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加湿器は手入れが重要! 5機種のメンテナンス性を徹底チェック
2022年12月19日 08:05
秋から冬にかけては、乾燥しやすい季節。これからエアコンを使うようになると、室内の湿度がいっそう下がりやすくなる。湿度が下がると肌荒れの原因になるほか、のどや鼻が不快に感じることも。さらに厚労省は、湿度が低すぎるとインフルエンザなどに感染しやすくなるとし、室内の湿度を50~60%に保つよう奨励している。
そこで欠かせないのが加湿器。
だが、その加湿器を使う上で重要なのが、しっかりとメンテナンスして清潔性を保つこと。なぜなら同じく厚労省は、施設などで加湿器などを感染源とした細菌感染症のレジオネラ症の感染事例があるとしている。特に「超音波振動などの加湿器を使用するときには、毎日水を入れ替えて容器を洗浄しましょう」と呼びかけている。
今回は、そうした衛生面を考えて、加湿器の主にメンテナンスのしやすさを検証してみた。
使ってみたのは以下の5機種。
- ダイニチ「ハイブリッド式加湿器LXタイプ HD-LX1022」
- パナソニック「ヒーターレス気化式加湿機 FE-KXU07」
- シャープ「プラズマクラスター加湿器 HV-R120」
- 山善「スチーム式加湿器 KS-GC28」
- リズム「超音波式プールレス加湿器 MIST 300」
主な比較ポイントは、手入れ部品の数、部品の形状(洗いやすいか)、手入れ方法、推奨されている手入れの頻度、消耗品とその交換頻度。どれだけ手入れがしやすいかに注目した。
なおハイブリッド式、気化式、スチーム式、超音波式の4つの加湿方式の違いについては、下記の記事を参照してほしい。
ダイニチは手入れ不要な使い捨てトレー&フィルターが便利
ダイニチの「ハイブリッド式加湿器LXタイプ HD-LX1022」は、水を含んだフィルターに風を当てる「気化式」と、ヒーターで温めた風を当てる「温風気化式」を組み合わせたハイブリッド式の加湿器。湿度が低いときは「温風気化式」で素早く加湿し、設定湿度に近づいたときやecoモード設定時は、温風を使わない「気化式」に切り替えて加湿量を調整する。本体サイズは390×245×405mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約6.4kg。
メンテナンスのポイント
毎日のメンテナンスとしては、タンク内の水を入れ替えることが推奨されている。その際に、タンク内に水を少し入れて、振り洗いすると良い。また本体に付着したゴミやホコリを柔らかい布で拭き取ったり、吸気グリルのホコリを掃除機などで吸い取ったりなどは、当機に限らず、すべての加湿器に当てはまる。
最も大事なのは、タンク内の水が伝っていく本体内の抗菌気化フィルターのメンテナンスだ。気化式の加湿器では、こうした気化フィルターに水が伝っていき、ファンの風に当たることで気化し、室内の湿度を高めていく。そのため気化フィルターは、水アカが付着しやすいパーツ。そのまま使い続ければ、水アカが取れにくくなり、雑菌やカビが繁殖して、悪臭が発生することもある。
抗菌気化フィルターのメンテナンスは、気が付いた時に(目安としては2週間に1度は)取り外して水洗いしたい。1カ月に1回程度は、クエン酸を使って洗浄すると、より清潔に使い続けられる。また、例えば春になり使わなくなる場合は、その前に、しっかりと洗浄して乾いたのを確認してから、本体を収納するようにしよう。
気化フィルターをメンテナンスするには、まずタンクを取り外し、本体下部にはめ込まれているトレーを水平に引き出す。あとは簡単に抗菌フィルターを取り出せる。5シーズンに1度は、別売の抗菌気化フィルター(2,640円)と取り替えよう。
気化フィルターのメンテナンス時には、一緒にトレーと仕切り板も軽く洗っておきたい。またトレイに関しては、消耗品の「カンタン取替えトレイカバー」が付いており、基本的に手入れは不要。同カバーは、1シーズンに1度の交換が推奨されている(3枚入り:1,650円)。
以上が、推奨されているメンテナンス頻度だが、同機は様々なパーツに抗菌処理が施されている。例えば水タンクのキャップに「Ag+抗菌アタッチメントEX」を備えるなど、細かい箇所にまで雑菌の繁殖を防ぐ工夫がされている。
また水タンク内の「カンタン取替えトレイカバー」は1シーズンで使い捨てにするなど、ユーザーが「メンテナンスを面倒がる」という前提で作られているかのようで好感が持てる。「抗菌気化フィルター」についても、通常パーツは5シーズンとしているが、上記のメンテナンス頻度を守れないのであれば、手入れが不要で3カ月に1度交換するだけの「カンタン取替えフィルター(2個:3,300円)」をおすすめしたい。
