トピック

乗り物は電動になると楽しくなる!? 電動バイクやキックボードに試乗してみた

自動車がハイブリッド車やEVになったり、自転車がe-bikeになったりと電気を動力源とする乗り物(モビリティ)の普及が進んでいます。電動キックボードなども街中で見かける機会が増えてきました。そんな電動モビリティが体験できるイベント「Sunday-E-Park」が9月17~19日に羽田イノベーションシティで開催されたので、気になる電動バイクや電動キックボードに試乗してきました。

バイクにも電動の波がやってくる!?

自動車に比べると、電動化が出遅れている感があるのがバイクですが、最近ではホンダが2025年までに10モデル以上の電動バイクを導入すると発表しており、注目度が高まっています。東京都も2035年までに都内で新車販売される2輪車の脱ガソリンを目指すとしているのも気になるところです。

会場には多くの電動バイクが出展されていました

とはいえ、国内で販売されている国産メーカーの電動バイクはまだ数が少ないのが現状。そんな中で、今回多くの電動バイクを出展していたのがモータリスト合同会社です。豊富なラインナップの中から、今年から取り扱いを始めたというオーストリア生まれのMOTRON(モートロン)というブランドの原付二種(125cc以下)クラスの「VIZION(ビジョン)」というマシンに試乗することができました。

MOTORON「VIZION」は440,000円で販売中。一見するとエンジン付きのミニバイクと大きな違いはない。車体サイズは1,760×810×1,000mm(全長×全幅×全高)

ホイールサイズは前後12インチで、原付二種クラスで人気モデルのホンダ「モンキー125」「グロム」などと同程度のサイズ感。モーターはスイングアームに搭載され、定格出力は原付二種クラス相当の1.0kwとなっています。バッテリー容量は72V/26Ahで、1充電あたりの走行可能距離は79km。車体重量はバッテリー込みで100kgとなっています。

モーターはスイングアームに搭載。スクーターのユニットスイング式に近いレイアウトで、タイヤはベルトで駆動されます
バッテリーは通常のバイクならエンジンがある車体中央部、それも下のほうに搭載され、低重心化に貢献
フロントフォークは倒立式でシングルディスクブレーキを搭載と、足回りもしっかりしています

またがってみると、両足の踵がしっかりと接地する足付き性の良さ。限られたスペースでの試乗でしたが、低重心化のおかげか車体はかなり俊敏に反応し、数値以上に軽く感じます。コーナリング中の安定感も高く、同クラスのエンジン付きバイクと比べてもかなり楽しい! 特にアクセル開度を一定にして走った際に、エンジンのように回転数が上がっていってしまうことがないので、Uターンなどがかなりしやすいのが印象に残りました。この楽しさは、結構欲しくなります。

身長175cmの筆者の場合、両足の踵が接地して膝にも余裕があるくらい足付き性は良好
軽快に倒し込めるので小回りが効く! 車重はホンダ「グロム」(102kg)よりちょっと軽いくらいですが、低重心なので安定感もあります
エンジン車と違ってトルク変動がないので、タイトなUターンもしやすい。あとは、どれくらいスピードが出るのか広いところで試してみたいと感じました

MOTRONには「Cubertino(キューベルティーノ)」というスーパーカブを思わせるデザインのモデルもラインナップされています。こちらも原付二種で、走行可能距離は56km。重量はバッテリー込みで78kgで、価格は396,000円となっています。ほかにも、モータリストオリジナルの電動バイク3モデルも展示されていて、こちらもかなり期待の高まる完成度でした。

ホンダの「スーパーカブ」(それも初期モデル)に似たデザインで、こちらも乗ってみたくなる「Cubertino」
モータリストオリジナルの「VMX12」。12kwの高出力モーターを搭載したオフロードモデルで、4速ミッションとマニュアル式のクラッチを備えているのがユニークなところ。価格は660,000円を予定
こちらの「VMX03」は重量36kgと軽量で、自転車のMTBに近い作り。モーターの最大出力は2.5kwで、価格は330,000円を予定
ストリート仕様の「VMS6」は最大出力6kwのモーターに、自動遠心クラッチ式の4速トランスミッションを組み合わせる。価格は495,000円を予定

電動バイクが折りたためる!?

もう1台気になったモデルがあります。その名のとおり、折り畳める電動バイクICOMAの「タタメルバイク」です。こちらは定格出力600Wで、原付一種に相当。自動車の普通免許でも運転できるのがメリットです。想定最高速度は40km/hで、走行可能距離は約50kmになるとのこと。残念ながら試乗はできませんでしたが、折り畳むとスーツケースのようになるデザインがユニークです。

【訂正】初出時、ICOMAの社名を誤っておりました。お詫びして訂正いたします(11月2日/編集部)

「タタメルバイク」の走行状態での車体サイズは1,230×1,000×650mm(全長×全幅×全高※ミラー含む)。外板のパネルにペイントを施したりして雰囲気を変えられるのもおもしろい
モーターはインホイールタイプでコンパクト。折りたたみ可能な構造に貢献している
ホイールやハンドル、シートなどを畳んだ状態でのサイズは700×680×260mm(全長×全幅×全高)。折りたたみの構造もユニークで、ちょっと慣れが必要そう
コンパクトな車体ですが、またがってみるとあまり違和感のない乗車姿勢。ニーグリップもきちんとできました

