家電製品レビュー
象印の高級炊飯器「炎舞炊き」徹底レビュー! もちもち~しゃっきり、保温も食べくらべ!
2018年9月7日 06:30
象印が先日発売した圧力IH炊飯ジャー「炎舞炊き」。これまで南部鉄器の内釜にこだわっていた「極め羽釜」から、フルモデルチェンジした高級炊飯器だ。新たな製品は“火の入れ方にこだわった”というので、さっそく使ってみよう。
メーカー名 | 象印マホービン |
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製品名 | 圧力IH炊飯ジャー 炎舞炊き |
タイプ | 5.5合炊き NW-KA10 |
実売価格 | 95,924円 |
「炎舞炊き(えんぶだき)」は、その名の通り炊飯時には、炎が舞うように内釜に火を入れるという。ただ「炎舞炊き」は電気炊飯器なので、IHヒーターで炎をシミュレーションしている。製品のホームページや動画も、龍が如く炎が舞う「燃え燃え」となっており、力の入れようが熱く語られている(笑)。
その一方で、長年重厚な羽釜を使ってきたのに、あっさり捨ててしまうの? と思われがちの新製品。しかし実はどちらも「かまど炊き」のごはんを再現するという点で共通している。
他のメーカーにはない、象印独自の「舞う炎を再現したIHヒーター」。どれだけ美味しいご飯が炊けるのか、実際に炊き比べてみた!
高級炊飯器を刷新! 南部鉄器からかまどの炎へ
炊き比べの前に「炎舞炊き」について少し説明しておこう。一般的なIH炊飯器は、内釜の底から側面にかけて「IHヒーター」というものが設置されている。導線をぐるぐる巻きにしたコイルと呼ばれるものだ。
IHヒーターのしくみは「現代家電の基礎用語|第11回:IHクッキングヒーターとは」に譲るが、「炎舞炊き」はこのヒーターを釜の3箇所を底から側面に向かった包み込むようにし、3箇所に設置している。
一般的な炊飯器にはヒーターが1つしかないので、釜内部の対流は単純。しかし「炎舞」は、かまどの火がゆらゆらと釜の下を回りこむように、3つのヒーターが順次釜の部分を加熱して、まるで火がゆらいでいるかのように加熱する。
次のムービーは、火が回る様子を撮影したムービーだ。ただお米を炊いてしまうと水が白濁して中が見えなくなるため、お米の代わりにアルファベットのパスタを炊いている。
撮影は炊飯の「はじめちょろちょろ」の部分しかできないため(大火力時は圧力がかかるのでふたが開けられない)、非常に火力が弱く見えるのはご了承いただきたい。
※炊飯中は圧力がかかり非常に危険なのでまねしないでください。通常はフタをしていないと炊飯がスタートしません
実際の内部の様子は、メーカーホームページのムービーを見てほしい。
お米が熱で対流する様子が見られるように、実際より多くの水を入れているが、反時計回りに火が回りこんでいるのがわかるだろう。
また火が回ることでお米全体が対流しているのが見える。こうしてお米全体に均一に火を入れていくのが炎舞の特徴だ。
甘さもテスト! しゃっきり~もちもちまで炊きくらべてみた
まずは標準的なメニューでごはんを炊いてみた。テスト方法は、以下の通りだ。
ごはんの美味しさの基準のひとつとなる甘さは、次のように測定した。
水を加えるので、実験結果として示している甘さの指標は、絶対的な糖度ではない点に注意していただきたい。「ふつう」「しゃっきり」との相対的な数値の違いで、「○○より甘い(甘くない)」という結果になる。
さてまずは基準となる「ふつう」で炊いてみた。
ふつう
炊き上がりは、美味しさの目印といわれる「かに穴」(砂浜にできるカニの巣の小さい穴)ができ、お米も立っておいしそうに見える。
一口食べてみると、適度な粘りとモチモチ食感が特徴。ごはんの硬さは、やや柔らかめという感じだ。ごはんの甘さは4~5となった。毎日食べるごはんとして、家族全員が美味しく食べられる標準と言っていいだろう。
もちもち
「ややもちもち」というメニューもあるが、食べ比べではっきり分かるように「もちもち」で炊いてみた。
