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白米だけじゃない! 時短調理&健康ごはんのユニーク炊飯器

 10万超えの高級炊飯器なら白米がおいしく炊けるのは当たり前のこと。前回は「3万円台で買えるミドルクラス炊飯器のおすすめ」をご紹介しましたが、今回は、時短調理メニューが充実していたり、健康ごはん用として欲しくなるユニークな炊飯器を取り上げます。2台目炊飯器としてもおすすめですよ。

15分で出来る“時短調理”が便利でおいしすぎるタイガーのJPEシリーズ

 タイガーはごはんを炊く時の水蒸気でおかずを同時に作ってしまう「タクック」シリーズを打ち出し、ロングセラーとなっています。その国の食文化に合わせたレシピを開発し、海外にまで展開しているのも見事だと思います。そんなタイガーらしい発想で作られたのが、このJPEシリーズ。

タイガー魔法瓶「IH炊飯ジャー 炊きたて JPE-B100」 ※15分時短調理レシピは上位モデルのJPE-A100でも可能
メーカー名タイガー魔法瓶
製品名IH炊飯ジャー 炊きたて「JPE-B100」
価格(編集部調べ)36,800円

 厚釜と土鍋コーティングによる、最上位モデルの土鍋ごはんに近づけた香ばしいごはんはもちろんですが、忙しい平日により活躍してほしいと開発されたのが、1合のごはんを15分で炊き上げる「時短少量早炊き」コースと、15分で調理ができる「時短調理」の提案です。タクックと違い、ごはんとおかずを同時に作れるわけではありませんが、「急いでごはんを炊きたい」「ごはんは冷凍したのがあるから、おかずを手早く作りたい」などという時に活躍します。

土鍋コーティングの内なべ(内釜)。銅入3層遠赤釜でタイガーらしく取手がついている

 どうして食材と調味料を入れてたった15分で調理ができるのでしょう。それは土鍋コーティングの内なべならではの熱伝導率の高さと、なべ底の温度が約130℃になる高加熱「剛火IH」の立ち上がりの早さを生かしているから。少量のごはんを15分で炊く時短炊飯もウリにしていますが、ごはんにもパンにも合うおかずから、スープや酒の肴、パスタまで15分でできる簡単レシピが何より魅力的です。

炊飯器を“ほったらかし系調理家電”と見なす使い方が新しい

 今回、試してみたのは「IH炊飯ジャー 炊きたて JPE-B100」ですが、内なべ(内釜)にW銅入5層遠赤特厚釜を採用し、クリア液晶でパネルが見やすい上位モデルのJPE-A100も同様のコンセプトで作られています。また、15分時短調理のレシピは、炊飯器にレシピ集が付属しているのではなく、タイガーのウェブサイト内の「JPEシリーズ特集」に掲載されています。

15分時短調理のレシピはタイガーのウェブ内の「JPEシリーズ特集」に掲載されており、見やすくプリントアウトできる仕様になっている

 まずは魚を使った和食から。レシピでは「甘塩鮭と長芋の煮物」でしたが、冷蔵庫にあった長芋の量が少し足りなかったため、キノコ(えのきだけとしめじ)を足してアレンジ。内なべに調味料や出汁、酒を振っておいた甘塩鮭と長芋などを入れたら、「調理メニュー」を選び、15分にセットして炊飯ボタンを押すだけで準備完了です。

内なべに甘塩鮭の切り身2切れ、長芋、細切りにした生姜、しめじとえのきだけ、200mlの煮汁を入れたところ
「調理メニュー」で15分にセットし、炊飯キーを押す
15分後にふたを開けたところ。上品ないい香り!
熱々の内なべを取り出す際にも取手があるので安心して使える

 甘塩鮭を煮る? 15分で長芋に味は染みる? ——不安でいっぱいだったけれど、出来上がりを食べてみると、塩気もちょうどよくて品のある味わい。なんだか小料理屋さんに出てくるメニューのようです。熱々の煮汁を器に入れる際にも、内なべに取手がついているから手が熱くないのがうれしいんですよね。

柚子の皮を添え、「甘塩鮭と長芋、キノコの煮物」が完成

ビールのおつまみに最高な「チーズ羽根つきぎょうざ」

 シュレッドチーズと冷凍餃子を使った「チーズ羽根つき餃子」は、市販のものを使っているから超手抜きなのですが、火加減を心配することもなく、フライパンにくっついてしまうということもなく、見事にチーズの羽根がついた焼き餃子が出来上がって感動。

