家電レビュー

ポテサラはもう面倒じゃなくなる!? 電気鍋界の異端児ホットクックだけの機能が進化

今回試用した2.4Lタイプの水なし自動調理鍋「ヘルシオ ホットクック KN-HW24G」。このほか、ほぼ同じ機能を搭載した1.6Lタイプ「KN-HW16G」も同時発売予定です

シャープの水なし自動調理鍋「ヘルシオ ホットクック」シリーズといえば、数ある電気調理鍋のなかでもトップクラスの人気。そんなホットクックシリーズに9月中旬、新モデルが発売されます。新モデルの最大の特徴は、ホットクックならではの「まぜ技」の進化。なんと、自動で生クリームの泡立てや、食材の潰し、卵の溶きほぐしといった作業まで任せられるようになりました。とはいえ実際のところ、この新機能は本当に便利に使えるものなのでしょうか? 発売前に我が家で2.4Lタイプの「KN-HW24G」をじっくり試してみました。

これは嬉しい! 本体幅が狭くなって収納性アップ

新モデルは「まぜ技」機能が進化したと前述しましたが、変更点はそのほかにも色々あります。なかでも個人的に注目したいのが本体デザインの変更です。ホットクックといえば、両側に持ち手が張り出したデザインが特徴的。本体重量がそれなりにあるため、持ちやすい形状は嬉しいのですが、一方で横の張り出し部分が大きすぎて場所をとるという問題もありました。

新モデルKN-HW24Gは、この横の張り出しがかなり小さくなっています。従来モデルの2.4Lタイプホットクックは横幅が39.5cmありましたが、KN-HW24Gは5cmほど狭い34.5cmになりました。5cmといえば従来モデルの約13%、かなりのコンパクト化です。ホットクックはこの幅の広さから「棚に入らない」という声を聞くことがありましたが、これなら収納できるようになる家庭も増えそうです。

本体サイズは345×305×256mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約5.8kg。3インチサイズの液晶ディスプレイを搭載します。本体カラーはホワイトも選択可能です
我が家の1.6Lタイプのホットクック(幅36.4cm/写真左)と新モデル(写真右)比較してみました。なんとKN-HW24Gは2.4Lタイプにもかかわらず、横幅は旧モデルの1.6Lタイプよりコンパクトに! 収納サイズの関係で2.4Lタイプを諦めていたユーザーにも嬉しいデザイン変更です

新しい「つぶし」機能を取り入れたレシピを作ってみる

新ホットクックで見逃せない機能といえば、前述した「まぜ技」の進化です。ホットクックとその他の電気調理鍋の最大の違いともいえるのが、加熱調理中でも食材がかき混ぜられる、この「まぜ技ユニット」の存在。新モデルでは、このまぜ技ユニットの最大回転スピードが約2倍にまでアップしました。

KN-HW24Gのフタ内側に装着された「まぜ技ユニット」。材料をただかき混ぜるのではなく、食材が未加熱で固いタイミングでは強く、調理後半の柔らかいタイミングでは優しく混ぜるといった賢い動きをしてくれます

最大回転数がアップしたことで、ジャガイモなどの食材を「潰す」レシピが追加されました。なかでも注目したいのが「ポテトサラダ(ゆで~つぶし)」というメニュー。なんと、ジャガイモを茹でてから潰すまでの工程を全て自動で行なってくれます。

ポテトサラダといえば、ジャガイモとニンジンをそれぞれ別の鍋で茹でたり、ジャガイモをフォークで荒潰ししたりと下ごしらえが面倒な料理。ですが手間がかかる割にはメインのオカズにならないので、市販の惣菜を購入してしまう家庭も多いのではないでしょうか? ですが、新レシピならジャガイモとニンジン、タマネギを「ポテトサラダ(ゆで~つぶし)」で自動調理したら、あとはマヨネーズとハムやキュウリをいれて混ぜるだけ。調理が格段に簡単になりました。ズボラな筆者でさえ「たまに作ろうかな」という気になります。

