e-bike試乗レビュー
軽いっ!! とにかく楽しいっ!!! SPECIALIZEDのフルサスe-MTB「S-WORKS TURBO LEVO SL」
2021年5月11日 08:00
ず~っと気になっていたe-MTBがあります。SPECIALIZED(スペシャライズド)の「TURBO LEVO」シリーズ。フルサスペンションのe-MTBで、現在4車種が発売されています。どれも高価格帯と思えるe-MTBですが、価格が高いから気になっているというわけでもありません。ではなぜ気になっている?
スペシャライズドのe-bikeには共通する特徴があり、それは「軽いこと」です。スペシャライズドのe-bike作りは「軽さ重視」。
例えば以前にレビューしたクロスバイクタイプのスペシャライズド「VADO SL 4.0」は、比較的に価格を抑えたe-bikeですが、重さは約15kg。クロスバイクタイプのe-bikeは18~20kgかそれ以上の重さになりますが、約15kgは明らかに軽い。実際にVADO SL 4.0で走った感じも人力クロスバイクのような軽快さがありました。
e-MTBシリーズのLevo(リーヴォ)各車種も軽い。シリーズ中で最も重い「TURBO LEVO SL COMP」でも約19㎏。最も軽い「S-WORKS TURBO LEVO SL」は17.3kgです。多くのe-MTBは22~24kgといった重さなので、明らかに軽量です。
そんな軽さは、スペシャライズドのe-MTBには自社開発の小型軽量モーター「SPECIALIZED SL 1.1 モーター」と必要最小限の固定式インチューブバッテリーの搭載によるもの。モーターやバッテリーの重量を極力抑え、フレームの強度や軽さを維持することで、人力自転車のさまざまな良さを残していくというアプローチです。
確かに、前出のスペシャライズド「VADO SL 4.0」で走ってみると、軽く速い走行感は人力クロスバイクによく似ている。で、走り出しや上り坂では十分なアシストが加わるのでツラくない。他社のe-bikeと比べると若干アシスト感が「細い」という感触はあるのですが、でも「これでも十分イイな」という満足感がありました。
では軽いe-MTBはどうなんだろう? フツーの重さのe-MTB(22~24kgくらい)と比べたら、スペシャライズドのe-MTB(17.3~19kg)は、かなり乗り味が違ったりする? そんな興味からスペシャライズド製のe-MTBが気になっていたというわけです。
そこでメーカーからLevoをお借りして試走してみることに……しました、がっ!!! ナンとスペシャライズド「S-WORKS TURBO LEVO SL」を貸してくれましたっ!!! 1,694,000円の最上位グレードe-MTB!!!
いや、あの……そんな高級品じゃなくても……軽いスペシャライズド製e-MTBなら何でも……てか、S-WORKS TURBO LEVO SLって日本市場で最高級のe-MTBですよね。ドキドキ。でもまあせっかくお借りできたので、コレで試走してみることに♪
スペシャライズド「S-WORKS TURBO LEVO SL」は、どんなe-MTB?
S-WORKS TURBO LEVO SLは、フルカーボンフレームでフルサスペンションのe-MTB。e-bikeコンポーネンツは独自開発の「SPECIALIZED SL 1.1 モーター」を中心としたものです。最上位グレードe-MTBということだけあり、高品位なパーツがふんだんに使われています。どんな仕様のe-MTBなのか、写真と説明文で見ていきましょう。
それぞれ非常に高品位なパーツが使われています。興味のある方は、パーツ名で検索してみるといいかも。「えっこのパーツはこんな価格なのか」とちょっと驚かされると思います。
例えばドロッパーシートポストの「ROCKSHOX Reverb AXS (ロックショックス リバーブ アクセス)」。無線で操作できて反応も良く、最高に使いやすいドロッパーシートポストですが、価格は10万円以上します。他のパーツも高価。そんなパーツの集合体でありつつe-MTBなので、価格が1,694,000円になってしまうんですね。
なお、ハイエンドモデルのS-WORKS TURBO LEVO SL以外には、「TURBO LEVO SL EWXPERT CARBON」「TURBO LEVO SL COMP CARBON」「TURBO LEVO SL COMP」がシリーズにラインナップされています。
ちなみに、上位3グレードのカーボン製フレームは共通で、装備されているパーツが異なります。「TURBO LEVO SL COMP」についてはフレームがアルミ製となっています。
軽い~、かっる~い♪ どう走っても楽しい~♪