 酢醤油などをつけなくても、チーズの塩味と香ばしさと風味でそのままおいしく食べられます。チーズが餃子の味を邪魔していないところもいいし、ビールが進むことと言ったら! それにしても、炊飯器の内釜のシュレッドチーズを敷いて、上に餃子をのせてケーキモードで加熱するだけだなんて、誰が考えたのでしょう。天才です。

餃子10個あたり、ピザ用のシュレッドチーズは30g。これを内なべに入れてから、冷凍餃子を並べる ※今回は餃子が大きめだったので8個使用
チルドの餃子なら「パン・ケーキ」メニューで15分だが、今回は冷凍餃子を使ったので20分にセット
20分後にふたを開けたところ。チーズがこんがり焼けて「羽根」になっている
「チーズ羽根つき餃子」の出来上がり。チーズから油分が出るので、内なべに油をひかなくても内なべからするりとはがれて取り出せた

下ごしらえなしでここまで美味しい

 そしてさらに絶品だったのが「鶏肉としめじのトマトソース煮」。サラダ用に売られているブラックオリーブのスライスや、トマトソース(缶や袋)を上手に利用したレシピになっているから、玉ねぎ1/2個をスライスするくらいで下ごしらえもほとんど不要です。

 こちらも調理メニューで15分。ふたを開けた時点では、いい香りはしているものの、鶏肉がやわらかく煮えているのかどうか、味がなじんでいるのか半信半疑だったものの、粉チーズとパセリをふって食べてみると、想像以上のおいしさにびっくり。味にうるさい家人も「パスタにかけてもおいしそうだ」と言いつつ、どんどん口に運んでいきます。肉を炒めたり、火加減を調節したりということを何もしていないのに、この味わい。ずるくないですか。

「鶏肉としめじのトマトソース煮」の材料。鶏肉250g、玉ねぎ1/2個、ブラックオリーブのスライス25g、しめじ1パック、トマトソース1袋。写真以外にチキンコンソメ小さじ1を使用
100mlの水にコンソメを入れたものを内なべに入れ、鶏肉、玉ねぎ、しめじ、ブラックオリーブの順に入れる
最後にトマトソースを投入
「調理メニュー」で15分にセットし、「炊飯」キーを押す
15分後の様子。鶏肉がやわらかく煮えているのかどうか、味がなじんでいるのか、この時点では半信半疑だった
盛りつけて粉チーズとパセリをふったところ。想像以上に美味!

 このほかにも、タイガーのウェブサイトを見ると15分の時短レシピが充実していて楽しく、これからもどんどん増えていくといいなと期待しています。炊飯器を「ほったらかし系調理家電」の1つと見なして、フル活用させるという提案。しかも、「15分」という時短調理をかなえた点など注目すべき1台だと思います。

 JPE-B100で16,000円前後、上位モデルのJPE-A100で23,000円前後という価格も「自動調理鍋」を買うよりお手ごろです。

玄米&雑穀米専用炊飯器として買いたくなるバルミューダ ザ・ゴハン

 トースターで注目され、期待を集めたバルミューダの炊飯器「バルミューダ ザ・ゴハン」は、内釜のほかに外釜を付属し、そこに水を入れて使う“蒸し炊き”を採用しています。これを新しい炊飯方法だと思っている人もいるようですが、これは60年も前の炊飯手法ですし、これを脱却すべく古参の大手家電メーカーが努力を続けてきたわけですから、どうにも「???」となってしまい、米飯管理技能士資格を持つ私としては認められないのでした。

2017年3月に発売されたバルミューダ ザ・ゴハン。3合炊きで、内釜と外釜の2つが付属し、炊飯時には外釜に200mlの水を入れて使うのが特徴
メーカー名バルミューダ
製品名バルミューダ ザ・ゴハン「K03A-BK」
価格(編集部調べ)40,000円

 実際、何回炊いてみても、白米は粘りも甘みも香りもなくて、かたいごはんです。確かに卵かけごはんには合うし、長粒米のごとくパラパラしているごはんはカレーに合います。「おかずに合うごはん」と言われればそうなのですが、白米だけを食べた時の鼻にふんわり香るごはんの香りや、口の中に残る幸せな甘みがないのでは、お米農家の方に申し訳ないような気がしていたのです。

