家電レビュー

第2世代になったDJIポタ電、大幅強化の「Power 1000 V2」屋外でも家でも頼れる

今年6月に発売が開始された「DJI Power 1000 V2」

ポータブル電源を強化するDJI

DJIがポータブル電源市場に参入したのは、昨年4月のことである。「DJI Power 1000」と「DJI Power 500」が同時発売され、おもに屋外での電源ステーションとしての使用が見込まれていた。当時Power 1000の方をお借りしてレビューしている。

そして約1年後の今年6月、Power 1000の第2世代モデル、Power 1000 V2が 発売された。同時に上位モデルのPower 2000も発売されている。

よって現時点でのラインナップは、容量違いで500、1000、2000の3モデルとなった。以前は256Whクラスがモバイルバッテリーよりちょい大きめの入門機という扱いでよく売れたが、現在の日本では1,000〜2,000Whクラスがエントリー機という扱いになっている。今回Power 1000だけアップデートされてV2となったのは、もっとも売れ筋のサイズと容量だからだろう。

今回はそんなPower 1000 V2をレビュー用にご提供いただいたので、さっそくレビューしてみたい。

内容的にはPower 2000クラス!?

なにはともあれ、ポータブルバッテリーが1年でアップデートするということは、それ相当の進化があったから、ということである。まずざっくり前モデルと、それから今回同時発売となったPower 2000を比較してみたい。

モデルPower 1000Power 1000 V2Power 2000
容量1,024Wh1,024Wh2,048Wh
重量13kg14.2kg22kg
出力ポートAC×2 2,200WAC×4 2,600WAC×4 2,700W
USBーA×2 24WUSBーA×2 24WUSBーA×2 24W
USBーC×2 140WUSBーC×2 140WUSBーC×4 140W/65W
充電時間70分56分75分
簡易UPS20ms10ms10ms
DC入力8A×260A+8A60A×2
拡張バッテリー5台まで5台まで10台まで
アプリ対応オプション標準標準
動作高度3,000m5,000m5,000m
直販価格74,360円85,800円151,800円

大きさ的には、初代Power 1000とPower 1000 V2は同サイズである。V2は初代に比べて重量が多少重くなっているが、ポイントはAC出力数と最大出力だ。2系統から倍の4系統となり、合計出力数が2600Wと、Power 2000と100Wしか違わない。これは1024Whクラスのポータブルバッテリーの中では、異様にデカい。

全端子が正面にある独特の設計
背面は何もない
AC出力が4つに増強

全力で出力すれば30分も経たずに空になってしまう計算だが、この理由は明確だ。拡張バッテリーを接続して大容量化した際には、Power 1000 V2が電力の出入り口となる。その時に十分な出力を確保するためである。

拡張バッテリーの「DJI Power Expansion Battery 2000」は2024Whで、これを1台繋げば合計3036Whになる。この容量であれば、2,600W出力は妥当だ。

そのほか簡易UPSの切り替え時間やアプリ対応、最高動作高度などはPower 2000と同じになっている。インバータ部のポッティング処理なども含め、設計がPower 2000と同じだからだろう。

充電時間は満充電まで56分となっているが、80%までの充電時間は37分となっている。かなり早いが、ACからの充電では、他社も含め日本ではもうこれ以上の時間短縮は限界だろうと思われる。これ以上の充電速度を確保するなら入力する電力を上げるしかないのだが、日本の一般家庭では1つのコンセント口からは15A(1,500W)までしか取り出せないからだ。

ちなみにPower 1000 V2の海外向け220V仕様モデルは、ACから3,000W以上入力できるので、能力的にはまだ余裕がある。なおDC入力のSDCポートからは、日本仕様製品でも3,000W以上入力できる。拡張バッテリーとはこのレベルで電力をやり取りする。

