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【不調の薬膳30】活力補充・体調整…「腎」の弱りを助ける食材・レシピ

肌荒れや、骨・歯の衰え、頻尿といった体バランスの崩れは、薬膳では五臓の「腎」の弱りで起こると考えます。今回は「腎」の働きを調整する「黒豆」「栗」「牡蠣」を使ったレシピをご紹介します。活力を補充することで、体バランスを整える「黒豆」「栗」「牡蠣」のレシピで、「腎」の働きを強めましょう。「五臓」は、「肝(かん)」「心(しん)」「脾(ひ)」「肺(はい)」「腎(じん)」に分かれ、「五行説」「陰陽」の考えに基づいて分類した体の働きや臓器のことで、これまで「肝」(【不調の薬膳26】)、「心」(【不調の薬膳27】)、「脾」(【不調の薬膳28】)、「肺」(【不調の薬膳29】)の弱りを助ける食材・レシピで、改善策をお届けしてきました。今回は最後に、「腎」の弱りを助ける食材・レシピで、体にエネルギー(活力)を蓄えて、寒さを乗り切る体づくりを目指しながら、老化も予防していきましょう。

 

老化予防・美肌も!炊飯器があればできる「黒豆」おこわ

黒豆とお米があれば、炊飯器に入れて待つだけの簡単おこわです。黒豆(【不調の薬膳15】食材紹介)はフライパンで炒り、研いだお米、水と一緒に炊飯器へ。あとは炊飯器の表示に従って、炊き上がるのを待つだけです。黒ゴマは、できればすり潰したものを、おこわに振り掛けていただきましょう。黒豆を炒る時間がないときは、寝る前などに水に浸しておくと、柔らかお豆のおこわになります。甘い煮豆が余ったときも、ごはん(【不調の薬膳18】で紹介)に混ぜるだけで、和菓子風黒豆ごはんの完成です。

 

「黒豆」と「黒ゴマ」のそれぞれが「腎」に働きかけて、疲労・食欲不振といった「虚」の証(しょう・反応や症状のこと)を和らげます。ともに「ビタミンE」を豊富に含むのでガサガサ肌を和らげたり、髪のツヤを取り戻したい場合も効果的。「腎」の働きが弱まると、老化を招くと考えられ、頻尿・腰痛になったり、骨や歯にも衰えが出ます。煮物、和え物、スイーツなどのメニューへ、トッピングもしやすい「黒豆」「黒ゴマ」は、体バランスを調整しながら、アンチエイジングの効果も期待できます。また生の黒豆を下処理する時間がなくても大丈夫。黒豆は煮豆(おかず)で販売されているので、そのまま食べられますよ。お好きな方法でお試ししてみてくださいね!さらに「黒豆」や「大豆製品」(【旬の薬膳27】グラタンで紹介)には、女性ホルモンを始め、ホルモンバランスを整えてもくれます。

 

寒さ対策、エネルギー補充できる「クリ(栗)」 のスープ

体にエネルギーを蓄えるクリ(栗)を潰して加え、豆乳とササミでコクをプラスしたスープです。クリは渋皮まですべて剥くか、剥き栗を使い、鶏ササミは斜め切りにします。クリはしっかり茹で、鶏ササミは軽く茹でて残りは余熱で火を通しましょう。お鍋で豆乳をゆっくり温めて、茹でたクリを潰しながら混ぜます。鶏ササミを加えて煮込み、コショウを振ったら出来上がり。滑らかに仕上げたいときは、鶏ササミを加える前にミキサーですり潰します。甘めのスイーツ風に仕上げたいときは、鶏ササミの代わりに茹でたサツマイモを使って、全体をよくすり潰しましょう。前の日のオニオンスープや野菜スープが残っていたら、豆乳の代わりに使うだけでクリのスープに変身しますよ!

