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時速24kmアシスト制限を感じさせない"速い"e-bike!? コラテック「E-POWER SHAPE PT500」レビュー

 最近気になる「コラテック(corratec)」のe-bike。コラテックは1990年に創業したドイツの自転車ブランドで、ハイパフォーマンスのロードバイクやMTBのほか、街乗りや子ども向けの自転車まで幅広く手がけています。特にヨーロッパでは非常に高い人気を誇ります。

 そんなコラテックのe-bike各種は、どれも結構カッコイイ!!

 ちなみに、e-bikeとはスポーツ走行向きのドライブユニットを搭載した電動アシストスポーツ自転車のこと。ドライブユニットは高いトルクを素早く発生させ、高ケイデンス(速くペダルを漕ぐこと)にも追従して機能します。ドライブユニット以外の部分もスポーツ走行に特化した作り。そんな特性から、ママチャリタイプの電動アシスト自転車と比べると、その走りは大きく異なります。

 さておき、筆者的に興味津々のコラテック製e-bikeですが、幸運にも最新のコラテック「E-POWER SHAPE PT500」を借りることができました♪ ということで、まずは写真と説明文で車体を見ていきましょう。

コラテックの最新e-bike「E-POWER SHAPE PT500」。コラテックのクロスバイク「SHAPE」シリーズのe-bikeバージョンといった位置付けです。バッテリーはフレーム(ダウンチューブ)内に格納されているので見た目がスッキリ。バッテリーはBOSCHパワーチューブ500を採用しており交換可能です(バッテリーカバーに鍵付き)。車体質量は19.5kgで、このカテゴリー・スペックのe-bikeとしては最軽量クラスです。2020年1月発売予定
メーカー名コラテック
製品名E-POWER SHAPE PT500
実売価格298,000円(税抜)
ドライブユニットはボッシュ(BOSCH)「Active Line Plus」を採用。「E-POWER SHAPE PT500」では、最長160kmのアシスト走行が可能です。充電用コネクターはシートチューブ下部左側
主なコンポーネンツはシマノ「DEORE(デオーレ)」
ギアは10段変速(11-36T)
タイヤは前後とも700x32C(外径700mmで幅32mm)で、一般的な人力クロスバイクと比べると少し太めです。ブレーキは前後とも油圧ディスクブレーキ
ホイール固定タイプは前後ともスルーアクスル
ハンドルバー幅は580mm。ディスプレイは「Intuvia(イントゥービア)」を採用しています
サドルは「CORRATEC VL1489」で、硬すぎず柔らかすぎずといった感触
コラテック独自のフレーム技術も盛り込まれています。トップチューブは衝撃に強く耐久性も高い「BENDED TUBE」、リアステーは扁平加工で衝撃吸収性に優れる「COMFORT STAY」を採用
チェーンステーは「LPC(LOW PROFILE CHAINSTAY)」で、チェーンのバタつきによるフレームのダメージを防ぎます

 このe-bikeは、「コラテック×ボッシュ」というジャーマンテクノロジーで作られているわけですが、実は日本人の体格に合わせて日本人が設計したのだそう。日本人向けジオメトリーということで、乗りやすさに期待しちゃいますね~。また、コラテック曰く、この「E-POWER SHAPE PT500」こそ「NEW STANDARD」と打ち出していて、かなりの自信作のようです。

 で、まずは近くのサイクリングロードを軽く試走してみましたが、一走りですぐに「このバイクは速い!!」という印象を得ました。車体質量は19.5kgで、このカテゴリーのe-bikeとしては軽いんですが、それにしても軽快に走る。アシスト上限24km/hまですぐ加速でき、さらに軽快にペダルを踏める感覚で、平坦路なら30km/h巡航もわりと現実的。

 また、乗り心地もミョーにイイ。走り始めて間もなく「あれっ? このe-bikeってカーボンフレームなんだっけ!?」と思ったほどです。ホントの話、即座にスマホでメーカー公式サイトを開き、フレーム素材を確認して「アルミ製」だと知り、軽く仰天した筆者なのでした。

 ちょっと乗っただけでわかる軽快さと乗り心地。これはタダモノではない! ということで、自宅から都内までの長距離を走ってみることにしました♪

緩めのアップダウンで約43km、E-POWER SHAPE PT500でどう走れる?

