e-bike試乗レビュー

e-bikeはグラベルロードとの相性が最強かも!? キャノンデールTopstone Neoを徹底比較試乗

発表時からず~っと乗りたかったのに、なかなか乗る機会がなかったキャノンデールの「Topstone Neo」シリーズにようやく試乗するチャンスが巡って来ました! しかも、トップモデルの「Topstone Neo Carbon Lefty 3」と700Cホイールの「Topstone Neo Carbon 4」の2台を比較試乗できるというのだから、待った甲斐があります。試乗したのは兵庫県豊岡市の神鍋高原(かんなべこうげん)にある「UP MTB PARK IN KANNABE」のMTBコースと、その周辺の舗装路、そして未舗装(グラベル)の林道で、かなりガッツリ走り回ってきました。

独自のサスペンション機構を持つグラベルロード

「Topstone Neo」シリーズは“グラベルロード”と呼ばれるジャンルのe-bikeです。グラベルロードとは、文字どおり未舗装路を走れるロードバイクのこと。通常のロードバイクに比べて太めで未舗装路も走れるタイヤを装備し、制動力の高いディスクブレーキ、少し幅の広いドロップハンドルを採用しているのが標準的なパターンです。なかでもキャノンデールは、前後にサスペンション機構を装備したモデルを早くからリリースしており、一歩先を行っているブランド。「Topstone」はアシストのないモデルも含む同ブランドのグラベルロードシリーズの名称で、e-bikeには「Neo」の文字が付きます。

前後に30mmトラベルのサスペンション機構を持つシリーズのトップモデル。タイヤは前後とも650Bx42Cを装着しています
メーカー名キャノンデール
製品名Topstone Neo Carbon Lefty 3
価格660,000円
前後700×37Cタイヤを履き、フロントにはサスペンションを装備しませんが、リアにはKingPinサスペンションを搭載
メーカー名キャノンデール
製品名Topstone Neo Carbon 4
実売価格550,000円

まずは、今回試乗した2台に共通するスペックから紹介していきましょう。e-bikeの心臓部であるドライブユニットはボッシュ製「Performance Line CX」。同社製のドライブユニットでもっともパワフルで、登坂性能を問われるe-MTBを中心に採用されているモデルです。バッテリーはインチューブタイプの「PowerTube 500」をカーボンフレームの内部に収め、500Whの大容量で最長170kmのアシスト走行が可能。

最大75Nmのトルクを発揮し、軽量・コンパクトなドライブユニット「Performance Line CX」を採用。しっかりカバーされているところからも、本気でオフロードを走ることを視野に入れていることが伝わってきます
カーボン製のフレームに「PowerTube 500」のバッテリーを内蔵。太さはありますが、BB(ボトムブラケット。ペダルの付け根部分)からステアリングヘッドまでを一直線に結ぶ形状を実現しています
ディスプレイはコンパクトな「Purion」をハンドルの中央部近くに装備しています

「Topstone」シリーズ最大の特徴は、KingPinと呼ばれるリアのサスペンション機構でしょう。MTBのようにサスペンションユニットを装備しているわけではなく、フレームのシートステー付け根部分に可動するピボットを設け、フレーム自体で衝撃を吸収する機構です。30mm相当のホイールトラベルを実現していて、舗装路の段差だけでなくオフロードでの路面追従性も確保しています。

シートステーの付け根にピボットが設けられているのがわかります。その下のフレームの薄くなっている部分が板バネのようにしなって衝撃を吸収するしくみ

前後油圧式のディスクブレーキや変速ギアなどのコンポーネンツは、シマノ製のグラベルロード向けのGRXを採用しています。ハンドルはドロップタイプですが、やや幅広で曲がりが浅く、下側が少し広がったハの字形状で握りやすいです。標準状態では装備されていませんが、ドロッパーポストの装着にも対応しています。

前後とも油圧式ディスクブレーキでシマノ製GRX。ローター径は前後とも160mmで高い制動力とコントロール性を実現しています
リアディレーラーもシマノ製GRX。「Topstone Neo Carbon Lefty 3」は1×11速でスプロケットはMTB用のSLXグレードで、最大42Tの歯数です
「Topstone Neo Carbon 4」もディレーラーはGRXですが、変速ギアは2×10速。フロントギアがあるので最大歯数は34Tとなっています
フロントディレーラーもGRXで、歯数は42Tと32T。幅広いギア比に対応しています

ここからは、2モデルの違いについて見ていきましょう。最大の違いは前述のホイール径と、「Topstone Neo Carbon Lefty 3」はフロントに30mmトラベルのLefty Oliverというサスペンションフォークを装備していること。タイヤの太さやパターンも異なるので、見た目の雰囲気もだいぶ違います。「Topstone Neo Carbon 4」のほうが、オーソドックスなグラベルロードの雰囲気であるのに対して、「Topstone Neo Carbon Lefty 3」は他にない個性的なスタイルです。