特徴は、「ふつう」ととまったく甘さが違うこと。この実験では絶対的な糖度で比較できないものの、「ふつう」が3~4、「もちもち」が5~6とかなり高い値を示した。
ごはんの甘さが引き立つので、お漬物や焼きジャケなどのおかずがよく合うごはんだ。筆者は猫マンマにして食べたら最高だった。
本領発揮! 毎日食べるごはんならAI炊飯の「わが家炊き」がオススメ
一般的な炊飯器ならたいていメニューにある「しゃっきり」「ふつう」「もちもち」の炊き分けや、「やや」もあるので炎舞炊きの場合は5種類となる。
しかし「炎舞炊き」が本領を発揮するのは、「わが家炊き」というメニューだ。毎日食べるごはんは、家族の好みがあって全員が「美味しい」というまで安定するのに一苦労。とくに炊飯器を買い換えたときや新米の季節になると、うんざりするほど不安定。
毎日食べるごはんを、安定してそのご家庭に合った「かたさ」と「粘り」に炊き上げてくれるのが「わが家炊き」。
使い方は簡単で、毎回「わが家炊き」で炊くだけ。食事が終わったら、画面に表示される質問に答えるだけでいい。
質問に答えると「炎舞炊き」は、今回の設定値と答えから次回の炊飯の設定値を変更。ちょっとしたAI機能で、家族みんなが「美味しい」という炊き上がりに落とし込んでいく。
そのパターン数は、なんと121通りある。
炊飯器を買い換えたり新米が出始めると、水の量を調整しなければならず安定するまで時間がかかる。でも「わが家炊き」なら水の量はそのままで、炊き加減を炊飯器任せにできるので、簡単で便利。そして安定したごはんが炊き上がる。
この炊き分けのやり方は、少し技術的な話になるが、一般的な圧力炊飯器はフタ裏についてる鉄球を電磁石で押して、圧力調整をする。つまり圧力がかかっているか否かの2種類だけ。
しかし「炎舞炊き」の圧力調整は、圧力センサーの値を見ながら鉄球をモーターで少しずつ動かすので、0.05気圧単位で圧力をコントロールできる。これが121通りの微妙な炊き分けをできる秘密のひとつだ。
おこげや熟成、早炊きにすしめしなどスペシャル炊飯も
炎舞炊きなら、スペシャルな日を演出するスペシャル炊飯も充実。また玄米などの炊飯もお手の物となっている。
「お米選択」ボタンは、白米や無洗米、玄米を切り替えるメニュー。昨今の炊飯器は、お米の銘柄も指定できる機種があるが、炎舞炊きはシンプルに種類のみを指定するようになっている。
メニューは見て分かる通りだが「湯の子」は他社製品にないメニュー。これは極め羽釜時代から供えているメニューで、「鉄器おこげ」で作ったおこげを、おかゆのように柔らかく再加熱しておだしでいただくというもの。これのみ炊飯とは少し異なるメニューになっている。
なお予約炊飯は、2つのタイマーを持っているので朝と夕方を切り替えて使うことができる。
ここでは代表的な炊飯メニューを試してみた。
石焼き風ビビンバも作れる「鉄器おこげ」
このメニューは、かまどで炊いたご飯のようにおこげが食べたい! という方向けのメニュー。ごはんを炊き上げてから、最後に一気に内釜を加熱しておこげを作るようになっている。
最近はごはんに混ぜるだけで「ビビンバ」ができる調味料などがあるので、これを使うと簡単に石焼風ビビンバになる。
「熟成」は粘りが引き出されてモチモチに
「じっくりと時間をかけてお米の旨みを引き出す」というメニュー。旨みを計る手段がないため、自分の舌だけが頼りだが、甘みは普通の炊飯とそれほどかわりなく、よりふっくらモチモチとした食感になった。ただ粘り感も強くなったので、柔らかさが強調された炊きあがりになるようだ。
甘さは5なので「もちもち」と同程度、ただ多く水分を含んで粘りが強いので、モチモチというより柔らかめの印象が強く残るようだ。家族みんなで試食してみたが、シャッキリ系が好きな家の場合は、「熟成」より「もちもち」で、和食を食べたいという意見で一致した。
30分で炊飯! 「特急」の仕上がりはいかに……
30分で炊けるということで試してみたが、他の炊飯器と同様にイマイチ。他社も早炊きモードを搭載しているので、炎舞炊きにも搭載せざるを得なかった感がある。好みでなければチャーハンにしてしまおう(笑)。
保温性能は? 美味しさ優先と40時間保温の2種類を比較
