e-bike試乗レビュー
e-bikeで天空を走る!! 乗鞍スカイラインのヒルクライムレースに初参戦、結果は散々でも楽しかった
2022年7月22日 07:30
自転車で走れる国内最高地点である標高2,702mまで上るレースが「乗鞍スカイラインサイクルヒルクライム」。自家用車の乗り入れが禁止されているルートなので、観光バスで行く以外は、自転車で上るしかありません。そのレースが3年ぶりに開催され、今大会から「e-BIKE部門」が正式種目として加わったと聞けば、e-bike部としても参加しないわけにはいきません。筆者(増谷)と清水氏で、初のヒルクライムレースにチャレンジしてきました。
e-bike Watchチームも参戦
このレースの走行距離は約18.4kmと長くはありませんが、スタート地点の殿下平総合交流ターミナルの標高1,360m。ゴール地点が標高2,702mですから、標高差は1,342mもあります。平均勾配は約7.2%ですが、基本的にずっと上っているルートです。個人的には、e-bikeでなければ走ろうとも思わなかったでしょう。
エントリーリストを見ると、「e-BIKE部門」は19台が参加予定。エントリー総数は682台ですから、多いか少ないかは微妙かもしれませんが、在庫不足も続いていますし。正式種目としての初回でこれだけ集まれば上出来でしょう。悪天候の予報もあって実際にスタートラインに並んだのは15台でしたが、その種類は多種多様。
ヒルクライムに有利な軽い車体のスペシャライズド「TURBO CLEO」シリーズが4台と多かったですが、ほかにもヤマハ「WABASH RT」や「YPJ-ER」、BESV「JG1」などの姿も。ドロップハンドルのe-bikeが多いですが、なかにはヤマハ「YPJ-EC」やブリヂストン「TB1e」など、クロスバイクタイプも参加していました。なかには、このレースのためにe-bikeを購入したという人も。BESV「JG1」のオーナーはなんとか1週間前に納車されて間に合って良かったと笑顔も。初めてのレースという人もいて、e-bikeなら走れるかも……という期待感が、新たな層を呼び込んでいるようです。
レースは、チャンピオンクラスを皮切りに、各カテゴリーごとに時間差でスタートしていきます。e-bikeクラスは加速度が考慮されて、チャンピオンクラスに次いで2番目にスタート。そして、e-bikeは主催者の予想や期待以上の速さだったと言っていいと思います。スタートラインの設けられた殿下平総合交流ターミナルから、実際の競技スタートとなる旧道の入口までは先導車付きのパレード走行となりますが、この時点で筆者はほかのe-bikeからは遅れ気味……。さらに、本格スタートを切るとe-bikeクラスの人たちの多くは見えなくなってしまいました。
普段からe-bikeで走り回っている清水氏も結構前のほうを走っていますが、最近は取材以外ではほとんど自転車に乗っていない筆者は置き去りに……。普段の練習というか走っている距離の違いがレースになると如実に現れますね。
乗鞍スカイラインに入ると、斜度もキツくなりますが、その分標高も上がるので見晴らしもよくなる……はずが、ここまで来たら周辺は結構曇ってきてしまっています。それでなくても、だいぶ息も上がっていたので筆者には景色を楽しむ余裕はありません。バッテリーを温存しようと「Eco」モードでスタートしましたが、この時点ですでに2番目の「Tour」に。何なら1番パワフルな「Turbo」モードで走りたいくらいですが、残量がすでに1目盛り減っているので、万が一ゴール前にバッテリー切れたら完走できないかも……という不安のほうが先に立ってしまいます。
あとは、ひたすらこの日のために装着したサイクルコンピュータのケイデンスとにらめっこしながら、とりあえず80を下回らないように、できれば90を目指して……と念じつつペダルを回すのみ。e-bikeではない参加者にもだいぶ抜かれましたが、順位を気にしている余裕はありません。
そして、10km地点を越え、残りが半分を切ったところで「Turbo」モードを解禁。バッテリー残量は3目盛りなので走り切れるだろうと思ったからです。途端に、ペダルを回す足は軽くなり、何台か抜かれた人たちを抜き返すこともできました。苦しかった息も少し整ってきて、アシストのありがたさを痛感します。
