e-bike試乗レビュー

トレックのフルサスe-MTB「Rail 9.7」でダウンヒルレースに参戦してきた【野沢温泉自転車祭】

最近、いろいろなレースやイベントでe-bike部門が設けられるようになっています。e-bike Watchとしては、できるだけ積極的に参加して、e-bikeユーザーの人たちと一緒に走り、e-bikeを盛り上げていきたいと考えています。今回、参戦したのは10月1~2日に開催された「野沢温泉自転車祭2022」。1日目はスキー場のゲレンデを下るMTBのダウンヒルレース、2日目にはオンロードのヒルクライムレースが行なわれ、どちらもe-bikeクラスが設けられています。e-bike部・清水氏はヒルクライムレースに、筆者・増谷は「e-MTBならどちらも走れるかも」と考えて両レースに参戦することにしました。

トレックのフルサスe-MTB「Rail 9.7」で参戦

参戦モデルはトレックのフルサスe-MTBの「Rail 9.7」。これまで何度も乗らせてもらっているe-bikeですが、今回は2022年モデルで最大トルクが85Nmに向上しているなど、だいぶ進化しています。カーボンフレームにカーボンホイールを装備していて、重量は22.96kg(Mサイズ)ありますが、ダウンヒルもヒルクライムも走るなら最適なモデルでしょう。

2022年モデルのトレック「Rail 9.7」。フレームのロゴが同色っぽくなっているのもカッコいい
ドライブユニットはボッシュ製「Performance Line CX」。ソフトウェアのアップデートによって最大トルク値が85Nmまで向上し、瞬間的にペダルを踏むとアシストが得られる「extended boost」という機能も追加。実はこの進化がヒルクライムレースで活かされました
ディスプレイはコンパクトな「Kiox」になり、アシストの出方やケイデンスなども表示可能に

e-bike的には最高のものが用意できましたが、実はMTBのダウンヒルレースに参加するのは初めて。しかも、レースは一斉スタートとのことで、他車と絡んでの転倒など不安がつのりますが、まずはコースの試走に向かいます。

ゲレンデ上のスタート地点まではゴンドラで自転車と一緒にアクセスできます。野沢温泉のゴンドラは広いしキレイでかなり快適
そしてゴンドラからの眺めが絶景! 天気が良かったこともあり、遠くの山まで見通せます
スタート地点にはレッドブルのゲートも設けられていて、気分が高まる! さっそく試走へ

コース長は約8kmで、標高差は800m。ゲレンデを下るダイナミックなコースと、木々の間を抜ける林間区間、それに林道を組み合わせたコースでそこそこ難易度も高く、走りがいがあります。絶景の中をハイスピードで下って行くエリアもあって、気持ちがいい! ただ、レースで、しかも一斉スタートでこのコースを競いながら走るというのは少し怖い気持ちも残ります。

絶景のゲレンデを真っ直ぐ下って行く区間も。速い人だと80km/hくらい出るとか

予選では転倒もあったけど楽しめた

試走に続いて、スタート順を決めるための予選タイムアタックが行なわれます。これは1分間隔で1人ずつ走るので、不安は少ない。レッドブルのゲートからスタートし、きちんとタイム計測もされるので気分も高まります。

レッドブルのゲートに1台ずつ並びます。スタート時には名前も呼ばれていい気分
やる気を見せていますが、内心はかなり緊張しています……
いよいよスタート! e-MTBのアシストを活かして飛び出します

林間コースや林道区間は上手くこなすことができましたが、滑りやすい上り返しの区間で2回も転倒……。e-MTBのメリットを活かしてタイムを縮められる区間だったのにもったいないことをしました。そして、気持ちが焦ったためか、一番スピードの乗るゲレンデの激下りでも転んでしまいました。

景色に見とれたわけではありませんが、ハイスピード区間で転倒……
それでも何とか怪我なくゴールできました。発表されたリザルトを見ると、タイムは47番手(67台中)。e-bikeクラスの順位はわかりませんが、もう少しタイムを縮めたいところ