フィルター清潔機能を搭載したパナソニック
パナソニックの「ヒーターレス気化式加湿機 FE-KXU07」は、水を浸透させたフィルターにファンで風を当てて、気化させながら加湿する気化式の加湿器。独自イオン「ナノイー」を発生させ、加湿時は室内に放出する。運転モードは、ファンを高速回転させて加湿スピードを上げる「お急ぎモード」や、運転音を15dBに抑えた「静かモード」を備える。本体サイズは、375×186×375mm(幅×奥行き×高さ)。重さは約5.2kg。
メンテナンスのポイント
本機は製品名にある通り気化式の加湿器。メンテナンスをする前に、その構造を把握して、どこが水に濡れるのかを知っておくと良いだろう。下図を見ながら、水の経路を見ていくと、まずタンクから水がトレーに注がれて、その水を加湿フィルターが吸い取る。加湿フィルターに吸い込まれた水が気化して、本体から出ていく構造だ。
ということで、メンテナンスが必要な主なパーツは、タンク、トレー、加湿フィルター。
タンクは水を入れるたびに、水をシャカシャカと振るなどして軽く洗う。
トレーは、月に1度は本体から取り外して水洗いする。形状が複雑なので、細かい部分までよく洗う必要がある。加湿フィルターも月に1度、水かぬるま湯に浸けて押し洗いする。洗った後にすぐに使う場合は、濡れたままでトレーに装着しても良いが、使わない場合は、よく乾かす。
なお加湿フィルターの交換の目安は、約10年に1回と説明書に記されている。ただし、メンテナンスを怠ってカビなどを繁殖させてしまった場合は、すぐに買い替えよう(交換用加湿フィルター:4,950円)。
そのほかフィルター枠はヌメリがないか確かめながら水洗いし、プレフィルターなども掃除機などでホコリを取って清潔にしておきたい。
同機は、空気中の菌やウイルス、アレル物質の抑制などの効果が期待できる、独自イオン「ナノイー」を搭載している。このナノイーをフィルター部に充満させて、清潔にするという「フィルター清潔」機能を備えている。
運転停止中に、操作パネルの「フィルター」ボタンを押すと、ナノイーを充満させ始める。また加湿運転中に押すと「フィルター清潔」運転が予約され、加湿運転が停止した後に「フィルター清潔」運転が始まる。
「フィルター清潔」機能は、効果があるかユーザーには分かりづらいが、こまめに作動しておくと良いかもしれない。
シャープは細かく分解して隅々まで拭ける
シャープの「プラズマクラスター加湿器 HV-R120」は、水を浸透させたフィルターに風または温風を当てて、湿った空気を出すハイブリッド式の加湿器。独自イオンを発生させる、プラズマクラスター機能を備える。加湿量が1,200ml/時とパワフルで、33畳まで対応する。給水トレー容量は7Lで、弱運転であれば約22時間連続して加湿可能。本体上部に給水口を備え、重いタンクを持ち運ぶことなくペットボトルなどの容器から給水できる。本体サイズは370×245×505mm(幅×奥行き×高さ)で、重さは約8.5kg。
メンテナンスのポイント
本機は加湿フィルターに吸い込ませた水を蒸発させる、基本的には気化式の加湿器。ファンで風または温風を送って、加湿を促すため、ハイブリッド式と呼称している。
同機の取り扱い説明書の「お手入れ箇所」を見ると、水の通り道はすべて手入れできるようになっている。メンテナンス項目が多く、がさつな筆者は、頭がクラクラするほど。ただし気化式のメンテナンスのポイントは、水を溜める給水トレーと加湿フィルター。この2点を重点的にメンテナンスすべきだろう。
給水トレーは柔らかい布などを使って水洗いする。加湿フィルターは、細かいヒダのある構造なので、すすぎ洗いするだけ。もしメンテナンスを怠ってカビなどを発生させてしまった場合には、速やかに買い替える。
そのほか水を清潔にするために、給水トレーの底部に「Ag+イオンカートリッジ」が配置されている(初めて使う時に取り付ける)。トレーのヌメリやニオイの原因菌を除菌する。
また、加湿フィルターを乾燥させる「フィルター乾燥」機能を搭載しているのはうれしい。操作パネルの「フィルター乾燥」ボタンを押すと、約90分間、温風をあてて加湿フィルターを乾燥させられる。シーズンオフの前に使えば、清潔な状態で保管できるのだ。
メンテナンスが最も簡単な山善のスチーム式
山善の「スチーム式加湿器 KS-GC28」は、ヒーターで水を沸騰させて、その湯気を空気中に放出して加湿するスチーム方式の加湿器。厚労省によれば「レジオネラ属菌は60℃では5分間で殺菌されるので、水を加熱して蒸気を発生させるタイプの加湿器は感染源となる可能性は低い」としている。スチーム式は、菌に関しては最も安心して使えると言える。また同機は、本体を倒しても中の水や湯が漏れない設計。本体サイズは235×230×310mm(幅×奥行き×高さ)。重さは1.8kg。
