家電製品レビュー
e-MTB4車種を一気に試乗比較!! 同じボッシュ製ドライブユニットでどれほど違うのか!?【コラテック編】
2020年1月8日 00:00
昨今、急速にラインナップが増えているe-bikeの中でも、特に急増しているのがマウンテンバイク(MTB)タイプのe-MTBです。各メーカーともe-MTBタイプを用意しているのはもちろん、同ブランドで複数モデルを展開しているケースも少なくありません。価格帯もさまざまで、200,000円台から800,000円超えのモデルまであるので、何がそんなに違うのか疑問に思っている人も少なくないはず。
そこで、コラテックの「E-POWER X VERT 650B(イーパワーエクスバート)」(関連記事)と「E-POWER X VERT CX-P」(関連記事)、トレックの「Rail 9.7(レイル)」(関連記事)と「Powerfly 5(パワーフライ)」(関連記事)の4車種を、昨年7月に兵庫県豊岡市にオープンした「UP MTB PARK in KANNABE」のe-bike専用コースに持ち込んでたっぷりテストしてみました。
すべてボッシュ製のドライブユニットを搭載するe-MTBですが、車種ごとに違いはあるのでしょうか? ここでは、まずコラテック2車種の試乗レビューをお届けします。
e-bikeの本命がMTBタイプである理由とは!?
各メーカーがe-MTBに力を入れているのには理由があります。1つは坂道を上る機会の多いMTBは、アシストの恩恵を享受しやすいこと。また、e-bikeは国内法規で10km/hまではペダルを踏む力の2倍までアシストが可能ですが、10km/hを超えると徐々にアシストが弱まり、24km/hでゼロになるように設計されています。
実際の山道では、街中では想像できないような急な上り坂も多いので、10km/h以下で走ることが多く、e-bikeのメリットをフルに活かせるのです。そのため、海外ではe-bikeのカテゴリではe-MTBが人気で、一大市場を形成しているほどです。
さらにMTBは、元々の車体重量がロードバイクなどに比べると重く、前後にサスペンションを装備した“フルサス”と呼ばれるタイプでは15kg程度のモデルも少なくありません。フルサスタイプのe-MTBとなると重量は22kg程度。トップグレードになると6~7kg台の軽さになるロードバイクに比べると、ドライブユニットやバッテリー搭載による重量増が同じ7kg程度だとしても、デメリットがあまり気にならないというのもMTBとe-bikeの相性が良いことの理由です。
そんなe-MTBの魅力を体感すべく、車両を持ち込んだ「UP MTB PARK in KANNABE」は、関西では数少ないスキー場に作られたMTBコース。リフトにMTBを乗せて山の上に運ぶことが可能ですが、e-bike専用コースも設定されていて、アシストを活かして頂上まで自力で上ることができます。e-MTBの魅力を体感するには、最適なコースといえるでしょう。
日本専用設計で乗りやすいコラテック「E-POWER X VERT 650B」
最初に試乗したのがコラテック「E-POWER X VERT 650B」。ボッシュが日本市場に進出した2017年からラインナップされているe-MTBです。街乗り向きのスリックタイヤが標準で装着されますが、今回はMTB専用コースを走るため、オフロード向きのブロックタイヤを履いています。
メーカー名 | コラテック |
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製品名 | E-POWER X VERT 650B |
実売価格 | 348,000円(税抜) |
車体構成はフロントのみにサスペンションを装備した“ハードテイル”と呼ばれるタイプ。前後ホイールは昨今のMTBでは標準的になっている27.5インチ径です。ボッシュ製のドライブユニット「Active Line Plus」を搭載しており、重量は20.2kg。
同じブランドから新型モデルが登場しているだけに、見た目にはちょっと古さを感じてしまいますが、またがると絶妙の安心感があります。今回試乗したモデルの中では、一番タイヤ径が小さいことに加えて、日本人向けにフレームが設計されていることが大きな理由です。「E-POWER X VERT 650B」はドイツ本国でも販売されているモデルですが、そのまま国内に持ち込むのではなく、日本人の体型に合わせてフレームのジオメトリーを見直している点にコラテックのこだわりを感じます。
