e-bike試乗レビュー

遂に市販開始の3輪カーゴe-bike「STREEK」試乗してきた!! 開発から8年のこだわりとは?

前輪2輪の3輪カーゴバイクe-bike「STREEK」

さまざまなe-bikeの中でも"社会を変える可能性”がもっとも大きいと感じているのが、大きな荷物を運べるカーゴバイク。アシストのあるe-bikeなら、より大きく重量もある荷物を積めるので、クルマの代替手段としても期待が膨らみます。e-bike Watchが以前から注目してきたのがSTREEK(ストリーク)の3輪カーゴバイクである「カーゴトライク」です。その受注生産による販売が遂にスタート。代表取締役のHarry Uden(ハリー・ユーデン)さんへのインタビューに加えて、ほぼ最終版モデルにも試乗させてもらいました。あらためてその歴史を振り返ってみましょう。

STREEK「カーゴトライク」を開発したエンビジョン代表取締役社長Harry Udenさん

当初のコンセプトを維持しながら進化

カーゴバイクがイメージしづらい人もいるかと思いますが、簡単にいえば大きな荷物を積めるカーゴを装備した自転車のこと。ヨーロッパではメジャーな存在で、さまざまな形状・デザインのモデルが存在します。現地では都市部でクルマの進入が規制されていることも少なくないため、クルマに代わる移動・運搬の手段として市民権を得ています。近年はe-bike化も進んでいて、ドイツではすでに数十万台が販売されているとか。e-bikeは電力を使用しますが、クルマの代替手段となれば環境負荷の低減にも貢献することができます。

STREEK「カーゴトライク」はLIGHTWEIGHT(797,500円)とMULTIUSE(976,800円)の2タイプをラインナップ。写真はMULTIUSEにバッグなどを装着したもの

STREEK「カーゴトライク」がユニークなのはフレームの形状と、フロント2輪の3輪車(トライク)でありながら車体を傾けて曲がる機構を採用している点。これによって、通常のe-bikeと同じように走れるハンドリングを実現しています。

「3輪カーゴバイクは多いですが、後ろ2輪のタイプはコーナリングが不安定なのでゆっくり走らないといけない。前2輪が固定されているタイプも、自転車のキビキビ走る楽しさとはかけ離れてしまいます。走る楽しさを味わえるように、車体を傾けられる2輪という機構を採用しました」と話すのは、このモデルを開発したエンビジョン代表取締役であるHarry Udenさんです。ヨーロッパには、車体を傾けられるリーン機構を備えた3輪カーゴe-bikeもあるとのことですが、それは100万円台の価格になるとか。そう聞くと、797,500円?という「カーゴトライク」の価格もリーズナブルに感じられます。

縦に円を描くような独自の形状とされたフレームも、積載性を確保しながら車体剛性を高めて走る楽しさを確保するためのもの。フロントに大型の荷台を装備したカーゴバイクは、重い荷物を積んだ際の剛性を確保するため、フロント部分にかなり太い角材のようなパイプを使用したりしますが、STREEKの構造であれば剛性を高めながらもフレームを細くすることが可能。その分、重量も軽くすることができたといいます。

筆者が2018年のサイクルモードで初めて見た姿
この頃からフレームの基本デザインは変わっていません

エンビジョンは、自動車などのデザインを請け負う会社ですが「何か違うことがしたい、社会的に意義のあることがしたい」というハリーさんの思いで始まったのがSTREEKの企画でした。初号機はヤマハの電動アシスト自転車に、欧州で販売されているカーゴバイクのキットを取り付け、必要な部品を3Dプリンターで作るところからスタートしました。これが「T1」と呼ばれるモデルで、フロント2輪の構造やフレームデザインなどはこの時点で固まっていたとか。「T2」ではフレームの加工にも着手。「T3」で、ほぼ現在の形とジオメトリーに落ち着き、2018年のサイクルモードなどで公開されました。筆者が初めて目にしたのも、この「T3」でした。

