e-bike試乗レビュー

e-bikeとシングルスピードの相性は良好! 初心者にぴったりのクロスバイク「Musashi Velo CS01」

近年、選択肢が急増しているクロスバイクタイプのe-bike。大手ブランドだけでなく、新興ブランドも続々と登場し、すべてを把握するのは難しいくらいになっています。そんな新興ブランドのクロスバイクタイプe-bikeで、今年の「サイクルモード東京2022」で目に止まったのがMusashi Velo(ムサシ ベロ)の「CS01」というモデル。変速のないシングルスピードを採用し、バーファン製のハブモータータイプのドライブユニットを搭載したシンプルなデザインに仕上がっていました。

今年のサイクルモード東京2022で展示されていたMusashi Velo「CS01」。ブラック一色のカラーリングも相まってシンプルなシルエットです

サイクルモード東京2022の会場でも試乗させてもらいましたが、短い距離でもかなり魅力的な乗り味。これは公道でも走ってみなければ! と思い、試乗車を借りていろいろと乗り回してみました。

試乗コースで乗っても、e-bikeらしい緻密なアシストを味わうことができました

シングルスピードe-bikeのメリットとは?

Musashi Velo「CS01」(以下、CS01)の大きな特徴は、シングルスピードであること。変速機構のないe-bikeはミニベロではいくつかありますが、クロスバイクタイプでは非常に珍しい存在です。変速機構はスポーツタイプの自転車で重要視されるスペックの1つですが、それを持たないシングルスピードにはどんなメリットがあるのでしょうか?

シングルスピードの「CS01」。価格は242,000円。車体重量は17kgです

実は筆者は以前からシングルスピードが好きで、今も3台ほど所有しています。シングルスピードの魅力はいくつかあると思っていますが、まずは見た目がシンプルになること。変速用のディレーラーやレバー、ワイヤーなどがなくなり、チェーンの取り回しもシンプルになるので、見た目がすっきりします。特に「CS01」は、ハブモータータイプのドライブユニットと、インチューブタイプのバッテリーを採用しているので、e-bikeの中では圧倒的にシンプルなシルエットになっています。

チェーンが真っ直ぐ後輪ハブに伸びていくような見た目が個人的に好みです。チェーンが外れるなどのトラブルも少なくなります
ハブと一体となったドライブユニットはバーファン製。センタータイプより、自転車のシルエットに影響しないのもメリットです
バッテリーはフレームに内蔵。容量は約403Wh(36V/11.2Ah)で走行距離はカタログでは60kmと記載されていますが、もっと走れそうです
バッテリーは車体から取り外して充電できないので、フレーム右側の充電口から行ないます
ブレーキワイヤー以外の配線は極力露出しないようにまとめられていて、シンプルな見た目に貢献

変速機がないと、それにまつわるトラブルもなくなるので、メンテナンスで気を遣う部分が減るのもシングルスピードのメリットです。転んだり立て掛けたりした際に、ディレーラーが曲がってしまったり、うまく変速しなくなったりするような心配はいりません。

ワイヤーの調整が不十分だったりすると、ディレーラーの位置が微妙にズレていて、チェーンから音が出たりするのも個人的には気になるのですが、そういうこともほぼ起きません。筆者のような面倒くさがりや、メンテナンスに自信のない人にはシングルスピードはオススメできます。

変速レバーがないので、ハンドルまわりの見た目もシンプルになります。e-bikeの場合は配線も増えがちなので、これもメリットかも
シングルスピードはチェーンの張りを保つために、後輪を後ろに引けるフレームエンドの形状になっています
フロントのチェーンリングには裾の巻き込みなどを防止するガードが設けられています

変速がないため走行中にギアのことを考えず、ペダリングに集中できることもシングルスピードの良いところだと思っています。ディレーラーの歯車がないので、ペダルの踏み心地もダイレクトに感じられます。

ただし、ギア比が選べないのは、乗る環境によってはデメリットにもなります。平地での巡航しやすいギア比に設定していると、坂道や信号待ちからの発進時はペダルが重くなってしまう……。でも、e-bikeであれば上り坂や発進時はアシストがあるので、気持ち良く巡航できるギア比でも、あまり不便は感じなさそう。それが、個人的にe-bikeとシングルスピードが相性が良いのでは? と考える理由です。

装着されるタイヤは700×28C。ホイールやスポークまでブラックのものがセレクトされているのも、シンプルな見た目に効いています
機械式ディスクブレーキを採用。油圧式もテストしたが、街乗りでは機械式で十分だと判断したのだとか
街乗りe-bikeには付いていてほしいサイドスタンドも装備されていましたが、これは別売のオプションで価格は2,200円

