e-bike試乗レビュー

これで19万円台のe-bikeって本当!? 想像以上に走るし完成度の高い「FESMOTOR」

ご存じのとおりの物価高。e-bikeファンとしても困りものです。多くの既存e-bikeが軒並み値上がりし、新登場e-bikeもお高め。まあ原材料費に輸送費にといろいろ仕方のない要因はあるのですが……。

こんなご時世に「気軽に買えて楽しめそうなe-bikeはあるかな」と探してみたら、ちょっと良さそうな1台を発見。THIRDBIKES(サードバイクス)「FESMOTOR(フェスモーター)」です。

THIRDBIKES「FESMOTOR」はクロスバイクタイプのe-bikeで、価格は198,000円
カラーはレッドとマットブラックがあります

THIRDBIKESは、Khodaa-Bloom(コーダーブルーム)NESTO(ネスト)といったスポーツサイクルやMarukin(マルキン)などのシティサイクルを手がける日本企業ホダカの新ブランドで、2019年に立ち上げられました。そのTHIRDBIKESブランドのe-bikeがFESMOTORです。

FESMOTORの名前の一部“FES”は「Fun(楽しく) Easy(やさしく) Safty(安全に)」からきていて、同ブランドのポリシーです。誰でも簡単に楽しく安全に乗れる自転車というわけですね。

THIRDBIKESブランドには多数“FES”の名がつく自転車があります。そのうち“MOTOR”がつくFESMOTORがe-bike。e-bikeのモーターですね。

さておき、このFESMOTORに興味を持ったのは、まずその価格。198,000円となると、e-bike市場ではかなり安い。また、国内の競争の激しい実用車自転車市場で揉まれてきたホダカのe-bikeなので、信頼感もあります。さらに、販売ルートも広いので買いやすさやその後のメンテナンスなどにも安心感があります。

“THIRDBIKES”のロゴは若干のワイルドさを感じさせますが、安全性は万全。厳しい安全基準などを定めた業界基準「BAA(安全・環境基準適合車)」を取得しています。もちろん電動アシスト自転車・普通自転車の型式認定も取得しています

それと、このe-bike、そーんなには重くない。19.8kgなので、やや装備の多い人力ママチャリくらい? けっこう気軽に扱えそうです。

安いし気楽そうだし……実は案外イイんじゃないだろうか、THIRDBIKES「FESMOTOR」。というわけで実車をお借りしてしばらく試走してみましたので、以下にレビューをお送りいたします。

FESMOTORって、どんなe-bike?

THIRDBIKESのFESMOTORは、前述のとおりクロスバイクタイプのe-bikeです。バーファンのミッドマウント式ドライブユニット「M200」を搭載し、最大トルク65Nm/定格出力250Wを発生。インチューブタイプバッテリーを採用し、容量は374Wh(36V/10.4Ah)。

アシストモードは1~5までの5段階で、1充電あたりの最大走行距離はアシストレベル1で約108km、アシストレベル5で約68km。バッテリー残量0からの満充電時間は約6時間30分となっています。さらに細かなスペックも見ていきましょう。

