e-bike試乗レビュー

普及キーワードは「スロースピード」!? さまざまな個性的な電動モビリティに乗ってきた

今年は電動モビリティ(乗り物)に注目が集まった年でした。4月に道路交通法の改正案が可決され、7月より「特定小型原付」という枠組みで、電動キックボードなどの最高速度20km/h以下の乗り物が16歳以上は免許不要で公道を走行できるようになりました。

電動キックボードが注目されがちですが、この枠組みに収まればバイクや自転車のような形でも法的にはOK。車輪の数も3輪や4輪でも構いません。そうしたことから、最近ではキックボード以外にも特定小型原付に該当する乗り物が続々と登場しています。11月17・18日に羽田イノベーションシティで開催された「HANEDA SLOW-SPEED MOBILITY EVENT」に小型の電動モビリティが集まると聞いて実際に体験してきました。

デュアルモーターがユニークな「ChatBike」

あいにく訪れた日は天気が悪く、屋外での試乗はできませんでしたが、屋内にも試乗スペースが設けられていました。まずはじめに乗ってみたのは、ebesah(エベサー)というブランドが販売している4輪「ChatKart(チャットカート)」と2輪「ChatBike(チャットバイク)」。どちらも歩道走行できる"特例"特定小型原付で、定格出力300Wのモーターをダブルで搭載し、960Wh(48V/20Ah)のバッテリーを採用している点は共通です。4輪モデルから試乗してみました。

4輪「ChatKart」。電動カートのような使い方も想定しているとのことで、転倒しない4輪を採用しています。価格は278,000円
前輪にはクルマと同じようなサスペンション機構を採用。特例特定小型原付に必要な緑色のライトも装備。最高速度表示灯を点滅させることで6km/以下に速度制限をしていることを示します
モーターは後輪の左右に搭載し、合計出力は定格600Wで最高2,000W。荷物を積むためのバスケットも便利そう
シートはバイクのようにまたがるタイプ。電動カートでは珍しいタイプですね
実際に乗ってみると、速度上限は20km/hですが発進時の加速は結構パワフル。車体は傾けずにハンドルを切って曲がるタイプですが、その分安心感もありました

2輪「ChatBike」にも試乗してみました。こちらは前後ホイールにモーターが組み込まれており、2輪駆動としても走れますし、後輪だけの駆動に切り替えることもできます。メーカー担当者によると、普段は後輪駆動で走ってバッテリー消費を抑え、坂道などでは2輪駆動に切り替える使い方がオススメとのこと。

「ChatBike」の価格は222,000円。リアサスペンションの取り付け位置など、構造的には「ChatKart」と共通部分が多い
タイヤは前後とも10インチと小径ながら、空気入りのタイプ。2輪駆動で走れるのがユニークなところ
狭い場所での試乗でしたが、車体を傾けると自然と舵角がつき、ハンドリングはナチュラル。結構コンパクトに曲がることができました
ただ、路面が滑りやすかったので、調子に乗るとフロントから滑ります。後輪駆動にすると滑りにくくなったので、普段は後輪駆動で走るのが良さそう

4輪「ChatKart」は免許返納後の高齢者の移動手段としての使い方も想定しているとのことでしたが、バイクのようにまたがって乗れるので自分が高齢者になったらこういうのに乗りたいなと思えるものでした。速度上限を6km/hにするモードも備えているので、歩道の走行も可能です。

2輪の「ChatBike」についても、見た目のおもしろさだけでなくハンドリングも自然で乗りやすい。航続距離はどちらも40km程度とのことですが、シート下のスペースは荷物も入れられるので、電動キックボードよりも便利そうだと感じました。特定小型原付もこういう選択肢が増えることでおもしろくなっていきそうです。

その名のとおり折りたためる「タタメルバイク」にも試乗

昨年、今回と同じ場所で開催されたイベントでも出展されていたICOMA(イコマ)「タタメルバイク」。昨年は試乗できなかったのですが、今回は乗ることができました。コンパクトに折りたたむことができ、600Whのリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを積んでいるので、ポータブル電源のようにも使えるというコンセプト。定格出力600W(最高出力2,000W)のモーターを後輪に組み込んでおり、原付一種の区分となります。

CES2023でイノベーションアワードを受賞している「タタメルバイク」。今年5月から先行オーダーを受け付け、今は納車待ちの状態だとか
折りたたみ時のサイズは690×690×260mm(全高×全長×全幅)。車体重量は63kgで、この状態でも転がして移動することができます
サイドのパネル(350×570mm)は取り外し可能で、ペイントなどでデザインを変更することも可能

