家電レビュー

暑い部屋に工事不要のエアコンが欲しい! アイリスオーヤマ最新機を置いてみました

アイリスオーヤマ「ポータブルクーラー IPA-2221G」

工事不要、置くだけで使えるスポットエアコン。ここ数年で家庭向けのコンパクトな製品が出そろい、注目されているカテゴリーです。今回はアイリスオーヤマの最新モデル「ポータブルクーラー IPA-2221G」を試してみましたので、使用感を中心としたレビューをお届けします。記事掲載時点の直販価格は49,280円でした。

使いたい場所に置いて電源を入れればすぐに冷風が得られるポータブルなスポットエアコンです。電源はAC100V(コンセント)。付属の排気ダクトをつないで本体背面からの熱気を窓の外に排出すれば、より効果的

スポットエアコンと普通のエアコンは何が違う?

レビューの前に、スポットエアコンと普通のエアコンの違いについて少々ご説明。違いをご存知の方は読み飛ばしてください。

スポットエアコン(ポータブルエアコンやポータブルクーラーとも呼ばれる)は、壁に取り付ける壁型エアコンや窓にはめ込む窓型エアコンとは仕組みが異なります。それは熱気(熱交換による排熱)が排出される場所です。

例えば壁型エアコン(冷房)の場合、熱交換を行なう「室外機」が屋外に設置されています。室外機は、エアコン室内機から流れてきた温まった冷媒(ガス)を圧縮するなどして冷やし、冷えた冷媒を室内機に流し戻します。これによりエアコンから冷たい風が出るという仕組みです。

室外機では温まった冷媒から熱を取り除いて冷やして熱交換をしていますが、この時に温まった空気が放出されます。屋外の空気にガスの熱を奪わせて放出しているというわけです。なお、壁型エアコンの場合、室内の空気を冷やす時に除湿が行なわれてドレン水(除湿水)が出ますが、これはドレンパイプにより屋外などへ流し出しています。

窓型エアコンは室外機と室内機が一体型となったエアコンですが、室外機は窓の外側にあります。室内の空気を冷やしたことにより温まった冷媒を屋外の空気で冷やすという点では、壁型エアコンと同じ仕組みです。また、生じた水分は窓の外に流れるようになっています。

一方で、スポットエアコンの場合、一般的なエアコンの室外機にあたる部分が本体に内蔵されています。熱交換されて冷風が吹き出しますが、背面からは「室内の空気を冷やしたことにより生じる温まった空気」が排出されます。

ポータブルクーラーの仕組み

そんな構造なので、室内でそのまま使うと、冷風は出るものの、排熱により室内の温度は上がっていきます。「人に冷気が当たりさえすればいい」というならその使い方でも良いのですが、「室温が上がっては困る」という場合もあります。その場合、スポットエアコン背面から吹き出す温まった空気をダクトパイプにより窓の外に排出します。

本体背面。室内の空気を使って熱交換をして冷気を吹き出し、温まった空気は背面から排出されます。この状態で使い続けると室内の温度は上がっていきます(他の排気ダクト1本式のスポットエアコンも同様)
付属のダクトパイプを使って背面からの熱気を窓の外などに排出すれば、より効率良く室内の空気を冷やすことができます

それと、ダクトパイプを1本のみつなげられるスポットエアコンの場合、室内の空気を吸い込んで熱交換し、温まった空気をダクトパイプを通して窓の外などに排出。室内の空気が外に排出されるので、必然的に室内には外や隣室などの空気が流れ込みます。室内の空気を冷やすという観点では、スポットエアコンは室外機を使うエアコンほどは効率が良いとはいえません。

なお、熱交換のための空気を屋外から吸い込み、熱交換で温まった空気を屋外に排出するダクトパイプ×2本使用のスポットエアコンもあります。そういった製品を使えば、さらに効率よく室内の空気を冷却できます。

工事不要、置いて電源オンですぐ冷風が出る

では、アイリスオーヤマ「ポータブルクーラー IPA-2221G」がどんな製品なのか見ていきましょう。写真とともにご覧ください。

本体サイズは286×320×700mm(幅×奥行き×高さ)で、重さは22kg。電源はAC100V(50/60Hz)のコンセントから取ります。定格消費電力は755W/870W(50/60Hz)で、冷風能力は2.0kW/2.2kW(50/60Hz)。

上部に操作部と表示部があります。表示はシンプル。運転モードは、冷風運転、除湿運転、換気(送風)運転があります。冷風運転と換気(送風)運転は風量を弱風/中風/強風/AUTOに切り替えられます。