試走の段階から参加者たちが速いのはわかっていたので、順位はともかく3回も転倒してしまったのは心残り。というより、決勝レースに向けて不安が残ります。スタートは10台ずつ横に並んでいくので、4列目ということになります。まあ、がんばって少しでも前に行くしかないですね。予選で無理すると危ない場所もわかったので、ちょっとだけある林道区間やe-MTBのメリットを活かせる上り返し区間だけがんばる作戦で行きます。

スタート地点に並んだ参加者たち。4列目だとずいぶん前に人がいます
スタート直前。前の列に隙間ができそうなので、その間を抜けて紫ジャージの人の後ろにつけたい

カウントダウンが進んで、いよいよ一斉スタート! アシストがあると、やはりスタートが速いので「Performance Line CX」のパワーを活かして飛び出します。作戦どおり(?)前列の隙間を抜けてジャンプアップできました。林道区間でもがんばってペダルを踏み、また少し前に出ます。とにかく、e-MTBのアシストが活きる場面だけがんばって、あとは転ばないように無理をしないことを心がけました。

狙いどおりに紫ジャージの人の後ろにつけることができました。やっぱりe-MTBのパワーすごい
ダブルトラックになっている林道区間でもがんばって少しでも前に出ます
木々の間を抜ける林間コースは気持ちいい。取りあえず前の人に置いて行かれないようについていく
ゲレンデ区間は転ばないように抑えて走ったので、何台かに抜かれてしまいました……。みんな速い

上り返し区間でも少しだけ前に出ることができましたが、ハイスピードな区間で抜き返され、後半になってくると疲れもあって集中力が落ちてきて、また数台に抜かされる。でも、何とか無転倒で下りてくることができました。思ったより速くゴールゲートが見えてきて、自分でもちょっと驚きます。ゴールのところで写真を撮っていた清水氏も、予想より早くきたのでピントを合わせ損なったくらいでした。

ゴールゲートが見えてきた! 後ろに気配を感じるので、逃げるようにゴールへ
後ろは女子の一番速かった人。完全にロックオンされていますが、何とか抜かれずに済みました
こちらはトップの人たちのゴールシーン。タイムは8分台!(筆者は12分44秒)
e-bikeクラスのトップはスコット「GENIUS eRIDE」のオーナー。もう少しで8分台という速さ
予選時に愛車を撮影させてもらいました
何とか転ばずにゴールできて、タイムも予選より約2分短縮できたので充実感があります
「Rail 9.7」も泥だらけ! でも満足できる走りができたのは、ほぼこのドライブユニットのおかげです
自転車に乗って下るだけと思われるかもしれませんが、めちゃめちゃキツいんです。ゴール後はへたり込んでいました
ゴール後に笑顔で談笑する参加者たち。背中の泥はねすらカッコよく見えるのは気のせい!?

結果はe-bikeクラスで6位(全体での順位はわからず)。いちおう入賞することができました。完走7台なので、実質的にはブービーですが、入賞は入賞なのでめちゃめちゃ嬉しい! 表彰台に乗れたのはとてもいい気分でした。走る前は緊張しますが、そのぶん集中して走れるので、仲間と行くトレイルライドとはまた違った楽しさがありますね。

隅っこですが、表彰台に乗れたので最高の気分!
副賞の野沢のお餅をもらいました。うれしい!
表彰はクラス別に行なわれ、男女それぞれ一番速かった人は特別に表彰も。トップの人のバイクはなんとハードテイル(しかも「33rpm」)
ゴンドラ横に洗車場があるので、そこで泥を洗い流します
EcoFlowのポータブル電源「DELTA 2」を持ってきていたので、翌日のヒルクライムに向けて清水氏のコラテック「SHAPE PT500」と合わせて充電

ダウンヒルレースだけでずいぶん長くなってしまいましたので、ヒルクライムレースはまた別記事でお届けします。

GoProで撮影したダウンヒルレースの動画。ハアハア言いながら必死に走っています(笑)
増谷茂樹

乗り物ライター 1975年生まれ。自転車・オートバイ・クルマなどタイヤが付いている乗り物なら何でも好きだが、自転車はどちらかというと土の上を走るのが好み。e-bikeという言葉が一般的になる前から電動アシスト自転車を取材してきたほか、電気自動車や電動オートバイについても追いかけている。