e-bike試乗レビュー

メリダのe-bike&モーターサイクル乗りが感じたトレック「Rail 9.7」の楽しさ

トレックのフルサスe-MTB「Rail 9.7」のインプレッションはWebの世界を散策すれば、敏腕ライター&ライダーさんの記事がわんさか出てくるし、動画もたくさんアップロードされています。

もう今さらインプレションする意味あるのでしょうか……と心配していたところ、e-bike Watch清水氏からニッチかつ独自の視点で進めて良い! という許可を頂いたので、今回はメリダのフルサスe-MTB「eONE-SIXTY 9000」も所有しているモーターサイクル中級者が、昨年末にトレイルツーリングで感じたトレック「Rail 9.7」のピンポイントなインプレッションをしていきたいと思います。ボッシュ製のドライブユニット「Performance Line CX」も初体験です。

トレック「Rail 9.7」で地方のシングルトレイルを中心に100kmほど走りました

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トレックとボッシュのハイエンドの組み合わせ「Rail 9.7」に乗る

e-MTBはオフロードバイク業界でも少しずつ認知が広まってきていて、レース会場などでの試乗会開催も多くなってきました。僕もバイク仲間に試乗してもらったこと多数ですが、比較的フラットな場所で乗って「へ~……こんな感じなんだ。(たいしたことないな感)」というご意見を頂く……。どうやらモーターサイクル乗りからすると移動がラクな乗り物……ぐらいの範疇から出ていないように感じています。これはかなりもったいない。e-MTBでシングルトレイルを走ってこそわかる性能の高さや魅力もたくさんあると思うのです。ぜひモーターサイクル乗りこそe-MTBの魅力を再発見してほしいな~。

e-bike Watchでもすでに何度も登場しているモデルなので、細かいスペックはWebサイト記事で確認してもらいたいのですが、トレック「Rail 9.7」は前後ホイールが29インチのフルサスペンションモデル。今回お借りした車体はMサイズなので身長178cmの僕にはピッタリのサイズです。

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気のおけない仲間とのトレイルツアーはいつだって最高です

ちなみに、僕が普段乗っているe-MTBはメリダ「eONE-SIXTY 9000」のSサイズで前後異経ホイールのマレットです。比べてみると、トレック「Rail 9.7」がひと回り大きい印象で、それは走り始めるとより明確に感じました。重心の中心部分が広い印象で、安心して自転車に体を預けられる感覚が強く、多少体が遅れたとしてもしっかり路面を捉え続けてくれます。

愛車のメリダ「eONE-SIXTY 9000」

ある意味モーターサイクル的というかマシンに「乗っている」という感覚が強い。気づけばコントロールギリギリのスピードで走っていて楽しさと自制心との戦いに。普段乗っているのがSサイズということもあって、この安定性には正直驚きました……当たり前なのかもしれませんが、自転車メーカーの考え方によってこんなにも乗り心地が違うんだなと。

ちょっとだけ節約を意識しましたが、625Whの大容量バッテリーはトレイル5本を繋ぎ、走行距離45.6km、獲得標高2051mでも安心して走りきれました

初体験のボッシュ製ドライブユニットの印象は?

そして、トレック「Rail 9.7」でもっともモーターサイクル的な魅力を感じさせてくれたのがボッシュ製ドライブユニット「Performance Line CX」。ボッシュ製ドライブユニットは初体験だったのですが、こちらにもメーカーの違いがくっきり。普段乗っているシマノSTEPS「E8080シリーズ」は、自分の脚力が強くなったのかな? と思わせてくれる自然さ。一方で、Performance Line CXはハッキリとMTBが前に進むのがわかるパワフルなアシスト。足を使ってエンジンの出力をコントロールできるモーターサイクルのよう……というのは言い過ぎかもしれないけれど、そうした感覚で乗るシーンもありました。

ボッシュ製ドライブユニット「Performance Line CX」

特にそう感じたのが、クランクを漕ぐのを止めた直後に出力(ペダルを漕いでいないのに前進しようするアシスト力)が残るのですが、その具合をコントロールして乗る楽しさがあること。他のインプレ記事を読んでいると、これが怖い印象として書かれていることが多いけれども、この出力を予測して利用すれば上り途中の木の根や小さいステアケース轍の横切りなどなど、低速域で瞬発的なパワーが欲しいときにうまく使えるなと実感しました。

クランクを回し切った後のドライブユニット出力を予測することで、上りの途中に根っこがあるようなセクションを簡単にクリアすることができる。これは実際に体験してみないと分からないかも?
雪の降らない関東では秋から春先にかけてがトレイルシーズン。軽装で落ち葉を踏みしめる音まで楽しめるのも、モーターサイクルにはない魅力のひとつ

また、シマノ製ドライブユニットに比べて、フロントフリーのノッチ数が多く、踏み込むクランクの角度に自由が効くことも難所を突破するのに有利な点だと思います。慣れていないと少しパワーコントロールが難しいかもしれませんが、モーターサイクル乗りからすると、これがおもしろいいところでもあるのです。

ラチェッティングというスキルを使って効率的にドライブユニットのパワーを引き出すと、低速かつテクニカルな場所を切り抜けられる。これがe-MTBならではのおもしろさ

あらためてe-MTBの楽しさを実感

今回試乗したエリアはスリッピーな沢を越えたり、深い轍があったりと、テクニカルな箇所が多かったのですが、トレック「Rail 9.7」に体を預けて必要なアシスト力を引き出すことに集中する乗り方が新鮮でおもしろかったですね。

自転車とモーターサイクルのおもしろいところを総取りって感じです。MTBよりも広い範囲を、モーターサイクルよりも細かい目線で散策できるe-MTBはやっぱり今までにない遊びだなと再認識したトレック「Rail 9.7」の試乗でした。

モーターサイクルでは入っていくのに躊躇するようなシングルトレイルも楽しめます
カシワギユウタロウ

やっと最近趣味に復活できた万年中級ライダー。本業はカメラマンな37歳。スケボーからモトクロス、クライミングまでヨコ乗りタテ乗りスイチョク乗りまで重力と戯れる遊びが大好き。若い頃はオフロードバイク雑誌編集部員として海外レースなども走ってました。体力よりも体幹で乗るタイプ、エヴァンゲリオン体型とよく言われます。髪の毛は青。