家電ラボの徹底「本音」レビュー
冷蔵室に入れたビールがキンキン! 引き出し2つの温度帯を変えられる「ぴったりセレクト」搭載の日立冷蔵庫を使ってみた
2019年6月7日 06:00
日立が2019年1月に発売した新しい冷蔵庫の新製品「R-KX57K」「R-KW57K」は、冷蔵庫下部の引き出し2つを冷凍・冷蔵・野菜の収納に選べる新機能「ぴったりセレクト」を搭載。ライフスタイルに合わせて、引き出しを3つの温度帯から選べるようになりました。
また、冷蔵室もとても魅力的な機能が追加されました。「まるごとチルド」は、名前の通り、約2℃と一般的な冷蔵室より低い温度帯に冷蔵室全体(扉ケースを除く)を設定できるようになったため、チルドに入れなくても冷蔵食品の持ちがよくなり、菌の繁殖なども抑えられるようになっています。さっそく家電ラボでR-KX57Kを借りてテストしてみることにしました。
メーカー名 | 日立グローバルライフソリューションズ |
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製品名 | 6ドア冷蔵庫「R-KX57K」 |
容量 | 567L |
実売価格 | 400,000円前後(税抜) |
家電ラボでは、大型家電のレビューも行なっています。2018年の秋には、500Lクラスの冷蔵庫を5台お借りして、さまざまな実験を行ないました。中でも「真空チルド」や「スリープ野菜室」といった独自機能が優秀だったのが日立の冷蔵庫でした。食品の鮮度を長期間保てるので、わが家のような共働き家庭にはとても魅力的な冷蔵庫です。
ただ、今回ご紹介する冷蔵庫では、日立を代表する機能であった「真空チルド」や「スリープ野菜室」がなくなっているのです……! 当時のテストで、この機能はとても優秀だったので個人的には大ショック。しかし、そこを省いてまでも「ぴったりセレクト」や「まるごとチルド」を搭載したということは、新機能に大きなメリットがあるのかもしれません。さっそく見て行きましょう。
2つの引き出しを冷蔵、冷凍、野菜室から自由に設定できる
共働き世帯や高齢化世帯の増加などに伴い、ライフスタイルが多様化しています。日立の調査結果によると、「子育て世代を中心に冷凍食品の収納量が多くなる」「高齢になるにつれて野菜の収納量が多くなる」といった傾向が見られるそうで、暮らしに合わせて「自分で使い方を選べる」冷蔵庫として、「ぴったりセレクト」の冷蔵庫を開発したとのこと。
ぴったりセレクトに対応する引き出しは、冷蔵庫下部の引き出し2つで、それぞれ内部は2段となっています。設定は冷蔵室を開けた左側の操作パネルで行ないます。「ぴったりセレクト」はイラストで表示されているので「冷蔵」「冷凍」を簡単に切り替えられ、さらに冷却レベルを「強め」「標準」「弱め」の3段階に設定できます。
野菜を多く使い、出し入れが多いのであれば、真ん中の引き出しを「冷蔵」「弱め」に設定しておけば、野菜室として使うことができます。重くて持ちにくい白菜やキャベツなどを、腰をかがめずに出し入れできますね。
また、冷凍食品が多いご家庭であれば、引き出し2つをどちらも冷凍室として利用できます。真ん中の右側のスペースも冷凍室として使えますから、冷凍食品をたっぷり保存することも。1週間分をまとめ買いし、下処理などを済ませて保存するのであれば、引き出しを「冷蔵」と「冷凍」にして、冷蔵ゾーンを増やして1週間分の惣菜などを保存しておくという使い方もおすすめです。
使い方をそれぞれのライフスタイルに合わせて自由に変えられる、という点が魅力的です。ただ、例えば「コストコで買いすぎた! 今日は引き出し2段を冷凍庫にしよう」と、急に設定を変えることはできません。断熱材で覆われた密閉空間という性質上、温度はゆるやかに変化します。実際に温度変化を計測してみました。
・野菜(弱め)から冷凍(標準)はスピードが速い
野菜(弱め)では、7℃~9℃前後で温度が維持されています。冷凍(標準)にすると、一気に温度が下がり、30分強で0℃に到達しました。なお、冷凍(標準)の-20℃前後で温度が安定するまで約4時間かかっています。
とりあえず、冷凍食品が溶けない0℃以下になるまでは1時間もあればいいので、買い物に行く前に設定をしておけば、冷凍室として使えることがわかります。
