家電レビュー
ドラムみたいな回転調理鍋はハマれば手放せない! パラパラ炒飯も思いのまま
2022年11月17日 08:05
最近は多種多様な電気調理鍋があり、容量や機能など自分の生活スタイルに合った製品が選べるようになりました。自動調理鍋の機能進化はそろそろ一段落したか……などと考えていたところ、2022年9月にアイリスオーヤマがまったく新しい自動調理鍋を発売。それが、ドラム式洗濯機のように鍋が回転し、食材をかき混ぜながら調理する「自動かくはん式調理機 CHEF DRUM」(以下、シェフドラム)です。
じつは、回転する自動調理鍋は業務用ではすでにありましたが、家庭用となったシェフドラムではどんな料理を作ることができて、その使い勝手はどうなのでしょうか? 気になる製品を我が家でじっくり1カ月試してみました。
今回試用したのは自動調理メニューが108種内蔵され、ダイヤモンドコーティング鍋が付属する上位モデル「KDAC-IA2-T」(直販価格:66,800円)。このほか、ほぼ同じ仕様ながら内蔵メニューが90種で内鍋にフッ素コーティングを施した「DAC-IA2-H」(直販価格:54,780円)もあります。
鍋が回転して9種類の調理方法。設置スペースは注意
シェフドラムの本体サイズは370×279×343mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約7.2kg。満水容量は4.5L(垂直時)で、カレーなら最大8人分が作れるサイズです。最初に製品を見た正直な感想は「でかい!」というもの。我が家の食器棚には炊飯器専用スペースがあるのですが、この炊飯器スペースの幅が約33cm。最近は一升炊き炊飯器でも幅30cm以下のものが多いなか、37cm幅というのはなかなかの大きさ。
シェフドラムの最大の特徴は「内鍋をドラム式洗濯機のように回転させて食材を混ぜながら加熱する」機能ですが、本体の角度で混ぜる力が変わってきます。設定できる鍋の傾きは垂直/傾き1(30度)/傾き2(50度)の3段階で、鍋の傾きが強いほど混ぜる力が強くなります。
大きさとともに気になったのが内鍋の重さ。本製品は炊飯器のように内鍋だけ取り外して丸洗いできるのですが、この内鍋がなかなか重い。自宅で計測したところ1,467gありました。洗ったりするときに少々面倒に感じる重さです。
気になる点もあるシェフドラムですが、ここからは実際に調理をしながらシェフドラムの使い勝手や味をチェックします。ちなみに、シェフドラムでできる調理は、「炒める/揚げる/煮込む/焼く/低温調理/無水調理/茹でる/発酵/スロー調理」の9種類。圧力調理には非対応で、炊飯機能はありません。
まずはコレでしょ! チャーハンはパラパラにできるのか!?
最初に挑戦するのはチャーハン。筆者は家電ライターという職業上さまざまな自動調理鍋を試用していますが、チャーハンがパラパラに美味しく作れる製品はあまりありません(2014年に発売されたティファールのアクティフライは唯一チャーハンが美味しく作れました)。
もちろん現在でもチャーハンが作れる自動調理鍋はあります。しかし、チャーハンが作れるかき混ぜ機能を搭載した自動調理鍋は、大抵の場合食材をかきまぜるユニットがフタ部分についています。このため、食材加熱時にフタを閉める必要があり、水分がうまく飛ばずベチャッとした仕上がりになりがちです。一方、シェフドラムはフタを開けたまま調理することが可能。チャーハンの仕上がりにはかなり期待ができます。
シェフドラム付属のレシピブックには「チャーハン」があるので、まずはレシピ通りに作ります。作り方はパックごはん(あるいは冷やご飯)を生卵、油とまぜてシェフドラムに投入。あとはチャーシューなどの具と塩こしょう、醤油などの調味料を入れて自動メニュー番号を選択するだけ。卵かけご飯が作れる人なら子供でも作れそうな手順です。
ちなみに、公式レシピブックのチャーハンはご飯300gと卵1個を使った約2人前の分量。とはいえ、チャーハンは冷蔵庫の残り物で適当に作るという人も多いでしょう。そこで、試しに残っていた130gの冷やご飯と「卵が好き」という個人の好みから卵2個を使って1人前のオリジナルレシピチャーハンも作ってみました。
チャーハンはフタを開いたまま調理するので、途中で余っていたソーセージも投入。うっかりが多い筆者にとって、具材を途中で追加できるのはなかなか便利です。
この後も何回か適当な材料でチャーハンを作りましたが、水っぽい野菜を大量に投入しなければすべて失敗なくパラパラの仕上がりになりました。これなら料理が苦手な家族にも気軽に「チャーハン作って!」と頼めます。ちなみに、15分とチャーハンとしては長めの加熱時間なので、油をケチるとパラパラというよりパサついた食感になります。「水っぽい具材を入れすぎない」「油はケチらない」の2点がシェフドラムのチャーハンを作るコツです。
炒め物はもちろん優秀、そして意外にもパスタが美味しい
次に試すのは回鍋肉。回鍋肉と言えば豚肉とキャベツをはじめとした野菜を炒めるシンプルな料理。とはいえ、肉に火を入れつつ野菜をシャッキリ仕上げる火入れ技術が必要です。また、加熱中に調味料を入れたり、トロミをつけるための水溶き片栗粉を入れたりと、複数の作業を並行する必要があります。
