e-bike試乗レビュー

コンセントなしでe-bikeを充電!? 充電環境を激変させるJGR1.1専用レンジエクステンダー

走行可能距離を伸ばすだけでなく、e-bikeの充電環境に革命を起こしそうな「JGR1.1」専用のレンジエクステンダーが登場。撮影車はBESV(ベスビー)のデモ車。オプションの前後マッドガート、リヤキャリア、そしてフロントキャリアの「JACK the Bike Rack」も装備

2025年4月に東京・江東区にある東京ビッグサイトで開催されたスポーツサイクルのビッグイベント「サイクルモード東京2025」に出展したベスビーのブースでは、進化したアシスト制御や電装システムを搭載する新型「PS」シリーズの展示のほか、新製品のBESVレンジエクステンダー(以下、レンジエクステンダー)を装備したグラベルロードe-bike「JGR1.1」も展示されていた。

展示されたJGR1.1にはレンジエクステンダーを装備。バックも装備していて通勤など日常的な乗り方にも対応する実用性の高さもアピールしていた

e-bikeの性能を語る際、ひとつのポイントになるのがバッテリー容量。どれくらいの距離(時間)でアシストが使えるかはユーザーにとって気になるものだ。

筆者が購入したベスビーのJGR1.1は360Whのバッテリーをフレームに内蔵。公式で公開されている走行可能距離は130kmとなっていて実際に乗っていてもアシストをする距離や時間に不満はない。たいていのライドであればバッテリー容量に不足はないだろう。

ただ、JGR1.1は未舗装路も走れるグラベルロードe-bikeなので、バッテリーの消費が増えるトレッキング的なライドでは、後半バッテリーが厳しくなるかもしれない。また、キャリアのオプションも設定しているだけに、走破性の高さと合わせて泊まりがけのキャンプライドだってこなせるモデルだ。だけどライド距離が長くコースもハードになり、さらに泊まりがけとなると途中でバッテリーを使い切ってしまうことも予想できる。

言うまでもなくe-bikeのメリットはドライブユニットによるアシストなので、それが使えなくなると、ドライブユニットやバッテリーを積んでる分の重量増だけが残る「重たいバイク」になってしまうのでバッテリー切れだけは避けたいものだ。

バッテリー切れが気になるようなライドでは、帰りのことも考えて途中でアシストをオフにすることもあるが、それはe-bike本来の使い方ではない。欲しいときに欲しいだけのアシストがあるのがe-bikeだ

とはいえ、バッテリーは大容量化すると車体重量も増えるし充電にかかる時間も伸びるので、大きいバッテリーを積んでいればいいと言うものでもない。

そこでロングライドやヒルクライム、トレッキングライドなどバッテリーの消耗が激しい走り方をするe-bikeに設定されているのが「レンジエクステンダー」というもの。聞き慣れない名称だが、簡単に言えば走行可能距離を伸ばすための追加バッテリーだ。

ちなみに最近のクルマ(電動車)でもレンジエクステンダーが用いられているが、クルマの場合は充電用エンジンをレンジエクステンダーと呼ぶため、なんだかわかりにくいが、「レンジ」を「エクステンド」するためのものなので、JGR1.1の場合は追加バッテリーがレンジエクステンダーと言うわけだ。

このようにバッテリー容量を追加できるレンジエクステンダーだが、ベスビーがJGR1.1専用に設定したレンジエクステンダーは走行可能距離を伸ばすだけでなく、もうひとつの特徴があるのだけど、まずは製品のスペックから紹介していこう。

レンジエクステンダースペックと装着法

レンジエクステンダーの容量は198Wh(36V/5.5Ah)で、走行可能距離はレンジエクステンダーなしで130kmだったところが60km伸びて190kmとなる。

製品サイズは172.5×78×76.3mmで形状はドリンクボトルのような感じ。重量は1.1kgなので装着すると、約1Lの水を入れたドリンクボトルを積んだのとだいたい同じ重量増となる。

