家電トレンドチェッカー
ボッシュの新型ドライブユニット&ディスプレイを一足先にチェックしてきた!!
2019年7月22日 00:00
以前にこちらの記事でもご紹介したが、ボッシュは日本向けe-MTBのドライブユニット「Performance Line CX(パフォーマンス ライン シーエックス)」を2020年に発売する。また、新型ディスプレイ「Purion(ピュリオン)」も日本でローンチ予定。トレックとスコットの新モデルに搭載されることが決まっているという。
今回は、これらボッシュの新型ドライブユニットとディスプレイに触れつつ、Bosch eBike Systems担当者の豊田 佑一氏に話を聞く機会を得たので、詳細をお伝えしていこう。
新ドライブユニットは“山専用”の「eMTBモード」を新たに搭載
現在、ボッシュはヨーロッパで「Active Line」「Active Line Plus」「Cargo Line」「Performance Line」「Performance Line Plus」という5つのe-bike用ドライブユニットを展開している。一方、日本で発売中のe-bikeには、日本仕様の「Active Line Plus」が搭載されている。
各ドライブユニットを簡単に説明しておこう。
・Active Line:フラットな街乗り向き(パワフルなアシストは不要)
・Active Line Plus:アップダウンのある街乗り向き
・Cargo Line:フラットな街乗り向きだが、子どもを乗せたり荷物を運ぶためにパワフルにチューニングされている
・Performance Line:街乗り+週末ツーリングなどの使い方向き(トレックのDual Sport+のようなイメージ)
・Performance Line CX:本格的な山を楽しむe-MTBなどに搭載
ヨーロッパで大ブームとなっているe-bikeだが、e-MTBという新しいカテゴリーを生み出したのが、今回紹介するハイエンドモデルの「Performance Line CX」といわれている。2015年に登場した「Performance Line CX」がフルモデルチェンジし、日本ではトレックとスコット製のe-MTBに搭載される。豊田氏によると、ヨーロッパの主要メーカーのe-MTBに搭載される予定だという。
開発コンセプトは“Uphill flow(坂を駆け上がる楽しみ)”。そのために専用開発されており、マグネシウム材の使用と内部機構の新設計により25%の軽量化、48%の小型化に成功。その重量は約2.9kgで、日本で展開されているドライブユニットしてはかなり軽量の部類に入る。
コンパクト化を実現したことで、最新MTBフレームのトレンドである「短いチェーンステイ長(クランク軸からリアホイール軸間距離)」を達成している。
「今回のコンパクト化では、短いチェーンステイ長の実現に加えて、e-bikeのフレームデザインの自由度が高くなります。ドライブユニットも含めたダウンチューブのラインのデザインに各メーカーも苦労しますが、コンパクトなサイズになることでより一体感のあるデザインを期待できます」(豊田氏)
そして、コンパクトながらも、内蔵される複数のセンサーで機敏かつ圧倒的なパワー(最大出力トルク75Nm)も実現するという。さらに今回のフルモデルチェンジでは、新たにe-MTB用途に特化したアシストモード「eMTBモード」が搭載される。
通常は「Eco」「Tour」「Sports」「Turbo」と4つのアシストモードが用意されているが、「Performance Line CX」を搭載するe-MTBの場合は「Eco」「Tour」「eMTB」「Turbo」の4つのアシストモードとなる。
この「eMTBモード」は日本仕様のドライブユニットにも搭載されるが、ライダーの踏み込み力に応じた最適なアシスト力を瞬時に提供するという。
「eMTBモードは、踏み込み力に応じてTourとTurbo間で適切にアシストしてくれます。弱く踏み込めばTourに近く、強く踏み込めばTurboに近づくと考えてもらうとイメージしやすいと思います。例えば濡れた土の上などは滑りやすく、発進する際にアシストが強いと後輪がスリップしやすくなりますが、弱く踏み込みアシストを抑えればスリップを防ぐことができます。初心者の方には安全面の強化になりますし、上級者の方には狭いスペースでのターンなどパワーを意のままに操ることができます」(豊田氏)
