e-bike試乗レビュー
これで19万円台のe-bikeって本当!? 想像以上に走るし完成度の高い「FESMOTOR」
2022年7月29日 10:05
ご存じのとおりの物価高。e-bikeファンとしても困りものです。多くの既存e-bikeが軒並み値上がりし、新登場e-bikeもお高め。まあ原材料費に輸送費にといろいろ仕方のない要因はあるのですが……。
こんなご時世に「気軽に買えて楽しめそうなe-bikeはあるかな」と探してみたら、ちょっと良さそうな1台を発見。THIRDBIKES(サードバイクス)の「FESMOTOR(フェスモーター)」です。
THIRDBIKESは、Khodaa-Bloom(コーダーブルーム)やNESTO(ネスト)といったスポーツサイクルやMarukin(マルキン)などのシティサイクルを手がける日本企業ホダカの新ブランドで、2019年に立ち上げられました。そのTHIRDBIKESブランドのe-bikeがFESMOTORです。
FESMOTORの名前の一部“FES”は「Fun(楽しく) Easy(やさしく) Safty(安全に)」からきていて、同ブランドのポリシーです。誰でも簡単に楽しく安全に乗れる自転車というわけですね。
THIRDBIKESブランドには多数“FES”の名がつく自転車があります。そのうち“MOTOR”がつくFESMOTORがe-bike。e-bikeのモーターですね。
さておき、このFESMOTORに興味を持ったのは、まずその価格。198,000円となると、e-bike市場ではかなり安い。また、国内の競争の激しい実用車自転車市場で揉まれてきたホダカのe-bikeなので、信頼感もあります。さらに、販売ルートも広いので買いやすさやその後のメンテナンスなどにも安心感があります。
それと、このe-bike、そーんなには重くない。19.8kgなので、やや装備の多い人力ママチャリくらい? けっこう気軽に扱えそうです。
安いし気楽そうだし……実は案外イイんじゃないだろうか、THIRDBIKES「FESMOTOR」。というわけで実車をお借りしてしばらく試走してみましたので、以下にレビューをお送りいたします。
FESMOTORって、どんなe-bike?
THIRDBIKESのFESMOTORは、前述のとおりクロスバイクタイプのe-bikeです。バーファンのミッドマウント式ドライブユニット「M200」を搭載し、最大トルク65Nm/定格出力250Wを発生。インチューブタイプバッテリーを採用し、容量は374Wh(36V/10.4Ah)。
アシストモードは1~5までの5段階で、1充電あたりの最大走行距離はアシストレベル1で約108km、アシストレベル5で約68km。バッテリー残量0からの満充電時間は約6時間30分となっています。さらに細かなスペックも見ていきましょう。
パーツ構成を見ていると、なんとなく「なるほど、だから価格を抑えられたんだな」と思ったりします。所々にコスト減の努力が垣間見られます。とはいえ、安物という感じは全然ありません。逆に「そうですよね、ココはこういうパーツでいいんですよね、e-bikeなんだし」と納得させられたりもしました。
でも実際に走ってみたら……どうなんでしょう? さっそく試乗していきたいと思います!
激坂もスイスイ上れるFESMOTOR
まずは激坂にトライ。正直なところ、FESMOTORのギア比(フロント44T/リア14-28T)を見て「これはあまり登坂が得意でないe-bikeなのかも!?」と思っていました。どちらかといえばシティユースという印象。そんなイメージは実際のところどうなのか? それを確かめるべく、激坂走行です。
その激坂へ向かうわずかな道のりをFESMOTORで走っていて、すぐ気づいたのは「FESMOTOR独特のアシスト感」です。誤解を恐れず書きますが、筆者がバーファン製ドライブユニットに抱いている印象は「ガツンとパワーが出る豪快さ」。e-bikeらしさを感じられる美点でもありますが、場合や乗り手によっては「走り出しの急加速がちょっと怖い」という印象にもつながるようです。
FESMOTORもバーファン製ドライブユニットを搭載しています。M200というドライブユニットで、最大トルクは65Nmあります。これは十分力強いドライブユニットなので、たぶんガツンとパワーが出て、人によっては「パワーがありすぎてなんか怖い」となりそうです。
しかし実際に走ってみると、停止からの走り出しが非常にマイルド。グイッと押し出されるような感じはほとんどなく、漕ぎ出しでペダルを踏んだ瞬間は「あれ? ドライブユニットの電源オフなのかな」という印象があるほどです。
ですが、ペダルを踏んで走り始めるとスムーズにアシスト力が高まり、スーッと自転車を前に押し出すようなパワーがかかります。そして少しスピードに乗ると、アシスト力がリニアに高まる感覚で、爽快な加速感を味わえます。
実はこのFESMOTOR独特のアシストフィール、あえてそういう感触に設定しているのだそうです。具体的にはTHIRDBIKESブランド自転車のポリシーのひとつである「セーフティ」を重んじての設定で、e-bikeに慣れていない人や初めて自転車に乗る人が感じがちな「アシスト力が強すぎて不安」という要素をなくす方向での味付けとのこと。