ブラックのFESMOTORに試乗しました。なかなか精悍な雰囲気。フレームサイズは460mmのみで、適応身長160cm以上。車体重量は19.8kg。価格は198,000円
ドライブユニットはバーファンのミッドマウント式ドライブユニット「M200」。最大トルク65Nm/定格出力250Wを発生します
インチューブタイプバッテリーを採用し、容量は374Wh(36V/10.4Ah)。1充電あたりの走行可能距離は、アシストレベル1で108km、アシストレベル3で81km、アシストレベル5で68kmとなっています。充電は、バッテリーを車体に装着した状態でも、外した状態でも行なえます。鍵式のロック付き。ちなみに交換用バッテリーは44,000円です
ギアは7速変速で、歯数はリア14-28T、フロント44T。おもなコンポーネンツはシマノ「Tourney」です。シマノ製コンポーネンツのなかでTourneyは普及価格帯のスポーツ自転車に採用されるグレードです
タイヤサイズは700×32Cで、ロードバイクと同じサイズながらやや太めとなっています。ブレーキは前後とも機械式ディスクブレーキ。タイヤは前後ともナット式となっていて、タイヤの着脱に工具が必要になりメンテナンス時に一手間かかるかもしれません。ですが「イタズラされにくい」「不意に引っ掛けて外れるようなことが少ない」などのメリットがあります
FESMOTORのタイヤのバルブ(空気を入れる箇所)は仏式ですが、仏式→英式へ変換するバルブアダプターが1つ付属しています。仏式バルブは多くのスポーツ自転車に採用されていますが、空気を入れるためには仏式対応の空気入れヘッドが必要になります。英式バルブは日本の自転車でもっとも多く採用されているバルブで、一般的な空気入れはほとんど英式バルブに対応しています。この仏式→英式変換バルブアダプターがあると、仏式バルブ対応品を買うなどせずとも、身近な空気入れでFESMOTORのタイヤに空気を入れられるというわけです
ハンドルを前方から見た様子。ベルや反射板やライトなど必要なものはすべて付属しています。ライトはあえて乾電池式としてコストを抑えているものの、明るさなど安全性面ではBAA基準を十分満たしているとのこと
ハンドルをライダー側から見た様子。左側にドライブユニットのコントローラーがあり、電源オン・オフやアシストレベルのアップダウン(5段階)、バッテリー残量の確認ができます。スピードなどを表示するモニターはありません。なお、バーファンのドライブユニットはバッテリー部分の電源をオンにして、さらにコントローラー部分の電源をオンにするとアシスト機能が起動するタイプが多いのですが、FESMOTORの場合はコントローラー上のボタンだけで電源オン・オフができます。シフターはサムシフタープラスと呼ばれるものを採用しています。現在のギアが表示され、一気に多段を変速することもできる便利なシフターです
フロントからリアへ向かうケーブル類は、リアブレーキ以外すべてダウンチューブ内を通っています。なので外観もスッキリ
スポーティーなサドルを採用していますが、若干ソフトで座りやすい感じがします
シートポストは根本まで収まるように作られており、その分、多くの体格のライダーに対応しています。シートポスト固定はクイックリリース式
キックスタンドも標準装備です
シートチューブ下方前側にボトルケージ取り付け用のネジ穴があります
フロントフォーク下部左右にネジ穴があり、アクセサリー取り付け時に役立ちそうです
リアステー先端付近には左右2つずつのネジ穴があり、これもアクセサリー取り付け時に役立ちそう
シートステーのタイヤ近くには穴が。これもアクセサリー取り付け時に役立つ予感
車体にはBAA取得済みや型式認定取得済みのステッカーが貼られています。安心感がありますね
トップチューブ前方には、鱗の模様のデザインがあしらわれています。鱗は「身を守るもの」「魔除け」を意味する日本の伝統模様であり、脱皮=生命力も象徴しています。鱗の模様はライダーの安全を願うデザインだそうです

パーツ構成を見ていると、なんとなく「なるほど、だから価格を抑えられたんだな」と思ったりします。所々にコスト減の努力が垣間見られます。とはいえ、安物という感じは全然ありません。逆に「そうですよね、ココはこういうパーツでいいんですよね、e-bikeなんだし」と納得させられたりもしました。

でも実際に走ってみたら……どうなんでしょう? さっそく試乗していきたいと思います!

激坂もスイスイ上れるFESMOTOR

まずは激坂にトライ。正直なところ、FESMOTORのギア比(フロント44T/リア14-28T)を見て「これはあまり登坂が得意でないe-bikeなのかも!?」と思っていました。どちらかといえばシティユースという印象。そんなイメージは実際のところどうなのか? それを確かめるべく、激坂走行です。

その激坂へ向かうわずかな道のりをFESMOTORで走っていて、すぐ気づいたのは「FESMOTOR独特のアシスト感」です。誤解を恐れず書きますが、筆者がバーファン製ドライブユニットに抱いている印象は「ガツンとパワーが出る豪快さ」。e-bikeらしさを感じられる美点でもありますが、場合や乗り手によっては「走り出しの急加速がちょっと怖い」という印象にもつながるようです。

FESMOTORもバーファン製ドライブユニットを搭載しています。M200というドライブユニットで、最大トルクは65Nmあります。これは十分力強いドライブユニットなので、たぶんガツンとパワーが出て、人によっては「パワーがありすぎてなんか怖い」となりそうです。

しかし実際に走ってみると、停止からの走り出しが非常にマイルド。グイッと押し出されるような感じはほとんどなく、漕ぎ出しでペダルを踏んだ瞬間は「あれ? ドライブユニットの電源オフなのかな」という印象があるほどです。

ですが、ペダルを踏んで走り始めるとスムーズにアシスト力が高まり、スーッと自転車を前に押し出すようなパワーがかかります。そして少しスピードに乗ると、アシスト力がリニアに高まる感覚で、爽快な加速感を味わえます。