「炎舞炊き」の保温機能は2つある。ひとつは美味しさ優先だが最大12時間の「高温保温」。もうひとつは時間優先で40時間(1日と16時間)保温できるよいう「極め保温」だ。
40時間保温はオーバースペックにも思えるが、奥さんや子どもが実家に帰ったときなど、一人でごはんを炊いたときに便利かもしれないので、律儀に40時間耐久試験をやってみた(笑)。
高温保温
ひとつは美味しさ優先の「高温保温」。温度を高めにすることで、長時間保温したときのニオイや黄ばみを押さえ、12時間後でも温かくおいしいご飯が食べられるというものだ。
お茶碗によそったごはんを見比べてみたのが、次の写真だ。
ごはん粒で分かるように、ちょっと水分が飛んで、炊き上がりよりやや固めのシャッキリごはんになるが、色も黄色くならず、ニオイ、味も遜色なく美味しく食べられる。
これなら夕食ぶんのごはんを、朝にまとめて炊いてもいいだろう。3人の核家族なら、朝に4合をまとめ炊きすれば夕食まで美味しいごはんが食べられる
パサつきが気になるという場合は、チャーハンにするといい。卵とネギと塩だけだが、ラーメン屋に負けないパラパラのチャーハンができて、家族に大好評だった。
極め保温
2つめの「極め保温」は、最大40時間(!)という時間優先モード。温度を最適に保つことで長時間保温が可能という。40時間と言えば1日と16時間。夜7時に炊いたご飯が2日後のお昼11時まで美味しく食べられる計算だ。かなりオーバースペックな感じもしないではないが、使うシーンがありそうなので、律儀に40時間の保温耐久レースをやってみた。
さすがに36時間と40時間では4時間しか差がないが、この間にかなり臭いがきつくなるようだ。実用的な保温時間は24~36時間の間という感じだ。それ以上は、食べられないとは言わないが、まったく美味しくない。
簡単操作・簡単お手入れで内釜もしっかり
象印が長年販売してきた「極め羽釜」から大きく変わった点は内釜だ。これまで最上位機種では、南部鉄器の羽釜を内釜として使っていたので、その重量1.9kgと重かった。なので女性やお年寄りには、「お釜が重すぎて、本体への出し入れが大変」という声があったそうだ。
今回の「炎舞炊き」は、内釜が重すぎるという点はかなり改善され、1.1kgまで軽くなっている。こうなると火力が低くなったのでは? と思う方も多いはず。一般的な内釜は、アルミ製の釜の底に発熱用の鉄板を貼り付けている。IH対応と謳われているフライパンと同じだ。
しかし「炎舞炊き」は、母材となる金属板の時点で鉄とステンレスとアルミをサンドイッチした業界初の特殊金属を使っている。だから底から側面に向けたカーブのある発熱部分もしっかり発熱、内釜全体を素早く加熱しつつ、保温性にも
すぐれた内釜になっている。
またお手入れも非常に簡単で、使うごとに内釜と内ブタを洗うだけ。内ブタはボタンひとつで2枚に分解でき、突起などもほとんどないため、スポンジでササッ! と洗える。
少し前の炊飯器は、内ブタに加えて蒸気の出口も洗う必要があったが、炎舞炊きでは蒸気の出口はメンテナンスフリーとなっている。消臭クリーニング機能も備えているので、炊き込みご飯などで内釜にニオイが付いた場合も心配ない。
スイッチ類は最低限のボタン数でシンプル。文字も日本語で大きく印刷されているので、お歳を召した方や視力が弱い方でも、使いやすいだろう。
和食中心の“もちもちごはん”が大好きなご家庭にはベストマッチ
かなり使い込んでみた「炎舞炊き」だが、全体的な印象としては、ややもちもち食感の柔らかめのごはんがお好きな家庭と相性が良いだろう。
また魚料理をはじめとした和食が中心のご家庭にもマッチする。「おかずはごはんを味わうためのもの」という方には、この上なくオススメしたい炊飯器だ。
洋食好きなご家庭でも、シャッキリやすしめしメニューを使えば、おかずを楽しむごはんが炊ける。
ごはんの仕上がりは水加減や米の品種にも左右されがちだが、いずれにしても「わが家炊き」を使い込んでいくと、自然に家族全員が美味しいというごはんが炊ける。自分好みのごはんに出会えるはずなので、ぜひ色々試してみてほしい。