライムレースを走る

和太鼓のパフォーマンスでテンションが上がっていますが、スタートゲートをくぐって、しばらくはパレード走行。タイム計測のラインを越えると本格スタートです。フルサスのMTBで走っているのは、たぶん筆者くらいなのでパレード区間はのんびり走りますが、ロードの人たちはこの区間からやる気満々な感じ。タイム計測のライン手前からみんなガンガン加速していきます。

このラインを越えるとタイム計測がスタートします
本格スタートすると、ロードバイクの人たちにガンガン抜かれます……。前方には清水氏の姿も

乗鞍スカイラインに比べると、高低差が少なく、コースも最後に激坂が待っている以外はわりと傾斜が緩やか。そのため24km/h以上出る区間もあるので序盤は結構抜かれます。しかし、ここは我慢。後半の上りがキツくなる区間に備えます。

そして、今回は乗鞍で3位に入っていた「Powerfly」のオーナーさんに教わった「Performance Line CX」の特性を活かすペダリングを試してみました。それは3回漕いだらあえて一度ペダルを止めるという走り方。これをやると再び漕ぎ出したところで強くアシストがかかるため、e-bikeのメリットを存分に活かすことができるのです。

Kioxだとアシストの強さが表示できます。普通にペダルを回していると、こんな感じのアシストなのですが……
一度ペダルを止めて、もう一度漕ぎ出すとここまでアシストが上がります(もちろん合法の範囲内)

後半になり、斜度がキツくなってくると、普通のロードバイクの人たちはペースが落ちてきますが、e-bikeは逆にアシストを活かしてガンガン上って行けます。特に、このペダリングだとアシストのおいしいところを使えるので、激坂になるほどメリットが活きてくる感じ。前半で体力を温存しておいたこともあって、後半はかなり追い上げることができました。

後半の上りがキツくなってきてからは、かなり抜き返すことができましたが、なぜかこのあたりでGoProの電源が落ちてしまい、以降が撮影できていませんでした……

特にゴール手前の激坂では、立ち漕ぎも併用して“e-MTBペダリング”で前を走る人たちを抜いて行くことができました。前半に抜かれた人たちを、ごぼう抜きして行くのは自分の力ではないですが、かなり気持ちいい。前回の乗鞍では約10分の差をつけられた清水氏にも、約30秒差でゴールすることができました。

レース後にボッシュの担当者にこのペダリングについて聞いてみました。85Nmにトルクがアップした「Performance Line CX」には、「extended boost」というアシスト調整がされています。山で轍の中を走行していて、ペダルを360度回せないという超マニアックな状況対策だそうです。ペダルをハーフストロークさせた際に、合法の範囲内で瞬間的に車体がキックされる感覚でモーターがアシストするそう。それがヒルクライムで活かされたようです。

ゴール後、みなさんと談笑する体力も残っていました。「速くなってない?」とも言われましたが、完全に「Performance Line CX」のおかげです
ゴール後はゴンドラに乗って下ります
個人的にはe-MTBなのでダウンヒルコースを走って下りたかった(笑)
清水氏も今回は最初からTURBOモード全開で走ったそうですが、バッテリーは97%→76%で約20%しか消費していません
スタートゲートまで戻って、e-bikeでの参加者で記念撮影! こういう輪をもっと広げていきたい
乗鞍でも一緒に走った古田さんはe-bikeの女性部門で1位! ただ、参加が1台だけだったので、次回は女性参加者が増えることを願っていました
17分くらいでGoProの電源が落ちてしまいますが、みんなパレードが終わる頃からどんどん加速して行きます

まさかのトラブルが……あっても楽しかった野沢温泉

レース後は表彰式のはずでしたが……、e-bikeの男子クラスはちょっとトラブルが発生。1位でゴールしたマシンがあり得ないようなタイムを記録し、主催者による審議が入ったため、e-bikeの男子クラスだけ表彰式を行なうことができませんでした。スタート直後にそのマシンに抜かれましたが、かなりの速度差で危険を感じるほど。エンジンがついているんじゃないか? というスピードで、記録された平均速度も36km/hオーバー。海外仕様も含めていろいろなe-bikeに乗ってきましたが、ここまで速いものは乗ったことがありません。

e-bike男子クラスはちょっと残念な終わり方。実際にスタート後に抜かれたシーンは速度差があり過ぎて怖いくらいでした。動画の5分あたりですが猛烈なスピードで一気に抜き去って行きます

今大会の規則には、e-bike部門について細かい規定が明記されていなかったので、いわば何でもありのような状態だったのですが、さすがにここまで速度差があるのは危険と判断され、当該マシンは失格となりました(「主催者が危険と判断した選手や改造車両は失格とします」という規定による)。ちょっと後味が悪い部分は残りましたが、これからe-bikeクラスを設けるレースやイベントでは、このあたりの規定をしっかり設けておく必要がありそうですね。車検の問題などもありますが、海外仕様や違法改造の車体が出てくる可能性もあるので。

そんなこともありましたが、筆者の順位は5位。完走6台なので、またしてもブービー賞ですが(乗鞍もそうだった)、次はもう少し練習を積んで挑みたいところです。ちなみに清水氏は4位だったので、まずはe-bike Watch内での争いになりそうです(笑)。

e-bike男子クラスのチャンピオンは乗鞍でも2位だった八木 幸夫さん。愛車はスペシャライズド「TURBO CREO SL」で2位に1分以上差をつける36:23.520という速さ。ちなみに我々は筆者が40:59.390、清水氏が40:30.601でした
表彰式はありませんでしたが、後日副賞のお酒とジャムが届きました!
清水氏にはお米と野沢菜セットが届いたそうです

ちなみに、レースの前後には周辺のエリアをe-bikeで走って、蕎麦を食べに行ったり、観光スポットを巡ったりしましたが、周辺エリアもかなり気持ち良くていい感じ。飯山に向かって千曲川沿いを走るルートは景色も良く、e-MTBなので未舗装路も走れて爽快でした。ダウンヒルレースに出なかった清水氏は、朝早起きして朝市に行ったり、周辺を走り回っていたようですが、それもかなり気持ち良かったとのこと。坂が多いので、e-bike向きのエリアですが、レースだけじゃなくその前後にサイクリングも楽しめる場所でした。またぜひ行きたい!!

ダウンヒルレースの前日受付後には千曲川沿いをサイクリング
また走りに来たいです
ダウンヒルレースに出ない清水氏は早起きして周辺をe-bikeサイクリングしていたそう
ヒルクライムレース当日は早起きして野沢温泉の朝市に行ったり
レース後は表彰式まで時間が空くので、周辺をヒルクライムしたり野沢温泉で人気の蕎麦をいただいたり
レースだけでなく観光やグルメも満喫しました。また来年も来たいです
増谷茂樹

乗り物ライター 1975年生まれ。自転車・オートバイ・クルマなどタイヤが付いている乗り物なら何でも好きだが、自転車はどちらかというと土の上を走るのが好み。e-bikeという言葉が一般的になる前から電動アシスト自転車を取材してきたほか、電気自動車や電動オートバイについても追いかけている。