ゴールが近づくと、霧は一層深くなり、小雨も降り出します。少し整ってきた呼吸も、標高が上がったためかまた苦しくなりだします。最後のほうは平坦な区間もあるので、がんばってペダルを回しますが、上り区間で抜き返した参加者にもこの区間で抜き返されることに……。それでも、なんとか最後まで走り切り、完走することができました。
e-bikeがコースレコード!! 最速タイムは5番手までe-bikeが独占
完走は果たしたものの、筆者の順位は15台中14位……。清水氏は9位でした(それでも総合では42位相当で10位の方も60位相当)。何よりも、ほかのe-bike参加者はスゴいタイムでゴールしていました。e-bikeを除く総合優勝のタイムは1時間2分52秒に対して、e-bikeクラスの優勝タイムは54分22秒!! しかも、e-bikeクラスの5番手までのタイムは、総合優勝タイムを上回るものでヒルクライムレースでのe-bike強しを印象付ける結果でした。大会公式サイトでリザルトを確認できます。
優勝したのは、ヤマハのクロスバイクタイプ「YPJ-EC」に乗る宮下 将一さん。地元の自転車チームに所属し、このヒルクライムレースの経験も豊富ですが、表彰台の経験はないとのこと。驚くのはe-bikeは1週間前に受け取って少し練習したくらいだということ。「平地の通勤で乗ったときは、正直ロードバイクのほうが速いなと思ったのですが、ヒルクライムでは圧倒的に強いですね。ラインを選ばず急なところを上って行けるし、重いギアでも踏めるのがスゴい」と語ってくれました。
宮下さんいわく、e-bikeでタイムを出すコツは「重いギアで踏んで行くこと」だとか。3位に入った田村さんは「3回踏んで少し惰性で進む」というe-bike乗りが坂道で使う乗り方で上り切ったとのこと。この走り方でもバッテリーは全然残っていたということなので、ペースが速い人はバッテリーをあまり使わずに済むようです。筆者は極力疲れたくないので、軽いギアでケイデンスを保つ走り方をしていましたが(それでもヘロヘロ)、もし速く走りたいならば考え方を変えたほうが良さそうですね。次回の参考にしたいと思います。
実は試走もしていました……
事前に練習はまったくしていないと書きましたが、実は本番の2週間前にはコースの試走をしていました。高山市に宿をとって1泊2日での試走でしたが、初日は山麓は快晴なのに乗鞍スカイラインは強風のため通行止め……。仕方なく高山市内をe-bikeで散策しましたが、これが予想していた以上に気持ち良かったので、乗鞍まで行くならヒルクライムだけでなく1泊して観光も楽しむのがオススメです。
2日目は何とか天候が回復し、試走することができました。レース本番よりも雲が少なく、雲上のレースと言われる乗鞍スカイラインヒルクライムの醍醐味である景色も楽しめました。レース時に比べると、写真を撮ったりしながらゆっくりしたペースで上ったので、絶景やコースを満喫できました。
レース結果が散々だったので、あまり偉そうなことは言えませんが、個人的にはレース前に試走はしておいたほうがいいと思います。一度走っていれば、レース中もあとどのくらい坂が続くのか? といったイメージもできますし、これがメンタル的にはかなり大きい。あと、レース中は止まって写真を撮ったりしている余裕はありませんが、せっかく乗鞍まで行くのなら、絶景を楽しむ時間を設けるべき。また、高山周辺にはe-bikeで走ると気持ちいいスポットもいろいろありますので、試走ついでに観光ライドも楽しめます。
個人的には悔いの残る結果でしたが、かなり楽しめましたので、今後もe-bike Watchではレース系イベントがあれば参加していこうと思います。レースとなると順位やタイムを追い求めてしまいがちですが、e-bikeだからこそ参加して楽しい時間を過ごせます。日頃は体験できないレースという特別な雰囲気と絶景のなかで走るのも楽しいですし、ストップ&ゴーの得意なe-bikeならいったん立ち止まって素敵な写真を撮るのもありでしょう。
次なるレースもすでに計画を立てているので、e-bikeでレースも走ってみたいと思っている人は、ぜひ一緒に走りましょう!!