家電製品レビュー

驚異的なアシスト力&登坂力を実感!! パナソニックのフルサスe-bike「XM-D2」で奥多摩・時坂峠を走ってみた

パナソニックのMTBタイプのe-bike「XM-D2」に乗るゼ!!

 スポーツタイプの電動アシスト自転車を「e-bike」と呼んでいますが、去年から今年にかけて新型e-bikeが続々と登場しています。そんななかで熱い注目を浴びているのがパナソニック サイクルテックのMTBタイプのe-bike「XM-D2」です。

パナソニック サイクルテックの「XM-D2(BE-EWMD42)」。MTB(マウンテンバイク)タイプのe-bikeで、前後ともにサスペンションを持つフルサス仕様です。メーカー希望小売価格は60万円(税抜)

 XM-D2が注目される理由を一言でまとめるとすれば「ラグジュアリー感」になるかもしれません。独自のマルチスピードドライブユニット、ハイグレードな各種パーツ、それからe-bikeのなかでもとりわけ美しいフレームカラー等々、非常に豪華なつくり。「パナが本気を出してきた!!」みたいな要素が満載のe-bikeです。

 e-bike好きな筆者もXM-D2に興味津々。「かなり良さそうだな~。どんな走りをするんだろうな~」というわけで、早速借りて、見つめて触れて、もちろん走ってみることにしました!

国産初のフルサスMTBのe-bikeは、パーツも塗装もイイ!

 前述のとおり、XM-D2はMTBタイプのe-bike。同社のe-bike「XM2」をベースに、ダブルサスペンション化やパーツの高性能化などを施して、より本格的なトレイルライドを可能にしたのがXM-D2です。

 XM-D2の実車に触れて、まずトキメいたのがパーツの良さです。高性能なパーツがふんだんに使われています。ジックリ見ていくと「……これで60万円って案外安いのかも!?」なんて思えてきたりも。主なパーツを写真で見ていきましょう。

XM-D2の全体像。乗車適応身長(目安)は163~178cm(シートポスト標準品のとき)。シートポストは、長さ300mmの標準品と、長さ230mmのショートシートポストが付属しています。完成車重量は26.2kg
変速機構は、フロント内装2段(29T/41T相当)×リア10段(11-36T)で20段。リアディレイラー(変速機)はシマノ製で、グレードはSLX。MTB用コンポーネントとしては、8種類あるうちの上から3番目で、なかなかの高級品です
電動アシストユニットはパナソニック独自のもの。フロントの変速機構を内部に備えており、電動で動作します。停車状態でもフロントのギアチェンジが可能
アシストユニットの操作はハンドルに備わった操作ユニットと表示ユニットで行ないます。ハンドルはフラットバーハンドルでグリップはERGON製。ハンドル幅は740mm
ハンドル中央に表示ユニット。サイクルコンピュータの機能も備わっています。microUSBポートがありますが、これはメンテナンス用で機器への充電などは行なえません
ハンドル左側に操作ユニット。MODEボタンで表示内容を「走行距離/平均速度/最高速度/積算走行距離/アシスト可能距離/バッテリー残量/前ギア変速位置」から選べます。左側▲▼ボタンは、短押しで内装ギアチェンジ、長押しでアシストモードの切り換えです。アシストモードは「NO ASSIST/ECO/AUTO/HIGH」。操作ユニット下側には「HIGHモード一発切り替えボタン」があります。上にはライト点灯ボタン
アシストユニットのバッテリーで点灯するLEDヘッドライトを装備
けっこう明るい♪
フルサスMTBで、前後タイヤの可動域はどちらも160mmあります
フロントフォーク(フロントサスペンション)は SR SUNTOUR製「AURON35-Boost RLRC-PCS DS 27.5” 160mmトラベル」で、一時的にサスペンションを動き過ぎないようにするロックアウト機構付き。ロックアウトはハンドル右側のリモートレバーで行ないます
リアサスペンションはROCKSHOX製「Monarch RT debonair 200×57mm」。リバウンド(サスペンションが元のトラベル量に戻るときの俊敏さ)をダイヤルで調節可能。サスの動きを鈍くしてベダリングロスを低減させるスレッシュホールド機構付きです
タイヤはMAXXIS「REKON+ 27.5×2.8」で、リムは DT SWISS「H1700 SPLINE 27.5」。前後ともスルーアクスルのハブです
前後ともシマノ製油圧ディスクブレーキで、グレードは Deore XT。MTB用コンポーネントとしては、8種類あるうちの上から2番目のハイエンド品です
ペダルもDeore XTグレード
サドルはERGON製。ややソフトなタイプという印象
フレームはアルミ製で、見る角度や光源によって青~紫に色が変化する特殊色(スペースブルー)で塗装されています。これはちょっと青っぽい見え方
角度を変えると紫っぽく見えます。とても深みのある色です