信号などでの停車を繰り返しつつ、激坂スポットへ移動中。走り出すたびにFESMOTOR独特のアシストフィールを感じます。ペダルを踏み込むとジワーッとアシスト力がかかり、自転車が走り出すとより強くスムーズなアシスト力でスーッと前進します

実はこのFESMOTOR独特のアシストフィール、あえてそういう感触に設定しているのだそうです。具体的にはTHIRDBIKESブランド自転車のポリシーのひとつである「セーフティ」を重んじての設定で、e-bikeに慣れていない人や初めて自転車に乗る人が感じがちな「アシスト力が強すぎて不安」という要素をなくす方向での味付けとのこと。

なーるほど。これなら走り出しに一瞬「わっ!」と驚くこともないですね。e-bike初心者でも気分良くアシスト力を感じられそうです。しかし同じバーファン製ドライブユニットでも、味付けひとつでこんなに変わるもんなんですね~。

その一方で、バーファン製ドライブユニットの力強さもしっかりありました。走り出しはマイルドで優しい感じなんですが、少しスピードが乗って車体が安定した頃には、リニアな加速感が出てきます。モーターによる安定した力。自転車をヒューンと押し出す感覚。

なので、激坂も快適。スイスイ上ってくれました。

激坂です。下り方向には「自転車は降りて歩いてください」という警告があるほど。押し歩きで上る自転車がほとんどですが、FESMOTORだと苦もなく上りきれます。途中で撮影のために停車しても大丈夫。激坂の途中からの漕ぎ出しもマイルドですが、マイルドさはほんの数秒なので、以後はスイスイと登坂できるのでした。走り出しがパワフルなe-bikeだと、場合によっては激坂途中からの再発進時にフロントタイヤが浮きそうになりますが、FESMOTORではそういう不安感がありませんでした
日常通る道にある、短いけどけっこうな激坂。そういう箇所もFESMOTORなら「あれ? ここってキツめの坂じゃなかったっけ!?」と、労せず上れた後に激坂を思い出すという不思議体験があります
漕ぎ出しがラクなのはe-bikeに共通するところですが、「漕ぎ出しがマイルドだし走り始めるとラク」というFESMOTORのアシストフィールは「怖くないし快適」なのでリラックスして走れます。ストップアンドゴーが多発するポタリングがより楽しくなります

試乗前にFESMOTORのギア比(フロント44T/リア14-28T)を見て「これはあまり登坂が得意でないe-bikeなのかも!?」と思っていたわけですが、結果、杞憂でした。フロント44T/リア14-28Tは、登坂を得意とするギア比ではないとは思うのですが、FESMOTORのドライブユニットのアシスト力は十分強力だということがわかりました。

これなら街中にあるたいていの激坂を悠々と上り切れると思います。THIRDBIKESの資料には「16%を超える急な坂でも楽に超えることができます」とありました。確かに。

ポタリングに好適、トランポもラク

激坂試走を終えて「このe-bikeは予想外に楽しいな」と思った筆者。走り出しはマイルドなアシストフィールで、走り出したあとのアシストはスムーズで強力。気楽であってラクという感じです。

それと、取り回しも好印象。けっこう小回りが効いて、直進安定性もあります。小回りのときには速度も落とすわけですが、そのときにマイルドなアシストが効くというのが走りやすさのひとつの要素になっているようにも感じました。

ある程度スピードを出して走っているときは、車体の剛性感もあって、直進安定性に優れているという印象。小回りもしやすく、低速時はけっこうクイックなハンドリングを楽しめます。小回りするとき(かなり低速時)のマイルドなアシスト力も安心感があって好印象です

大雑把に印象をまとめますと、人力自転車みたいな安心感と、よりラクに走れるアシスト力。その両方を持ち合わせているのがFESMOTORではないか、と。

走り出しはマイルドなアシスト力しかかからないので、人力自転車に近い普通さ。普通さは、いつもの常識的な安心感みたいなものにつながっていると思います。

そして走り出してからのアシスト力は、あるいは一般的なe-bikeよりも強めにアシストがかかっているような印象です。アシスト力の抑揚も少なめという気がします。

ひとつ気になったのは、走行中にスピードが低めでペダルを踏むと、アシスト力がやや強い状態から弱い状態になることが、たまに感じられたこと。一瞬軽くブレーキがかかったような感触です。もしかすると、スピード域によってマイルドなアシストと通常のアシストが切り替わり、その替わり目を感じたのかもしれません。ただ、たまに起きる程度の頻度で、わずかかつ一瞬の感触なので、「こういう特性なのかも」と納得できる範囲ではあります。