また、防水性は「あらゆる方向から雨がかかっても有害な影響がない」が担保されるIPX5クラスなので雨天ライドで付けていても問題はない。使用温度域もマイナス10℃~45℃と季節ごとで性能に違いが出ないようになっているのも頼もしい部分だ。

JGR1.1専用のレンジエクステンダー。容量は198Wh(36V/5.5Ah)。走行可能距離は130kmが190kmになる。価格は59,800円。レンジエクステンダーの保護機能として、残量が5%以下になると電力の供給を停止する機能も持っている

レンジエクステンダーをJGR1.1に装着するアタッチメントは、ドイツブランドのマウントシステム「フィドロック」が使用される。

フィドロックはフレーム側につける「バイクベース」と装着する側(今回の場合はレンジエクステンダー)に付ける「フォースコネクター」で構成されていて、バイクベースはシートチューブにある台座に装着するのが基本形となる。ここに付ける理由としては、重量バランス的に良いことと、レンジエクステンダーからフレームの充電ソケットまでが近いということがある。実際、レンジエクステンダーに付属のブリッジケーブルはシートチューブの台座に取り付けたときにちょうど良い長さになっている。

車体と繋ぐブリッジケーブル(173mm)は標準付属。車体とのマウントにはフィドロックというマウントシステムを採用。バイクベース(フレーム側)とフォースコネクター(バッテリー側)で構成される
コネクターはこのような形状。フィドロックはドイツのブランドでドリンクホルダーやスマホホルダーなど、いろいろなマウントシステムを発売している

フィドロックは装着したものを「ひねってセットし、レバーを引いてロック」という構造。セットするにはドリンクホルダーにボトルを挿すようなシンプルなものとはいかないが、「ひねる・引く」だけなので手間と感じるものはない。そして、がっちりと固定されるので、もし転倒したとしてもレンジエクステンダーがマウントから外れてしまうことはないだろう。最小限の手間で十分な安心を得られるという視点から、このマウントシステムを採用してるのだと思う。

装着は片手でできる。ベースに対して、やや斜めにコネクターを合わせて爪をかませた後、ひねるようにして装着
セットできたらセンターにあるロックを押し込むことで固定。取り外す際はロックから出ているベルトを引っ張ることで解除できる

ただ、そんなフィドロックにもちょっとだけ不満はある。独特のロック機構を持つので、マウント自体に厚みがあるためレンジエクステンダーが前にせり出した感じでセットされる。この状態でダウンチューブ側のボトル台座にドリンクボトルを付けるとボトルとレンジエクステンダーが干渉してしまうのだ。

ブリッジケーブルはこのような向きで装着する。専用品なので長さはぴったりでペダリングの際、足に引っかかるようなことはない

そのため、ダウンチューブの台座にドリンクホルダー付ける場合は、ホルダーの取り付け位置をオフセットできるアジャスターパーツを使うことになる。その他の手段としてはサドルの後ろやハンドル周りにつけるドリンクホルダーを使うのもいい。ちなみに筆者はJGR1.1でどこかに走りに行くときは、財布や食料など入れるためのバックパックを背負っていることが多く、コンビニで買ったペットボトルなどはバックパックのサイドポケットに入れていたりするから、フレーム側のドリンクホルダーがなくても対応はできる。

レンジエクステンダーが設定される以前のJGR1.1では充電ソケットの形状が違うため、レンジエクステンダーを使う場合はソケット交換が必要となる。この作業はベスビー取扱店で行なうことができる。なお、現在発売されているJGR1.1は新しい充電ソケットが標準で装備されている
充電ソケットの変更に伴い充電器も変更されている。従来型のJGR1,1オーナーがレンジエクステンダーを購入した場合、無償で新しい充電器と交換することができる。これはうれしい配慮

レンジエクステンダーがあれば、JGR1.1の充電にコンセントは不要に!?