新レシピ「ポテトサラダ(ゆで~つぶし)」でジャガイモとニンジン、タマネギを加熱します
加熱後は一見するとジャガイモがペースト状になったように見えましたが、一部ごろっとした芋も残っていました。使用したジャガイモは男爵系の「北アカリ」です
調理後は粗熱をとって、ハムやキュウリ、マヨネーズを加えて混ぜるだけ。我が家はマヨネーズのほかにヨーグルトも入れてカロリーオフにしています。自分好みの味付けにできるのは自宅で作るポテトサラダの魅力です

このほか、ジャガイモにタマネギ、バターや牛乳、挽肉をいれて作る「ポテトコロッケの具」といったレシピもあります。こちらはポテトサラダと違い、かなりジャガイモをしっかりと潰して滑らかに仕上げてくれます。コロッケの具は通常、ジャガイモをゆでたあとに潰し、フライパンで玉ねぎとひき肉を炒めて粗熱をとり、調味料を加えて混ぜる……と、結構面倒な作業が必要でしたが、これなら材料をいれて放置するだけで具が完成します。あとは衣をつけて揚げるだけです。

「ポテトコロッケの具」を作ってみます
ジャガイモをペーストに近い状態までしっかり潰してくれます
できあがった具に衣をつけ、揚げたらコロッケの完成。こちらもかなり簡単なので、コロッケを作る頻度が増えそう。レシピ通りに作ると具はかなり柔らか。このため、衣付けは大変ですが、その分クリーミーで美味しいコロッケになります
ジャガイモと生クリーム、塩コショウだけを「ポテトコロッケの具」で調理すれば、滑らかな舌触りのマッシュポテトに! 手間がかからないので、牛肉料理の付け合わせやシェパードパイなどを作るのに最適です。潰し機能はいろいろなアレンジができそうだと感じました

かき混ぜやホイップ機能もなかなか便利、レシピの充実が課題かも?

まぜ技ユニットのパワーアップで、「潰す」だけではなく「卵をかき混ぜる」といった調理補助も可能になりました。その代表が「オープンオムレツ(材料まぜ~焼き上げ)」レシピ。こちらは材料を全部いれてスイッチを押すだけで、卵を溶く作業もすべてホットクックが自動的に調理してくれます。

材料をいれてスイッチを押すだけで完成するオープンオムレツ
前モデルKN-HW24Fより内鍋がフッ素コーティングされているため、完成後はスルッと皿に移せます
完成したオムレツはケーキのようにカットして提供。卵料理は火加減が難しいのですが、こちらは自動調理なので加熱しすぎでパサつくことなく完成。ケチャップとマヨネーズをつけてサンドイッチの具にしても美味しかったです

注目レシピには「ホイップクリーム」もあります。従来までのホットクックは「加熱しながらかき混ぜ」しかできなかったのですが、このホイップクリームメニューでは加熱なしでまぜ技ユニットが回転できます。最初「棒2本だけでちゃんとホイップできるのか?」と不安だったのですが、しっかり角が立つホイップができあがりました。

ただし、ホイップは料理によって使いたい固さが異なるのに、このメニューではホイップする時間は自分で調整できません。乳脂肪分45%のクリームだと9分立てよりちょっと固めになる印象で、絞りだし袋で使うのにはいいのですが、スポンジケーキをコーティングするのには固すぎるという印象です。このあたり、調理時間を自分で変更できるようにするか、自分でかき混ぜ時間を選択できる手動メニューがあると便利だと感じます。

今回は生乳を原料とした生クリームを使用したため「ホイップクリーム(乳等主要原料食品)」メニューを選択しましたが、植物性由来のクリームもホイップできる「ホイップクリーム(クリーム)」メニューもあります
写真は乳脂肪分45%の生クリームをホイップしたところ。中心はなめらかですが、周りはちょっと固めな仕上がり。クリーム200mlに対して15gの砂糖をいれる必要があるため、ほんのりと甘みを感じる仕上がりになります
全体を混ぜあわせると写真のような固さのホイップに。乳脂肪分45%だと、絞り袋でデコレーションするのによさそうな固さ
写真のようにパンケーキに添えてもダレてきません。もっと緩いホイップが必要な場合は、脂肪分が低い生クリームを選びます

