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待望のパナソニック調理鍋、何がすごいの? 圧力&かき混ぜ二刀流で簡単ごちそう

パナソニックのオートクッカー ビストロ NF-AC1000

パナソニックが2月上旬に発売する自動調理鍋「オートクッカー ビストロ NF-AC1000」。

圧力と自動かき混ぜの機能が付いた初の調理鍋として注目の製品だが、いったい何が今までと違って、どんな料理が作れるようになるのか。製品発表イベントで取材と試食をしてきたところ、ますます手に入れたい気持ちが高まったため、取材時点で分かっている点や、新しいポイントを紹介する。

ビストロ(Bistro)は、オーブンレンジやトースターなどだけでなく、オートクッカーなどを含むブランドへと拡大した

圧力とかき混ぜが両方できると、何が良いのか

「圧力」と「かき混ぜ」の機能を1つの家庭用電気鍋で組み合わせたのは業界初となっているが、いったい何がすごいのか?

いま市販されている製品をみると「かき混ぜができる電気鍋」は、チャーハンや野菜炒めといった、焦げ付きを防ぎながら調理するレシピに対応するのが特徴的。その混ぜ方は製品によって異なるが、上フタから出た2本の棒のようなもので混ぜる製品や、鍋自体が回転するものもある。

一方で「電気圧力鍋」の利点は、煮物やローストビーフなどを時短で作れること。炊飯に使った場合は、圧力をかけて粘りのあるごはんが炊けるのも特徴だ。

しかし、鍋を密閉空間にすることが必要な圧力機能と、かき混ぜの機能を両立させることは、これまで難しかったという。パナソニックは、ホームベーカリーの攪拌(かくはん)で培った回転技術と、炊飯器などの圧力技術を応用することで、その両立を可能にした。

圧力とかき混ぜの両方を実現

今回のオートクッカー ビストロが持つ大きな特徴は、かき混ぜを「鍋底」で行なうこと。独自の羽根で鍋底をさらうように混ぜることで、焦げ付きを抑えつつ、高い火力にできるため、煮込みなども濃厚な仕上がりになる。例えばミートソースやチャーハンなども、鍋の前に付きっきりになることなく、一定時間待っていればできあがるため、その間に他の料理や家事、趣味など別のことができるわけだ。

かき混ぜる羽根の部分
鍋底をさらうようにかき混ぜる
内鍋を外してみると、一般的な電気鍋よりも底が浅めで幅広い。熱源に広い面積で触れさせるための工夫。側面にはリブ(突起)があり、食材が上下にも効率よく混ざるようになっている

しかも、業界最高クラスという約2気圧の高圧をかけられて、魚の骨なども柔らかく、時短で調理できる。「ほったらかしなのに調理時間も短い」というわけだ。もちろん、ただ高圧であれば良いわけではなく、塊肉の収縮を抑えてトロトロにする中圧や、野菜の食感を残す低圧など、メニューや食材によって使い分けができる。

業界最高クラスの高火力
鍋肌をかき混ぜ、焦げ付きを気にせず高火力が使える

具体的に圧力とかき混ぜの両機能を使うメニューとしては、シチューや、豚の角煮などが挙げられる。鍋底からかき混ぜることによって、煮汁そのものを少ない量で焦げ付かずしっかり濃厚な味に仕上げられることと、圧力をほどよくかけて肉を柔らかくするのを両立できる点が、大きなメリットとなる。

シチューの肉を柔らかく、時短で作れる
ビストロ オートクッカーで、あめ色玉ねぎもほったらかしで作れる。玉ねぎの個数にもよるが、中3個(570g)で約1時間5分~中5個(940g)で約1時間20分

これからは“攻め”の調理鍋に注目?

電気調理鍋としては他社製品が先行している中、満を持して投入されるパナソニックのオートクッカー ビストロにおける注目ポイントは、失敗しない“守り”だけではなく、ラクしながらもおいしさを追求する“攻め”の調理だ。

業界最高という1,285Wの高火力も特徴だが「単にスペックとして火力が強いからすごい」のではなく、それを調理に活かしておいしく作れる仕組みがあることが大事。

これまでの多くの電気調理鍋は“失敗せず、誰でも簡単にレシピ通りの料理が作れる”ことを可能にしてくれた一方で、焦げなどの失敗をなるべく防ぐには、ただ高火力にすれば良いというわけではなかった。

一方で、オートクッカー ビストロのかき混ぜが、説明された通り、焦げを防ぎつつ底からしっかり混ぜられるなら、場合によっては人間が火加減を気にしながらオタマでかき混ぜるよりも確実に失敗を防いで、火の入り具合もちょうどいい仕上がりになるだろう。

オートクッカーだとほったらかしで作れる、あめ色玉ねぎ。普通の鍋などで、焦げないようにずっと見ながら作るのは大変

ちょっと贅沢な、ホテルニューオータニ監修メニューを試食

このオートクッカー ビストロとコラボレーションした、ホテルニューオータニの監修メニューとして、「風味豊かなエスニックスパイス角煮」と「甘美なあめ色オニオングラタンスープ」を試食した。