初代Power 1000は単体の屋外電源ステーションという位置づけが感じられたが、V2はPower 2000同様アプリ制御に標準で対応したことで、家庭内利用も視野に入ってきた。これは初代発売後に拡張バッテリーが発売されたことで大容量化し、意味づけが変わってきたからだろう。

アプリ制御にも標準で対応

とはいえ、現時点でアプリからできるコントロールは少ない。AC出力のON・OFF、充放電限度、カスタムバックアップレベルは設定できるが、タイマーによる充放電動作などの機能がない。またAC入力を接続している間は、充電が止められない。

エネルギー管理では充放電限度、カスタムバックアップレベルが設定できる

時間帯でAC入力を入り切りできる機能は、電力が安い時間帯に充電して電力シフトするという、簡易オフグリッド生活を実現するには不可欠な機能だ。今後のアップデートに期待したいところである。

実際に使ってみた

Power 1000 V2は実際にどのように運用できるのか、2週間ほど色々試してみた。まず一般的なACからの充電だが、筆者の住む九州地方で充電すると、現時点でのファームウェアではアプリ側に「AC入力が過周波数」というエラーが表示された。

西日本では「AC入力が過周波数」というエラーが表示される

西日本は電源周波数が60Hzなのだが、入力側で認識できないようだ。ただ出力は60Hzで出ており、充電も問題なく何日間もできている。ただやはり気にはなるので、次回のファームアップで改善されることを望みたい。

続いてソーラーパネルからの充電だが、DJI公式サイトで扱っている「IBCPOWER 200W Foldable Solar Panel」(69,190円)を使用した。

DJI自体はソーラーパネルを製造しておらず、サードパーティ製の製品を取り扱っている。現在は「Zignes 120W ソーラーパネル」(48,840円)と「LINKSOLAR 200W Flexible Solar Panel」(55,990円)とIBCPOWERの本製品がある。200Wクラスの製品としては、IBCPOWERは4つ折りが可能な可判型だが、LINKSOLARは柔軟に曲がるものの1枚板の製品である。こちらは車の屋根に貼るなど固定用製品だ。

IBCPOWERは折りたたむと約60cm四方のサイズになるが、展開すると全長2.1mになる。この面積で200Wはまずまず妥当なところだが、重量が8.25kgもある。折りたたみ構造にすると背面にもカバーが必要で、自立スタンドも内蔵するので、1枚板のパネルより重くなるのは仕方がないところだ。だが地面直置きならともかく、どこか高所に設置しようとすると、この重量はなかなか大変である。

今回テストした「IBCPOWER 200W Foldable Solar Panel」

能力的には、地面に平置きでも140Wぐらい発電するので、なかなか優秀である。ただソーラーパネルは使い出しは景気よく発電するのだが、毎日使っていると発電量が落ちてくるので、連続使用で半年ぐらい経たないと本当の能力がわからないところである。出力はXT60端子なので、V2に入力するには例によって「ソーラーパネル アダプターモジュール」が必要である。

さらに今回は、「DJI Power 1kW車内超急速充電コンボ」(64,900円)もお借りした。いわゆる「オルタネーターチャージャー」である。オルタネーターチャージャーは、最近車中泊をする人たちの間で流行しているカーアクセサリーで、ガソリン車の発電機であるオルタネーターに接続して、大電力を取り出せるアダプターだ。一般の主力製品は500〜800Wクラスだが、本機は1kWある。

オルターネーターチャージャーキット「DJI Power 1kW車内超急速充電コンボ」

一方DJIには、「DJI Power 1.8 kW超急速車内充電コンボ」(64,900円)という製品もある。こちらはオルタネータチャージャーとソーラーパネルからのXT60入力もミックスしてバッテリーに突っ込めるというアイテムだが、オルタネータチャージャーとしての能力は600Wで、ソーラーパネルからの入力が1,200W、合計1,800Wという製品だ。オルタネーターチャージャーとしての能力は「DJI Power 1kW車内超急速充電器」の方が高いので、ご注意願いたい。

