10分こそうじ

物置化した仕事部屋 プロの片付けビフォーアフター

年に一度の大掃除より、日々の“小”掃除。整理収納アドバイザーとお掃除スペシャリストの資格を持つ筆者が、1日の終わりに10分でできる掃除や片付けのポイントをお伝えします
物置化した仕事部屋の整理収納・実践編をお届けします

前回、「仕事部屋を見直すことは、自分自身の働き方や暮らし方を見直すこと」とお伝えし、整理収納を始める前の“自分へのヒアリング”の重要性をご紹介しました。

今回は実践編として、実際に仕事部屋の整理収納に取り組んだAさん(30代・在宅ワーカー)の事例をご紹介します。

仕事部屋のはずが、気がつけば物置に……

Aさんのお悩みは、

  • 気が散って集中できない
  • どこにしまえばいいかわからないから、とりあえず目につく場所に置いてしまう
  • 「片付けなければ」といつもモヤモヤしている
  • 探し物が多く、効率が悪い
  • 居心地が悪く、仕事が終わったらすぐに部屋を出たい
  • 夫と場所を共有しているので、モノが多いことで迷惑をかけてしまっている

というものでした。

仕事部屋を拝見すると、机の上には資料や郵便物から、プロテインの袋やコスメグッズなど仕事に関係のないモノまで。壁際には「取っておきたい本」や説明書、資料などの紙ものと「飾っておきたいもの」が混在。机の背面や足元は、趣味のグッズや備蓄品置き場となっていました。

Step 1.ヒアリングで“理想”を引き出す

まずはAさんにこんな質問を投げかけてみました。

「この部屋で、どんな風に過ごせるようになりたいですか?」

Aさんの答えは、

  • 仕事だけに集中できる場所にしたい
  • 何をどこに置いたかわからない状態をリセットしたい
  • お気に入りのものを少し飾りながら、自分らしい仕事部屋にしたい

というもの。

これによって見えてきたのは、「整えることで、仕事とプライベートの切り替えをしつつ、愛着を持てる仕事部屋がほしい」というAさんの本音でした。

Step 2.“使う場所には使うモノだけ”を意識してゾーニング

全出し:机・収納の中・床に置いてあったモノをすべて出す

整理収納の基本は「全出し」。収納に入っているモノをすべて出します。持ち物をすべて把握し、今の自分に必要なモノを選び取るための重要な工程です。

まずは「全出し」で持ち物を把握。写真は一部ですが、日用品のストックや趣味のもの、「これ、いつ買ったんだろう……?」と本人も忘れていたモノがいくつも発見されました

区別:「要・不要」に分ける

次は、必要なモノを用途別に適所に配置していくゾーニング作業です。仕事ゾーン・趣味ゾーン・食事ゾーンのように空間を分けていけばモノの配置が決めやすくなります。

不要と判断されたモノたち。「定期的に整理しているはずなのに、収納の奥まで確認できていなかったのかも」と驚かれていました

Step 3.収納の見直し

モノをすべて出し、必要なモノだけを残したら、次は収納していく作業です。仕事に集中できるようにするため、デスクの上には仕事で本当に使う道具だけを残します。今回のケースでは、仕事とは関係のないモノを次のように収納していきました。

仕事机のbefore。仕事とは関係のないプロテインなどが置かれていました
after。仕事に本当に必要なものだけを残して、後は別の場所に収納していきます

趣味のキャンプ道具には棚を1段割り当て、頻繁には読まないけれど捨てずに取っておきたいコミック本などもケースに入れて保存。防災用の飲料のストックも棚へ移動し、衛生面や見栄えを考えケースに入れます。

仕事机の後ろの収納棚に備蓄用の飲料水とコミックを入れたケースを収納。もともと置いてあったキャンプ道具はクローゼットに移動しました
さらに水は無印良品の「やわらかポリエチレンケース・深」に入れて見た目もよく。段ボール1ケース分がほとんど入ります

パンパンだったクローゼットは、中身を見直して不要なモノは処分し、洗剤などのストックは洗面所へ移動することでスペースが生まれました。そこへ、部屋に出ていたワゴンを入れ、使用頻度の少ない防災品や日用品を収めます。アウトドアグッズは玄関収納にも移動させました。

クローゼットのbefore。日用品のストックなどもこちらに詰め込まれています
after。洗面所で使うストックは洗面所へ移動し、一部のアウトドアグッズは玄関収納にも移すことで、外に出ていたワゴンを入れられるスペースが生まれました

本が棚の上まで溢れた本棚は、コミックを別のケースに入れたり、家電の取扱説明書を処分したりして無事、すべての本が収納スペースに収まるようになりました。取扱説明書はネットで確認できるものが大半なので、Aさんご了承の上、保証書以外は処分しました。

本棚のbefore。入りきらない本や漫画が棚の上にも
after。漫画は別のケースに入れ、取説を処分することですべて本棚内に収納できました

今回の整理収納の目的は、仕事に集中できる環境にすること。デスクから窓周りを中心に目に入る情報(モノ)を減らし、適所に収納しました。限られた空間でも、「ここは何をするところ?」と考え、ゾーン分けすることでモノを配置しやすくなります。

使うモノを使う場所に収納するのが理想ですが、仕事部屋にストック品などを置かなければならない場合も。そんなときは収納ケースを上手に使えば、生活感を感じさせずにスッキリした空間にすることができます。

こうして部屋全体を見直して収納していった結果、2つの棚の上段が空いてスッキリ! 自然光が入る明るいスペースに、お気に入りのフィギュアを置いて「私らしさ」をプラス。お部屋のアクセントとなっています。

仕事部屋全体のbefore
after。スッキリと片付きました。カーテンも開けて明るい空間に

ここでAさんの感想をご紹介します。

「片付けたあと、部屋が広く、明るくなったように感じて驚きました。さらに、これまではただ作業するだけの部屋と考えてカーテンを締め切っていましたが、仕事部屋のドアを開けるたびにスッキリと片付いた部屋に気分がよくなって、カーテンも開けるように。明るい部屋で気持ちよく仕事ができるようになりました。今回、ほとんど使っていないものをたくさん手放せたこと、また、片付いた部屋はモノの出し入れがラクで生活がしやすくなると気付いたことで、今後の暮らし方について見つめ直すきっかけにもなりました」

空間が整うと、自分が変わる

「片付け」は単にモノを減らすことではなく、「自分にとって大切なものを選び取る」作業です。さらに、大事なポイントとして覚えていてほしいのは、今の自分にとって大切でない不要物は、収納の奥の方へ追いやられているということ。ですから、「全出し」の工程は必須なのです。

なかなか勇気が出ない人も、引き出し1つから、エイ! とひっくり返してみて。意外とスムーズに要・不要の選別ができますよ。

自分にとって必要なモノを適所に収めることで、部屋はスッキリします。環境が整うと、自然と自分自身の意識や行動にも変化が起こります。たかが部屋の片付けかもしれませんが、人生の大きな転換点になることもあるんです。

今回は、仕事部屋の整理収納の実践例をご紹介しました。「片付け=捨てる」ではなく、「どう暮らしたいか」自分に向き合う機会だということが伝われば幸いです。

丸 マイ

整理収納アドバイザー、クリンネスト(お掃除スペシャリスト)講師。個人宅の整理収納サービス「mawaru暮らし」主宰。片づけ苦手主婦だった自身の経験から、楽に片づく収納提案を行なっている。ほかにも、子供からシニアまで幅広い層へ片づけや掃除の楽しさを伝える講師としても活動中。