家電製品レビュー
“正しい作法”でコーヒーを淹れる、「カフェ・バッハ」監修コーヒーメーカーで自分の味を追求
2019年3月20日 11:48
コーヒーの好みは人それぞれの嗜好によるが、美味しいコーヒーを淹れるのに、良い事・悪い事は明確にある、とコーヒー界の第一人者、カフェ・バッハ店主の田口 護氏は言う。今回は、その田口氏が監修した「正しい作法」で専門店の味わいが楽しめる、ツインバードの「全自動コーヒーメーカー CM-D457B」を紹介しよう。
メーカー名 | ツインバード |
---|---|
製品名 | 全自動コーヒーメーカー |
品番 | CM-D457B |
実売価格 | 37,800円 |
最大の特徴は、全自動コーヒーメーカーでありながら、豆の挽き・蒸らし・抽出に工夫が施され、さらに豆の種類や自分の好みに合わせて、湯温と挽き方を変更できる点にある。コクや香り、味わいを調整でき、自分の好みに合わせたオリジナルのコーヒーを追求できる点が、他と大きく異なる。
本体の大きさは約160×335×360mm(幅×奥行き×高さ)で、重さは約4.1kg。最大3カップ淹れられるコーヒーメーカーとしてはかなり大きな印象だ。
付属品は、ふた付きのサーバー、ドリッパーの他、豆専用計量カップ、ミル用お手入れブラシに、5枚のペーパーフィルター(ペーパーフィルターのサイズは4カップ用で、カリタなら102、メリタなら1×2)と、必要なものは一通り揃っている。
使用方法は一般的なミル付きコーヒーメーカーと大差無い。準備の流れは、付属のカップで計量したコーヒー豆と、ガラスサーバーで計量した水を本体上部に入れ、ペーパーフィルターをセットしたドリッパーを、ふたをしたガラスサーバーに乗せて本体にセットする。あとは右側面の電源スイッチを入れ、正面の操作部のスタート/ストップボタンを押す。
だが他と違うのは、スタートする前に3段階の「豆の挽き目具合」、2つの「湯の温度」、1~3cupの「カップ数に応じた蒸らし湯量」を選択ができる点だ。この3つを選択・設定することで、全自動ながらコーヒーの味と風味に変化がつけられる。
CM-D457Bは、操作部のメニューダイヤルで「(ミルを使った)豆から」、「(ミルを使わない)粉から」のどちらでもコーヒーが淹れられる。さらに、ハンドドリップを楽しむなら「(豆を挽く)ミル」機能のみも選択できる。今回はミルで豆を挽いてコーヒーを淹れるのを主としてレビューを進めていこう。
普段飲み慣れていたコーヒーが俄然美味しくなった!
いつも飲み慣れているコーヒーをCM-D457Bで淹れてみた。普段なら湯を沸かして豆を挽く手間など、抽出前に湯の温度や挽き方に気を使うところだが、CM-D457Bは豆と水を杯数分入れ、温度とカップ数を設定してスタートボタンを押すだけでとても簡単。
抽出中はなんだか楽しい。豆を挽く音とともに芳醇な香りが部屋に広がる。湯の沸き上がる音が止まると、シャワーが正確にドリッパーを捉え始める。湯気を上げながら豆がふわりと膨らんで、今度は強いコーヒーの香りが部屋に広がり、透明感のあるコーヒーがサーバーを満たしていく。コーヒーを淹れていく過程が見えやすいデザインなので、準備から飲み干すまで五感を心地良く刺激する。
できあがったコーヒーは同じ豆とは思えないほどまろやかで美味しい。まず香りがクリア。一口含むとエグみや渋みがほとんど感じられず、スッキリとしたコクと爽やかな苦味が口腔内に優しく広がる。飲み込むと、ほんのり口の中に甘みが残ってもう一口、となる。温度が少し下がると味わいの変化も楽しめる。