接続は電気系の知識があればそれほど難しくない。ケーブルの先端をバッテリーに接続する金具に挟み込むだけなので、バッテリーへの接線を完全に取り外す必要もなく、ネジを緩めるだけで接続できる。

バッテリーへ並列接続する
反対側をチャージャーへネジ止め

一番大変なのは、このケーブルを車内に引き込むところである。一般的な車両では助手席の前方下側にケーブルを通す穴があるが、すでに現行のケーブルでキツキツにパッキングされているので、さらに追加でケーブルを通すには何らかの加工が必要になる。ただ今回はあくまでも仮設なので、エンジンルームから外に引き出してV2に接続した。

とりあえず仮設でテスト

V2のSDCポートは上側が60A、下側が8Aなので、チャージャーは上側に接続する。エンジンをかけてアイドリング状態では、だいたい500Wぐらい入力できるようだ。特にアイドリング時の回転数が上がるということもなく、通常の回転数である。これで走行すれば、1,000Wぐらい入力できるということだろう。

アイドリング状態で500W程で充電できている

1,000W入力時には、V2をフル充電するまで約1時間半である。車でちょっと遠出する場合は2〜3時間は運転するだろうから、充電には十分である。3時間以上移動するのはザラという人は、せっかくなので拡張バッテリーを追加するか、最初からPower 2000を選択したほうがいいだろう。

AC出力は合計2,600Wだが、電気ケトルとトースターを接続して実験したところ、2,600Wを超えたところでバスンと切れるわけではなく、瞬間的には3,000Wぐらい出せるようだ。出力最大値は国の基準に合わせて変わるようで、リージョンで出力を管理しているのだろう。

ただ、AC入力を接続しっぱなしで使用すると、出力はAC入力の限界値である1,500Wを超えられない。DJIでは、AC出力がACとDCを行ったり来たりする際に10msの瞬電が発生するが、それを嫌ってAC入力がある場合には強制的にパススルーになる。したがって最大出力を使用したい場合は、AC入力を抜かなければならない。

このあたりの仕様は、家庭内で常設で使うには使いづらいところだ。物理的にケーブルを抜かなくても、出力が1,500Wを超えたらバッテリー出力に切り替わるとか、アプリでACからのパススルーを切断できるなどの機能が欲しいところである。

アウトドアを中心にホームユースにも

V2となった新しいPower 1000は、シンプル過ぎた初代をよりアップデートして、屋外でも屋内でも使用できるというスタイルに進化した。また拡張バッテリーを繋いで大容量化する際にも、アプリ制御や大出力対応など、初代より仕様面でメリットが大きい。

重量も約14kgで、大人の男性であれば両手で持って移動できる程度に収まっている。初代と同時発売されていた屋外専用バッグがそのまま利用できる点では、重量22kgのPower 2000よりも取り回しが楽だ。拡張バッテリーも単体重要は16.5kgなので、バラバラに持っていける点に強みが出る。

またDJIでは、Powerシリーズ専用のハンドトラック(代車)も用意している。特にPower 1000と拡張バッテリーとの組み合わせはバッチリで、二台積みにするとベルトで固定するだけでなく、ハンドル部にあるネジで本体を固定できる。つまりバラで積み下ろし、まとめて運搬という運用ができる。

専用ハンドトラックも販売している
ベルトでがっちり固定
ハンドル部のネジでボディ背面のネジ穴に固定できる

単体として見てもV2は1,000Whクラスとしては出力が大きく、真夏の停電時にエアコンを駆動するといった用途にも耐えられる。エアコンは起動時に大電力を食うが、安定すれば8畳用で600〜700Wぐらいなので、小一時間は駆動できるだろう。復旧するまでのつなぎとしては十分だ。

屋外持ち出しの強さは相変わらずで、安心できる。普段は家庭内電力シフト、週末持ち出しといったマルチな利用ができるところが強みの1台だ。

小寺信良