 もちろん、味覚だって時代とともに変化していくもの。「ごはんのおいしさのスタンダード」がいずれ、バルミューダの炊飯器が炊き上げるごはんになってしまうことだってあるのかもしれません。そんなことを考えたりもしていましたが、「バルミューダ ザ・ゴハン」ならではの魅力を発見してしまいました。

 それは、白米外の玄米や雑穀米などの健康ごはん用として使うこと。「バルミューダ ザ・ゴハンで炊いた玄米がおいしい」ということは昨年の秋あたりから何となく耳にしていたのですが、実際に炊き比べをしてみると明らかに食べやすいのです。

表皮と中の部分が絶妙のバランスで調和する玄米

 対抗馬として10万超えの圧力IH式の高級炊飯器を選んだのですが、確かに圧力炊きでもっちり感は出るのですが、玄米ならではの表皮の部分と中のやわらかな部分のコントラストが強過ぎて、どうにもバランスが悪いのです。一方、バルミューダの方は決して芯があるわけではないけれど、玄米の「中身」の部分にべたつきがなくて表皮の硬いところと一緒に噛んでいても違和感がないんですよね。そう、とてもバランスが取れていて、さっくりと軽い玄米ごはんという感じです。

玄米2合を入れ、水加減をしたところ
玄米はあらかじめ浸水する必要はなく、炊飯時間は90分
炊き上がってふたを開けてみると、やや色が濃い目の印象
ごはんがべたつかず、さっぱりとした玄米に炊きあがっている。表皮の部分と中のごはん部分の食感のバランスがちょうどいい
圧力IHの高級炊飯器で炊いた玄米。バルミューダ ザ・ゴハンよりもやや白っぽい。中のやわらかいごはん部分の水分が多く、もっちりしている

 自宅では基本的に白米オンリーを貫いている“料理男子”の息子にも試してもらったのですが、「おいしい玄米の正解がわからないけれど、口の中でバランスが取れていて食べやすいのは圧倒的にバルミューダ」と同意見になりました。その後、あらためて自宅で使っている炊飯器でも同じ玄米を炊いてみたところ、勝利はバルミューダ。好みにもよるかもしれませんが、試してみる価値ありです。

白米が主張せず、穀物たちの香りや食感が際立つ雑穀米

 続いて雑穀米。アワやハト麦、キビなどを白米に混ぜて炊くことで、血糖値の上昇を抑えたり、食物繊維やビタミン、ミネラル、ポリフェノールなどを補ったりできる健康ごはんとして根強い人気があります。混ぜる雑穀の種類も製品によって様々です。今回は、もち玄米、発芽青玄米、もちあわ、発芽押麦、ハト麦、黒千石、もち麦、もちキビの8種類の雑穀米がブレンドされたものを米に混ぜて試してみました。

 雑穀米の炊き比べの相手は、非圧力系の高級炊飯器にしてみたところ、白米の粘りや香りが際立っておいしいので、雑穀米もそれにつられて普通においしく食べられる。一方、バルミューダのほうは、白米がある意味“無個性”なので、雑穀たちの香りや味わいなどが引き立ち、これまでになく新鮮な雑穀米となりました。

白米2合に対して大さじ2杯の雑穀を混ぜて炊いてみた様子
白米同様、パラリとした炊き上がりだが、雑穀の香りがして新鮮だった

 ちなみにバルミューダ ザ・ゴハンで炊いた玄米は冷めてもおいしかったですし、冷凍しておいたものをレンジで温め直しても美味。一方、雑穀米は冷めるとぽろぽろになってしまって残念な味わいに変化するので、炊きたてもしくはほんのり温かい時のほうが格段においしかったです。

 小さくて扱いやすいし、デザインもいいので「玄米&雑穀米専用のヘルシー炊飯器」としてバルミューダを購入するのはありかもしれません。

神原サリー

新聞社勤務、フリーランスライターを経て、顧客視点アドバイザー&家電コンシェルジュとして独立。現在は家電+ライフスタイルプロデューサーとして、家電分野のほか、住まいや暮らしなどライフスタイル全般の執筆やコンサルティングの仕事をしている。モノから入り、コトへとつなげる提案が得意。企画・開発担当者や技術担当者への取材も積極的に行い、メーカーの現場の声を聞くことを大切にしている。 テレビ・ラジオ、イベント出演も多数。