豆の挽きから保温に切り替わるまでの、できあがるまでの時間のトータルは、83℃で設定した場合、2~3杯ならで7分弱、1杯分なら4分強(90℃設定はプラス1分長くなる)だった。できあがったコーヒーの温度は65℃で、ストレートでスッと飲めるちょうどいい温度だ。多少手間でもカップは温めておきたい。
ほかとは違う! 「正しい作法」を実施する数々の工夫
CM-D457Bは、他のコーヒーメーカーとの違いを外見からわかりにくい。だが、田口氏の「正しい作法」に則って美味しいコーヒーを淹れる工夫が、豆の分量計測、挽き、抽出温度、湯量、カップ数に応じた蒸らし湯量など、随所に盛り込まれている。少々長くなるがCM-D457Bの肝となる部分なので先に触れておこう。
豆の粒度を揃えるミルと、焙煎度に対応する計量カップ
ミルは、粒度を均一に揃える燕三条製のステンレス刃を使用した「低速臼式フラットミル」を採用。過度な摩擦熱で豆の風味を損ねぬようゆっくり挽き、雑味の元となる微粉を抑え、粒度を揃える。粒度の揃った挽き豆は、濾過速度やコーヒー成分の出方を安定させ、風味の良いコーヒーに仕上げるという。
挽き目は細挽き・中挽き・粗挽きの3種類が選べる。実際に挽いてみると細挽きでもパウダー状の微粉がほとんど見られないほど粒度が揃った印象だった。また、挽き終わった豆がペーパーフィルターにきれいな山型に積もる点も見逃せない。これも美味しく淹れるコツだという。挽いている時のモーター音と豆が砕ける音は響くが、低速で刃が回転するので、それほど気にならなかった。
ユニークなのは計量スプーンではなく、3種類の焙煎度に合わせた目盛が記された計量カップが付属している点だろう。コーヒー豆は焙煎が浅いほど水分を含み重く、深くなるにつれて軽くなる。また、豆の量は淹れるカップ数に合わせて減らすと言われているが、このカップ使えば、面倒な計算もスケールも勘も要らず簡単に計量できる。
選べる正確な抽出温度と、豆量に合わせた湯量・蒸らし時間
コーヒーの味を決める最も大切なものは「抽出温度」と言われている。CM-D457Bは「苦味・酸味・甘み・渋み・風味」の5つの要素のバランスのとれた味わいが得られる83℃と、しっかりした味と苦味を立たせる90℃の2つを選択できる。
水の加熱方法は、水をタンク内で設定温度に沸かしてから、湯を機械的に押し出して抽出を行なう。セットする水の温度や杯数に影響されず、安定した抽出を行なう点は一般的なコーヒーメーカーと異なる点だ。
それぞれの温度に設定したタンク内の湯の温度を計ってみたところ、設定温度よりもやや高めだった。これは本体内部を通って湯がコーヒー豆に到達する間に、温度が下がるのを想定しているからだろう。なお、杯数に応じた水量に変えても温度は一定で、抽出中も時折ヒーターが稼働して温度を一定に保っていた。
湯はドリッパーの内側に向かって6方向から杯数に応じて数回に分けて注がれる。「蒸らし湯量」を正しく選べば、抽出の最初に「豆に適量の湯を注ぎ、馴染ませ、行き渡らせ、蒸らす」にあたり、湯量と蒸らし時間をコントロールしてくれる。
「蒸らし湯量」で杯数の設定を変え、湯量と蒸らし時間を計測したところ、1cupの豆への最初の湯量は53mlで、2回目の湯が注がれるまでの蒸らし時間は36秒だった。2cupは65mlで38秒、3cupは96mlで43秒と明らかに差が表れた。2回めの湯が注がれる前に確認したが、いずれも豆にしっかり湯が行き渡っているようだった。
驚きなのは抽出が終わった豆の様子だ。まるでハンドドリップで淹れたかのように、豆はすり鉢状に残っていた。これは最適な蒸らしによって生まれる濾過層を表し、理想的な抽出ができた事を意味するという。豆量の少ない1cupでさえも、ちゃんとすり鉢状の濾過層が形成されていた。コレはなかなかすごいッ!
