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同じ米でも差は歴然! “高級炊飯器”6機種で白米を食べ比べてみた

 ここ数年、“高級炊飯器”と呼ばれるジャンルが話題だ。ごはんをより美味しく炊くために、火力の強いIH方式に加えて、スチームや圧力機能などを搭載している点が特徴だ。各メーカーあらゆる機能を搭載しているが、炊き上がりに違いはあるのだろうか。

 今回は特別企画として「高級炊飯器食べ比べ」を社内で行なった。炊きたての食べ比べだけでなく、10時間保温後の食感や、メンテナンス性についても比較したので、紹介していく。

左から、タイガー、三菱、日立、東芝、パナソニック、象印

 まずは、今回比較対象とした6機種を紹介しよう。

 タイガー魔法瓶、三菱電機、日立アプライアンス、東芝ホームテクノ、パナソニック、象印マホービンの6機種だ。今回の炊きくらべのために用意したもので、すべて新品。いずれも5.5合炊きで、最上位機種にあたる。

メーカー名製品名実売価格(ヨドバシ.com)発売日
タイガーThe 炊きたて「JPX-102X」12万740円6月下旬
三菱本炭釜 KAMADO「NJ-AW107」10万5,140円5月下旬
日立ふっくら御膳「RZ-YW3000M」9万9,770円6月下旬
東芝かまど本羽釜「RC-10ZWK」11万6,640円5月下旬
パナソニックWおどり炊き「SR-SPX106」9万6,980円6月上旬
象印南部鉄器 極め羽釜「NW-AS10」12万9,320円8月下旬
タイガー「The炊きたて JPX-102X」

 内釜に、本物の土から作った土鍋「プレミアム本土鍋」を採用している点が特徴。本土鍋を覆う「遠赤土かまど」を大型化しており、釜全体にしっかり熱を伝え、効果的に加熱する。本土鍋が持つ蓄熱性と強火力により、土鍋ならではの香ばしく美味しいごはんに炊き上げるという。

タイガー「The炊きたて JPX-102X」
三菱「本炭釜 KAMADO NJ-AW107」

 “みずみずしいかまどごはん”をコンセプトにした炊飯器。かまどで炊くごはんの粒感や美味しさを追求しており、内釜には純度99.9%の炭を削り出して作った羽釜形状の「本炭釜」を採用。炭はIHと相性が良いとされており、大火力でムラなく一気に加熱して、お米一粒一粒のうまみを引き出す。

三菱「本炭釜 KAMADO NJ-AW107」
日立「ふっくら御膳 RZ-YW3000M」

 圧力を掛けた状態でスチームを発生させる独自の「圧力スチーム炊き」が特徴で、米をふっくら甘く炊き上げるという。内釜は、発熱に必要な底面外側にのみ鉄を打ち込んだ「高伝熱 打込鉄釜」を採用し、大火力と軽量を両立した。鉄が発熱して大火力で炊き上げ、炊きムラを抑える。

日立「ふっくら御膳 RZ-YW3000M」
東芝「かまど本羽釜 RC-10ZWK」

 発熱効率の良い「鉄」と遠赤効果のある「備長炭」を、内釜に採用した「備長炭かまど本羽釜」が特徴。羽が熱をとじこめ、かまど炊きのおいしさを引き出すという。独自の真空ポンプを搭載しており、吸水時に減圧して米の旨み成分を引き出し、ふっくら炊き上げる。

東芝「かまど本羽釜 RC-10ZWK」
パナソニック「Wおどり炊き SR-SPX106」

 高速対流と可変圧力で、とことん米を踊らせる「Wおどり炊き」を採用。米を釜底からしっかりかき混ぜ、均一に熱を加えるため、一粒一粒の甘みや旨み、香りを丁寧に抽出する。内釜は、軽くて丈夫な「ダイヤモンド竈釜」を搭載。沸騰を促進でき、かまどのような火力を伝えられるという。

パナソニック「Wおどり炊き SR-SPX106」
象印「南部鉄器 極め羽釜 NW-AS10」

 岩手県の伝統工芸品「南部鉄器」を内釜に採用したモデル。大きな羽と角度のついた釜底で大火力の熱をしっかり届ける。釜内の米を豪快にかき回す「プレミアム対流」や、一定の圧力をかけ続ける沸とう維持工程中の追い加圧なども特徴で、ふっくらとした甘み豊かなご飯が炊けるという。

