e-bike試乗レビュー
自転車通勤に最適なe-bikeかも!? 安定志向で乗りやすいトレック「Allant+ 8」
2020年2月10日 00:00
e-bikeの一大勢力となっているのが、クロスバイクタイプです。e-bikeをリリースしているメーカーは、各社とも1台はクロスバイクタイプを用意しているような状況で、複数台ラインナップしているメーカーも少なくありません。なので、選ぶのに迷ってしまいそうな贅沢な状態。豊富なラインナップでも、それぞれの特徴はしっかり踏まえて選びたいところです。今回は、クロスバイクタイプを6台もラインナップしているトレックの「Allant+ 8(アラントプラスエイト)」に長期試乗してみました。
メーカー名 | トレック |
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製品名 | Allant+ 8 |
実売価格 | 430,000円(税抜) |
パワフルなドライブユニットと自転車通勤向けの装備
軽快車タイプの電動アシスト自転車ではなく、スポーティーなe-bikeを欲しい人が想定する使い方の1つが自転車通勤ではないでしょうか? それも、アシストなしの自転車ではちょっと尻込みしてしまいそうな距離だったり、坂道の多い通勤ルートなのではないかと想像します。実は、この「Allant+ 8」はそんな使い方がピッタリくる1台なのです。
この車体をひと目見て、e-bikeだと気付くのはかなり詳しい人でしょう。普通の人は、フレームとタイヤがちょっと太いかな……と思うくらいのはず。それほど「Allant+ 8」はスマートなデザインに仕上がっています。インチューブ式のバッテリーとコンパクトなドライブユニットを採用することで、電動アシスト自転車にありがちな野暮ったいバッテリーのケースやドライブユニットを、スッキリと収めているのでスマートに見えるのです。
ドライブユニットは同じくボッシュ製「Performance Line CX」。ボッシュには街乗り向けの「Active Line Plus」というドライブユニットもありますが、e-MTBなどに搭載される最新型でパワフルなモデルをあえて採用しています。このドライブユニットはコンパクトでありながら、最大トルクが75N・mと強力なのが特徴。クロスバイクではありますが、“本気”の心臓部が与えられていると感じます。
パワフルなドライブユニットを搭載しているとはいえ、「Allant+ 8」は街乗り向けのクロスバイク。通勤に便利な装備もいろいろと備えています。例えば前後のタイヤにはフェンダーが標準で付いているので、路面に水たまりがあっても服が汚れることがありません。リアキャリアも装備されているので、バッグを背負わずに移動できるのも通勤ユーザーにはうれしいポイントでしょう。
e-MTB向けのドライブユニットを搭載し、27.5×2.4というMTBのような太さのタイヤを装備しているだけに、ブレーキやコンポーネンツなどもMTB向けのパーツが多く採用されています。特に油圧式のディスクブレーキは、少ない力でも効きが良くてコントロールしやすいので、街乗りでも安心感が高まる装備です。
通勤路で乗りやすさを実感
通勤向けのe-bikeということで、試乗は都内(渋谷)から筆者の自宅まで約24kmのコースを走ってみました。渋谷はその名のとおり、谷になっている地形なので自宅のある西東京方面に帰るには、必ず坂を上る必要があります。また、今回はあえて上り下りの多い井の頭通りを使うルートで帰ってみました(アシストのない自転車では避けているルートです)。
まず走り始めて感じたのは、アシストの力強さ。ドライブユニット「Performance Line CX」のパワフルさは、以前に神鍋のコースでe-MTBを乗りまくった際に実感しましたが、やはり強烈な坂道を上るMTB向けに開発されているだけに強力です。走行モードは4段階あるのですが、最強のTurboモードではアシストが強すぎて、街乗りでは持て余してしまうほど。特に信号待ちからのスタートで使うと、強烈なダッシュで一瞬目が付いていかないくらいでした。
速すぎるのでTurboモードは封印。平地では基本的にTourモード、坂を上るときだけ1つ上のSportモードを使ったくらいでしたがアシスト力にはまったく不満はありませんでした。
アシストは強力なのですが、コラテックの「E-POWER SHAPE PT500」(関連記事)や、ジャイアントの「ESCAPE RX-E+」(関連記事)などの“快速系”クロスバイクと比べると、「Allant+ 8」は明確にキャラクターが異なります。
「E-POWER SHAPE PT500」や「ESCAPE RX-E+」は細身のタイヤと軽量な車体で、アシストが切れる24km/hを超えてもスピードを乗せて行くことができますが、「Allant+ 8」はタイヤが太く車体重量も25.85kgあるので、アシストが効いている速度域での加速を楽しむ感じ。それ以上のスピードを出そうとすると、かなり足に来ます。しかし、24km/hまでの快適性は「Allant+ 8」のほうが上です。その要因は、やはり太いタイヤ。エアボリュームが大きいので路面の凹凸をタイヤが吸収してくれるためです。
また、下り坂での安定感の高さにも驚かされました。タイヤがしっかり路面をグリップしてくれるのと、車体の設計が安定指向なのか、下り坂でも安心して走ることができます。「E-POWER SHAPE PT500」や「ESCAPE RX-E+」でも、同じコースを走ったのですが、長い下り坂のカーブがある区間タイムだけは「Allant+ 8」が一番でした。タイヤが細い快速系のe-bikeも楽しいですが、毎日の通勤で快適性と安心感を重視する人にはピッタリでしょう。
バッグを装着して近所のツーリングにも連れ出してみる
その後も「Allant+ 8」をいろいろなシーンで乗り回してみました。その中で感じたのが、“この乗りやすさが気軽に乗り出せる”ことにつながっていること。自宅には何台か自転車がありますし、同じ期間に快速系のe-bikeも借りていたのですが、何か出かける用事がある際にもっとも出番が多かったのが「Allant+ 8」でした。
スタンドが付いているので、どこに乗って行っても停める場所を考える必要がありませんし、フェンダーも装備しているので、雨上がりでも気軽に乗り出せます。やや高価ですが、日常生活の中で付き合いやすいモデルでした。
リアキャリアが付いていることも、日々の使いやすさに一役買っています。一般的な荷物をくくりつけるタイプではなく、引っかけるタイプのキャリアですが、こういうタイプに向けの自転車用バッグは結構リリースされています。手元にも1つあったので、それを装着して出かけてみました。
MTBのようにタイヤが太いので、ちょっとした未舗装路も走れてしまいます。近所の河原を走ってみましたが、まったく問題ありませんでした。大きめの石がゴロゴロしているようなところも、自転車から降りることなく通過できます。こういうオフロードも含めて、気軽に散歩するようなライドは楽しい!!
“飛ばしたくなる”快速系のe-bikeは楽しいですが、アシストが切れる速度域でもついついペダルを踏んでしまうので、実は結構疲れやすかったりもします。その点、「Allant+ 8」は車重もあるので24km/h以上の速度で走るのは得意ではありません。でも、そこまでのアシストは強力で、景色を見ながら楽に乗るにはちょうどいい。スピードを追い求めるのではなく、少し落ち着いて自転車と付き合いたい人には良い相棒になるはずです。フレームなど各部の仕上がりを見ても高品位で、そんな大人のライダーを満足させてくれるでしょう。