また「Performance Line CX」は、e-MTBを中心にトレックやスコットから順次搭載される予定で、ミニベロやクロスバイクなどのe-bikeには、今後も「Active Line Plus」を搭載するモデルが増える見込みだという。
腕時計並みにコンパクトなディスプレイ「Purion」
ヨーロッパでは2016年から展開されているコンパクトなディスプレイ「Purion(ピュリオン)」も日本で新たに発売される。ボッシュ製に限った話ではないが、これまでのディスプレイはハンドルのセンター部分に、操作スイッチは左ハンドル付近に設置されるのが一般的だったが、「Purion」は“親指で全てをコントロールする”というコンセプトで開発されている。日常の街乗りからe-MTBまで、幅広いライダーから支持を得ているディスプレイとスイッチの一体型となっている。
コンパクトで画面サイズも約3×3cmだが視認性も高い。本体上部に電源、右側にmicroUSBポート、左側に操作スイッチが配置されている。microUSBポートはメンテナンス専用となっているため、給電することはできない。従来モデルと同じく、ディスプレイには速度や走行距離、バッテリー残量情報などが表示される。本体下部には「WALK」ボタンが設置されているが、これはヨーロッパのみの仕様となり、日本仕様では搭載されない機能だ。
ちなみにヨーロッパで搭載される「WALKモード」は、その名のとおり、e-bikeを押して歩く際のアシストモードだという。例えば、山の中などの上り坂で車両を押して大木を乗り越えるような時には、WALKボタンを押し続けることで時速6kmまでアシストしてくれる。日本でも駐輪場のスロープを上るような時に非常に役立つ機能だが、日本の規定では搭載することができないのが残念だ。
現在、日本で発売中のボッシュ製ドライブユニットを採用するe-bikeのディスプレイには「Intuvia」が搭載されている。すでに購入された人のなかには、小型の「Purion」のほうがよかった……という人がいるかもしれない。しかし、ボッシュ製のディスプレイはコネクタが共通なので、理論上は、ディスプレイのみを交換してそのままe-bikeに乗り続けることもできそうだ。
e-bikeは完成車で型式認定を取得した乗り物であるために、通常のスポーツサイクルのようにパーツなどを交換すると、型式認定から外れてメーカー保証対象外になる可能性がある。もしディスプレイを交換したいのであれば、型式認定やメーカー保証の詳細、注文方法や交換作業等の内容を販売店に相談してほしい。
ちなみに「Purion」は、一般ユーザー向けのオプションパーツではなく、販売店向けのサービスパーツとして取り扱いが決まっているそうだ。バッテリーをそろそろ買い換えたい、大容量のバッテリーに変更したい、その際に一緒にディスプレイも変更したい、といったニーズに応える販売店向けのサービスパーツとなる。正式な価格は未定だが、ヨーロッパなどでは12,000円(交換作業工賃は別)程度で販売されているので、同等の価格で落ち着くだろう。また、日本での取り扱い開始時期は11月頃を予定している。
「ヨーロッパではディスプレイも6モデルを展開しており、バッテリーに関しては5つのラインナップが用意されています。e-bikeを購入後に、スペアパーツとして追加購入したディスプレイやバッテリーに変更し、自分好みのe-bikeにする方もいらっしゃいます。例えば、e-MTBを本格的に楽しむ方はその大きさゆえにIntuviaだと壊してしまう可能性がアップしてしまうので、小型のPurionを選ぶ方が多いです。その一方で、ディスプレイの見やすさを重視し、Intuviaを選ぶ方もいます」(豊田氏)
ヨーロッパとは規定が違うために、日本ではこうした購入方法が実現するのは難しいだろうが、スペアパーツとしてディスプレイの選択肢があることに魅力を感じる人も少なくないだろう。日本でもe-bikeの普及が進むことによって、パーツ交換などの議論も活発になり、ヨーロッパのようなスタイルになる日が来るかもしれない。
なおドライブユニット同様に、e-MTBのディスプレイは「Purion」が中心となり、その他のe-bikeには「Intuvia」を中心に搭載する傾向が続くようだ。