e-bike試乗レビュー
約100万円のe-bike購入の決め手となった理由、納車までのショップのリアルな舞台裏
2024年1月15日 08:05
トレックの「Rail 9.7 Gen 4」を買いました。カーボンフレームのハイエンドe-MTBで、価格は998,690円。これまでにも車体についてはレビュー記事を書いてきました。
筆者は以前からトレックのRail 9.7が欲しいと思っていました。初代のRail 9.7に試乗したのがきっかけ。上りも下りも楽しい、とても秀逸なe-MTBだったんです。
試乗して、さらに乗って、「物凄くRail 9.7が欲しいッ!!!」となってRail 9.7貯金を始めました。Rail 9.7を買ってMTBパークやトレイルで遊ぶのだっ! と鼻息荒く。
しかし、その直後にコロナ禍に突入。恐ろしいパンデミックで、気分も生活もe-MTBどころではなくなりました。そしていつしかRail 9.7貯金もフェードアウト。
ただ、コロナ禍に突入して気分は消沈したものの、ときどき仕事でRail 9.7の後継モデルに乗ったりすると「やっぱりRail 9.7はイイなぁ~」としみじみ感じました。じゃあ思いきって買っちゃおうか? と思ったりはしましたが、コロナ禍の物流問題などがあり、肝心の車体が在庫切れ。結局「そのうち買おう!」と。
でもそういう先延ばしが続くと「Rail 9.7買いたい欲」が徐々に低下。「ほかにもe-MTBはいろいろあるし」「MTBパークでレンタルe-MTBを借りてもいいし」などと、気持ちはRail 9.7を買わない方向に動いていきます。
……いや、Rail 9.7は欲しかったんだと思いますが、何かRail 9.7を買わなくていい理由を探していたのかもしれません。「Rail 9.7買いたい欲」を無理矢理に低下させていたのかもしれません。ともかくRail 9.7に関して低いテンションでモヤモヤし続けていたと思います。
しかし、この9月にパッと購入。Rail 9.7の第4世代、2023年モデル(つまりRail 9.7 Gen 4)が発売されることを知り、即座にへと連絡。「発売日が決まったら絶対買いますので予約させてくださいっ!」的に頼んでの予約購入です。
それ以前のモヤモヤしてRail 9.7購入を躊躇していた感じから、一変した筆者。ある記事がきっかけで考えと行動が変わりました。以下の記事です。
e-bikeにハマっている「へーきち」さんの記事。へーきちさんは交通事故で膝関節を粉砕し、運動ができない体になったそう。しかしe-bikeにより再度スポーツを楽しめるようになったそうです。
記事を読んで思ったのは、「そうだよね、突然運動とかできなくなる可能性、あるよね」ということ。それから、「e-bikeはやっぱり最高に楽しいよね!」ということです。
e-bikeはサイコーに楽しい。これは間違いない。その一方で筆者は「もしかしたら明日、自分に、e-bikeにもう乗れなくなるナニカが起きるかもしれない!」と強く思ったのでした。
e-bikeに乗れないのは悲しい。きっと落ち込む。でも、そういう日はやがて訪れる。でも、まだ、その日ではない。
ならば! 欲しいと思ったe-bikeは先送りにせず、可能な限り買おう! と。
手始めにキャノンデールのミニベロe-bikeとかグラベルe-bikeとかをガスガス買いました。在庫があったから後先考えずに。
そうしていたらRail 9.7 Gen 4が発売されるゾ、と。しかもRail 9.7 Gen 4に搭載されるドライブユニットは、ボッシュの最新世代ユニットことスマートシステム対応「Performance Line CX」だゾ、と。
えーっ! このe-bike買いまくりで大散財で預金残高右肩激下がりのタイミングで? ……とは思いましたが、もう先送りにするのはヤメたので、予約購入! というわけです。
以上、「なんで100万円近いe-MTB買ったのかな?」的な疑問にお答えすべく、筆者的なRail 9.7 Gen 4を書いてみました。でもそういう話はここまで。以降は、e-bike購入時の「案外知られていない裏話」を書いてみたいと思います!
e-bikeがメーカーから販売店に届いたあと、何をするのか?
スポーツ自転車販売店に行くと、店頭に新品自転車が整然と並んでします。お客さんはそこから選んで購入。店員さんからひととおり説明を受け、防犯登録など手続きが済んだら、買った自転車に乗ってそのままサイクリング!