電気調理鍋が数多く存在するのにホットクックが選ばれる理由

最近はリーズナブルな価格で多機能な電気圧力調理鍋が次々と発表されています。しかし、そんななかでも比較的高価格、かつ圧力調理機能を搭載していないのにもかかわらず「ホットクック」シリーズは常に電気調理鍋の売上ランキング上位をキープしています。

理由は色々考えられますが、ひとつは他社製品にはない「まぜ技ユニット」の存在があると感じます。たとえば、カレーやシチューのルーは鍋底に焦げ付きやすいため、一般的な電気調理鍋は「具材を煮込む」という作業のあとに「ルーを入れて再加熱」という2段階の作業が必要になります。一方、ホットクックは加熱中も鍋内をかき混ぜることができるため、最初から具材とともにルーをいれて調理が可能です。

カレーの具材をルーまですべていれて加熱できる製品は実はあまりありません。朝具材をいれて予約すれば、帰宅後すぐにカレーを食べられるというのがホットクックのすごいところ
水なしで野菜の水分のみで作った無水調理カレー。蓋内側にある蒸気センサーと、本体下部にある温度センサーで絶妙な火加減をキープして調理します

このほか、電気調理鍋としては数少ないIoT対応で、外出先からスマホでレシピを選んだり、選んだメニューをホットクックに送ったりといった使い方ができます。このため、自動調理のレシピ数も他製品と比較して断トツに豊富ですし、メニューの選択も簡単です。

スマホ専用アプリでは、自分が持っているホットクックのモデルにあわせたメニューを検索できます。レシピ数はかなり多いのですが、料理名や食材などでメニューの絞り込みもできます。写真は「ブロッコリー」でメニュー検索をしたところ
「占い」などのオモシロ機能を搭載しているのもホットクック上位モデルの面白いところ。新モデルは楽しみながらホットクックの使い方を覚えられる「使いこなし応援」機能や、テーマごとにおすすめメニューをまとめて登録できる「クックリスト」といった機能が追加されました
ホットクックを使うほどに「はじめまして」から「神レベル」までどんどんレベルが上がっていく「つかいこなし度」がわかるように。こういったお遊び要素はシャープならでは

もうひとつ、食材の腐敗防止といった衛生安全性を考えて「予約調理できるのは炊飯のみ」という製品も多いなか、ホットクックは最大15時間の予約調理が可能です。予約設定をすると生の肉や魚の腐敗しない安全な温度帯でキープし、予約時間に一番おいしくなるように調理をします。いまでこそ少数ながら予約調理に対応した製品もちらほらと見かけますが、ホットクックは初期モデルからこの予約調理を搭載していた点も見逃せません。

結局のところ新ホットクックは「買い」なのか?

細かな機能追加はありますが、新モデルのおもな進化は本体形状のコンパクト化と、まぜ技ユニットの高速回転により「つぶし」「かきまぜ」「ホイップ」といういままでになかった調理が可能になった点。この機能は、実際に使ってみると面倒なポテトサラダやコロッケ、ホイップ作りが格段に簡単になりますし、調理を失敗する心配もなく、かなり便利です。

一方、ちょっと残念だったのは「つぶし」「かきまぜ」「ホイップ」を使用したレシピの少なさ。いまのところ「つぶし」はポテトサラダかコロッケ(じゃがいも、カボチャ)、「ホイップ」はクリームのホイップかアイスクリーム作りくらいしかめぼしいメニューがありません。一般的な家庭でそこまで頻繁にポテトサラダやホイップを作ることはないため、「新機能のためにKN-HW24Gを購入すべきか?」と質問されると微妙なところです。

ただし、KN-HW24GはIoT機能が搭載されているため、今後もどんどん「つぶし」「かきまぜ」「ホイップ」を使ったレシピが追加される可能性が高いです。このため、旧モデルからの買い替えまでは推奨しませんが、新しくホットクックを購入する人には新モデルの購入をおすすめしたいと感じています。

倉本 春