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冷蔵・冷凍・野菜室を自在切り替えできる「ぴったりセレクト」搭載の日立・新冷蔵庫で、「真空チルド」廃止のなぜ?

 日立アプライアンスが1月24日に発表した、フレンチ開きの6ドア冷蔵庫「R-KX/KW」シリーズは、下2段を暮らしに合わせて冷蔵・冷凍・野菜室に自在に切り替えられる「ぴったりセレクト」が特徴だ。

写真左から、フレンチ開きの6ドア冷蔵庫「R-KX57K」クリスタルミラー、「R-KW57K」ファインシャンパン、同クリスタルホワイト

 機能概要は既報にゆずるが、本稿では発表会で聞いた、「ぴったりセレクト」の構造と開発の経緯、「真空チルド」廃止の理由について触れていく。

「ぴったりセレクト」は、冷却器2台を搭載する日立ならではの機能

 1年前の2018年2月に発売された、同社のフレンチ開きの6ドア冷蔵庫「R-HW」シリーズは、冷却器を2台搭載したことが特徴だった。全4段からなる6ドア冷蔵庫のうち、上1段と下3段分を別々の冷却器で冷やす機構だ。

 本機構により、上1段にあたる冷蔵庫全体は通常よりも1~3℃低い2℃で冷却できるようになり、さらに下段にある冷凍庫とは別経路で冷却できることなどから、冷蔵庫内の湿度さえもアップできるようになった。当時同社は、この機能を「うるおい低温冷蔵」と紹介していた。

2018年2月に発売のフレンチ開きの6ドア冷蔵庫「R-HW」シリーズ
冷却器を2台搭載する(写真は「R-HW」シリーズのもの)

 先日発表された「R-KX/KW」シリーズでは、この機能を「まるごとチルド」と改称。さらに冷却器が2台ある点を活かし、今度は下2段で特徴のある機能を打ち出した。これが「ぴったりセレクト」だ。

 「ぴったりセレクト」は、ユーザーが任意に下2段を冷蔵・冷凍・野菜室に自由に切り替えて利用できる。

「ぴったりセレクト」では、ユーザーが任意に下2段を冷蔵・冷凍・野菜室に自由に切り替えられる
最下段を野菜室(写真左)、冷蔵室(写真右)に利用した例

 冷凍として利用する際は、背面にある冷却器からの冷気を大風量ファンで直接送って冷却する。冷蔵で利用するときは、ファンを停止し、ファンと庫内の間にあるフラップを閉じる。直接冷気を送らない代わりに、冷却器と庫内の間にある壁をとおして、間接的に冷気を伝えて冷やす仕組みを採用する。利用法に応じて熱の伝え方を変えることで、冷凍時は乾燥しやすくすることで霜などを防ぎ、冷蔵時は乾燥を防ぐことができる。

冷蔵と冷凍を切り替えたときの、ファンとフラップの動作
「ぴったりセレクト」搭載機の操作パネル

ぴったりセレクト開発の経緯

 ライフスタイルの多様化にともない、冷蔵室が大きいモデル、冷凍室が大きいモデル、野菜室が大きいモデルなど、各社が多様な冷蔵庫を発売している。

 同社の調査によれば、子どもが小学生・中学生の世帯は冷凍室の収納量が増え、歳を重ねるにつれて野菜室の収納量が増えるという。また、若い世代や子どもがいる世帯では冷凍食品をまとめ買いしたり、作り置きを冷凍したりと、大きな冷凍庫を好む傾向があるという。

 また同じ世帯であっても、例えばパーティーなどがあれば、当日には調理済みの料理を保存できる冷蔵庫の容量が欲しくなるだろうし、お取り寄せやもらいものなどがあれば、その食材を保管するスペースがほしくなる。1つの家庭でも、冷蔵・冷凍・野菜室のなかで足りないと思うスペースに変化があるはずだ。

 このような変化に対して、柔軟に対応できる機能として開発されたのが「ぴったりセレクト」だ。

 しかし課題もあり、「ぴったりセレクト」で、冷蔵(野菜)室と冷凍室を切り替えた場合、冷蔵庫が断熱材で覆われた密閉空間であるために温度変化はゆるやかにならざるを得ない。設定後の設定を安定した温度で利用できるようになるまでには、約半日を要するという。

若い世代や子どもがいる世帯では冷凍食品をまとめ買いし、歳を重ねるにつれて野菜室の収納量が増える

真空チルド廃止のなぜ?

 また今回の新冷蔵庫では、同社冷蔵庫の代名詞とも言える機能の「真空チルド」が廃止されている。

 このことについて同社はまず、ユーザーの冷蔵庫購入時の意見として、定格内容量が同じ各社の冷蔵庫を比較した場合に、真空チルドが他社製品のチルドルームよりも小さいと評価されていることを挙げた。

 チルドルームの容量が小さめになってしまう理由としては、室内を約0.8気圧の真空にするには、チルドルームの外壁をその気圧に耐えら得る強度にする必要があり、その結果として外壁を厚くせざるを得なかったとした。壁の厚さによって容量が小さくなっていたということだ。

チルドルームの収納量不足により、チルド食品が冷蔵室内にも保存された例
お馴染みの「真空チルド」の外見

 また上段の冷蔵庫全体を2℃に保つ「まるごとチルド」を搭載しているため、いわゆるチルドルームである「特鮮氷温ルーム」は、食材が凍らない約-1℃で保存する。食品に冷気を当てない間接冷却を採用することで乾燥を抑え、食材をみずみずしく保存できることもあり、今回のモデルでは「真空チルド」を廃止したという。

 実際に従来の真空チルドのドアを開けると、チルド室へ空気が入り込む「プシュー」という音がしたが、本機に搭載された「特鮮氷温ルーム」では、その音はしない。聞こえるのは、他社のチルドルーム同様に、引き出しがスライドするときの「カラカラ」という音だった。

上段の冷蔵庫全体を2℃に保つ「まるごとチルド」
「まるごとチルド」ルームの全体
「特鮮氷温ルーム」の外見
「特鮮氷温ルーム」をオープン

 ラインナップは「R-KX57K」と「R-KW57K」の2機種で、いずれも容量は567L。2機種の違いは、スマートフォンとの連携機能の有無で、その他の仕様は同じ。2月下旬から順次販売予定で、価格はオープンプライス。店頭予想価格は順に、43万円前後、41万円前後(税抜)。