 本格的なパーツがふんだんに使われていますね~。また、作り込みも上質。さすが30年以上もオーダー自転車を作っているメーカーって感じです。かな~りラグジュアリー♪

登坂のラクさもワンランク上だった!!

 さてさて、眺めたり触ったりするだけじゃなくて、実際に走ってみましょう。山の中のトレイル的な道を走ろうと考えていましたが、都合がつかずに今回は峠道(林道)を走ってみることに。

 場所は、東京都の檜原村にある「時坂峠(とっさかとうげ)」です。峠へのルートは2つあり、東側から上るのが「本宿(もとしゅく)ルート」、西側から上るのが「樋里(ひざと)ルート」と呼ばれているようです。筆者も何度か行ったことがありますが、見晴らしがよい本宿ルートをXM-D2で上ってみることにしました。

奥多摩方面を走る自転車乗りにとってはちょっと有名な「いわゆる時坂峠」。標高570mくらいの場所にある「峠の茶屋」付近のことを指しています。峠への上り口は標高280mくらい。290mくらいの獲得標高になります。ルートの距離は3.5kmくらい。単純計算で勾配約8%のヒルクライムなので、多少は坂慣れしている人でないと「普通のスポーツ自転車で上るとけっこう疲れる」という感じになると思います
こちらがホントの「時坂峠」。山歩きルートの途中にあります。標高530mくらい

 それでは、XM-D2で登坂開始。今回は檜原村村営駐車場までホンダ「N-VAN」を使ってXM-D2を運びました。N-VANでe-bikeを運ぶ話は別記事で書きましたので、興味があればお読みください。

