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【基本の薬膳9】「酸、苦、甘、辛、鹹」の「五味」を活かして体を調整

薬膳では、体調に合った食材を「五味」のもつ機能を活かしながら取り入れて健康を目指します。味だけでなく食材の作用を示す薬膳の分類「五味」をこの機会に学んでみませんか。「五味」は、「酸」「苦」「甘」「辛」「鹹(かん)」の5つから成り、それぞれ体への良い影響もあれば摂り過ぎると不調を起こすこともあるため、それぞれをバランスよく配合する「五味調和(ごみちょうわ)」の考えを大切にします。【基本の薬膳8】でご紹介した「五行」に由来し、「木」「火」「土」「金」「水」がそれぞれ、「酸」「苦」「甘」「辛」「鹹(かん)」に対応していますが、「淡」が加わって六味と分類される場合もあります。五味ごとの食材もご紹介しますよ。それでは、それぞれの作用や特徴を見ていきましょう!

 

「酸味」の作用や特徴

「酸」は五味で酸っぱい味を示し、五行にある「肝臓」「胆」「目」に効くとされます。「胆」は、胆嚢と決断に関する働きのことで、少し現代と違っています。「酸」には血液を浄化し、解毒作用があり、血管や皮膚、筋肉を引き締めるので寝汗、下痢、頻尿などに効果的です。摂り過ぎると胃に不調が現れるほか、尿を出したい場合は控え目にします。臓器の呼び名などが、五行(東洋医学)と西洋医学とで違うものは、注釈を入れていきます。また、五臓については改めてご紹介しますね。

 

「酸」の主な食材

豚肉、亀、レモン、トマト、ザクロ、イチゴ、ミカン、リンゴ、梅、米酢、黒酢 など

 

五味にも、五行説でご紹介した相剋の関係があり、「酸」には「甘」がそれに当たります。「酸」がそのままでは強すぎるときは「甘」で補い合って調和できるのです。【不調の薬膳1】でご紹介したミートボールの黒酢タレは、胃が弱い方は甘酢ダレにすると「酸」の作用が弱まり、「甘」の恩恵も受けられます。

 

「苦味」の作用や特徴

「苦」は五味で苦い味を示し、五行にある「心臓」「小腸」「舌」に効くとされます。体内熱を整えたり、利尿作用で水毒を防ぎ、消炎作用がある一方、摂り過ぎると肺や大腸に不調が現れたり、風邪を引きやすい、体毛が抜けやすいといった症状が出る場合があります。

 

「苦」の主な食材

魚や豚などの内臓類、セロリ、ゴーヤ、 クワイ、キュウリ、パセリ、フキ、銀杏、納豆、緑茶、珈琲、ビールなど苦みの強い酒 など

 

夏の旬野菜の「苦」食材には体を冷やす食材もあるため、下痢症状があるときは食べるのを控え、強い冷え性の方は熱を通して食べたり、寒い時季の摂取を減らしましょう。「苦」の味は「辛」で調整します。

 

「甘味」の作用や特徴

「甘」は五味で甘い味を示し、五行にある「脾臓(消化器関連の働き)」「胃」「口」に効くとされ、体力不足を補ったり滋養強壮に効果的で、体を緩める作用があります。摂り過ぎると体にだるさを引き起こす場合もあるので、砂糖などの摂取は加減します。

 

「甘」の主な食材

牛肉、鶏肉、豚肉、、もち米、ソバ、黒豆、カボチャ、トモロコシ、トマト、タケノコ、山芋、エビ、アジ、キャベツ、サヤエンドウ、ダイコン、ニンジン、牛乳、リンゴ、ブドウ、バナナ、ゴマ、ハチミツ、砂糖 など

 

「甘」の性味はあらゆる食材に入っており、豚肉の食味は「酸」「甘」「鹹」、ブドウは「甘」「酸」と示されるように、1つの食材でも、複数の性味をもつものもあります。「甘」の味は「鹹」で調整します。

 

「辛味」の作用と特徴

「辛」は五味で辛い味を示し、五行にある「肺」「鼻」「大腸」に効くとされ、「血」の巡りを良くして体を温めたり、発汗を促します。摂り過ぎると肝臓や目の不調に繋がり、筋肉の攣りを引き起こす場合もあります。

 

「辛」の主な食材

キンカン、シソ、ショウガ、ネギ、ニンニク、ニラ、コショウ、サンショウ、トウガラシ、ワサビ など

 

涼性のソバに薬味(「辛」)をつけるなど「辛」には体を温める作用があり、免疫力を上げるので風邪の予防になります。「辛」の味は「酸」で調整します。

 

「鹹味」の作用と特徴

「鹹」は五味で塩辛い味を示し、五行にある「腎臓(腎臓と、成長や美容を促す働き)」「膀胱」「耳」に効くとされます。「鹹味」は固いものをほぐす作用があるので、便通への効果が有名です。摂り過ぎると血圧が上がったり、小腸や腎の機能を損なう場合があるため加減します。

 

「鹹」の主な食材

豚肉、タコ、イカ、アサリ、シジミ、アワビ、カニ、牡蠣、昆布、海苔、ヒジキ、味噌、ぬか漬け、塩 など

 

体のしこりを柔らかくするのが「鹹味」食材で、「鹹」の味は「苦」で調整します。五行図の「木」「火」「土」「金」「水」とも照らし合わせて、楽しんでみてください!

 

体調に合わせて食べ物(薬膳)を選ぶ

自分の体に合った食材を選んで調理していくと、少しずつ体の変化を感じられるようになってきます。どこか体調が優れず、3食とも外食やコンビニのお弁当、ファーストフードが続くという方は、まずは1食だけ、ごはんや旬の野菜を使ったメニューを取り入れてみてください。今までは何も感じずに食べていた市販のおかずを塩辛く感じるなど、味覚や食の好みの変化を感じるようになる場合もあります。【基本の薬膳2】で「ハーブ」に触れた際に少しご紹介しましたが、薬膳の効果は急性ではないので、長い目で体の変化を見ていくことも大切です。今の時季なら、お弁当の間仕切りにシソ(【旬の薬膳6】)を使うと、免疫力を上げつつ食品の傷みにも効果的だったり、いつものサラダにセロリなどの葉物食材(【不調の薬膳5】)を使うと気分が爽やかになるだけでなく、むくみを改善したり冷えを取ったりできます。いつものメニューに食材をプラスする方法もありますので、楽しみながら薬膳を実践してみてくださいね!

 

 

A's Pumpkin(薬膳マイスター)

日々健やかに過ごしたいと考える、おばちゃまライターです。
薬膳マイスター資格を取得、自然由来食材のエネルギーをよりよく活かすことで、ひとりでも多くの方が健やかに過ごせるお手伝いが出来ればと思っております。国際薬膳食育師3級。