そもそもレンジエクステンダーは長距離ライドや強いアシストを長時間を使用するヒルクライム時に使う追加バッテリーであるから、車体側バッテリーの容量で済む走り方がメインの人にとっては関係のないアイテムであった。

しかし、今回紹介しているレンジエクステンダーはハードなライドのための追加バッテリーであると同時に、e-bikeの充電環境に革命を与えるような存在でもある。そこで、ここからはこのレンジエクステンダーによって変わる充電環境の紹介をしよう。

まずは基本的な話から。バッテリーは充電と放電を同時に行なうことはできないものなのだけど、それはバッテリー単体で見たときの話。バッテリーを使う機器と合わせて制御することで「充電しながら機器の機能を使うことができる」。その例を挙げるとスマホ。これはバッテリーの充電をしながら待ち受けや通話、動画視聴などバッテリーを使う動作ができているだろう。

そして、ベスビーもレンジエクステンダーとJGR1.1のシステムに独自の機能を追加。レンジエクステンダーの電気で車体側バッテリーを充電しつつ、車体側バッテリーはモーターへの放電が行なえるようにしているのだが、今回のレンジエクステンダーの登場において筆者は「レンジエクステンダーから車体側バッテリーへの充電ができる」ということが最も推すべきポイントだと思っている。

車体側バッテリーに十分な充電がある場合はレンジエクステンダーからの給電はなく、車体側バッテリーが設定よりも減った状態から給電が始まる。そして、給電により車体側バッテリーの容量が設定値よりも高くなると、バッテリー保護のため再び給電を停止する

JGR1.1のバッテリーはフレームに内蔵されていて、整備や交換といったとき以外は基本的に取り外すことはできない。そのために充電をする際は車体を電源の側に持っていく必要があったが、集合住宅などの駐輪場では電源がなかったり、個人的な使用が禁止されていたりと充電ができない環境であることも多いのだ。

そうしたことからJGR1.1が欲しくても諦めていた人もいると思うが、そうした点を一気に解決するのが、このレンジエクステンダーだ。

前述したとおり、JGR1.1専用のレンジエクステンダーは車体側バッテリー充電する機能がある。ということは、レンジエクステンダーだけ部屋に持ち込んで充電をすれば車体側バッテリーを直接充電しなくても済んでしまうのだ。

車体側バッテリーが完全に放電してる状態でレンジエクステンダーをつないでも動作はしない。そのためレンジエクステンダーを使う場合は、車体側バッテリーを完全に使い切る前に接続すること
レンジエクステンダーの容量は198Whで車体側バッテリーは360Whなので、この手順を2回繰り返せば車体側のバッテリーをフル充電にすることもできるのだ

単純計算ではあるが、レンジエクステンダーを装備することによって伸びる走行可能距離は60kmなので、通学や通勤といった使用で問題ないだけでなく、習慣としているフィットネスライドや近場のサイクリングなど、それなりの距離を走るライドであってもレンジエクステンダーの充電だけでこなせてしまうだろう。

そして、長距離を走る休日のサイクリングに向けては、事前にレンジエクステンダーからの充電を2回行うことで車体側バッテリーをフル充電できる。そこにフル充電をしたレンジエクステンダーを装備すればどんなルートであってもJGR1.1のスペックをフルに生かしたライドが可能となる。

レンジエクステンダーが最初から装備されたJGR1.1も発売開始。車体とレンジエクステンダーを別々で購入するよりお得な特別エディションも設定。価格は450,000円

今回、筆者が所有するJGR1.1もレンジエクステンダーに対応するための作業を行なう予定だったが、事情により準備が整わなかったため持ち越しとなった。でも、レンジエクステンダーがあることのメリットはJGR1,1の購入を考えている人にとって非常に大きいと思うので、準備が整い次第、作業を済ませ(ベスビーではこれをリワークと呼ぶ)、実際にレンジエクステンダーを装着してどのようなメリットがあるか、問題はないかという部分をレポートしたいと思う。

車体側のバッテリーを極力減らした状態でレンジエクステンダーをつなぎ、実際どれだけ走れるかを試してみたい
深田昌之