 さておき、出発。写真とともにXM-D2で走った感じをお伝えします。

檜原村村営駐車場にて、N-VANでトランポしてきたXM-D2を降ろします。ちなみに、都道からこの駐車場に上ってくる細道が、けっこうな激坂です
駐車場からちょっと走って「檜原とうふ ちとせ屋」さんがある場所が時坂峠の入口。左の道を上っていきます
上り始めが急めの坂。勾配10%以上という感じの坂が続きます。XM-D2のアシスト感は、かなりアグレッシブ。アシストモードは「ECO」「AUTO」「HIGH」がありますが、「AUTO」や「HIGH」にすると「前に行きたがる猟犬」のようにグイグイと前進します。モードを「HIGH」にしつつ前ギアを29T相当にすると、勾配10%でも平地感覚で進めてしまいます。思わず「マジか~凄いアシスト!」と口に出してしまいました
序盤からのキツめの坂が続きましたが、このあたりからは少しなだらかに。とは言っても10%前後の坂がずっと続きます。XM-D2のアシストモードを「AUTO」以上にしておけば、このあたりから先も鼻歌交じりで上れてしまいます
時坂峠への道は、こんな感じで視覚的にも高度感を感じられるワインディングが続きます。林道なので、ときどき路面が凸凹していたり。しかしフルサスでセミファットタイヤのXM-D2だと、凸凹道でもかなり乗り心地がいいです
写真中央上に見え隠れする道へと上っていきます。その上の山も越えていく感じ
眼下の家の向こうの道路が、上の写真の地点です。そこから約2分走ると、もうこんな高さまで! 時坂峠への道をXM-D2で走ると、10~15km/hくらいのスピードで登坂できるという感じです
空がかなり近づいてきました。こういう坂道でも力強くアシストしてくれるe-bikeだと、体力的にも精神的にも景色を眺める余裕がたっぷり。時坂峠へ上る本宿ルートは景色がいいんですが、e-bikeならそんな景色をじっくり楽しみながら走り続けられます
かなり上ってきました。ちなみにこのあたり、猿が出没したりも。ほかにも野生動物が生息していますので、サイクリング時はちょっとご注意を
XM-D2の登坂力のおかげで、全然疲れずにこんな高所へ。でも実はこの場所、ちょっと危険な場所なんです
道の右側がこんなコトになっています! ほぼ絶壁。この60万円の自転車落としたらどうしよう~、みたいな
絶壁から見下ろすと、さきほど上を見上げた地点が見えます
さらに上って行くとガードレールがないエリアが増えていきます。XM-D2のタイヤは安定したグリップ感があるので、こういうきわどい道でもわりと安心。また、強力なアシストにより上りでもある程度スピードが出ますので、失速してフラフラするようなこともありません
右側の道から上ってきました。中央に見える道へ行くと(自転車やクルマは通行禁止のようですが)、ホントの時坂峠があります。手前方向に行くと、自転車乗りが言うところの時坂峠です
先ほどの分岐からしばらく進むと峠の茶屋。時坂峠です
到着~♪ 体を動かし続けてきたので、多少汗が出たりもしましたが、しかしまあ、こんなにラクに時坂峠に上れちゃったのには感動しました!
筆者にとって時坂峠への道は、普通の自転車で上るなら「かなり頑張る必要がある急坂」です。でもXM-D2だと「労せず上れて途中の景色も抜群な道」に♪ XM-D2なら、毎日散歩感覚で時坂峠に上れちゃうと思います
時坂峠まで上って、そこから下ってきて表示ユニットを見たら、電池残量はこんな感じでした。あと3回は時坂峠へ上れちゃう感じ!?

 てな感じで走れたXM-D2でした。走行後の雑感など述べますと、XM-D2は筆者が今まで乗ったe-bikeのなかで、最もアシスト力&登坂力があるという印象。別格e-bikeかも!? フロント内装2段は凄いです。とりわけ「HIGH」にしてフロントギアを29T相当にすると、もうガンガン前へと進もうとするし、力強く進める。さらにリアのギアを36Tにしようものなら、20%以上の激坂の途中で停車しても、難なく再度走り出せます。

 ただ、ペダルに足を乗せているだけでも、アシストが働く傾向があったりもします。なので、慣れないうちには「ペダルを漕ぐつもりがないのに前に進もうとして怖い」と感じることがあるかもしれません。そういう観点で、気楽な街乗りにはあまり向かないe-bikeかもしれません。

 最初はXM-D2を高級e-bikeと思っていましたが、ちょっと考えが変わりました。すなわち、XM-D2は自分の登坂力を驚くほど大幅に増幅しまくるe-bikeだな、と。この「能力が大きく拡張された感覚」を味わうと、なんかこうメーカー希望小売価格60万円(税抜)というのが、かなり安いような気さえしてきます。

 さらにe-bikeだからこそ行ける場所や見られる景色というのがあります。クルマで行くには道が狭すぎる、普通の自転車で行くには急峻過ぎる、歩いて行くには遠すぎる。でも、行くと素晴らしい景色と出会えたり、これまでにない感動が得られたり。e-bikeだとそういう場所へ手軽に行けて新しい楽しみを味わえるわけですが、突出した登坂力と走行性能を備えたXM-D2だと、そういう楽しみがさらに広がるように思います。

 ともかく、かなりの実力派であるXM-D2。機会があればぜひ試乗してみてください♪

スタパ齋藤