 

薬膳では、五臓の「脾(ひ)」が消化器官にあたり、ここで栄養を取り込みエネルギー(活力)になったものを、「腎」で蓄えて日常で使うと考えます。(「脾」の弱りを助けるレシピは【不調の薬膳28】へ。)「クリ(栗)」を始め、「ブドウ(葡萄)」、「サツマイモ」、「山芋」、「クルミ(胡桃)」などの食材は、「腎」そのものの働きを良くして、体にエネルギーを供給する食材で、特に「クリ」「クルミ」は「温性」なので、寒さから体を守ってくれますよ。さらに「クルミ」には「肺」の働きを補う効果があるので、トッピングすると肌乾燥を防ぐうえ、栄養素で考えると「不飽和脂肪酸(オメガ3)」が豊富なので高血圧の予防にも!

 

発育を促す「牡蠣(カキ)」、油で揚げないフライ風

油いらずで楽々、牡蠣(カキ)のフライ風です。新鮮な牡蠣(【不調の薬膳8】メニュー紹介)を選び、塩揉みして洗い流します。軽くオリーブオイルを回し付けて、レンジかフライパンで加熱。小麦粉、溶き卵とくぐらせ、パン粉または千切りにした春巻きの皮を付けて、トースターか魚グリルなどで、カリッとするまで両面を焼けば完成です。レモン、またはカボスを絞っていただきましょう。

 

「牡蠣(カキ)」は、成長や発育を促す「腎」を「帰経(きけい)(食材がどの臓腑に入り、効いていくかを示した 経路のこと)」の1つにもち、体にエネルギー(活力)を補充して、蓄えてくれる食材で、滋養を補うほかに、のぼせを取る作用もあります。年末年始にかけて登場する機会が増えそうな「エビ(海老)」、「ウナギ」も「腎」に働きかけて体を元気にしてくれるので、年末には疲れを取り、年初めには1年の健康を祈る意味でも、活力を補いながら、過ごしやすい体づくりを楽しんでみてくださいね!

 

これからの時季に大切な「腎」

冬の寒さを乗り越えたり、冷えで奪われる体力をサポートするには、「腎」の働きを補うことが大切なので、ご紹介したレシピ・食材を採り入れながら、体を温めて元気に過ごしていきましょう。「黒豆」や「クリ(栗)」は、お正月にも登場する食材なので、お試しくださいね!とは言え、バランスの良い食事が大切(「五味調和」)なので、1つの食材を食べ過ぎないようにしましょう。また前回(【不調の薬膳29】肺)お伝えした通り、乾燥の季節は肌や粘膜・器官を担当する「肺」の機能も高めると、冬の乾燥や喉(のど)の痛みを防いだり、風邪対策にもなりますよ。風邪を予防するレシピでは、【不調の薬膳23】、【旬の薬膳26】「鮭」料理、【フルーツの薬膳レシピ】「リンゴ」、「カボス」などもご紹介していますので、献立に加えてみてくださいね!

 

これまで【不調の薬膳】は、30回に渡りお届けして今回が最終回になります。お付き合い頂き、本当にありがとうございました。心身に感じる不調は、時代の流れによって変化するほか、温度・湿度、みなさんの体質によっても変わってきます。ちょうど【不調の薬膳】のメニューやレシピは、暑い時季寒い時季の両方で連載をさせて頂いたので、季節ごとに特徴的な、体の不調を和らげるレシピや食材、ちょっとした小技(こわざ)などをみなさんにお伝えしてこられたかと思います。これからもみなさんが不調を感じたときに、内容がお役に立ちますと幸いです。また体質チェックができる簡単リストの「気」「血」編「水」編もありますので、併せて使ってみてくださいね。

A's Pumpkin(薬膳マイスター)

日々健やかに過ごしたいと考える、おばちゃまライターです。
薬膳マイスター資格を取得、自然由来食材のエネルギーをよりよく活かすことで、ひとりでも多くの方が健やかに過ごせるお手伝いが出来ればと思っております。国際薬膳食育師3級。