2018年に公開された「T3」
フレームの後ろ半分はヤマハの車体とドライブユニットを使っていた
開発当時は別メーカーのドライブユニットを搭載した「T4」
当時はSTROKEというブランド名でした
2019年のサイクルモードにも出展され、小規模ながら試乗会も開催され筆者も乗りました
まだクセの強いハンドリングだったことをおぼえています

そして、量産を意識した作りの「T5」へと進化。ドライブユニットはそのままですが、チェーンドライブに変更さられるなど、ブラッシュアップが図られています。このモデルでは、荷台の部分に子供を乗せられるチャイルドシートアダプターも試作されました。ブランド名も今のSTREEKとなり、2022年12月には先行予約の受付もスタート。

「T4」から「T5」への変更点は少ないが、量産を意識して「T4」の欠点を補うブラッシュアップが施されています

続く「T6」では、救急医療三輪自転車コンセプト(EMB)が製作されました。救急医療に必要な資器材を積載し、交通渋滞が激しい都市部などでの医療に役立てるというのがコンセプト。自転車での救急活動を行なう人は「サイクルレスポンダー」と呼ばれ、イギリスではロンドンやマンチェスターなどの都市で活躍しているとのこと。カーゴバイクe-bikeの可能性を示すコンセプトモデルです。

「T6」のスタンダードモデル(左)とEMBモデル。ループ状になったフレーム形状を活かして機材などを積み込めます

信頼のシマノ製ドライブユニット採用と板バネに進化

今回、試乗させてもらったのは「T7」と呼ばれる市販バージョンです。これまでも進化を続けてきたSTREEKですが、このモデルではかなり大きな変更がされています。その1つが、ドライブユニットがシマノSTEPSとなったこと。シマノSTEPS「E6180シリーズ」が採用され、信頼性が大きく向上しています。重い荷物を積むカーゴバイクの場合、ドライブユニットも出力と信頼性が求められるため、欧州製のカーゴe-bikeでもシマノSTEPSの採用が進んでいるとのことです。

その大きなポイントは圧倒的な信頼性。海外ではe-bikeのバッテリー発火などのニュースもあるため、信頼性できるブランドを模索していたそうです。そして、バッテリーはもちろん、ドライブユニットへの信頼性、すべてのパーツがまとめて揃うために最終の量産版でシマノSTEPSを搭載できたのは大きいと、製造販売のRIAN CARRY・古富氏も語っています。

RIAN CARRY 代表取締役・古富さん
シマノSTEPS「E6180シリーズ」のドライブユニットを採用
STREEKでは購入時にはバッテリー容量も選べる

もう1つの大きな変更点がフロントのサスペンション機構です。従来のダブルウィッシュボーン式は路面追従性には優れているものの、ジョイント部が多いためガタが出やすく、パーツ点数が多いことで重量やコストもかさみがちだったとのこと。今回の市販モデルでは、カーボン製の板バネを使った機構を採用しています。この機構を開発したことで、フロント周りをシンプルで軽量になり、耐久性も大きく向上したとか。実際に触れてみても、ガタが出そうな箇所がほとんどなく、ダンパーユニットも不要なため、耐久性もかなり期待できそうです。

これまでのサスペンション機構の進化の変遷。ダブルウィッシュボーン式の機構はかなり複雑です
こちらが今回乗った「T7」のサスペンション機構。上下に2枚あるカーボン製の板がバネとして作用し、シンプルな機構となりました
ステアリングを切ると、ロッドを介してフロントタイヤに舵角が付くしくみ。一般の自転車とは大きく異なります

試乗したのはMULTIUSEと呼ばれるタイプで、フレームの上側にもキャリアを装備し、バッグなどを付けられるようになっています。こうやって上下に荷物を積むことができるのも、このフレーム形状のメリット。下側には大きく底面を覆うようなキャリアが装備されていて、大きな荷物を積載可能。この下側のキャリアはLIGHTWEIGHTタイプにも付属します。