走り出してしまえば「ややグイグイ引っ張るようなアシスト力」が感じられます。また、700×32Cという太め大きめのタイヤサイズは、草地のような路面でもわりと安定的に走り抜けることができます。クロス・グラベル・e-bike……かもしれません

こういう特性は、たぶんポタリングによく向くと思います。ポタリングとは、ゴールなどを定めることなく、気の向くままに散歩感覚でする散策サイクリングですね。

気になるものがあれば都度止まって見物したりするポタリング。ストップアンドゴーが非常に多いポタリング。ポタリングはよく止まるので、走り出しの回数も多くなります。FESMOTORの走り出しのマイルドさは、ポタリングの疲れにくさにつながるように思います。

また、走行中はしっかりアシスト力が加わる。ポタリングの場合はスポーツ走行というよりファンライドで、目的地への移動が楽しくて安楽なほうがいい。FESMOTORのアシスト特性はそういうポタリングの方向性とよくマッチすると思います。

あっオモシロそうなもの発見! というたびに停車して見物したりするのがポタリング。FESMOTORのアシスト特性は、ストップアンドゴーが多くて走行中はラクでありたいポタリングによく合うと思います
小さな丘をいくつも超えたりしがちなのもポタリング。FESMOTORなどのe-bikeなら、そういう道程を「ずっと続く平坦な道」という感覚でラクに楽しめます
寄り道しまくりになりがちなのがポタリング。複数の楽しい寄り道ポイントをつなぐのが、ラクな移動をもたらすe-bikeだったりすると、ポタリングの質を笑顔多発方向へと変えてくれることでしょう

それから、やや余談ですが、FESMOTORはトランポもラクでした。全体的にわりとコンパクトな車体でありつつ、車体重量が19.8kgとまあまあ軽めであることが好感触。ミニバンの荷室への出し入れがしやすく、車体の固定も容易でした。

ミニバン(ホンダ・ステップワゴン)の3列目シートを床収納した状態で、FESMOTORが余裕で収まりました。同様の入れ方をすれば、3列目シートを左右に引き上げて収納するタイプのミニバンにも問題なく収まりそうです。2列目シートがベンチシートの場合、FESMOTORのハンドルを90度曲げれば対応できそうですね
2列目シートでFESMOTORの前輪を挟んでいますので、車体の固定はヒモ×2本だけで行なえました。ちなみにヒモ×1本でも大丈夫なのですが、念のためもう1本追加という感じです
紐を解いてサッと下ろしてポタリング開始! 気楽に使えるe-bikeとして、かなりいいかもFESMOTOR

FESMOTORを試乗して思うのは、その価格からは予想外の走りの良さと楽しさ。価格は198,000円ですが、この走りなら「318,000円です」とか言われても普通に納得してしまうかもしれません。

FESMOTORは、ディスクブレーキが油圧式じゃなくて機械式だとか、コンポーネンツを必要最小限のものに抑えているとか、ライトを「e-bikeバッテリーから電源を取るタイプ」とせず普通の外付け品にしているとか、細々したところで価格を抑えているのだと思われます。コスト削減しまくりの痕跡が各所に見られます。

一方で、走りの良さや安全性は犠牲にしないという姿勢。乗ってみればわかりますが、不安にさせる要素がなかったり、実際に気持ち良く走ってくれたりするんですね。

まあ、e-bikeに詳しかったり、e-bikeにすでに乗っていたりする人だと、「FESMOTORだとちょっと物足りない」と思うかもしれません。ただ、筆者が想像するに、「初めてe-bikeに乗るとか、初めて自転車に乗るという人が、FESMOTORに乗ったら、きっと感動して笑顔になるのでは」と。乗りやすいし、しっかりアシストするし、怖い感じでもないし、ちょっとカッコイイし、全体的に完成度高いし、なによりかなり安価だし。

なので、まだe-bikeに乗っていないけど、e-bike欲しいナと思っている方は、ぜひFESMOTORにご試乗を。人力自転車をパスしてe-bikeが欲しいという人も、ゼヒ。なお、FESMOTOR試乗車は全国各地のTHIRDBIKES取扱店舗にあるそうです。

スタパ齋藤