暮らし

【基本の薬膳10】実はすでに知っている!?身近な「陰」「陽」の概念

薬膳の基になる東洋医学には「陰陽」の考えがあり、体調が陰陽のどちらかに偏ると不調が起こるため、その概念に触れてみましょう。体に抱えた不調は、食べ物(薬膳)で「中庸」=「健康」に戻していけますよ。東洋医学では、調和の乱れた状態を特に「未病」と呼び、未病が進めば治療の必要な「病」になると考えます。

 

緩やかに分かれる「陰陽」の考え方

「陰(いん)」と「陽(よう)」の考えは、すでにご紹介した「五行説」と合わせ「陰陽五行説」とも呼ばれます。陰陽は、宇宙に存在するあらゆる事象を 「陰」と「陽」に当てはめた中国古来の哲学で、体質も「陰」「陽」の証(しょう・反応や症状のこと)、に大きく二分されます。写真の「太極図(たいきょくず・陰陽太極図)」は宇宙、森羅万象のすべてが陰陽の対立する要素で成立する様子を示し、それぞれの小さな円は、「陰の中の陽」と「陽の中の陰」を示します。「陰」と「陽」はきっぱり分断されるものではないため曲線で描かれ、相対的で常に流動していることも表しています。

 

「陰」に分類される性質

陰陽では天体から、人体、性別に至るまで、あらゆるものを「陰」と「陽」に当てはめます。薬膳では季節の境目に体調を崩しやすいと考えるため、まずは1年の流れを陰陽で見てみましょう。季節の雰囲気と、「陰」や「陽」の増減の感覚が分かれば十分ですよ。はじめに、春分の4月頃に「陽」が増え始めます。夏至で最も盛んになり、そこから秋分の10月頃にかけ「陽」が減ります。そして秋分を境に「陰」が増えていき、冬至に満ちるとされます。やがて春分にかけ「陰」が減り、再び「陽」が増えていくサイクルです。体の変化は五行図を参照し、「木」の「春」には「肝」が弱るので、「酸」食材で補うと見ていきます。

 

「陰」にあてはまる性質はほかにもあります。

  • 性別…女性
  • 天体…月
  • 人体の位置…下半身(下部)、腹側
  • 内臓…五臓
  • 季節…秋、冬 
  • 味…酸、苦、   など

 

科学や数学も陰陽で分類され、例えば数学のプラスは「陽」、マイナスは「陰」と当てはめています。

 

「陽」に分類される性質

東洋医学や薬膳では、体内リズム(ホメオスタシス)が崩れても不調に陥ると考え、昼夜も陰陽で考えます。夜は「陰」で示され、昼は「陽」です。夜から朝にかけて「陰」が弱まり、朝になると「陽」が満ちて人が働き出します。昼の間は活動し、日が沈むころ「陰」が強まり、やがて就寝するので、そのリズムに従って「陰」の時間帯に良質な睡眠がとれれば「陽」が増え、正しいリズムで過ごせるとします。

 

「陽」にあてはまる性質はほかにもあります。

  • 性別…男性
  • 天体…太陽
  • 人体の位置…上半身(上部)、背中側
  • 内臓…五腑(六腑)
  • 季節…春、夏 
  • 味…辛、   など

 

そのほかに表裏(「表=陽」「裏=陰」」や、呼吸(「吐く=陽」「吸う=陰」)などあらゆる分類がありますが、特に健康について考えるときは、陰陽のどちらかではなく「バランス」を重視することが大切です。

 

「陰」の強い症状とは?

陰陽は人体や体全体の症状にも当てはまり、「陰」が強いタイプを「陰証(いんしょう)」と呼びます。証とは、体の反応や症状のことなので「陰証」は「陰」の傾向が強い身体症状、となりますね。寒く涼しい性質が中心ですが、さらに細かく分岐します。下のような特徴がありますが、これらが行き過ぎると不調になってしまいます。

 

「陰証」の特徴

  • 顔色…青白い
  • 食…細い
  • 汗…あまりかかない、かきづらい
  • 体感…だるい、重い、冷え、やる気が出ない時がある、おなかが緩い
  • 感情…情緒的、感情的
  • 傾向…冷静、消極的 など       

 

「陰証」におすすめする主な食材

モチ米、鶏肉、イワシ、鮭、黒豆、カボチャ、トウモロコシ、山芋、エビ、アジ、長ネギ、パクチー、ニンニク、ショウガ など(「陽」の食材で補う)

 

「陰証」も次項の「陽証」も証を判別するための基本になる考え方で、東洋医学では、この分類に加え「寒」「熱」の体質、「虚」「実」の証と組み合わせて、より正確な証を導きます。「寒」「熱」の体質や、「虚」「実」の証については順次ご紹介しますね。

 

「陽」の強い症状とは?

前項に続き、「陽」が強い「陽証(ようしょう)」タイプを見てみます。「陰」とは対照的で温かく熱い性質が中心で、下のような特徴がありますが、これらが行き過ぎると不調になってしまいます。また「陰」「陽」は、常に入り混じって変動しています。

 

「陽証」の特徴

  • 顔色…赤い、ほてり、のぼせ
  • 食…よく食べる
  • 汗…かく、暑がり
  • 体感…よく動く、よく話す、イライラ、便秘がち
  • 感情…論理志向的
  • 傾向…興奮、積極的  など     

 

「陽証」におすすめする主な食材  

豚肉、牡蠣、小麦類、ザクロ、イチゴ、ミカン、リンゴ、ホウレン草、ダイコン、ゴーヤ、セロリ、緑茶 など(「陰」の食材で補う)

 

「陰証」も「陽証」も、どちらがいい証というわけではなく、「陰」「陽」のバランスを保つことが大切になります。東洋医学では本人の体感を重視し、不調を感じたときは、旬の食材やその土地の食材で体バランスを整えていきます。

 

人生論に応用される「陰陽」、考えも柔軟に

「陰陽」の考え方は、一方向からの断定的な考え方をしたり、数値で物事を決定せずに、見方を変えると物事が違った観点からも見えてくるとします。そのため、人生論に応用されるほど大切にされる考え方なのです。「陰陽」を基にした東洋医学や薬膳では、身近な食材で体の偏りを中庸に戻していけます。その基になる考え方五行を楽しみながら学んでいきましょう。食材の特徴や具体的なレシピを知って、毎日の生活に少しずつ取り入れていけば、健康に近づけますよ!食べ物(薬膳)の効き目が、体にどう現れていくかは人それぞれ。そして自分に合った食べ物や食べ方を見付ければ、それらは自分の味方になってくれます。みなさんが味方をたくさん見付けられるように、願っていますね!

A's Pumpkin(薬膳マイスター)

日々健やかに過ごしたいと考える、おばちゃまライターです。
薬膳マイスター資格を取得、自然由来食材のエネルギーをよりよく活かすことで、ひとりでも多くの方が健やかに過ごせるお手伝いが出来ればと思っております。国際薬膳食育師3級。