象印「南部鉄器 極め羽釜 NW-AS10」
各メーカー内釜にこだわりをみせている

スーパーで買ったコシヒカリで炊飯スタート

 食べくらべの際は、6機種ともに炊き上がりのかたさを「ふつう」に設定した。米の量は3合。

 炊き上がりに差が出ないように洗米方法や炊飯のタイミングにも細心の注意をはらった。洗米はムラが出ないように、人の手ではなく象印の洗米器を使用。

スーパーで買った精米。富山産のコシヒカリで、精米日は8月11日。
洗米にムラが出ないよう、象印の洗米機を使用した

 米はスーパーで買える標準的な精米を用意。富山産のコシヒカリを使い、5kgで2,200円ほど。精米日は8月11日で統一し、食べくらべを行なった日が9月16日だったので、精米から約1カ月経ったものだ。精米したての米は当然美味しいので、あえて日が経ったものを選択。

 浸水時間にも差が出ないよう、洗い終わったものから炊飯していく。6機種ともに炊飯時間は50~60分ほどで、ほぼ同時に炊き上がった。いずれも最大消費電力が1,000Wを超えるため、電圧にも注意し、途中で電源が落ちることを防いだ。

 炊飯が完了すると、1つのお皿に6機種で炊いたごはんをのせて食べ比べスタート。

6機種ほぼ同時に炊き上がった。食べ比べスタート
1つのお皿にのせた

炊きたてを実食! 「もちもち/しゃっきり」など食感に違い

 今回は、社内で実施したため、編集部だけでなくインプレス社員も参加し、食べ比べてもらった。約50人が参加し、感想を聞いてみると「全部美味しい」という声がまずあがった。

 しかし、じっくり食べ比べると、機種ごとに違いがあるのが見えてくる。特に食感に違いがあり、同じ米・分量・水量で炊いても「もちもち/しゃっきり」など、はっきりと差が出ていたので、以下にその特徴を並べてみた。


タイガー:もちもち
三菱:しゃっきり
日立:ややしゃっきり
東芝:ややしゃっきり
パナソニック:ややもちもち
象印:もちもち

 タイガーと象印はもちもち系、三菱はしゃっきり系とわかりやすい。パナソニックはややもちもち、日立と東芝はややしゃっきりといったところだ。

 しかし、パナソニックの場合は、ややもちもちの中にも弾力やハリがある印象、日立は粒感があるがふんわりとしていて香り高いなど、一言では表しきれない味わいがあった。なおこれらの食感の特徴は、複数回炊いてもほぼ同じ結果になった。

 今回は、すべて炊き上がりのかたさを「ふつう」に設定したが、各メーカーごとに「かため」「やわらかめ」などのコースもある。“もちもちが好きだけどデザインがかっこいい三菱が気になる”、などのこだわりがある人は、やわらかめにして炊くと、好みの食感に近づけられるだろう。

食べくらべは社内で開催。約50人が参加し、食感などについてアンケートに協力してもらった

 以下は、機種ごとの特徴をまとたもの。食べ比べ参加者の感想もあわせて紹介しよう。

タイガー:もちもち

 今回6機種同時に炊いた中で、タイガーだけにおこげができた。土鍋ならではの香りがあり、おこげも楽しみたい人にはオススメだ。おこげが不要という人は、火力を弱めに設定するとおこげ無しに仕上げられる。

 食感はもちもちで、やわらかめのごはんが好きな人に好評だった。なお、他5機種にもおこげコースはあるが、通常コースではおこげは付かなかった。

タイガー「JPX-102X」
唯一おこげができていた。香ばしい

・おこげがあるからか、風味が香ばしく、懐かしい雰囲気のごはん
・やわらかいご飯が好きなのでタイガーです
・もっちり美味しい

三菱:しゃっきり

 三菱の特徴はなんといってもしゃっきり感だろう。米の炊き方は好みが分かれるが、かためのごはんが好きな人は断然三菱を推していた。

三菱「NJ-AW107」
しゃっきり派にオススメ

・しゃっきり感があって、カレーなどに向いていそう
・白米だけよりも、納豆とか卵をかけたくなる。お弁当向きな感じ

日立:ややしゃっきり

 日立もしゃっきり派に好評だった。ふっくらしているが粒感があり、甘みや香りもしっかりあってバランスの良い味わいだった。

日立「RZ-YW3000M」
ふっくら、あまみ、粒感、香りのバランスが取れている

・ふっくらしているけど粒感しっかり、噛めば噛むほど甘みや香りが広がる。白米だけでも箸がすすむ
・しゃきっと粒立ちがよい
・米が主役になる味

東芝:ややしゃっきり

 東芝のごはんで多かった声は、フタを開けたときの香りが良いということ。味はシンプルだが、香りの高さやツヤっぽい見た目が好評だ。スマートタッチパネルはスタイリッシュで、リビングに置きたいという感想もあった。