一方、シェフドラムなら回鍋肉や八宝菜、麻婆豆腐などの調理を「シェフドラムに材料を入れてボタンを押すだけ」で完了してくれます。回鍋肉なら野菜に豚肉、調味料、さらには片栗粉までをまとめて内鍋に入れ、あとは自動メニューでスタートするだけです。
完成した回鍋肉は、やや水っぽくはあったものの、肉にしっかり火が通りつつ、キャベツもピーマンもシャキシャキの仕上がりでした。火の通し方はかなり優秀だと感じます。
同じくレシピの材料に従って、麻婆豆腐も作ってみました。こちらは具材はしっかり混ざっているのに豆腐が崩れず、キレイにできあがりました。レシピ通りに作ると失敗はなさそうですが、好みに合わせて、具材や分量などをいろいろアレンジしてみるのもいいでしょう。
シェフドラムではいろいろな料理を作りましたが、家族にとくに好評だったのがベーコンとシメジを使ったクリームパスタ。作り方は回鍋肉と同じようにすべての材料を入れてシェフドラムをスタートするだけ。麺をわざわざ別の鍋で茹でる必要もなく、非常に手軽に作れます。しかも、調味料は牛乳とバター、顆粒コンソメ、塩こしょうと、日常的に家にあるものばかり。調理前は「生クリームを使わないから濃厚さが足りないのでは?」と不安でしたが、パスタの小麦粉が溶け出すのかトロリとしたソースの濃厚な仕上がりになりました。
何を作ってもほぼ失敗がないシェフドラムでしたが、唯一筆者が手こずったのが揚げ物。シェフドラムは鍋を回転させることで少量の油でも揚げ物ができるといいます。実際に試してみたところ、春巻きのような皮がしっかりしたものは成功するのですが、フリッターなどの衣がついた揚げ料理は、衣が剥がれてしまうことが多かったです。揚げ物は春巻きや素揚げなど、衣が剥がれにくい料理を選んだ方が良いかもしれません。
飴色タマネギが至高! これだけで料理レベルが格段にアップ
いろいろな調理を試しましたが、個人的に一番気に入ったのが「飴色タマネギ」が作れるところ。飴色タマネギとは、タマネギをひたすら油で炒めたもので、カレーやハンバーグなどの料理に入れることで料理の美味しさを数段アップしてくれる食材です。
ただし、タマネギを茶色いペーストになるまで炒める必要があるため、電子レンジなどで時短しても1時間以上の手間がかかります。しかも、タマネギが鍋に焦げ付かないようにつきっきりでヘラで炒める必要があり、調理中に放置ができないため手間がかかります。
シェフドラムはこの飴色タマネギを作る自動調理メニューを搭載。ちなみに、自動調理時の調理時間はなんとタマネギ2個分で約2時間です。
強火で短時間で焦がして作った飴色タマネギは甘みや旨味が少ないことがありますが、シェフドラムの飴色タマネギはじっくり長時間火を通すので、甘みと旨味が凝縮された濃い味です。水分を抜きたい場合は蓋を開けて炒め、濃い色にしたい場合は加熱延長をすればOK。
シェフドラム以外にも飴色タマネギが作れる自動調理鍋はあるのですが、加熱ムラがあったり調理の途中でかき混ぜながら水分を飛ばす工程が必要などのデメリットがありました。シェフドラムは最初から最後まで全自動で調理ができ、さらに全体的にムラのない加熱調理をしてくれます。
できあがった飴色タマネギを使ってシェフドラムでカレーを調理してみました。一般的な自動調理鍋は焦げ付き防止のために肉や野菜を煮た後にカレールーを入れますが、シェフドラムは加熱中に攪拌するので最初からすべての食材を入れて一度に調理が可能です。
使う人を選ぶけど、使いこなせれば超優秀な調理器具!
シェフドラムを1カ月以上使って感じたのは、誰にでもオススメできる製品ではないけれど、生活スタイルに合えば非常に魅力的な製品であるということ。回転するという機構上、通常の自動調理鍋よりサイズが大きいので設置場所を選びますし、一度収納してしまうと、7.2kgという本体の重さから使うのが面倒になりかねません。また、内鍋が重いので、調理や洗うときの取り回しにもちょっとした気合いが必要です。
一方、炒め物が自動で美味しく作れるという点で、シェフドラムは唯一無二ともいえる製品です。世の中には炒め物ができる自動調理鍋もあるのですが、蓋を閉めた密閉状態で調理するものがほとんどで水っぽくなりがち。シェフドラムは蒸気を逃がしながら調理できるためか、炒め物の仕上がりが段違いです。
チャーハンや野菜炒めなどを手間なく失敗なく作るのに、いまのところこれ以上の選択肢はないと感じます。記事ではあまり言及しませんでしたが、もちろん煮込み料理も美味しく作れるので、料理のバリエーションの広さという点でシェフドラムはかなり優秀です。
個人的に気に入ったのは、やはり飴色タマネギが簡単に作れるところ。飴色タマネギを使った料理を出すと、とにかく家族の食いつきが違います。現在我が家では10台近い自動調理鍋があるので、シェフドラムをどう運用するか悩んでいたのですが、家族からは「タマネギのためだけにシェフドラムは家に置いておいて!」という声が挙がったくらいの人気でした。個人的には「飴色タマネギ専用調理機」としてだけでも価値のある製品だと感じています。