ホテルニューオータニ監修メニュー「風味豊かなエスニックスパイス角煮」

スペアリブと豚肩ロースを使った角煮は、切ろうとすると骨からスルッと外れるほど。口の中でしっかり噛まなくてもほぐれるほどの柔らかさで、圧力をかけすぎて肉が縮んで硬くなるような失敗はもちろんなく、味の濃厚なスープもしっかり染み込んでいた。

オニオングラタンスープに重要なあめ色玉ねぎは、家で作るとなると、長い時間を掛けながら焦げないように見守るのはとても面倒だが、これが待っているだけでできるのはうれしい。なお、あめ色玉ねぎを作る時間は、中3個(570g)の場合で約1時間5分、中5個(940g)で約1時間20分とのことだ。

スープに入っているあめ色玉ねぎは、ただ煮込んだだけでなく、香ばしさもしっかり感じられた。香ばしいのに焦げた苦みはない、ちょうどいいバランスを追求できるのは、このオートクッカーの見せどころの一つだろう。

「甘美なあめ色オニオングラタンスープ」

ホテルニューオータニ監修メニューは、オートクッカーで調理する前後にも、肉に下味を付ける、バゲットをトースターで焼くといった、いくつかの手間をプラスする必要はある。それでも、ちょっとした仕込みや仕上げを加えることで、今までの煮込むだけの調理とは違う、非日常感のあるごちそうが家で作れるのは大きな魅力。使いながら慣れていけば、自分なりのアレンジがしやすいことも、このオートクッカー ビストロの良さといえる。

パナソニックとしても、これまでの調理家電での経験から、ユーザーは「失敗しないだけでは満足しない」ことを知っており、もっと使う人が自由にアレンジもできるように、“幅を持った”調理プログラムをこのオートクッカー ビストロに採用した。分量なども必ず決められた通りではなく、使う人が考えて、ひと手間を加えることも想定して調理ソフトを開発している。「炒め」や「圧力」「低温調理」など手動メニューも10種類あり、料理好きな人も、好みに合わせた使い方ができるという。

科学に基づき、誰が作っても同じような仕上がりへ。スマホ経由でレシピ追加も

アレンジもできるとはいえ、電気調理鍋においてまず大切とされるのは「誰が作っても同じような仕上がり」になること。そのためにパナソニックが強みとするのは「調理ソフト開発力」。

先ほど説明した高火力や構造など本体ハードウェアの部分だけでなく、センサーなどから得られる情報をもとに、科学的なアプローチを大事にしながら、誰でも同じ出来栄えを可能にする制御プログラミングが必要となってくる。

「調理再現性技術」の高さを強みとする

パナソニックには、そうした制御プログラミング技術を開発し、改善を続けるために実験や研究を重ねるプロ集団「Panasonic Cooking@Lab」がいる。Panasonic Cooking@Labのメンバーの食への深いこだわりは、以前炊飯器の開発現場を取材した際の記事でも紹介した通りだ。

一方で、気になるポイントとして「作れるメニューがどれだけ増えていくか」という点もある。人によって好きな料理や味付けは様々であり、それぞれの自分のお気に入りの味を再現してくれることが、長く使い続ける調理家電としてはとても大事だからだ。先行する他社メーカーは、一般ユーザーが投稿した独自のレシピを採用して使えるなど、公式だけではないメニューも続々と追加されている。

パナソニックは現時点で100種類以上の公式レシピ(1月16日時点)をスマホ用の「キッチンポケット」アプリからダウンロード/入れ替え可能となっており、これからも増えていく予定だという。もし今後、一般ユーザーが投稿したレシピも公式に採用されるようになれば、その時に流行っている料理の様々なアレンジバージョンなど、より多くの献立が家で楽しめることにつながりそうだ。

初期搭載の25メニュー
アプリには75メニューを掲載し、本体のレシピを入れ替えできる
本体上部の操作画面
アプリで本体メニューの入れ替えなどが可能
長く使うには、手入れのしやすさも重要。内鍋はフッ素加工で洗いやすく、内ふたなどももちろん外して洗える

今回の取材や試食を通じて、オートクッカーは「あまり時間はないけれど、ありきたりではない料理も作ってみたい」「とにかく手間なくラクに作りたい」など様々なニーズを、1台でカバーしてくれそうな製品だと期待が持てた。

価格はオープンプライスで、店頭予想価格88,000円前後と安価ではないものの、高級炊飯器が10万円を超えることが珍しくなくなった今、それとは比較にならないほど1台で多種多様な料理が作れて、家事の時間を節約できる製品として長く使えるなら、決して高すぎることはないと思える。

実際にこのオートクッカー ビストロがどれくらい使いやすく、失敗せずによりおいしく作れるのか、日常的に使い続けられそうかなどについては、今後の掲載を予定しているレビュー記事などでも探っていきたい。