タイマー運転(入/切)も使用可能。セット後に1時間に1℃ずつ温度が上がるおやすみ運転もあります
リモコンも付属しています。チャイルドロック付き
前面上方に吹き出し口があり、上下風向板(ルーバー)は横向きから上向きに無段階で手動調節できます。保管時は左のように閉じることもできます
後方から。向かって左側面と背面に給気口と吸込口があります。四角いのは排気口で、ここから熱気が排出。左右の上方に取っ手があり、持ち上げやすくなっています。なお、底部にはキャスターが付いていますので、床なら押して容易に移動できます
付属のコードフック×2個を付属ネジで止めれば電源コードをまとめておくことができます

さて、「ポータブルクーラー IPA-2221G」は置いて電源を入れれば数分程度で冷風が出てくるスポットエアコンです。すぐ使える手軽さがありますが、そのまま使うと冷風は出るものの背面から温まった排気も出ますので、室内の気温が徐々に上がってしまいます。なので、付属のダクトパイプで排気を窓の外など室外に排出するのがいいでしょう。

付属の排気ダクトとダクトエンド類。これらを使って温まった排気を窓などから排出します。排気ダクトの長さは、最も伸ばした状態で約150cm(実測値)
「ポータブルクーラー IPA-2221G」の背面にある四角い排気口に排気ダクトをつなぎます
排気ダクトをつないだ様子
最長で150cmくらいまで伸びました
窓にしっかり排気ダクトを接続するためのパーツも付属しています
キャスター受け4個も付属
付属の窓パネルを使って窓にダクトを接続した時、窓にロックをかけられる補助錠が付いています
これは窓の外側に付くパーツで、排気ダクトに虫や雨水が入らないようにする雨除けカバーです

運転中に生じたドレン水(除湿水)は、本体内部で蒸発させて熱気と共に排出するノンドレン方式です。湿度の高い場所で連続的に使うとドレン水の気化が追いつかない場合があります。その場合は本体背面の下部排水口から水を抜きます。また、本体内にドレン水を溜めずに連続的に排水しながら運転する場合は、本体背面中央の排水ホース取付口に付属のホースをつなぎます(ドレン水を溜めるバケツなど容器類が別途必要)。

本体背面の下部に排水口があり、本体内にドレン水を溜めずに連続的に排水しながら使うこともできます

しっかり涼しく汗がすぐ引く!!! 騒音はそこそこ出ます

アイリスオーヤマ「ポータブルクーラー IPA-2221G」を冷風運転で使ってみましたが、その印象は「しっかり涼しい」。吹き出し口の近くにいると「ガンガン冷える」という感じです。5畳ほどの作業スペースで使いました。試用した日は外気温32℃程度の真夏日でしたが、「暑い季節はいつも汗だくになる場所だけど、このクーラーのおかげで非常に快適」となりました。

こんな作業スペースで試用しました。5畳ほどの玄関スペースで、夏場はチョー暑い!!! カビも発生しがちです
しかし電源をオンにして5分程度経つと、クーラー前方近くは一気に涼しくなります。吹き出す風がとても冷たく、気持ちいい!!!
排気は窓を少し開けて、排気ダクト経由で外に。縦長の窓なので、付属の窓パネルだと高さが足りずに取り付けられませんでした
クーラーから涼しい風が吹き出す一方、ダクトは熱を帯び、排気は温か。ドライヤーほどは熱い風は出てきませんが、そこそこ「あったかい」。恐らく網戸には影響しない温度だと思います

今回置いたスペース、この時期は昼も夜も暑いです。この場所で試用のためにポータブルクーラーを設置してダクトを窓に向けたりしていたら、数分で汗だく。Tシャツに汗が滲みます。が、クーラーを使い始めて5分もすると涼風を浴びられ、さらに5分もするともはや汗はナシ。冷風を浴びるTシャツも乾き始めたのでした。

そんな感じで、非常に涼しいポータブルクーラー。冷水を入れる簡易冷風器などとは、やはり一線を画する「れっきとした冷房装置」です。作業中の熱中症予防などにも最適という使用感です。

ただし、スポットクーラーというだけあって、広い範囲をすぐ冷やすということは難しいように思います。このIPA-2221Gは4.5〜7畳用となっていますが、5畳ほどの作業スペースで使ってみたところ、運転当初はクーラーの周囲(風が感じられる範囲程度)のみが涼しい感じ。30分ほど使っていると部屋全体が少し涼しくなったように感じられますが、その時点でクーラーを停止して数分経つと「やっぱり暑いかも」という気がしてきます。