・逆に冷凍(標準)から野菜(弱め)は0℃まで到達するのに時間がかかる
冷蔵庫の構造を考えると、温度を下げるよりも温度を上げるほうは時間がかかっています。実際に計測してみると、0℃に到達するまでに2時間以上かかりました。野菜(弱め)の温度で安定するのには約4時間と、トータルではほぼ同じ時間です。
もし凍らせて困るような野菜などを入れたい場合、2時間以上待つ必要はありますが、野菜などであれば常温でしばらく置いておいてもすぐには傷まないため、冷蔵→冷凍よりも緊急度は高くありません。
どちらにせよ、すぐに温度を変えることはできないため、計画的に使用する必要があります。
コストコでたっぷり買っても余裕で入る大容量
お借りしたR-KX57Kは幅68.5cmとスリムですが、大容量でたっぷり入ります。食材が既に入っている状態で、コストコで大量に購入して食材を入れてみました。
大きなピザもすっぽり収まります。話題のギリシャヨーグルト「オイコス12個セット」もそのまま入りました。高さのあるサラダなども余裕で入ります。
また、日立の冷蔵庫は一番上の段が低めなので、食材などが取りやすいことも特徴です。私は身長162cmですが、一番奥までは手が届かないものの、途中までは届きます。
少々気になったのは、庫内の明るさ。一番上の段にピザなどの大きな食品を置くと、下が暗くなってしまいます。LED照明が上にしかついていないので仕方ないのですが、他社はサイドや扉についているタイプもあるので、そこは改善してほしいと感じました。
日立の冷蔵庫は、ドアポケットの棚も分厚く、頑丈で安定感があります。外したり、高さを変えたりできるので入れるモノに対応できるのも便利です。
コストコで購入した1ガロンのジュースは3kg以上あって重く、片手で持つと手がプルプルするので、置く際に早めに離してしまい、ドンッと置いてしまいます。それでもビクともしません。安全性にとことんこだわる日立らしく、スマートなデザインというわけではありませんが、全体的に屈強で安定感のある冷蔵庫です。
なお、以前のモデルR-HW60Jは冷凍室が3段となっており、整理しやすかったのですが、ぴったりセレクトを採用したことによって2段になりました。たっぷり入ることには変わりませんが、冷凍したごはんなどを並べて入れておくのにちょうどよかった一段目がなくなっています。
1段目には大型アルミトレイで素早くホームフリージングできるデリシャス冷凍があり、素早く冷凍できることはもちろん、小分けしたごはんや肉、魚などを保存できて便利でした。デリシャス冷凍は真ん中の右側の冷凍スペースが2段となり、そこの上段に移動したため、小さくなりました。
日立の人気機能だった「真空チルド」未搭載。鮮度の違いは?
以前、お借りしたR-HW60Jでは、日立冷蔵庫の代名詞的存在だった「真空チルド」が人気でした。冷蔵室の下部分にあるチルドルームで、約0.8気圧の真空環境で酸化を抑え、乾燥なども防ぎながら、鮮度も長持ちしました。
ハムなどをラップせず、包装をはがしてからそのままそっと閉じ、入れてしまうようなズボラにはとても重宝する機能です。例えば、肉類のパックを少しだけ破って、そこからお肉を少々出して使い、そのまましまっても変色がほぼなく、とても感動しました。そんな「真空チルド」がなくなってしまったのは正直ガッカリ……。
実際にハムやチーズなどを1週間保存してみましたが、やはり「真空チルド」ありのほうが、みずみずしさは保たれていました。それほど大きく差があるわけではありませんが、特に端のほうは今回のモデルのほうが少し乾いています。
「真空チルド」は手前にレバーがあり、圧力に耐えなければならない分厚い壁だったため、食品があまり入らず、取り出しにくかったことは確かです。容量アップという点では、今回の「特鮮氷温ルーム」のほうが優秀だと感じました。
感心したのは、「まるごとチルド」で冷蔵室全体がチルドとして使えるようになったことです(ドアポケットは除く)。一般的な冷蔵庫より温度が低い約2℃のため、鮮度が長持ちし、雑菌などを抑えることができます。週末に作り置きした料理や下ごしらえした食材やチーズなどのチルド食品も、たっぷり保存できますね。
サラダなどもしっかり冷えてシャキシャキするため、「まるごとチルド」はとても気に入っています。
「新鮮スリープ野菜室」も未搭載で、野菜の持ちはどうなる?
