家電レビュー
パナの自動調理鍋は濃厚シチューもパラパラのチャーハンも簡単だった!
2023年3月14日 08:05
パナソニックが発売した「オートクッカー ビストロ NF-AC1000」は、「圧力機能」と「かき混ぜ機能」を両立した自動調理鍋です。このジャンルの製品がなかなか登場しなかったパナソニックから満を持しての登場です。
電気圧力鍋は各社から発売され、種類も増えているので使ったことがある人も少なくないでしょう。電気圧力鍋は便利ではありますが、調理メニューがどうしても煮物系に偏ります。
一方、かき混ぜ機能のある調理家電は、シャープの「ヘルシオホットクック」やアイリスオーヤマの「シェフドラム」など一部の製品に限られます。便利な製品ではありますが、圧力調理はできません。
本製品はその両方を兼ね備え、かつ圧力鍋としては業界最高クラスという約2気圧の高圧に対応し、1,285Wの高火力という特徴も持っています。
こうした性能面などについては、既報の記事を参照いただくとして、今回は実機を使って実際にいろいろと試してみました。その実力をご紹介します。
ビストロシリーズの上品なデザイン
本体は黒を基調としたビストロシリーズのデザインを受け、シックで上品なつくりになっています。
本体のサイズは、333×336×260mm(幅×奥行き×高さ)で、質量は8.2kg、最大調理容量は2.4Lです。比較対象になりそうなヘルシオホットクックの「KN-HW24G」とサイズ感が近く、最大調理容量も同じです。
内部を見ると、取り外しのできる内ふた、羽根、内鍋があります。また蒸し料理用の蒸し板も付属しています。
食材を入れる内鍋のサイズは約240mmで、同じ240mmサイズの鍋と並べてみるとほぼ同じくらいです。鍋の大きさが気になるようでしたら、家庭にある鍋でイメージしてみてください。
羽は内鍋に取り付けます。ヘルシオホットクックが内ぶたにかき混ぜユニットをつけて、上から混ぜるのに対して、本機では鍋底からかき混ぜます。高火力で調理できるので、食材をしっかりかき混ぜて焦げ付きを防ぎます。
本体上部にはふたをロックするハンドルと、メニューの液晶表示画面に、選択やOK、STARTキーが並びます。調理メニューは「手動」「自動メニュー」から選べます。
手動の調理コースは、圧力調理、煮込み、無水調理、炒め、低温調理、圧力蒸し、蒸し、煮詰め、加熱、保温の10種類から選択できます。
自動メニューにはあらかじめ25種類のメニューが登録されています。本体には30件のメニューが登録でき、メニューリストは専用アプリから好みで編集可能です。
付属のレシピブックを見ながら、まずは作ってみましょう。
しっかり加熱できる圧力機能
圧力調理の実力を見るために、レシピブックの中から「ビーフシチュー(こだわり)」を選択しました。このメニューは市販のルーではなく、デミグラスソース缶を使うため、途中で調理を止めて、水溶き薄力粉を追加するという作業があります。
とはいえ、ほとんどの調理ははじめに食材を鍋に入れたら、あとはおまかせです。
調理時間は全部で1時間40分。野菜はもちろん、牛肉もほろほろとしっかり柔らかくなっていて、圧力鍋の実力を感じました。また高火で煮込んでしっかり鍋底をかき混ぜるためか、シチューの濃度がしっかりついていて、濃厚な味わいです。
レシピブック通りの材料をそろえて、鍋に入れ、あとはスイッチを押すだけ。このメニューは途中で作業が一回ありましたが、それも水溶き薄力粉を入れるだけ。こんな簡単な調理でこのレベルのものができあがるのですから驚きです。
肉じゃがは逆に煮込みすぎたりしない?
