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モバイルバッテリーなどの火災事故が多発 夏こそ注意!

リチウムイオン電池搭載製品の一例

独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)は、モバイルバッテリーやスマートフォン、電動アシスト自転車など、繰り返し充電して使える「リチウムイオン電池搭載製品」の事故事例を発表した。

リチウムイオン電池には可燃性の電解液が含まれているため、大きな火災事故につながるおそれもあるという。また、気温が高くなると製品がいつもより熱を持ちやすくなることから、夏場は事故が増加傾向にあるため注意を呼びかけている。

リチウムイオン電池搭載製品の事故事例

2020〜2024年の5年間にNITEに報告されたリチウムイオン電池搭載製品の事故は1,860件。そのうち約85%の1,587件が火災事故につながっているという。事故発生件数は春から夏にかけて気温の上昇とともに増加する傾向にあり、6~8月の事故発生件数が最も多い。

リチウムイオン電池搭載製品の月別事故発生件数

製品別では「モバイルバッテリー」の事故が最も多く、このほか電動アシスト自転車、充電式掃除機、充電式電動工具、ポータブル電源などの事故が多く報告されているという。

【事故事例1】電動アシスト自転車用バッテリー及び周辺を焼損する火災が発生

これはバッテリー内部の湿気が、内蔵されたリチウムイオン電池セルのつなぎ目から浸入し、劣化等により内部ショートが生じて異常発熱し、発火したものと考えられる。本件はリコール対象製品による事故で、購入後にリコール情報を確認しなかったことから事故につながった。

電動アシスト自転車用バッテリーが発火する様子(再現イメージ画像)

【事故事例2】自動車内でモバイルバッテリーを焼損する火災が発生

夏場に高温下の自動車内に放置したことによる事故。モバイルバッテリーに内蔵されているリチウムイオン電池セルが異常発熱し、発火したものと考えられる。

自動車内でモバイルバッテリーが発火する様子(再現実験)

【事故事例3】モバイルバッテリー及び周辺を焼損する火災が発生

膨張したバッテリーに衝撃を与えたことによる事故。使用者が膨張したモバイルバッテリーを押し込んで元に戻そうとした際に、外力が加わり、内部のリチウムイオン電池セルが内部ショートし、異常発熱して発火したものと考えられる。

膨張したモバイルバッテリー(再現実験)

NITEでは、こうしたリチウムイオン電池搭載製品の火災事故を防ぐために、重要な3つのポイントを紹介している。注意すべき点は次のとおり。

1.正しく購入する

リチウムイオン電池には円筒形/ラミネート形/角形の3種類の形状がある

連絡先が確かなメーカーや販売店から購入する

販売元の情報を確認し、サポートが日本語に対応しているかどうか、連絡先(電話番号や住所)が実在するか確認する。

リコール対象ではないことを確認して購入し、購入後も常に最新の情報をチェックする

製品の製造・輸入事業者のホームページなどをこまめにチェックし、リコール情報を確認する。リコール対象製品を所有している場合は、不具合が生じていなくても直ちに使用を中止し、購入した販売店や製造・輸入事業者に確認や相談をする。

安価な非純正バッテリーが抱えるリスクについて理解する

非純正バッテリーは、異常発生時に安全保護装置が作動しない場合がある。また、品質管理が不十分で、通常の使用であっても事故に至る場合や、事故が発生した際に、事業者の対応や保証が受けられない場合がある。

2.正しく使用する

高温下に放置するなどして熱を与えない

リチウムイオン電池は、高温環境下では熱の影響で異常な反応が起きて発熱・破裂・発火するおそれがある。直射日光の当たる場所や暑い日の車内などの高温下には放置しない。

高温下に放置すると発熱・破裂・発火するおそれがある

強い衝撃を与えない

リチウムイオン電池は外部からの衝撃が加わると内部ショートが生じ、発煙や発火につながる。また、膨張を元に戻そうとして強い力が加わったことで異常発熱して出火した事故も発生しているため、地面に落としたり無理な力を加えたりしないように注意する。

強い衝撃が加わると内部ショートが生じ、発煙や発火につながる

3.正しく対処する

充電・使用時は時々様子を見て、異常を感じたらすぐに充電・使用を中止する

充電・使用時は時々様子を見て、以下のような異常を発見した場合は、充電・使用を中止して、購入した販売店や製造・輸入事業者に相談する。

  • 充電できない
  • 充電中に以前よりも熱くなる
  • 膨らんで、変形している
  • 落とす、ぶつけるなどで強い衝撃を与え、一部が変形している
  • 不意に電源が切れる

膨らんだリチウムイオン電池の内部には可燃性ガスがたまっており、このような状態の電池に、強い衝撃や外力が加わって内部部品が破損した場合や充電しすぎた場合、電池に負荷がかかると熱が発生するなどして内部にたまっていた可燃性ガスが発火するおそれがある。

膨らんだ(変形した)リチウムイオン電池は発火するおそれがあるため特に注意

万が一発火した場合は大量の水で消火し、可能な限り水没させた状態で、119番通報する

発火した場合、煙や炎が噴き出している時は絶対に近寄らない。モバイルバッテリーなど小型のものは、火花が収まったら大量の水を掛けることで消火することができる。そして消火後は可能な限り水没させた状態で、消防機関へ通報する。このような対処が困難と判断した場合は、身の安全の確保を第一に119番通報をする。

消火後も冷却しないまま可燃物に接触させると新たな火災につながるおそれがある