実際にコースを走ってみると、取り回しの良さが光ります。車体が自分の体の下に収まっている感覚があるので、狭い林間コースなどでも取り回しやすい。それをもっとも感じたのが、「パンプトラック」と呼ばれる凹凸とカーブが連続する周回コースを走った時でした。この種のコースはペダルを踏まずに、ギャップを越える際に自転車を前に送り出すようにして加速させます。そのため、アシストを切った状態でチャレンジしましたが、ペダルを踏まずに一周クリアできたのは「E-POWER X VERT 650B」だけ。MTBとしての設計の良さを感じました。日本の山によくある、タイトなトレイル(山道)に合っているように感じました。
MTBに初めて乗るという人にも扱いやすいので、最初の1台としてオススメできるe-MTBです。はじめは標準のスリックタイヤで街乗りに使い、慣れてきたらタイヤを替えて山道に行くような使い方が合っているのではないでしょうか。
太いタイヤで乗り心地がいいコラテック「E-POWER X VERT CX-P」
続いて試乗したのは、同じコラテックの最新モデル「E-POWER X VERT CX-P」です。こちらもハードテイルのe-MTBですが、ボッシュ製の新型ドライブユニット「Performance Line CX」(関連記事)と、インチューブタイプのバッテリーを採用している点が大きな違いです。バッテリーがフレーム内に収められたことで、見た目の印象もかなり変わっています。「E-POWER X VERT 650B」と比較すると、わずか2年の間にe-bikeが大きく進化していることが感じられますね。
メーカー名 | コラテック |
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製品名 | E-POWER X VERT CX-P |
実売価格 | 未定(2020年春発売予定) |
ボッシュ製のドライブユニット「Performance Line CX」(関連記事)は、従来のタイプに比べて25%の軽量化、48%の小型化を達成。小さくなったことで、車体への収まりも良くなっています。そして、定格出力こそ法定の250Wと変わらないものの、最大トルクは「Active Line Plus」の50N・mから75N・mまで高められています。
試乗して真っ先に感じたのは、やはりライディングポジションの良さ。車体だけ見ると大きく感じるのですが、またがってみると車体のコントロールがとてもしやすいのです。「E-POWER X VERT CX-P」も、日本人向けにジオメトリーを専用設計しているのですが、それが効いている印象です。
また、オフロードの上り坂では、前出の「E-POWER X VERT 650B」に比べてパワフルになっている印象です。これは、ドライブユニットが発生できる最大トルク値がアップしているので、坂道でペダルを強く踏み込んだ際のトルクに違いがあるためと思われます。
例えばアシスト比1:2でセッティングされるモーターで、25N・mの力でペダルを踏んだとすると、最大トルクが50N・mの「Active Line Plus」では50N・mが発生し、これ以上強いアシストトルクを発生できません。しかし、最大トルクが75N・mの「Performance Line CX」ではあと25N・m分、アシストトルクを発生できます。同じ場所で乗り比べてみると、新型の「E-POWER X VERT CX-P」のほうが、ややパワフルなことがわかります。
個人的に気に入ったのは、27.5×2.8インチの太いタイヤ。このサイズは「27.5+」と呼ばれることもありますが、オフロードでのグリップ性能が高いので、e-bikeとの相性が優れているように感じます。滑りやすい路面で、あまり気を使わなくてもグリップ性能を失わない点がメリットです。アシストがパワフルに感じられたのも、もしかすると太いタイヤで路面にロスなく力を伝えている効果もあるのかもしれません。
段差などを乗り越える際のショックもタイヤが吸収してくれるので、乗り心地も良くなっています。詳細は次回の記事で触れますが、アシストの威力をフルに引き出すにはフルサスがもっとも適していると考えられるものの、いきなり高価なフルサスを購入するのはハードルが高いのも事実。そんな人には、ハードテイルでも太いタイヤを装着した「E-POWER X VERT CX-P」のような車種がオススメです。荒れた上り坂などでも、太いタイヤが路面を掴んでくれるので、アシストのパワーをしっかり伝えることができるからです。本格的な山道を走ってみたいけど、予算は抑えたいというユーザー向けのモデルです。
ということで、次回はトレックの「Rail 9.7(レイル)」と「Powerfly 5(パワーフライ)」2車種の試乗レビューをお届けします。