家電レビュー
折りたたみミニベロみたいな特定小型原付! キックボードより快適で安全、楽しい!!
2024年6月6日 09:05
「特定小型原動機付自転車」(以降、特定小型原)という言葉を聞いたことはあるだろうか。最近街中で見かけることが増えてきたシェアリングサービスの電動キックボードなどがそれだ。
電動アシスト自転車や、エンジンで駆動する従来型の原付バイクなどの代替として、運転免許なしで気軽に利用できるということで注目度が高まっているこの分野に、「ATOM Full eBike(アトム フル イーバイク)」という製品が近々登場する。
通常価格は217,800円だが、先着1,000台に限り25%引きとなる164,780円で販売され、本来は別売のヘルメット(5,980円)が付属。さらに本記事の最後でも紹介するが、ソーラー充電器も同様に特典としてプレゼントされる。
5月30日から予約販売がスタートしており、デリバリーは6月下旬を予定しているとのこと。自転車に似たシルエットながら、漕がずに走れるこの特定小型原付、どんな乗り物でどんな乗り味なのか、一足先に試すことができたのでレポートしたい。
大径タイヤで折りたたみ可、バイクのような操作性
製品名に「ATOM」とあることで、もしかするとご存じの方もいるかもしれないが、「ATOM Full eBike」は2020年に発売されたネットワークカメラ「ATOM Cam」の開発元だ。カメラがそうだったように、今回の特定小型原付もリーズナブルな価格設定ながら実用性にこだわった製品となっている。
正確に言うと、ATOM Full eBikeは特定小型原付のうち、歩道走行も可能なしくみを備えた「特例特定小型原動機付自転車」の認定を受けた車両となる。時速6km超では走行できない「歩道走行モード」に切り替え、前後に備える最高速度表示灯を点滅させることで、自転車の通行が可能な歩道を走行できる。一方、車道走行時は最大時速20kmの「車道走行モード」に切り替えることが可能だ。
特定小型原付は運転免許不要で、16歳から乗車可能。ただし自賠責保険への加入とナンバーの取得が必須で、自身で手続きが必要となる。ヘルメットの着用は努力義務となっているが、車道走行が中心になることを考えると、やはりヘルメットは身に付けておきたい。
さて、そんなATOM Full eBikeの見た目は、サドル付きということもあってまるで自転車のよう。どちらかというとミニベロっぽいスタイリングで車体のサイズ感もそれに近い。内蔵バッテリーとモーターによって駆動する100%電動車両で、最大航続距離約40kmの走行が可能となっており、足で漕ぐペダルは備えておらず、走行時はステップに足を乗せるだけだ。
一番の特徴と言えるのは、特定小型原付としては大きなタイヤを採用していること。前後とも20インチサイズが装着されており、電動キックボードのような8~10インチ程度とされる極小径タイヤとは明らかに異なる。
電動キックボードでは、そのタイヤの小ささが安全性を損なう要素の1つとも指摘されている。タイヤ径が小さいと路面の段差や凹凸でハンドルを取られやすく、ふらついたり、つまずいたりして転倒する可能性が高くなってしまうからだ。
反対に、タイヤ径が大きくなるほど段差や凹凸の影響は抑えられる。ATOM Full eBikeはタイヤ自体のハイト(高さ)もあるため、衝撃吸収性の面でも有利なことから一段と安全性は高い。加えてリアサスペンションも装備しており、乗り心地の面でも安心感が得られる。
もう1つの特徴は折りたたみが可能であること。フレーム中央部とハンドルの根本にあるロックを外せば折りたたむことができ、コンパクトにした状態で持ち運べる(または押し引きできる)。屋外に停めておくと盗難が心配というときに、室内に運び込みやすい構造になっているのは大きなメリットだ。実測でだいたい100×60×70cm(長さ×奥行x高さ)のサイズになり、ちょっとした空きスペースで保管できる。
他には前後ディスクブレーキで晴天時と雨天時とでほとんど変わらない制動力を発揮できること、アクセルが一般的なバイクと同じくハンドル右側にあるスロットルをひねるタイプであること、インホイールモーターでチェーンなどが存在せず、メンテナンス箇所が少ないといった点も特徴として挙げられる。
というわけで、さっそく近所を乗り回してみた。ハンドルに備えるメーターディスプレイの「M」ボタン長押しで、電源をオンにして乗車する。電動アシスト自転車とそう変わらない20kg余りの重さ、かつミニベロのようなコンパクトな車体のおかげで、自転車に限りなく似た感覚で気軽に乗り出せる。オプションのフロントバスケットやリアバスケット(どちらも4,980円)を装着すれば、近場のお店への買い出しにもぴったりだ。
ひねることで加速するハンドル右のスロットルは、バイク経験者なら直感的に扱えるはず。最初こそ出足の加速に少し驚くけれど、慣れればスムーズに速度アップしていくのがおもしろく感じられる。
住宅街など狭く入り組んだ道路なら、自転車と変わらないホイールベースからくる取り回しのしやすさもあって実に楽しい。加速の良さと時速20km未満の最高速がちょうどいいバランスに思える。