 自宅から都内の目的地までの距離は約43kmで、ちょっとした長距離走行(ロングライド)になります。全体としては下りですが、ルート途中は緩いアップダウンを繰り返すという感じです。さて、「E-POWER SHAPE PT500」はどんな走りをしてくれるのでしょうか。

 走り始めてまず思うのは、前述のサイクリングロードで感じたのと同じ軽快さと乗り心地の良さです。アルミフレームのクロスバイクなのに、路面の凹凸を適度に吸収してくれる感じで、多くの路面でスムースな乗り心地が感じられます。ドライブユニットのおかげで軽快に走行できるのは他のe-bikeと同様ですが、アシスト上限24km/hを超えたスピードからの「重さ」があまり感じられないのも特徴的。乗り心地がいいのに速いので楽しくなり、ついついニヤついてしまいます。

 それと、「E-POWER SHAPE PT500」は走っている時の感触が「上品」な気がします。道の凹凸を適度に吸収し、ロードノイズ自体も少なく、静かに地を這うようなスムースさもあります。速く滑らかに進みつつ、カセットスプロケットの心地よいラチェット音が聞こえて、なんか贅沢ともいえる走行感です。

 そこに一役買っているのが、ボッシュのドライブユニット「Active Line Plus」です。このドライブユニットは、アシスト時の音が非常に静か。最強のTURBOモードにしてやっとアシスト音が少々響くくらいで、いつも無音と思えるほど静かに駆動します。なので、「E-POWER SHAPE PT500」の静かでスムーズな走りを邪魔しない。車体とドライブユニットのコンビネーションが非常に良好だと感じられます。

走ったのは「E-POWER SHAPE PT500」発売前の初冬。自宅から都内への道は紅葉が終わる頃でけっこう寒かったのですが、軽快に走る「E-POWER SHAPE PT500」に“足を使わされる”感じで、イイ感じの有酸素運動になりました。スラリとした印象の細身のe-bikeなので、けっこう絵になりますよね。このe-bike、こんな都市部を走るのにちょうどいいような気がします

 スピーディーで快適な走りを楽しんでいると、走行距離は約15km。都内に入りました。道幅も広くなり、よりスピードを出せるようになりました。でも信号も多く、やはりストップアンドゴーが多発。

出発から約15km走ると都内に入りました。ガードレールのイチョウ模様は東京都のシンボルマークです。この先の青梅街道に入ると道が広くなり交通量も増えます

 そうして都内を走っていると、「E-POWER SHAPE PT500」が都市部での走行によく向くことを確信しました。というのは、やはりこのe-bikeの速さ。走り出しが速いのに加え、巡航可能な速度域も高いと感じられます。

 前述のとおり、筆者の場合なら平坦路だと、このe-bikeで30km/h巡航を続けることができます。さらに、ちょっと頑張ってペダルを踏むと40km/hくらいの速度を出すことも可能。e-bikeでこういうことができるのって、筆者的には結構な驚きです。

 そういう高めの巡航速度で走り続けるかどうかはまた別の話として(実際に20kg弱の自転車で、アシスト不使用の30km/h巡航はかなり体力を削られますので)、こういう高い速度域へもっていけることは、都内の道路をより楽しく走れる。クルマの流れに結構乗れるからです。

 信号の多い都市部の道路では、クルマの流れって案外遅いもの。やや混雑していると20~30km/hといった速度域になっていると思います。つまり「E-POWER SHAPE PT500」と同じような速度域。クルマの流れに乗れるe-bikeなので、危なくも怖くもなく軽快に楽しく走れます。

 余談ですが、バスはちょっと遅いですね。e-bikeでサイクリングしていると、だ~いたいバスと一緒に走る結果になることが多かったりします。都内だと信号も多いので、バスよりe-bikeのほうが速く走ることになると思います。今回の都内走行でも、「E-POWER SHAPE PT500」がバスに抜かれることはほとんどありませんでした。

 さらに余談ですが、「E-POWER SHAPE PT500」だとロードバイクについていけて、抜いちゃうこともあったりして。ストップアンドゴーが多発する都市部では、人力自転車は走り出しで疲れますし、さらには高い速度域を維持できる区間が短い。走り始めて数秒でアシストにより24km/hに達し、そこからさらに加速できる「E-POWER SHAPE PT500」だと、不利な状況下のロードバイクに十分ついていけるし、そのロードバイクの乗り手に「さほどやる気がない」場合だと楽々抜き去れたりします。言い方はよろしくありませんが、「E-POWER SHAPE PT500」は“ロードバイクを狩れるe-bike”なのかもしれません。

このe-bikeすご~い!! 疲れないし痛くないしチョー走る~♪

 さてさて、目的地までいよいよ残り数キロ。……なのですが、あまり疲れていません。ほとんど休まずに40kmほど走ってきましたが、体のどこか痛いようなこともないし、まだまだ走れそうな気がするし……と思っていると目的地(インプレスです)に到着。次に試走するe-bike部の清水氏に「E-POWER SHAPE PT500」を渡し、今回の試走は終了です。

 すると清水氏が一言「あれ? 自宅から来たんでしょ!? バッテリーの目盛りがまだ満タン状態ですね」と。ちなみに、その後に清水氏が神保町→恵比寿→渋谷→神保町と走ったらバッテリー目盛りが1つ減ったとのこと。

 ええっ!! 43km走ってきたのに? あんまり疲れてない上にバッテリーも減ってないってナニそれ!!! マジで!?