味については改めて述べるが、豆の種類と挽き目を変えずに、杯数(豆量と水量)を変えて淹れてみたが、杯数の違いによる差は正直わからないほどどれも美味しかった。つまり、CM-D457Bはたった1cupだけ淹れても、美味しいコーヒーがたてられる。
以上のように、CM-D457Bは一般的なコーヒーメーカーとは一線を画する計量、挽き、適切な温度、最適な蒸らしと抽出の工夫を揃え、田口氏の「正しい作法」を実現している。
失敗しないから、いろいろ試したくなる
少々大げさだが、CM-D457Bは飲み慣れていたコーヒーが生まれ変わるかのように美味しく淹れられ、豆本来の美味しさを素直に、失敗なく引き出してくれる印象だ。個人的には苦味とコクの強い深煎りタイプが好きだ。だが失敗しない安心感があると、これまで敬遠したり馴染みの薄い種類の中に、新たな好みも発見できるかもしれないと興味が湧き、試してみたくなった。
というのも、同梱されたガイドブックには、煎りの深さに応じた豆量や挽き目の目安がまとめられており、安心して挑戦しやすいからだ。そこで、普段は手にしない酸味が出る煎りの浅いもの、グラム売りのちょっとハードルの高いもの、以前から気になっていたエージングされたものなど、デパートの専門店やスーパーやで5種類購入し、湯温や挽き方も変えながら飲み比べてみた。
ペルー・アシェニンカ(中煎り)
フルーティな香りが立ち、爽やか酸味と甘みが、コクへと変化する。休日の午後にゆったりと楽しみたい贅沢な味わいの1杯で、どちらかと言えば苦手な酸味があってもとても美味しいと感じた。
伊勢丹・オリジナルブレンド(中煎り)
挽き豆中の香りが際立つ。1口目に酸味と苦味のバランスが絶妙で、爽やかなコクがあり後味が良く美味しい。
酸味の変化を試したかったので、温度を90℃に変えて抽出してみると、苦味が強く厚みが加わった一方で酸味が明らかに抑えられた。ややエグみも感じられたが、むしろミルクとの相性が良くなった印象だ。温度で味がはっきり変わるのを実感できた。
ウォッシュドエイジング ミディアムロースト(中深煎り)
1杯目は中挽き・83℃で淹れてみた。厚みのあるコク、苦味のバランスが良好でわずかな甘みも感じられる。飲み干す際に軽い酸味が鼻を抜けて爽やか印象だ。
次に温度は変えずに細挽きで淹れたところ、より苦味が深くなり、酸味がより隠れた印象になった。深いのに軽い味わいで、個人的にこの組み合わせが好きだった。
ウォッシュドエイジング フレンチロースト(深煎り)
フレンチローストはミルクやクリームとのアレンジコーヒーに向くと言われるが、パンチのある苦味と喉越しの甘みがクセになる。中挽き・83℃で淹れたが、苦味は強くてもまろやかでとても美味しかった。夕食後の1杯にピッタリな印象だ。
コーヒー好きにイチオシのコーヒーメーカー
ミル付きのコーヒーメーカーなので、手入れはどうしても必要だ。だが、ミルは簡単に外して分解ができる。また、メンテナンスモードも備わっており、本体側の豆の通り道の手入れも、水タンクの洗浄、強制排水なども初めから機能として用意されているのはとても良い。
ただし、使って気になる事は3つあった。1つ目は煎りの浅い豆は静電気が起きやいため、どうしてもシャワー付近に粉がこびりつきやすい。2つ目はドリッパーとシャワー部の隙間が広いので、挽き豆がテーブルに飛び散る事があった。3つ目は深煎りの豆は特にミル内部にこびりつきやすく、2g以上残ってしまう事があった。豆の種類を変える時は特に気をつけたい。
価格は一般的なコーヒーメーカーを軽く上回るほど高価だ。それでも、豆本来の美味しさをしっかり引き出し、本当に美味しいコーヒーを抽出するための工夫が随所に盛り込まれたものは他に類を見ないと言っても過言ではないだろう。しかも、自分流のコーヒーを追求する楽しさも味わえる。コーヒー好きを満足させる全自動コーヒーメーカーとして、大いにおすすめしたい。