スチーム式で恐いのが、本体を誤って倒した時に、熱い湯が漏れてこないか? だろう。特にペットや幼い子供がいる家庭では、気になるポイントだ。試しに、湯が入ったままの同機を、ゴロンと倒してみた。ゆっくりと倒したからということもあるだろうが、湯は1滴もこぼれなかった。ガツン! と倒せば少しはこぼれるかもしれないが、やけどを心配するほど、あたり一面にぶちまけることはなさそうだ。
メンテナンスのポイント
スチーム式の加湿器は、電気ポットやケトルと同様に水を沸騰させて、その蒸気で加湿していく。水を高温に熱するため、衛生面で考えると最も安心して使える。とはいえ、全くのメンテナンスフリーではない点に注意が必要だ。
特にシーズン前後の使い始めと収納する際には、しっかりとメンテナンスしておきたい。
メンテナンスは簡単。本体であるタンクの水を捨てたら、柔らかい布巾でタンク内の汚れを拭き取る。同様に本体の外側に付いたホコリなども拭き取る。頑固な汚れがあれば、クエン酸洗浄が推奨されている。取り外したフタは、内側のパッキンを外して汚れを拭き取り、清潔にしておきたい。
シーズン前後以外にも、1週間に1度程度のメンテナンスが推奨されている。とはいえ、洗うパーツは本体とフタだけ。とても簡単だ。
リズムは手入れしやすい構造で超音波式の不安を払拭
リズムの「超音波式プールレス加湿器 MIST 300」は、超音波振動で水をミスト状にして室内に放出する超音波式の加湿器。同方式は、タンクに入っている水をそのまま放出するため、水に雑菌が混じっている場合は、雑菌も一緒に部屋に撒き散らす恐れがある。そのため、最もメンテナンスに気を配るべき方式と言える。本体サイズは256×333mm(直径×高さ)。重さは約3kg。
同機は、タッチパネル式の電源ボタンを押すと、水が霧になる一連の流れを、暖色のあかりとともに演出する。
メンテナンスのポイント
超音波加湿器は、超音波ユニットが毎秒数万回以上、水を振動させて細かい粒子にして放出する。その際に、水をタンクから少しずつ、超音波ユニットのある水受け(プール)へ移動させるのが一般的だ。
一方でリズムの「超音波式プールレス加湿器 MIST 300」は、タンクの底部に超音波ユニットを配置。一般的なモデルよりもシンプルなプールレス構造なので、各パーツを洗いやすい。
いずれのパーツも毎日のように洗うのが理想的。特にタンクとインナーカバーは、注水時や水を交換する際に水洗いし、柔らかい布でヌメリや汚れを拭き取る。
タンクは、ほとんど凹凸のないバケツのような形状。洗う際にはタンクの中の水を捨てて、乾いた布で拭き取る。底部に配置されている超音波ユニットも、キュッキュッと汚れを拭き取ろう。この時に、タンクを丸洗いしないよう注意したい。タンクの外側の底部に端子があるため、濡らしてはいけない。
もう1つのインナーカバーは、漏斗(ろうと・じょうご)のような形。パーツの一方は口が広く、布などで汚れを拭き取りやすいが、もう一方は口がすぼんでいて細い。1度汚れが付くと拭き取るのに手間取りそうなので、面倒がらずにこまめに洗うようにしたい。
こまめな手入れが重要。加湿方式を知って自分に合う1台を
実際に5モデルを使ってみて、メンテナンスをしてみた結果、やはりスチーム式の加湿器は扱いやすいと感じた。今回使った山善の「スチーム式加湿器 KS-GC28」であれば、タンクである本体とフタを拭き掃除するだけで良い。またスチーム式は沸騰させた蒸気を放出するので、衛生的と言える。さらに、スチーム式の弱点だった「熱湯を部屋にぶちまけないか心配」という問題も、フタを工夫することで深刻な事態は回避できそうだ。
一方の気化式は、加湿しすぎる心配が少ないのがメリット。今回使った3モデルとも、各パーツを抗菌仕様にするなど、菌の抑制に力を入れていることが分かった。ただし、ほか方式と比べるとパーツ数が多く、メンテナンスにおいては、やや煩雑な印象だ。
超音波式は、タンク内の水が汚れた際に、そのまま部屋に放出してしまうという根本的な弱点がある。その点、リズムの「超音波式プールレス加湿器 MIST 300」は、細かいパーツが少なく、比較的にメンテナンスしやすいように感じた。
どの方式の加湿器を選べばよいか考えるときに、自身が金魚などを育てるのが得意かどうかを振り返ると良いかもしれない。しっかりと金魚を育てあげられる人は、加湿器のメンテナンスを持続して行なえる可能性が高そうな気がする。つまり、どの方式の加湿器でも良いだろう。
一方で、すぐに育てるのを飽きてしまう人は、加湿器のメンテナンスも、挫折するのではないだろうか? 筆者がまさにそれで、スチーム式の一択だと考えている。
いずれにしても加湿器のメンテナンスは、とても重要だ。どの方式のいずれのモデルを購入するか、今回の記事を参考にしてもらいたい。