左側のみの片持ち機構からLeftyと呼ばれるキャノンデール独自のサスペンション。Lefty Oliverはグラベルロード用の新設計されたものです
ロックアウト機構も装備されているので、舗装路ではサスペンションの動きを制限することも可能
650B×42CのタイヤはMTBでいうところの27.5インチに相当。WTB製のResoluteというややオフロード寄りのタイヤが装備されています
「Topstone Neo Carbon 4」はカーボン製のリジッドフォークに、WTB製Riddler Compの700×37Cというタイヤという組み合わせ

MTBコースも走れてしまう驚きの走破性

グラベルロードの枠を超えた走破性を誇る「Topstone Neo」。その性能を体感するためには、それなりのコースを走ってみなければならないでしょう。というわけで、前後にサスペンション機構を装備する「Topstone Neo Carbon Lefty 3」については、「UP MTB PARK IN KANNABE」のMTBコースに持ち込んでみました。ここのe-bike(e-MTB)専用コース「Bosch Uphill Flow Volcano(ボッシュ アップヒル フロー ボルケーノ)」なら、その性能を検証するのに最適です。

e-MTB専用コースを上り始めます。この辺は斜度もキツすぎず、路面もフラットなのでスイスイ上っていけます

e-MTB専用に作られているコースだけにゲレンデを上って行くような設定です。斜度はどんどんキツくなっていき、路面も所々に火山灰が露出していて滑りやすくなっています。そんなシチュエーションでも「Topstone Neo Carbon Lefty 3」はものともせずに上ることができました。グラベルロードはその名のとおりロードバイクですが、このモデルはその枠に収まらず、e-MTB並の走破性を身を持って体感できました。MTBでいえば“フルサス”に当たる前後サスペンションがいい仕事をしてくれているようです。

火山灰が露出して相当滑りやすい路面(しかも斜度もかなりある)でも上って行けるのは、オフロード向きのタイヤが装備されていることと、サスペンションの効果でしょう
上り切る手前にある激坂も難なく上れてしまいました。ドロップハンドルで前傾姿勢が取りやすいのも上り斜面では有効です
動画で見ると、本当にスイスイ上れていることがわかるはず。この走破性はスゴイ!!

上ったら下らなければなりませんが、実は個人的に一番気になっていたのはこの部分。MTBコースを走る楽しさの大きな部分を占めるのが、下りだからです。そして「Topstone Neo Carbon Lefty 3」はフルサスとはいえ、トラベル量は前後とも30mm程度。フルサスe-MTBのほとんどが、140mm以上のトラベル量なのに比べるとだいぶ見劣りします。しかも、ハンドルはやや幅広とはいえドロップ形状。これで下りが楽しめるのでしょうか?

下り始めのうちは、まだおっかなびっくりなので腰が引けています。こういうときはドロッパーシートポストが欲しくなる

下りに選んだルートは、ドロップオフや木の根などのない比較的フラットな路面。とはいえゲレンデを下るわけですから、それなりの(というよりかなりの)スピードが出ます。ギャップもちょいちょいあるので、ビビリながら下り始めたのですが、意外なことに走っているとあまり恐怖は感じません。前後油圧式のディスクブレーキがコントローラブルなのと、前後のサスペンションが短いストロークでも凹凸を絶妙に吸収してくれるのです。

角度はかなり急ですが、慣れるとドンドンペースが上がってきます。これは楽しい!!

とはいえ、30mmのストロークでは大きめのギャップを越えると、それなりに突き上げが来るので、腕でしっかり衝撃を吸収する必要があります。また、一般的なMTBのサスペンションとは動き方が少し違って、ゆっくり動いて衝撃を吸収するのではなく、ストロークの動きがかなり速いので、そのスピードに合わせて体を動かす必要がある感じ。この感覚にはもう少し慣れが必要だと感じました。

フラットな芝生を下るのは爽快! 前傾姿勢はキツくなりますが、ハンドルの下側を握ったほうがブレーキは握りやすいかも

MTBコースを走れるほどの走破性がありながら、舗装路での走りも軽快です。太めでブロックのあるタイヤは、ロードタイヤに比べると抵抗が大きいはずですが、アシストがあるので気になりません。未舗装路では効果的に動いていたサスペンションは、舗装路ではほとんど動いていない感じ。ペダルを強く踏んだり、ハンドルをわざと押してみたりしても、フワフワと動いて抵抗になることはありませんでした。

でも、ギャップなどを越えるときはしっかり動いて衝撃を吸収してくれます。キャノンデールの担当者に聞いたところ、ゆっくりした動きには反応せず、急な衝撃に対してだけ動くように設定されているとのこと。舗装路での走行性能を犠牲にしていない点が、MTBのサスペンションとの大きな違いのようです。

続いて持ち込んだのは、砂利の敷き詰められた林道。文字どおりのグラベルですが、こういうシーンでは水を得た魚のような走行性能を発揮します。大きな石がゴロゴロしているガレたシーンもありましたが、太めのタイヤと前後サスペンションのおかげでグイグイ進んでいけます。ボッシュ製ドライブユニット「Performance Line CX」のパワフルなアシストもあって、上り坂でもかなりハイペースで駆け抜けることが可能。こうしたシーンでは、フルサスのe-MTBより明らかに速いペースで走っていけます。