ただ、圧力鍋は加熱しすぎると、野菜などが柔らかくなりすぎて煮崩れるというケースもあります。電気圧力鍋でも、たまに煮込みすぎじゃない? と思うケースや、逆にもうちょっと煮込んでほしいケースもあります。この製品はどうでしょうか。
今度もレシピブックに沿って肉じゃがを作ってみます。ただし、レシピブックでは牛肉を使っていましたが、今回は豚肉を使っています。
肉じゃがもとてもいい仕上がり具合です。煮込みすぎず、物足りなくもないちょうどいい加減です。材料を入れるだけでこのできあがりなら、まったく文句ありません。煮込みに関しては非常に優秀だと思います。
炒め物で高火力+かき混ぜが真価を発揮
今度はかき混ぜ機能を使った炒め物をチェックしましょう。チャーハンをやってみます。まず下準備が必要で、ボウルに卵と調味料を入れておき、そこにあたたかいごはんを入れてよく混ぜ合わせます。
卵でごはんをコーティングしてから炒める、という方法ですね。内鍋にサラダ油を入れ、先ほどのごはんと焼き豚と青ネギを入れて、ふたを閉めてスイッチを入れます。
実は下準備の段階で卵でコーティングしたときに、「あとは炒めるだけなので、フライパンで炒めても同じでは?」と思いました。
でもできあがりを食べてみると、そんな思いはなくなりました。これほどきれいにパラパラで、ふっくらさせて炒めるのは、かなり難しいと感じました。
時短効果でいえば、10分程度短縮するだけでしかありませんが、料理のできがかなり高レベルです。おまかせすることで誰でもおいしい質の高いチャーハンを作れるというのが魅力です。
つぎに炒め物の定番、野菜炒めも作ってみました。これも材料を切って調味料と一緒に入れるだけです。
野菜炒めも美味しくできました。一番下に肉を広げたせいで、肉がしっかりと加熱されて、焦げ目が少し付くことで香ばしさを生んでいます。野菜も炒めすぎて水が出たりせずに、歯ごたえを残しています。火加減の難しい野菜炒めも、上手にできます。
本機の炒め物のレベルはかなり高いと思います。火力の強さと、それを生かしたかき混ぜ機能、それらを制御するソフトウエアがとてもよいバランスで機能しているのでしょう。
そのほかの使い方も試してみよう
圧力鍋といえば豚の角煮なども定番の調理ですが、ここではかたまり肉をゆでるレシピを試してみます。豚肩ロースを大きいかたまりのままゆでる「塩ゆで豚」というレシピです。
下準備としては肉は厚さ4cm以下になるように切り、塩コショウをすり込んで15分ほどおきます。今回使用した豚肉は厚さ4cm以下だったので、そのままかたまりで使用しました。
塩ゆで豚はとても柔らかくできあがりました。しかも脂もいい感じで抜けていて、こくがあるのにさっぱりと食べられました。レシピブックにあったタレが濃厚でよいアクセントでした。これも相当に高水準の料理です。
つぎは料理というより素材ですが、あめ色タマネギができるとのことなので、これもやってみました。
内鍋いっぱいにあったタマネギが、1時間10分後にはきれいなあめ色になりました。手間のかかるあめ色タマネギが自動でできるのはありがたいです。
ここまでは自動メニューにある調理をやってきましたが、最後に手動調理もやってみます。炒め機能が優秀だったので、焼きそばを作ってみます。
手動の場合は、ちょっと短めにやっておいて、できあがりの様子を見て加熱時間を追加するというのが、失敗の少ないやり方かもしれません。モードもたくさんあるので、慣れれば使いこなし甲斐のある機能だと思います。
メンテナンスと拡張性もチェック
最後に設置場所とメンテナンスの注意についても抑えておきましょう。
この製品は圧力鍋なので、調理中に蒸気が吹き上がることがあります。ですから炊飯器のように調理中は上に空間のある場所を確保する必要があります。
あめ色タマネギを作ったときなど、内鍋に焦げが付くことがありました。洗剤とスポンジで洗うだけではとれなかったので、内鍋に水を入れて、鍋を加熱してお湯にしてしばらくつけておきました。15分くらいおいたら焦げはきれいにとれました。
一般的にフッ素加工は使用しているうちに傷がついたり、そこから食材がくっつくようになることもあります。けっこうデリケートな加工なので、洗浄などのときには気をつけたいところです。
ただし、オプションで内鍋を別途販売しているので、加工が劣化したりしたときには買い替えができるのはうれしい配慮です。
また、オートクッカーはアプリにも対応していて、スマホからメニューを追加したり、スマホでチェックしたメニューを本機に送って調理することもできます。
使っているうちに新しいメニューも増えて、ソフトウエアの面からも長く使っていける仕様にもなっているといえます。
パナソニックの本気度がわかった
オートクッカー ビストロは自動調理器としては後発です。それだけにパナソニックが「ビストロ」ブランドを掲げ、ハイレベルな製品を投入してきました。
実際に調理してみると、簡単で美味しい本格的な料理ができあがります。圧力鍋としての実力はもちろん、炒めものもハイクオリティでした。
選択のポイントは、ひとつは置き場所があるか、もうひとつは価格でしょう。
置き場所については、普段しまいこんで使うときだけ取り出す、という製品ではありません。常時置くとなるとそれなりのスペースは使いますから、置くならそれなりの活躍をしてほしいものです。その点は、煮物系だけでなく、炒め物でも使えるというのは大きな利点です。
8万円を超える価格は、電気圧力鍋として考えたら高いでしょう。しかしいろいろなことができる自動調理器として考えたら、価格なりの価値は十分あります。炊飯器やオーブンレンジにも同程度の高価格なものがあり、それらと比べても調理家電としての実用性はかなり高いと思います。
「とにかく食材を入れてスイッチを入れれば、高レベルな料理ができあがる」という点に価値を見いだせる人は、ぜひ検討してみるべき製品だと思いました。