最高速度は45km/h程度で、高速距離は約30kmとのこと。特定小型原付に比べるとスピードが出せるのが魅力といえますが、ただ今回の屋内試乗コースではそこまで速度を出すことはできませんでした。発進加速については、前出の特定小型原付の2台と大きな違いは感じません。

車体を傾けて曲がろうとすると、舵角のつき方がやや不安定で、どちらかというと車体を立てたままハンドルを切って曲がるのを想定しているだろうハンドリングです。ニーグリップはできますが、ステップの位置はもう少し外側に出てくれていたほうがコントロールしやすそう。もう少し2輪車っぽいハンドリングになったら、よりおもしろいくなりそうと感じました。

走行モードは2段階に切り替えが可能。個人的にはパワフルな「2」モードのほうがおもしろい印象
車体を傾けて曲がる2輪車的なハンドリングについては、少し違和感が残る感じ。小径のリアタイヤも影響しているのかも

期待の3輪カーゴタイプe-bike「STREEK」も

e-bike Watchでも以前から注目している3輪カーゴバイクタイプe-bike「STREEK」も出展されていました。以前に見たことあるタイプから進化しているようでしたが、実はこれも最新型ではないとか。最新型は信頼性の高いシマノのドライブユニットを採用しているとのことで、それはぜひ乗ってみたいところ。近いうちに取材・試乗したいと考えているのでお待ち下さい。

フロント2輪の3輪カーゴバイクで、車体の中央部に荷物を積むというコンセプト。過去に試乗したこともありますが、新型はさらに乗りやすくなっているとか
展示されていたモデルにはNidec(ニデック)のドライブユニットが搭載されていましたが、最新の量販型ではシマノ製に
フロント2輪のサスペンションも、新型では板バネを使用したタイプになっているとのこと
奥にあった過去モデルとは、フレームの構造などがブラッシュアップされていたので、最新モデルに乗るのが楽しみ!

移動はできない体験方の乗り物も。VRゴーグルで走る世界はリアル

移動できる乗り物ではないのですが、興味を惹かれたのが実際のオフロードバイクを使ったシミュレーターです。手掛けているのはPROTOTYPE.Incで、VRゴーグルを装着して固定されたオフロードバイクにまたがることで体験できます。

KTMのオフロードバイクは固定されていますが、ギャップに合わせて振動したりします

実際に体験してみましたが、VRゴーグルの中で見える世界とバイクの挙動はかなりリアル。映像の中で崖から落ちそうになると、思わず声が出て冷や汗をかいてしまうほどでした。操作はハンドルで行ないますが、その反応もダイレクトで実際にオフロードバイクに乗っている気分になります。その気分のまま、オフロードバイクでやるように体重移動で曲がろうとしてしまうと、その操作には反応しないので「あれっ!?」と思ってしまうくらいにリアルでした。

崖から落ちそうになったりでビビり過ぎて、担当の方が体を支えてくれています
VRゴーグルで見えている世界はモニターにも映し出されていましたがこんな感じ。上り下りに合わせて車体も動くのがリアル
会場には地元である大田区出身の岡谷雄太選手のレース用や練習用のバイクも展示されていました
岡谷選手のコーナリング中のバンク角を体験できる展示もありましたが、ほとんど地面に寝ているような姿勢……。プロライダーってすごい!!

今回は屋内の試乗に限られていましたが、これまでにさまざまなタイプの電動モビリティに乗ってみて、感じているのは内燃機で動く乗り物とは異なる価値観で見たほうがいいだろうということです。どうしても、ガソリン車と同じくらいの長距離ツーリングに使えるか? というような視点で見てしまいがちですが、電動のメリットはそれとは違うところにあるはず。

速いスピードが出るほうがいいと思うのも、実はガソリン車の価値観に縛られたもので、ゆっくり走るのが楽しい乗り物もあっていいはずです。その点で、今回乗ったマシンはどれも室内の限られたスペースで乗ってもおもしろいものでした。今回のイベントのタイトルにもなっている「スロースピード」が、実は新しい時代の乗り物のキーワードになるかもしれません。

増谷茂樹

乗り物ライター 1975年生まれ。自転車・オートバイ・クルマなどタイヤが付いている乗り物なら何でも好きだが、自転車はどちらかというと土の上を走るのが好み。e-bikeという言葉が一般的になる前から電動アシスト自転車を取材してきたほか、電気自動車や電動オートバイについても追いかけている。