S-WORKS TURBO LEVO SLに初めて触れた印象は「軽い!!!」ということです。実はS-WORKS TURBO LEVO SLでの試走当日、他のメーカーのe-MTBも3台持ち込みました。トランポしてMTBコースに運び込みましたが、クルマから降ろす時のS-WORKS TURBO LEVO SLが軽いこと軽いこと。まあ、他メーカーのe-MTBと比べて、という印象ですが。
さっそく試走です。まずは上りとなるわけですが、S-WORKS TURBO LEVO SLのアシスト力は他メーカーのe-MTBと比べるとパワフルとは言えません。トルクが細い感じがします。
シマノやボッシュやヤマハなどのドライブユニットを搭載したe-MTBの場合、走り出しも登坂のグイグイと力強く、変速せずともアシスト力任せで登坂できてしまう感じ。e-bikeらしいパワーの出方で、e-bikeの醍醐味とも言えましょう。
一方、S-WORKS TURBO LEVO SLはどうかといえば、そこまではパワーが出ない感じ。ですが登坂が苦しいのかと問われれば、全然そうではない。
単純なことで、必要に応じてギアチェンジを行なえば急坂でも上れる。アシスト力も加わりますので「人力MTBだと無理」という急坂でも余裕をもって上れる。ギアを意識して使えば十分パワフルなアシスト力が得られるという感じです。
それからS-WORKS TURBO LEVO SLはペダリングに対するアシストの反応が非常に良いと感じられます。レスポンスが高いドライブユニットなのだと思いますが、ドライブユニットのラチェットのノッチの刻みが非常に細かいことも、その反応の良さを後押ししていると思います。
普通の自転車と違ってe-bikeはドライブユニットとクランク軸の間にラチェット機構があります。ただ、わりと多くのe-bikeはそのラチェットのノッチ間隔が狭くなく、ペダリングを開始してからクランク軸に力が加わるまでにわずかにタイムラグが生じます。
しかしS-WORKS TURBO LEVO SLの場合は、そのタイムラグがほとんど感じられない。ペダルを踏んだ瞬間にクランクに力がかかるという感触。大きめの石や木の根を見て「今すぐ一瞬だけアシスト力が欲しい」と思って反射的にペダルを踏んでも、それに遅れず瞬時にアシスト力が出てくれる感じなんです。これが小気味良いし気持ちいい。「すご~い、こんなところまでハイエンド!!!」と驚きました。
ギアチェンジさえ適切に行なえば、クイックで十分パワフルなアシスト力が得られるS-WORKS TURBO Levo SL。そして車体の軽さは楽しさに直結します。
重めのe-MTBは安定感や乗り心地に優れていると感じられますが、S-WORKS TURBO LEVO SLは操ることがとても楽しい。車体の各所が優れているのだとは思いますが、他のe-MTBよりも5kg近く軽いので、よりコントロールしやすい。カーブを軽やかに曲がれるし、起伏もいなしやすい感じ。人力MTB寄りの楽しさが多々あり、乗るほどに「S-WORKS TURBO LEVO SLって優れた人力MTBに必要最小限のe-bike要素を詰め込んだって感じだなあ」と思います。
なるほど~S-WORKS TURBO LEVO SL、これは楽しい。自転車として楽しい。上っても下っても、どう走っても楽しいゾ♪
e-MTBの多くは重めですがパワフル。気を抜いて激坂に挑んでもクリアできちゃう力強さがあったりします。ただ、気を抜いていると、変速を怠ったり、e-MTB任せで漫然と走っちゃうこともアリガチ。
S-WORKS TURBO LEVO SLでも気を抜けばそういう感じの緩い走行になったりはします。ですが、それ以上に「もっと自転車をうまく扱おう!!!」といった「やる気」が自然と出てくるから不思議。
たぶん変速などを臨機応変に行なわないと、アシスト力が足りなくなったりして、走行がぎこちなくなるから、自然と常にある程度の緊張感をもってライドするようになるんでしょうね。どちらかといえば、人力MTBに近い「走らされ方」をするS-WORKS TURBO LEVO SLだと思いました。
そして10年以上前に乗っていた人力フルサスMTBを思い出しました。↓こんなの。スペシャライズド「2010 Stumpjumper FSR Comp」です。
筆者の思い出はさておき、S-WORKS TURBO LEVO SLは予想外の面白さです。当初は「S-Worksだしプロ向けで、筆者には猫に小判だろうなあ」とか思っていました。実際乗ってみて文句の付け所とかナイわけですが、それ以上にライドの楽しさに驚きました。初心者こそS-WORKS TURBO LEVO SLを……ってソレは価格的に無理がありますが、乗ればその良さがすぐわかると思いますので、機会があればぜひご試乗なさってください!!!