 たぶん、「E-POWER SHAPE PT500」で走った速度域が高めだったことと、フレームを始めとする車体の良さが生んだ結果なのだと思います。ていうか、それ以外考えられないっ!!

 まず43km走ってバッテリー目盛り満タン状態だったということは、走り出し後の数秒くらいしかアシストが働かなかったんでしょうね。思い返すと走行中は「アシストなし状態が多かったかも」という記憶があります。自宅から都内までは緩~いながら下り基調だったというのも、ひとつの大きな要因です(でも上り坂もそこそこあったんですけどね)。

 あと不思議なのは、お尻も手首も背中も首も、あと太腿とかも、痛くなってないこと。また、体力もしっかり残っていること。

 ほぼ休まず43kmを走った場合、筆者だとまず手首が痛くなります。特にバーハンドルの自転車だとそうですし、前傾を続けているとやはり首や背中のあたりも痛くなります。お尻もそこそこ痛くなる。

 「E-POWER SHAPE PT500」で走ってそういうことが起きなかったのは、前述の「日本人が日本人の体格に合わせて設計した日本人向けジオメトリー」であり、かつサイズ的にも筆者にマッチしていたからでしょう。ラクに乗れて効率よく力を使えた、と。

 あとこのサドル、お尻が痛くなりにく~い♪ サドルだけ買おうかな。いや「E-POWER SHAPE PT500」ごと買おうかな。って、話を元に戻しましょう。

 「E-POWER SHAPE PT500」にはコラテック独自のフレーム技術が盛り込まれていますが、そういう部分も体の疲れにくさやスピードのノリの良さにつながっているんだと思います。そのあたりを写真と説明文でチェックしてみましょう。

コラテック独自のフレーム技術のひとつ「BENDED TUBE」。トップチューブが曲げられており、耐久性が高く衝撃にも強いとのこと。また、ヘッドチューブが長めに設定されていて、より快適な乗車ポジションが得られるそうです。背中や首が痛くなりにくかったのは、このせい?
リアステーは「COMFORT STAY」です。扁平のチューブになっており、衝撃吸収性に優れているそうです。なーるほど、だから乗り心地がいいのか。お尻が痛くならないのも、このリアステーのおかげなのかも
こちらはハンドルグリップ。エルゴノミクス形状で、滑りにくく若干柔らかめなラバーっぽい素材でできています。六角レンチを使って角度を調節でき、手首がまっすぐになるように設定すると痛みが出にくくなると思います
サドルは「CORRATEC VL1489」。筆者とe-bike部清水氏の見解は「このサドル凄く乗りやすくて、お尻が痛くなりにくいですよね~」で一致しました。でもコラテックの中の人は「硬めなんですよね」と。まあサドルは人によって……ね
「E-POWER SHAPE PT500」の隠れた特徴として「ドライブユニットがフレームへダイレクトに取り付けられている」ということがあります。間にスペーサーなどを入れず、フレームとドライブユニットが密に嵌合するよう取り付けることで、ペダリングやアシストのパワーロスがないそうです。これはフレーム製造精度が高くないとできないことだそう
これは走行性能とあまり関係ない部分ですが、「E-POWER SHAPE PT500」にはネジ穴がたくさん。バッテリーがインチューブタイプなのでボトルホルダーが装着可能。キャリアやフェンダー(泥除け)を装着可能なネジ穴もあります。左チェーンステーにはスタンド取付用のネジ穴も。実用的ぃ~♪

 人力自転車界隈では「フレームは非常に重要」と言われますが、e-bikeもそうなんですね~。同じドライブユニットでも、フレームをはじめとする車体が違うと、こうも違った走りになるのか! と痛感した次第です。

 ともあれ「E-POWER SHAPE PT500」、凄くいい走りをするe-bikeだと思います。すでにe-bikeを何台も試乗してきたという方でも、あらためて試乗してみることをオススメします。e-bikeに対する考え方がちょっと変わったりしつつ、e-bikeアクティビティに新たな可能性を感じるかもしれません。

スタパ齋藤