素晴らしい眺望の中をグイグイ上って行けるのはe-bikeならではの楽しさ。多少ガレているようなシチュエーションがむしろ楽しく感じます

それぞれの個性を感じられるラインナップ

グラベルロード向けのシチュエーションなので、ここで「Topstone Neo Carbon 4」に乗り替えてみました。フロントにサスペンションはないのですが、こうした林道ではそのことをあまり感じさせない走破性を発揮します。大きめのギャップを越えるときは、ハンドルから荷重を抜いて、後ろ寄りに重心を持っていけば十分な感じ。タイヤもやや細めですが、それもネガティブな印象はなく、むしろ漕ぎの軽さにつながっている感じです。

ちょっとした下りも安定感十分。ハンドルに体重をかけず、後ろよりに乗ってリアのサスペンション機構にショックを吸収してもらうのがポイント

Lefty Oliverフォークを装備した「Topstone Neo Carbon Lefty 3」のインパクトが強いので、どうしてもフロントサスペンションのない「Topstone Neo Carbon 4」は装備を省いたエントリーグレードのように見てしまいがちですが、実際に乗ってみて感じたのは、グレードの上下というよりキャラクターが違うのだということ。特にその違いを感じたのは舗装路を走ったときです。

700×37Cのタイヤを装備した「Topstone Neo Carbon 4」のほうがスピードの乗りが良く、ペースを上げて走れる感じ

すごくざっくり言うと「Topstone Neo Carbon 4」のほうがロードバイクに近い感じ。タイヤ径が700Cと大きく、細めのためスピードが維持しやすく、走りが軽く感じます。アシストの切れる24km/hを超えて30km/hでの巡航もこちらのほうが圧倒的にしやすい。ロードバイクに比べるとタイヤは少し太めですが、アシストがあるのでそのネガも感じません。

舗装路での走りは、こちらのほうが軽快。キャラクターの違いが明確に感じられます

となると、リアのみに装備されたサスペンション機構は意味があるの? という疑問が湧いてくるかと思いますが、実際に走っているとこれがかなりありがたい。路肩を走っているときにありがちな細かいギャップを越えたときに、サドルに伝わってくる突き上げがほとんどないので、非常に快適で長距離を走っても疲れにくいのです。フロントにはサスペンションはありませんが、ギャップを越える際にハンドルから体重を抜くだけでいいので、ロードバイク初心者の人にはこの乗り心地はかなり魅力でしょう。

ロードバイク乗りの琴音さんにも乗ってもらいましたが、この快適性には驚いていた様子

筆者は常々「e-bikeの魅力をもっとも体感できるのはe-MTBだ」と思ってきました。ただ、e-MTBは楽しめるシチュエーションがある程度限られてしまうんですよね。山を走るのは間違いなく楽しいですし、上り坂もまったく苦にならないのですが、舗装路を長い距離走るのはあまり楽しくありません。となると、どうしても輪行やクルマに積んで山に近い場所までアクセスして、そこから走り出すという遊び方になります。

それに対して、「Topstone Neo」シリーズは、舗装路での快適性も高いので、自宅を出て山に行くまでの移動も楽しめるのが最大の魅力です。しかも、今回走ったような未舗装の林道は、全国のどこにでもあるのでクルマに積んで遠出しなくても、手軽にオフロードを走る楽しさが味わえるのもポイント。しかも、e-bikeなら移動も上りもどちらも快適にこなせます。もしかして、e-bikeにもっとも適した車体構成は「Topstone Neo」みたいなモデルかもしれないと思うようになっています。

今回走った絶景の林道も、e-bikeでなければ辿り着けなかったような場所。こういう隠れた絶景を探すライドには最適の車体です

気になる両者のキャラクターの違いですが、前後にサスペンションを装備した「Topstone Neo Carbon Lefty 3」はMTBに近く、MTBコースも楽しめるくらいの走行性能があります。新しいカテゴリーのe-bikeといえるかもしれません。一方の「Topstone Neo Carbon 4」は懐が広く、快適なグラベルロードという感じ。どちらも未舗装の林道が楽しめるe-bikeですが、「Topstone Neo Carbon Lefty 3」のほうが林道から分岐するトレイル(山道)に分け入って行くのが楽しいのに対して、「Topstone Neo Carbon 4」のほうは林道に行くまでの舗装路が快適というキャラクター。どちらのシーンを楽しみたいか、オフロードかオンロードを走る割合によって選ぶモデルが変わってきそうです。

増谷茂樹

乗り物ライター 1975年生まれ。自転車・オートバイ・クルマなどタイヤが付いている乗り物なら何でも好きだが、自転車はどちらかというと土の上を走るのが好み。e-bikeという言葉が一般的になる前から電動アシスト自転車を取材してきたほか、電気自動車や電動オートバイについても追いかけている。