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【基本の薬膳1】体バランスの安定を目指すのが、「薬膳」基本の考え方

梅雨入りも近づいたこの時期、ジメジメした季節は体調がすぐれないという方もいるかもしれません。そんなときこそ、「薬膳」という料理を生活に取り入れて、毎日を快適に過ごしてみませんか。薬膳というと、日本には存在しない食事と思っている方もいるかもしれません。薬膳は、その人の体質や体調に合わせた食材を組み合わせて調理することで、体のバランスを安定させる食事を目指します。「薬」という漢字のイメージから、「不味そう」「味がなさそう」「苦そう」などの印象をもたれますが、それは違うのです。身近に取り入れられる薬膳の世界をのぞいてみませんか?

 

もとは中国で発祥した薬膳

薬膳の考え方は、紀元前2,000~1,700年ごろの中国にすでにあったと言われ、中国が発祥と考えられています。薬膳がもっとも発展したのは明・清時代。医薬学者が、食べ物の調理法や、食べものの組み合わせで良くないものや害になる食べ方といった禁忌などをまとめた書物「本草綱目(ほんぞうこうもく)」を執筆したことで、広く知られるようになります。日本の文化が中国大陸と深く関係したことは周知の事実で、薬膳の概念についても遣隋使・遣唐使を通じ伝播されたと考えられています。

 

身近な食材で健康に導く薬膳

薬膳発祥の地といわれる中国でも、古代の日本でも、自生した野菜や生薬(しょうやく)は、体を作ったり、傷を治すための当たりまえの存在だったに違いありません。奈良時代の「古事記」に、因幡の白兎の傷を蒲の穂で治したという記述がありますが、こういった使い方が初期の薬物療法で、その後食べ物の薬効が徐々に認められていきます。現代に至ってもその流れは受け継がれ、体調に合った身近な食材を調理し、摂取することで、体の不調を整えていくことを薬膳と呼ぶのです。

 

未病という言葉を知っていますか?

今ではずいぶん市民権を得た「未病」という言葉があります。病気ではないけれど、そこに至る手前の状態を示し「何となく体調が悪い」という失調状態をいいます。未病ということは、本人が何かしら不調や不快を感じ、健康ではない状態と言えます。薬膳では、未病に着目し、病気になる前に免疫力を高め予防医学の役割を果たそうと考えます。ですので、日々変化する自らの体調を見つめ、それに合った薬膳を実践することで、より健康な生活を送れるようになると言えるのです。

 

みなさんもすでに知っている薬膳

和食でも、煮物にユズを添えたり、大根おろしを合わせたりという習慣は、昔からありますね。大根はどのような体質の人にも効果を発揮し、消化を助ける役割があります。また、大根おろしは焦げの毒素を中和させる作用があるため、焼き魚にも添えられることもあります。こういった組み合わせも、実は薬膳の考え方と同じなのです。また薬膳では、例えば冷えに良いからと、1つの食材を食べ過ぎることはしません。人の体と同じで、バランスを大切にし、調和を図るためなのです。組み合わせやバランスの調和をとりながら、体調をより良く整えることが薬膳のやさしい力です。

 

生活をよりよくする薬膳

薬膳では、西洋医学にみられるような即効性は残念ながら期待できません。ですが薬膳では、私たちが日ごろ接するような身近な食材を使い、そのときの体の症状にあった調理を実践することで、何となく感じている不調を和らげることができます。また、乱れた食生活を改善することで、生活を健康へ導くことも可能になります。薬膳が思ったよりも身近に感じられてきませんか?

 

 

A's Pumpkin(薬膳マイスター)

日々健やかに過ごしたいと考える、おばちゃまライターです。
薬膳マイスター資格を取得、自然由来食材のエネルギーをよりよく活かすことで、ひとりでも多くの方が健やかに過ごせるお手伝いが出来ればと思っております。国際薬膳食育師3級。