今回、もうひとつ「ぴったりセレクト」機能搭載により、省かれてしまった機能があります。それは、野菜室に搭載されていた「新鮮スリープ野菜室」です。
「新鮮スリープ野菜室」は、プラチナ触媒(ルテニウム配合)で生成した炭酸ガスの効果で野菜の呼吸活動を低下させ、眠らせるように保存し、ビタミンCを守るほか、野菜室全体にフタをする「うるおいカバー」で水分を閉じ込めるので、みずみずしさが長持ちしました。同機能は野菜好きユーザーに好評だったのです。
以前、R-HW60Jをお借りしたときに「新鮮スリープ野菜室」で1週間野菜を保存してみたところ、他社と比較しても野菜がみずみずしく、鮮度が保てることを実感しました。今回のモデルではどうでしょうか。
こちらは「真空チルド」以上の差を感じる結果でした。今回のモデルでは、他社と同様に乾燥が進んでいます。1週間保存しても、まるで切り立てのようだったパプリカの断面は乾いており、椎茸が干し椎茸のようにカラカラに。袋に入れた葉物については、差がありませんでしたが、これはとても残念。
引き出しを「野菜」「冷蔵」「冷凍」に設定できるメリットは大きいのですが、特に野菜の鮮度保持については、前モデルよりも劣ってしまいました。野菜室として使わないのでしたら必要もないので、機能を省くのは仕方ないのかもしれませんが、どちらかは野菜室にしてずっと使いたい、と考えると少々物足りなさを感じます。
ただ、「真空チルド」や「新鮮スリープ野菜室」を使いたいのであれば、現行モデルで搭載しているタイプもあります。どちらもぴったりセレクト機能は搭載されていませんが、「XGタイプ(真空チルド、新鮮スリープ野菜室あり)」「HWタイプ(新鮮スリープ野菜室あり)」がありますので、ライフスタイルに合わせて選ぶことができます。こういったラインナップが豊富なところも、日立の冷蔵庫の魅力でもあります。
アプリは使いやすいが、接続はもっと簡単にしてほしい
この冷蔵庫には、スマートフォン専用アプリ「日立冷蔵庫アプリ」もあります。スマートフォンへインストールしてから、製氷室を開けながら「接続/節電」ボタンを押してペアリングを開始します。
最近の白物家電はQRコードなどを利用し、イラストを多用して接続もわかりやすくなっていますが、同モデルは文字と注意が多く、接続は慣れていない人にはハードルが高い印象を受けました。もう少し簡単に接続ができないと、リテラシーが低い方は途中で挫折しそうです。
接続することで、外出先でもペアリングしたスマートフォンから、節電モードや急速製氷、冷蔵室の温度(チルド/標準/弱め)、ぴったりセレクト室の温度(強め/標準/弱め)を、確認・設定できるようになります。また、最近10日分の冷蔵庫のドア開閉回数を確認できたり、ドアの閉め忘れがスマートフォンに通知されたり、取扱説明書などの確認などもできるようになります。
中でも、保存食材をスマートフォンで管理できる「食材管理機能」はとても便利でした。保存する食材をスマホで撮影し、購入日や経過日数を一覧で記録。買い物中でも、登録した食材をスマホで確認できます。また、賞味・消費期限を登録すると、リマインダー機能によってプッシュ通知で知らせてくれます。
食材管理系のソフトは商品群の中から選ぶなど、登録が複雑なものが多いのですが、これはとても簡単。サッと撮影して、登録日と賞味期限などをリマインダーとして設定すればOK。買ってきた食材は写真で一覧表示されるので、一目でわかります。ただ、この機能は冷蔵庫と連動しておらず、「便利なアプリ」で終わっているのが残念です。もう少しコネクテッドらしく、冷蔵庫と連携する機能を追加してもらえると嬉しいですね。
「スマートフォンで操作しないから……」という理由で、スマート家電を選ばない方も多いのですが、これから白物家電を購入するのであれば、スマート家電がおすすめです。スマート家電は「スマートフォンで操作するため」だけでの製品はありません。もちろんそれも便利ですが、Wi-Fiなどを経由してインターネットに接続することで、機能を追加したり、改善したり、ソフトウェアを最新にすることで本体がグレードアップする、ということが一番の利点です。
「ぴったりセレクト」もそうですが、ライフスタイルの変化が起きても快適に使えるようにするために、機能を追加したり、改善したり、ソフトウェアを最新にすることで本体がグレードアップするのです。特に日立はユーザーの生活に合わせて家電品を進化させる「ソフトウェア・デファインド コンセプト」を推進しており、積極的にソフトウェアをアップデートしているメーカーなので、今後に期待しています。
丸ごとチルド室はビールがキンキンに冷える!