乗り心地もアシストのフィーリングも良好

実際に街中を中心に50km以上走り回ってみたのですが、このe-bikeの印象は期待以上でした。フレームはアルミ製ですが、車体重量は17kgとこの価格帯としては軽め。変速機構を持たないことと、バッテリーを一体式としている効果でしょう。取り回しなどでも重さをあまり感じません。ギア比は前が46T、後ろが18Tなので、約2.55と街乗り向けのシングルスピードではやや重めですが、アシストがあるので発進時にペダルが重いと感じることもありませんでした。

発進時に重さを感じることもなく、スムーズに走れます。ギア比も絶妙

スピードに乗って巡航するようなシーンでも、もう1つ上のギアがあれば……と思うような場面もなく快適。アシストの切れる24km/hまではスムーズに加速できて、その気になれば30km/hくらいで流すことも可能でした。シングルスピードは、快適に巡航できる速度域が限られるのですが、それが街乗りにちょうどいいギア比に設定されています。そして、それ以下の速度域ではアシストが効くので、こちらも快適です。

見通しの良い街中を気持ち良く流すのにちょうどいい速度設定

アシストの制御も、e-bikeらしい気持ち良いフィーリングに設定されています。バーファン製のドライブユニットは、どちらかというと出だしのパワフルさを優先した味付けで、やや唐突なフィーリングというイメージがありましたが、「CS01」では独自にアシスト制御を見直しているとのこと。出だしは穏やかですが、ペダルを回していくとアシストがキレイに上乗せされる印象で、他社のモデルと比べてもがさつさを感じることがありませんでした。

アシストに唐突感がないので、人の多い街中を走っても持て余す感覚がない

心配していた上り坂も、パワフルなアシストのおかげで軽いギアがほしくなることもなく上れました。アシストモードは5段階に調整できるので、平坦な道は3くらいで走って、上り坂になったら少しパワフルな4か5にアップするだけで十分。あとはペダルを回してさえいれば、スイスイ上ることができます。

少しペダルが重くなるので立ち漕ぎを試していますが、別に座ったままでも十分に上れます
長くダラダラ続く坂も、何の苦もなくのんびり上って行けるのはe-bikeならではの魅力
自宅近くの激坂も上ってみたのですが、こちらも余裕で上れました。これ以上の坂に出会うことはなかなかないと思います

乗る前に期待していたシングルスピード×e-bikeの組み合わせによるメリットを、まさに具現化したような完成度。変速のことを考えなくても、アシストもあって何不自由なく走れるので、走ることや周りの景色を見ることに集中できます

e-bikeに乗っていると、気付けばギアが付いているのにあまり変速していなかったということがままありますが、実はそういう走り方はギアにはあまり良くない。軽いほうから重いほうへ、速度に合わせて変速していくのが、チェーンや変速機に負担をかけないコツだと言われます。信号で止まる際も、本当はシフトダウンしておいたほうが良いのですが、e-bikeだとついつい忘れてしまいがちですよね……。そういう乗り方をする人は、いっそギアが付いていないほうが良いのでは? と思っていましたが、「CS01」はまさにそんな乗り方ができるe-bikeでした。

シンプルさを際立たせるカラーリング

筆者のような面倒くさがり向きのe-bikeのような書き方になってしまっていますが、「CS01」の魅力はそれだけではありません。前述のようにシンプルなシルエットも惹かれるポイントです。そして、細かい部分に目を向けると、小さなパーツまでブラックのものがセレクトされていて、シンプルな見た目を実現するために気が配られているのが感じられます。

クイックリリースのレバーやホイールのスポーク、チェーン、タイヤのバルブに至るまで、すべてブラックのパーツが選ばれています。もちろん、ステムやスペーサーもブラック
ブレーキレバーやベルもブラック。グリップももちろん同色でエルゴノミック形状です
ブレーキレバーは4本指でも2本指でも握れる形状。初めてスポーツタイプに乗る人でも握りやすい
初心者がお尻が痛くなりにくい肉厚のサドルが装着されていますが、ペダリングもしやすい形状
フレームにはキャリアなどを装着するためのダボ穴も設けられていてカスタムも可能。装着されているボルトまでブラック

細かなパーツまでブラックでまとめられているので、スポークのニップルがシルバーなのが惜しいと感じてしまうほど。個人的にはブレーキレバーは1本指か2本指で操作しやすいものに交換したいと感じましたが、そうしたカスタムをしていくのも楽しそうです。ハンドルの形状を替えてみたり、ブラック基調にあえて差し色を入れるのも似合いそう。少し太めのタイヤを履かせて、キャリアに荷物を積んで……とか、いろいろ妄想が膨らみます。シンプルで壊れにくい作りなので、毎日の通勤から休日のツーリングまで、楽しみを広げてくれそうな1台です

増谷茂樹

乗り物ライター 1975年生まれ。自転車・オートバイ・クルマなどタイヤが付いている乗り物なら何でも好きだが、自転車はどちらかというと土の上を走るのが好み。e-bikeという言葉が一般的になる前から電動アシスト自転車を取材してきたほか、電気自動車や電動オートバイについても追いかけている。