東芝「RC-10ZWK」。天板のスマートタッチパネルで操作する
フタを開けたときの香りが好評

・フタを開けたときのごはんの香りが一番良かった
・ツヤがあって見た目が良い
・しゃっきりしているけどねばりがある。シンプルな味
・噛むほど味が出る

パナソニック:ややもちもち

 もちもちだけど粒感がある、といったバランスの良さがあがった。また、後述の10時間保温後に関しても、保温後も美味しいという声が多くあった。

パナソニック「SR-SPX106」。スチーム用の水容器があり、ここに水を入れて使用する
もちもちながら粒感もあり

・総合力がある
・冷めてからも甘みがしっかり感じられた
・ツヤがある。食感やわらかい

象印:もちもち

 やわらかいご飯が好きな人に好評だった象印。もちもち感やみずみずしさがあり、水分をしっかり含んだごはんに炊き上がっていた。また、ボタンを押すだけでフタが閉まる「スマートクローズ」を搭載。両手がふさがっていても使いやすいという。

象印「NW-AS10」。ボタンを押すだけでフタが閉まる「スマートクローズ」機能がある
やわらかいご飯が好きな人に好評

・もちもち感が高いが丁度よい甘み
・冷めても美味しかった。米が主張しすぎてなくて、おかずを立てる感じだったからお弁当にも良さそう
・やわらかくて好み

10時間保温後で食べ比べ

 生活シーンを考えると、いつも炊きたてのごはんを食べるという訳ではない。そこで、炊き上がってから10時間保温したご飯でも、編集部5人で食べ比べてみた。

10時間保温後のごはん

 6種類の保温後のごはんは、さすがに炊きたてと比べると味は落ちる。しかしその中でも、パナソニックは美味しく感じられ、タイガー・象印・東芝も健闘しているという意見が多かった。

 最近は炊きたてを冷凍する人も多くいるため、保温性にこだわるかは、ライフスタイルによって変わってくる項目だろう。

いずれの機種も保温時間が表示される

内釜の重さや洗浄パーツでメンテナンス性をチェック

 メンテナンス性についても触れていきたい。いずれのモデルも内釜にこだわっているが、そのぶん重さがあったり、羽が洗いにくいという面もある。それぞれの重さを、実際に計ってみた。

 パナソニックと日立は、ステンレスやアルミを主な素材としているため軽量性を実現している。他4機種は、鉄器や土鍋を採用しているため1kgを超えていた。重くて洗米しづらいといった場合は、洗米用にボウルなどを用意した方が良いだろう。

メーカー名内釜の種類重量
タイガープレミアム本土鍋1,160g
三菱本炭釜1,192g
日立高伝熱 打込鉄釜738g
東芝備長炭 本羽釜1,424g
パナソニックダイヤモンド竈釜812g
象印南部鉄器 極め羽釜1,868g
タイガー:1,160g
三菱:1,192g
日立:738g
東芝:1,424g
パナソニック:812g
象印:1,868g

 また、各モデルともに、美味しく炊くためにさまざまな機構を採用している。保温性を高めるための内ふたや、蒸気孔を備えたスチームキャップなどがあり、これらは内釜とともに使う度に洗わなくてはいけない。

 食べくらべが終わり、実際に片付けた際に、炊飯後に毎回洗う必要があるパーツを並べてみた。いずれも本体から取り外すパーツは2~3つで、ここからさらに細かく分解する部品もある。

タイガー。内ぶた、スチームキャップ
三菱。放熱板、プレート
日立。ふた加熱板、プレート(まとめて取り外し可能)
東芝。内ぶた、フィルター、蒸気口
パナソニック。ふた加熱板、水容器、蒸気ふた
象印。うるおい二重内ぶた(2枚)

 日々使う炊飯器は、美味しさだけでなく手入れのしやすさも着目すべきポイントになる。そういった点も含めて、炊飯器選びの参考になれば幸いだ。

編集部