冷房し始めてから30分くらい「もう暑くなく快適」になったので、いったんクーラーをオフに。5分くらいすると「ちょっと暑いかな?」と感じられました。部屋全体がすぐに冷やされるような形ではありません
稼働中は排気により室内が負圧(陰圧)になるため、窓の隙間から外気がけっこう入ってくるのもあると思います。「ダクトを窓の外に向けただけ」という使い方では冷房の効率はあまり良くないようです

それと、騒音はそこそこします。やはり熱交換器の動作音は「ゴーッ」という感じでウルサめ。真横にこのクーラーを置いて読書や勉強……となると、ちょっと苦しいかもしれません。このタイプのクーラーにおいては仕方のないことだと思いますが、肉体労働寄りの作業をしつつ使うなら「全然問題ない」というレベルの音ではあります。

唐突に思ったのは、室内で自転車トレーニングやZwift(屋内サイクリングに使えるアプリ)などをする時、こういうスポットクーラーがあると快適なのでは? と。体の熱を効率良く奪えそうなスポットクーラーなので、より快適に室内トレーニングができるかもしれません。

ちょっと気になったのは、風量と風の流れ。風量は弱風/中風/強風/AUTOに切り替えられますが、全体的に風量が多めという印象です。弱風にしても結構強めの風が出てくる感じ。

また、ルーバーがあって風の向きは調節できますが、風の直進性がイマイチという感じ。吹き出し口から出た風が、1mくらいで周囲に拡散しているような形です。例えば2mくらい離れた場所に置いて、上半身だけに風を送るような使い方はちょっと難しいと思います。

ただ、恐らくこういったスポットクーラーは、「一時的に冷たい風が得られればいい」「とりあえず手っ取り早く冷風を浴びられればいい」という使い方だと思いますので、風量や風の直進性うんぬんを評価するのは的外れという気もします。騒音、最適な風量、風の流れまで意識するなら、やはり壁型などのエアコンになっちゃいますネ。

なにげに良さげなのが、連続排水のための排水ホース取付口の位置。本体背面の少し高い位置にあります。

排水ホースの取付口は床面から約40cmの高さにあります。連続排水時はここからドレン水(除湿水)が流れ出します。通常はキャップで閉じられていて、連続排水時にキャップを外します。キャップと本体はシリコン製と思われるコードでつながれていて紛失防止になっています。このコードは太めで耐久性が高そう

このポータブルクーラーは運転中に生じたドレン水(除湿水)を本体内部で蒸発させて熱気と同時に排出するノンドレン方式なので、通常はこの排水ホース取付口を使わないと思います。ですが、湿度の高い状況下で連続的に使うとなると、ドレン水の蒸発と排出が追いつかなくなるそうです。となるとやはり、本体外部に連続的に排水する必要が出てきます。

連続排水する場合、上記排水ホース取付口に付属ホースをつなぎ、ホースの先から流れ出る排水を何らかの容器で受ける必要があります。本機の場合は排水の出口がやや高い位置なので、排水を受ける容器にあまり制限がないように思います。ボトルでも、バケツでも、トレイでも、いろいろな高さの容器を使えると思います。ともあれ、実際に連続排水で使ってみました。

排水ホース取付口のキャップを外せば、連続排水での運転ができます。キャップを外しただけだとドレン水がダダ漏れになりますので、付属のホースをつなぎ、ホースの先を何かしらの容器に入れてドレン水を受けさせます。容量の大きなペットボトルを置きました
排水ホース取付口から容器まで十分な落差がありますので、ドレン水がスムーズに流れます
この日は湿度の高い日。冷房運転を始めて数分すると、ドレン水が意外なほどたっぷりと継続的に流れ出しました
排水ホース取付口が高めの位置にあり、ホースもやや長めのものが使えるので、ドレン水を受ける容器を交換するのも容易です

んん〜イイなぁアイリスオーヤマのポータブルクーラー。連続排水も扱いやすいし、冷却能力も十分あるし、そーんなには場所も取らないし。スポットクーラーとしては色々とバランスが良いと感じました。筆者的には買っちゃおうかナ的な気分。ともあれ、なかなかイイ感じで使えるスポットクーラーなので、興味のある方はチェックしてみてください。

スタパ齋藤