しかし正直に言えば、最高速での巡航に慣れると物足りなさも出てくる。特にクルマ通りの多い道路を走るのには少し勇気がいるかもしれない。が、スピード的にも外観的にも自転車とほとんど変わらないわけだから、車線の左側を走るなど基本的なルールを守るのは大前提として、自転車と同様に堂々と走りたいところ。
ただ、周りから「ちょっと変わった乗り物に乗ってるな」なんて思われていないかが気になって、今のところは別の意味で緊張してしまいがちだ。
最大の特徴である20インチサイズのタイヤのメリットは至るところで実感できる。舗装路面の細かな凹凸はもちろんのこと、ひび割れや小さな穴があるような箇所でも気にせずに走り抜けることが可能だ。電動キックボードだと、路側帯側の荒れた路面を避けるために車道中央側に膨らみたくなることもあると思うが、そうした事故につながりやすい乗り方もせずにすむ。
こういった特定小型原付では、車道走行と歩道での押し歩きを積極的に組み合わせて移動したい場面もあるだろう。そこで注意したいのが歩道に乗り上げるときの段差。でも、ATOM Full eBikeならそれが多少大きくても平気。電動キックボードでは手で持ち上げないとつんのめるような場所でも、そのまま乗り越えられる。
細身な車体で熱を持つ部分がない点も、歩道上での安全な押し歩きのしやすさにつながっている。エンジン車だと、たとえ50ccの原付であってもマフラーやサイレンサーが露出しているため、歩行者に近づきすぎないように気を使う必要がある。しかし、ほとんど自転車のように扱えるATOM Full eBikeだとそういった気づかいも不要だ。
先述したとおり、自転車通行が可能な歩道では、最大時速6kmとなる「歩道走行モード」に切り替えることで、乗車したまま乗り入れることができる。いったん停止してメーターディスプレイが「0km/h」の表示になった状態で、ブレーキを握りながらディスプレイ横にあるボタンを操作することにより、「歩道走行モード」と「車道走行モード」を切り替え可能だ。
しかし、歩道走行できるとはいえ時速6kmというのはかなりのんびりしていて、むしろ車体を押して歩いたほうが速いかもしれない。とりわけ人通りのある場所では無理せずに押し歩きするのがおすすめだ。ちなみにATOM Full eBikeでは押し歩きをサポートするモードも用意されている。急坂のある跨道橋や地下道の出入り口など、押し歩きに力がいるときに活用したい。
先着1,000台にはソーラー充電器もプレゼント、電気代ゼロ運用も可能に
比較的リーズナブルに手に入り、まるで自転車のように扱いやすく、移動が楽しくなる特定小型原付のATOM Full eBike。長距離のロングツーリングに利用するのはさすがに厳しいが、通勤・通学や買い物など短距離の移動に使う分には、座って乗車できることもあって疲れにくく、バッテリーも十分にもつので大いに活躍してくれるだろう。
ただし、元バイク乗りである筆者から見たときには価格相応に感じる部分もある。たとえば加速は十分だけれど、馬力はそこまでではない……かもしれない。というのも、このあたりは乗る人の体重に左右されるからだ。
体重74kgの筆者の場合、平地ではしっかり最高速まで出るものの、急坂になると失速してしまう。体感的には1~3%くらいの勾配ならほとんど減速せずに登り切れるが、それ以上になると相応に遅くなる。体重の軽い人だとまた違ってくると思うけれど、坂の多い地域に住む人は頭に入れておきたい点だ。
もっと細かいところを言うと、アクセルはバイクらしい操作方法ではあっても「パーシャル」という概念はあまりない。アクセル開度に応じて加速力は変化するが、イメージとしては10%、50%、100%の3段階くらいで出力が切り替わる感じで、あくまでも「バイク風」の操作性に留まっている。
また、ウィンカースイッチがハンドルグリップからやや離れたところにあるため操作しにくく感じる。スイッチ操作時の移動幅が少なく、戻したときに勢いで反対側にオンにしてしまうこともよくある。あとは、乗り続けているともっと簡単に後方確認したくなるので、自転車・バイク用のミラーを別途調達することも検討したいところだ。
なお、開発元によると、初回の1,000台にはヘルメットに加えて数万円相当の折りたたみ式ソーラーパネルもプレゼントされるそう。電源のない屋外でもATOM Full eBikeを充電できるようになるものだ。
写真にあるものは試作品で、製品版ではもう少し面積の小さいものになるとのことだが、朝の通勤・通学に使っても昼間にこれで充電しておけば、夕方にはバッテリーがフルになるほどだという。うまく使えば電気代ゼロでの運用も不可能ではないだろう。
ネット販売ということでメンテナンスやサポート体制が気になるところだが、軽微な部品交換が必要な場合については基本的にはオンラインによる対応となり、パーツなどを受け取ってユーザー自身が交換するような形になる。または、現在のところ家電量販店や自転車販売店などでの車両販売、メンテナンス対応なども検討しているとのことで、購入前後のサポートにおいても安心できそうだ。