でも、実はそれ以前にスポーツ自転車販売店が「やっていること」が結構あります。そのあたりの「舞台裏」をご紹介いたします。
ネット通販などでスポーツ自転車を買うと、こういった「箱入りで七分組」の状態で届く場合があります。この巨大なダンボール箱が玄関先に届いたら、ちょっとパニックかもしれません。取り出すのも大変そう。
箱の大きさや取り出しはいいとしても、七分組のスポーツ自転車を完成状態まで組み上げるのはタイヘンじゃないのでしょうか? 宮崎さん曰く「十分な知識があれば組み上げられますが、場所も工具も必要でそれなりの手間もかかります。また知識が不十分の場合、正しく組み上げれれず、最悪の場合は死亡事故などの原因にもなります」とのこと。
なーるほど。スピードが出る乗り物ですもんね。七分組から完成までは、販売店のプロにお任せしたいところです。
もう組み上がったのかな? と思って見ていると、まだいろいろと調整していくようです。たとえばシフターの動きやチェーンやカセットスプロケットの音、ホイールの振れ、ブレーキローターの歪みなどなど。これらを最適にしていくことで、より安全で快適な走行ができ、故障やトラブルなども減らせるそうです。
七分組から基本的な箇所を組み立てていきつつ、都度できる調整をする。そうして基本的な組み上げが済んだら、今度は細部を調整。そうして問題のない快適な新車として完成するというわけです。メーカーから車体が届いただけでは、まだ未完成なんですね。
もちろん新車として問題がないかどうか、フレームをはじめとするパーツの傷チェックも万全です。「もし傷があるとどうなるんですか?」と聞いてみたら、メーカーに戻したり「訳あり品」として値引き販売することもあるそうです。……あっそういえば訳あり品のトレック製グラベルロードを20%オフで買ったことあるー!
結構「あるある」なトラブル、ラッキーも!?
Rail 9.7 Gen 4を箱から出して組み上げていく過程で、よくあったり、またにあったりする、「スポーツ自転車組み上げあるある」を教えてくれました。
ケーブルがきつめとか、ブレーキローターに若干の歪みがあるとかは、ふつうに「あるある」だそうです。メーカーの工場でパーツを組み付けるとき、作業員の力加減次第でそういう「よくある(不具合ほどではない)不調」が現れるそうです。なので「七分組から車体完成までに行なう各所の調整は必須」だそうです。
購入したRail 9.7 Gen 4も、前述のとおりリアディレイラーのケーブルの滑らかさが足りず、重めの操作感だそうです。内部で圧迫されているのが原因と思われるので、ドライブユニットを外してケーブルを引き直すことに。……筆者が操作した感じでは全然そういう感じがしませんでしたが、プロだとそういう微妙な違いがわかるんですね~。
あまりないトラブルとしては、このRail 9.7 Gen 4の場合はドロッパーシートポストのサイズ(太さ)が車体と合致していなかったとのこと。この場合、ドロッパーシートポストをメーカーに返送して正しいサイズを再送してもらうことになるそうです。
なので、注文した自転車に、どんなパーツが装着されているかは(自転車パーツ不足の現在はとくに)運次第というところがあります。Rail 9.7 Gen 4のコンポーネンツは主にシマノ製として掲載されていますが、筆者の前にRail 9.7 Gen 4を買った人はコンポーネンツがSRAM(スラム)製だったそうです。その方曰く「スラムのもいいパーツだけど……なんかシマノ製がよかったなぁ、ちょっとクヤシイ」とのこと。
一方で「予想よりいいパーツ」が装着されていることもあるそうです。最近のトレック製e-MTBに装着されるコンポーネンツはスラム製が多いそうです(というかほとんどスラム製だとか)。しかし筆者のRail 9.7 Gen 4はシマノ製でした。スタッフの方は「へぇーシマノ製が着いてくるって珍しいなあ」と言っていました。
またシフターやブレーキレバーはシマノのMTB用マウント規格「Ispec(アイスペック)」対応品が使われていました。これも珍しかったらしく、相田さんは「ブレーキとシフター、シマノでありかつ、しかもアイスペック!」と少し驚いていました。
もうひとつ。サイズが合わないので返品・交換となったRail 9.7 Gen 4のドロッパーシートポスト。公式のスペックではTranzXブランドのドロッパーシートポストとなっていましたが、交換品として送られてきたのはボントレガーブランド品でした。
サグ出しして納車、もちろん直後、サイクリング!
購入したRail 9.7 Gen 4の七分組状態から完成直前(微調整前)までを見せていただき、興味深い話も多々聞くことができました。そしてその後の微調整や新規パーツを組み込んだ後、納車となりました。
組み立てや最終チェックなどは終わりましたが、Rail 9.7 Gen 4などのe-MTBや人力MTBは、納車前にすることがもうひとつあります。それは「サグ出し」です。
サグ出しは、ライダーが自転車に乗ったとき、どの程度サスペンションが縮むかを調べ、サスペンションの反発度合いを調節する「サスペンション伸縮の最適化」です。サスペンションの反発の強弱は、振動の吸収やタイヤの滑りにくさなど重要な要素で、前後とも最適に調節されていればトレイルなどを快適かつ安全に走行可能。逆にサグ出ししていない車体は不安定で走りにくく、危険でもあります。サグ出しは納車前の最終調整作業です。
という感じで、Rail 9.7 Gen 4購入理由~納車~シェイクダウンの様子をお届けしました。e-bike購入のご参考になれば幸いです。