上側のキャリアは左右に分かれたバッグを装着する仕様。写真のようなバッグ以外にもパニアバッグなども装着できます
下側のキャリアは大きな荷物を積める構造。試乗車では大きめのボックスが装着されていました
量産車はフラットハンドルを採用予定。停止時には左右の傾きとブレーキをロックする機構が付いています
テクトロ製の油圧式ディスクブレーキ
ディスクブレーキも厚いカーゴバイク用のものを採用しています
タイヤサイズはフロントが18インチ、リアが20インチでMULTIUSEタイプにはフェンダーも装備。リアハブにはシマノ製のe-bike専用変速機構を搭載
サドルは細身ですが、やや肉厚の座り心地のいいもの

自然なアシストフィーリングとハンドリング

実際に試乗してみましたが以前に乗った「T4」タイプに比べると、とても乗りやすくなっています。「T4」に乗ったときは、車体がバンクしていく動きが2輪に比べると不自然なところがあり、慣れるまでは曲がる際に足を着いてしまったりしていましたが、今回の「T7」は乗ってすぐに小回りすることができました。

ドライブユニットがシマノ製となったことでアシストのフィーリングも自然になり、小回りしている際にペダルを漕いでもグイグイ進んでしまうことがないので、とてもコントローラブル。それでいて、ペダルを踏み込めば力強くアシストしてくれるので、重い荷物を積んでいても坂道も楽に上れそう。カーゴバイクはアシストが強ければいいと思われがちですが、カーブを曲がるときなどはペダルの踏み方でアシストをコントロールできないとバランスを崩してしまいます。その点で、自然でコントロールしやすいアシストフィーリングとなったのは、大きな進化だと感じました。

ハンドルを切りながら車体を傾けて曲がっていく感覚は、より普通の自転車に近づいた印象
カーボン製の板バネを採用したことで、フロント周りが軽くなっていることも、自然なハンドリングに貢献しているようです
コントロールしやすいけれど、アシスト自体はパワフルなので、アシストの効く24km/h以下では楽に巡航が可能

もちろん、2輪に近いハンドリングになっているといっても、まったく同じ感覚で乗れるわけではないので、初めて乗る人はある程度慣れが必要です。今回の試乗でも初めてSTREEKに乗る編集部員が乗ってみましたが、はじめはやや怖がって戸惑っていたものの、数分も経たないうちに乗りこなしていました。これまでの試乗会でも、すぐに乗れてしまう人と、少し時間がかかる人はいたとのこと。意外にもスポーツ自転車に乗り慣れた人は戸惑うことが多く、シティサイクルタイプしか乗ったことがない人でも、すぐに乗りこなせる場合もあるようです。

フロント周りがシンプルになったことで耐久性も向上しているとのこと

実際に乗り回してみて感じたのは、これまでに乗ったカーゴバイクの中でも乗る楽しさという点ではトップレベルにあるということ。これなら、ただ荷物を運ぶだけでなく、その運んでいる過程も楽しめそうです。宅配業者や医療関係者などの業務にも使えるでしょうが、遊びの道具として導入してもおもしろそう。これだけ荷物が積めれば、キャンプ道具を満載して出かけるような使い方もできます。自転車を使った"バイクパッキング”は荷物をいかに軽量・コンパクトにするかが腕の見せどころのようなところがありますが、カーゴバイクe-bikeであればそんなことを考えなくても、普段の使っているキャンプ道具を積むことができます。今度はそんな使い方も試してみたいと思える楽しい乗り物でした。

増谷茂樹

乗り物ライター 1975年生まれ。自転車・オートバイ・クルマなどタイヤが付いている乗り物なら何でも好きだが、自転車はどちらかというと土の上を走るのが好み。e-bikeという言葉が一般的になる前から電動アシスト自転車を取材してきたほか、電気自動車や電動オートバイについても追いかけている。