なーるほど。これなら走り出しに一瞬「わっ!」と驚くこともないですね。e-bike初心者でも気分良くアシスト力を感じられそうです。しかし同じバーファン製ドライブユニットでも、味付けひとつでこんなに変わるもんなんですね~。
その一方で、バーファン製ドライブユニットの力強さもしっかりありました。走り出しはマイルドで優しい感じなんですが、少しスピードが乗って車体が安定した頃には、リニアな加速感が出てきます。モーターによる安定した力。自転車をヒューンと押し出す感覚。
なので、激坂も快適。スイスイ上ってくれました。
試乗前にFESMOTORのギア比(フロント44T/リア14-28T)を見て「これはあまり登坂が得意でないe-bikeなのかも!?」と思っていたわけですが、結果、杞憂でした。フロント44T/リア14-28Tは、登坂を得意とするギア比ではないとは思うのですが、FESMOTORのドライブユニットのアシスト力は十分強力だということがわかりました。
これなら街中にあるたいていの激坂を悠々と上り切れると思います。THIRDBIKESの資料には「16%を超える急な坂でも楽に超えることができます」とありました。確かに。
ポタリングに好適、トランポもラク
激坂試走を終えて「このe-bikeは予想外に楽しいな」と思った筆者。走り出しはマイルドなアシストフィールで、走り出したあとのアシストはスムーズで強力。気楽であってラクという感じです。
それと、取り回しも好印象。けっこう小回りが効いて、直進安定性もあります。小回りのときには速度も落とすわけですが、そのときにマイルドなアシストが効くというのが走りやすさのひとつの要素になっているようにも感じました。
大雑把に印象をまとめますと、人力自転車みたいな安心感と、よりラクに走れるアシスト力。その両方を持ち合わせているのがFESMOTORではないか、と。
走り出しはマイルドなアシスト力しかかからないので、人力自転車に近い普通さ。普通さは、いつもの常識的な安心感みたいなものにつながっていると思います。
そして走り出してからのアシスト力は、あるいは一般的なe-bikeよりも強めにアシストがかかっているような印象です。アシスト力の抑揚も少なめという気がします。
ひとつ気になったのは、走行中にスピードが低めでペダルを踏むと、アシスト力がやや強い状態から弱い状態になることが、たまに感じられたこと。一瞬軽くブレーキがかかったような感触です。もしかすると、スピード域によってマイルドなアシストと通常のアシストが切り替わり、その替わり目を感じたのかもしれません。ただ、たまに起きる程度の頻度で、わずかかつ一瞬の感触なので、「こういう特性なのかも」と納得できる範囲ではあります。
こういう特性は、たぶんポタリングによく向くと思います。ポタリングとは、ゴールなどを定めることなく、気の向くままに散歩感覚でする散策サイクリングですね。
気になるものがあれば都度止まって見物したりするポタリング。ストップアンドゴーが非常に多いポタリング。ポタリングはよく止まるので、走り出しの回数も多くなります。FESMOTORの走り出しのマイルドさは、ポタリングの疲れにくさにつながるように思います。
また、走行中はしっかりアシスト力が加わる。ポタリングの場合はスポーツ走行というよりファンライドで、目的地への移動が楽しくて安楽なほうがいい。FESMOTORのアシスト特性はそういうポタリングの方向性とよくマッチすると思います。
それから、やや余談ですが、FESMOTORはトランポもラクでした。全体的にわりとコンパクトな車体でありつつ、車体重量が19.8kgとまあまあ軽めであることが好感触。ミニバンの荷室への出し入れがしやすく、車体の固定も容易でした。
FESMOTORを試乗して思うのは、その価格からは予想外の走りの良さと楽しさ。価格は198,000円ですが、この走りなら「318,000円です」とか言われても普通に納得してしまうかもしれません。
FESMOTORは、ディスクブレーキが油圧式じゃなくて機械式だとか、コンポーネンツを必要最小限のものに抑えているとか、ライトを「e-bikeバッテリーから電源を取るタイプ」とせず普通の外付け品にしているとか、細々したところで価格を抑えているのだと思われます。コスト削減しまくりの痕跡が各所に見られます。
一方で、走りの良さや安全性は犠牲にしないという姿勢。乗ってみればわかりますが、不安にさせる要素がなかったり、実際に気持ち良く走ってくれたりするんですね。
まあ、e-bikeに詳しかったり、e-bikeにすでに乗っていたりする人だと、「FESMOTORだとちょっと物足りない」と思うかもしれません。ただ、筆者が想像するに、「初めてe-bikeに乗るとか、初めて自転車に乗るという人が、FESMOTORに乗ったら、きっと感動して笑顔になるのでは」と。乗りやすいし、しっかりアシストするし、怖い感じでもないし、ちょっとカッコイイし、全体的に完成度高いし、なによりかなり安価だし。
なので、まだe-bikeに乗っていないけど、e-bike欲しいナと思っている方は、ぜひFESMOTORにご試乗を。人力自転車をパスしてe-bikeが欲しいという人も、ゼヒ。なお、FESMOTOR試乗車は全国各地のTHIRDBIKES取扱店舗にあるそうです。