電動キックボードにも試乗してみる

最近、シェアリングサービスでも話題の電動キックボードにも試乗してみました。といっても、今回乗ってみたのは原付一種に分類されるもの。シェアリングサービスで使用されているものは、実証実験という扱いのため最高速度が20km/h以下とされ、免許は不要。ヘルメットの着用も任意とされていますが、こちらは免許が必要でヘルメットの着用も義務となります(シェアリングサービスでも着用したほうがいいですが)。

試乗したのはモータリスト製の「ECS-02」というモデル。車体サイズは1,100×490×1,160㎜(全長×全幅×全高)で、車重は15.5kg。価格は99,000円です
タイヤ径は8.5インチで、ノーパンクタイプのタイヤを装備。リアにはサスペンションと機械式のディスクブレーキを備えています
ハンドル部は折りたため、そこを持って持ち運ぶことも可能です
アクセルは右手側のレバーを親指で押し下げるように操作。ブレーキは自転車などと同じ握るタイプのレバーです

発進は一般の電動キックボードと同じく地面を蹴って勢いをつけながら、右手側のアクセルレバーを押し下げます。モーターは回転し始めが一番トルクがあり、急発進のようになってしまうこともあるので、それを避けるための配慮でしょう。最高速度は約30km/hとされますが、シェアリングサービスに用いられている車体に比べると、加速もよく車体もかなり安定しているのが感じられました。

トップスピードが出るだけあって、車体もしっかりしていて曲がるのも安定しています。車体を傾けて曲がっていくのが気持ちいい

もう1台、国内では公道走行ができないモデルにも試乗することができました。手掛けたのはe-bikeでもお馴染みのイタリアのFANTIC(ファンティック)。エンジン付きのバイクやe-bikeなどをリリースしているブランドです。「TX2」というモデルで、前後2輪駆動となっている点がユニーク。デザインもスリムですっきりしています。

ナンバーなどの保安部品が付いていないこともありますが、電動キックボードの中でも群を抜いてすっきりしたシルエット
その要因の1つはブレーキレバーがないこと。ブレーキは左手側の親指で操作します。右手側のアクセルと対象になっているのもカッコいい

実際に乗ってみると、これが驚きの安定感。前後2輪駆動であることと、ホイールベースの長さが効いていると思われますが、車体剛性もかなり高く、車体を左右に傾けて走ってもピシッと芯が通ったように安定していて安心して乗ることができました。電動キックボードも、ここまで安定した乗り味に仕上げられるということに少し驚きでした。

2輪駆動の効果もあって、非常に安定した乗り味。ブレーキは回生ブレーキのみですが、効きも素晴らしい
こちらもハンドル部分を折りたたんで持ち運ぶことができます

3輪で車体を傾けるLMWもおもしろい

こちらも公道を走ることはできませんが、乗ってみてとてもおもしろかったのが、ヤマハの「TRITOWN(トリタウン)」という3輪モビリティ。乗車姿勢はキックボードに近いのですが、両足を横に並べて立つタイプで、3輪ですが左右に車体を傾けて曲がります。ヤマハではこのような3輪以上で車体をリーンさせて(傾けて)曲がる乗り物を「LMW (Leaning Multi Wheel)」と呼んでおり、エンジン付きのバイクではすでに数車種が市販されています。「TRITOWN」は電気で動くのが特徴です。同社のLMWはほとんど試乗していますが、立って乗るタイプは初めてなので楽しみ!

キックボードに似た作りですが、前が2輪の3輪になっていることが特徴
前輪には独自のリンク機構が採用され、車体を傾けて曲がることができます
モーターは後輪のハブに搭載。バッテリーは車体中央部に置かれています。フロントは油圧式ディスクブレーキで、メーターのデザインもユニーク

乗ってみると、期待していた以上に楽しい乗り物でした。正面を向いて乗るので安心感も高く、乗り手がバランスを崩さなければ自立が可能。ゆっくり走るのであればハンドル操作でも曲がることができるので、初めて乗る人でも大きな不安なく乗れるはずです。

ただ、おもしろいのはLMWらしく、車体をリーンさせるコーナリング。体重移動で傾けるので、ちょっと慣れが必要ですが、膝を曲げて積極的に操作すると、驚くほど鋭いコーナリングが味わえます。膝を入れて曲がる感覚は、乗り物というよりスキーに近い。気持ち良くてグルグル走り回ってしまいました。公道走行ができないため、クローズドスペースでの活用を想定しているとのことですが、これに乗るために遊びに行ってもいいかもと思える楽しさでした。

足を横に並べて、正面を向いて直立した状態で乗ります
慣れてくると、車体を傾けて曲がるのが楽しい! スキーで曲がるときのように膝を入れるのがポイント

さまざまなタイプの電動モビリティに試乗しましたが、どれも楽しかったというのが正直な感想。音もなく滑るように走り出す感覚と、直感的に出力をコントロールできるのが、楽しさの理由です。モーターの静かさと、リニアなパワー特性によるものでしょう。電動になることで、乗り物はもっと楽しくなると期待が高まる試乗体験でした。

増谷茂樹

乗り物ライター 1975年生まれ。自転車・オートバイ・クルマなどタイヤが付いている乗り物なら何でも好きだが、自転車はどちらかというと土の上を走るのが好み。e-bikeという言葉が一般的になる前から電動アシスト自転車を取材してきたほか、電気自動車や電動オートバイについても追いかけている。