冷蔵室全体が約2℃になる「まるごとチルド」は、自分で作った作り置き食材などの保存も適している……とさきほどお伝えしましたが、実はもう1つ嬉しいことが。
ビールなどの飲みものを冷やすとキンキンなのです!
わが家ではビールを冷やすために、常にチルドルームで保存しています。ただ、チルドルームは狭いため、ビール缶を入れてしまうと他の食品が入るスペースを削ってしまうので不便でした。
「まるごとチルド」であれば、どこで冷やしてもキンキンです。比較的温度が高くなりがちな1番上のゾーンで冷やしてみました。また、わが家にある一般的な冷蔵庫でも同じ場所にビールを保存し、温度を計測。すると、一般的な冷蔵庫では13.5℃、丸ごとチルドでは3.6℃でした。暑い日に飲むビールの喉ごしが全然違います! ビール好きとしては、これだけでも選ぶ価値があると感じました。
ラインナップが豊富なのでライフスタイルに合わせて選択を
冷蔵庫は長期間、しかも毎日使う家電です。家族構成が変われば、使い方も変わってくるので、「ぴったりセレクト」のような機能があれば、長期間ストレスなく使い続けることができそうです。今後10年以内に大きくライフスタイルの変化がありそうであれば、こういった冷蔵庫を選択肢のひとつに加えておくと安心ですね。
特に気に入ったのは「まるごとチルド」です。扉ケースを除いた冷蔵室全体がチルドになり、今までのようにチルドルームが満杯になることがなくなりました。冷蔵室に入れておけば、どこでもしっかり冷えるので安心です。
「ぴったりセレクト」のほかにも、「新鮮スリープ野菜」「真空チルド」などの機能が搭載されている冷蔵庫は、現在も販売されています。「野菜を長持ちさせたい」ということであれば、そういった機能を搭載した冷蔵庫を選ぶこともできます。日立はラインナップが豊富なので、自分のライフスタイルに合わせて選ぶことができるのは嬉しいですね。
まとめ
○ここがスゴイ! | ・ドアポケットを除く冷蔵室全体がチルドになる「まるごとチルド」が便利。しっかり冷えてビールもキンキン、サラダもシャキシャキ。チルドルームがゴチャゴチャにならなくなった ・「ぴったりセレクト」機能でライフスタイルに合わせて引き出し2つの温度帯を自由に変えられる。野菜、冷凍、冷蔵から選べるようになった ・「真空チルド」機能がなくなったことで、チルド室のスペースが広がり、食材の出し入れもしやすくなった |
△もうひといき! | ・「新鮮スリープ野菜」機能がなくなったことで、あんなに優秀だった野菜の鮮度保持がいまひとつになった ・3段あった冷凍室がぴったりセレクトに変わったことにより、引き出し2つがどちらも2段になった ・現時点ではスマートフォンの接続が複雑でわかりにくいので、初心者は迷うかも |