家電レビュー
暑い部屋に工事不要のエアコンが欲しい! アイリスオーヤマ最新機を置いてみました
2021年7月20日 08:00
工事不要、置くだけで使えるスポットエアコン。ここ数年で家庭向けのコンパクトな製品が出そろい、注目されているカテゴリーです。今回はアイリスオーヤマの最新モデル「ポータブルクーラー IPA-2221G」を試してみましたので、使用感を中心としたレビューをお届けします。記事掲載時点の直販価格は49,280円でした。
スポットエアコンと普通のエアコンは何が違う?
レビューの前に、スポットエアコンと普通のエアコンの違いについて少々ご説明。違いをご存知の方は読み飛ばしてください。
スポットエアコン(ポータブルエアコンやポータブルクーラーとも呼ばれる)は、壁に取り付ける壁型エアコンや窓にはめ込む窓型エアコンとは仕組みが異なります。それは熱気(熱交換による排熱)が排出される場所です。
例えば壁型エアコン(冷房)の場合、熱交換を行なう「室外機」が屋外に設置されています。室外機は、エアコン室内機から流れてきた温まった冷媒(ガス)を圧縮するなどして冷やし、冷えた冷媒を室内機に流し戻します。これによりエアコンから冷たい風が出るという仕組みです。
室外機では温まった冷媒から熱を取り除いて冷やして熱交換をしていますが、この時に温まった空気が放出されます。屋外の空気にガスの熱を奪わせて放出しているというわけです。なお、壁型エアコンの場合、室内の空気を冷やす時に除湿が行なわれてドレン水(除湿水)が出ますが、これはドレンパイプにより屋外などへ流し出しています。
窓型エアコンは室外機と室内機が一体型となったエアコンですが、室外機は窓の外側にあります。室内の空気を冷やしたことにより温まった冷媒を屋外の空気で冷やすという点では、壁型エアコンと同じ仕組みです。また、生じた水分は窓の外に流れるようになっています。
一方で、スポットエアコンの場合、一般的なエアコンの室外機にあたる部分が本体に内蔵されています。熱交換されて冷風が吹き出しますが、背面からは「室内の空気を冷やしたことにより生じる温まった空気」が排出されます。
そんな構造なので、室内でそのまま使うと、冷風は出るものの、排熱により室内の温度は上がっていきます。「人に冷気が当たりさえすればいい」というならその使い方でも良いのですが、「室温が上がっては困る」という場合もあります。その場合、スポットエアコン背面から吹き出す温まった空気をダクトパイプにより窓の外に排出します。
それと、ダクトパイプを1本のみつなげられるスポットエアコンの場合、室内の空気を吸い込んで熱交換し、温まった空気をダクトパイプを通して窓の外などに排出。室内の空気が外に排出されるので、必然的に室内には外や隣室などの空気が流れ込みます。室内の空気を冷やすという観点では、スポットエアコンは室外機を使うエアコンほどは効率が良いとはいえません。
なお、熱交換のための空気を屋外から吸い込み、熱交換で温まった空気を屋外に排出するダクトパイプ×2本使用のスポットエアコンもあります。そういった製品を使えば、さらに効率よく室内の空気を冷却できます。
工事不要、置いて電源オンですぐ冷風が出る
では、アイリスオーヤマ「ポータブルクーラー IPA-2221G」がどんな製品なのか見ていきましょう。写真とともにご覧ください。
上部に操作部と表示部があります。表示はシンプル。運転モードは、冷風運転、除湿運転、換気(送風)運転があります。冷風運転と換気(送風)運転は風量を弱風/中風/強風/AUTOに切り替えられます。
さて、「ポータブルクーラー IPA-2221G」は置いて電源を入れれば数分程度で冷風が出てくるスポットエアコンです。すぐ使える手軽さがありますが、そのまま使うと冷風は出るものの背面から温まった排気も出ますので、室内の気温が徐々に上がってしまいます。なので、付属のダクトパイプで排気を窓の外など室外に排出するのがいいでしょう。
運転中に生じたドレン水(除湿水)は、本体内部で蒸発させて熱気と共に排出するノンドレン方式です。湿度の高い場所で連続的に使うとドレン水の気化が追いつかない場合があります。その場合は本体背面の下部排水口から水を抜きます。また、本体内にドレン水を溜めずに連続的に排水しながら運転する場合は、本体背面中央の排水ホース取付口に付属のホースをつなぎます(ドレン水を溜めるバケツなど容器類が別途必要)。
しっかり涼しく汗がすぐ引く!!! 騒音はそこそこ出ます
アイリスオーヤマ「ポータブルクーラー IPA-2221G」を冷風運転で使ってみましたが、その印象は「しっかり涼しい」。吹き出し口の近くにいると「ガンガン冷える」という感じです。5畳ほどの作業スペースで使いました。試用した日は外気温32℃程度の真夏日でしたが、「暑い季節はいつも汗だくになる場所だけど、このクーラーのおかげで非常に快適」となりました。
今回置いたスペース、この時期は昼も夜も暑いです。この場所で試用のためにポータブルクーラーを設置してダクトを窓に向けたりしていたら、数分で汗だく。Tシャツに汗が滲みます。が、クーラーを使い始めて5分もすると涼風を浴びられ、さらに5分もするともはや汗はナシ。冷風を浴びるTシャツも乾き始めたのでした。
そんな感じで、非常に涼しいポータブルクーラー。冷水を入れる簡易冷風器などとは、やはり一線を画する「れっきとした冷房装置」です。作業中の熱中症予防などにも最適という使用感です。
ただし、スポットクーラーというだけあって、広い範囲をすぐ冷やすということは難しいように思います。このIPA-2221Gは4.5〜7畳用となっていますが、5畳ほどの作業スペースで使ってみたところ、運転当初はクーラーの周囲(風が感じられる範囲程度)のみが涼しい感じ。30分ほど使っていると部屋全体が少し涼しくなったように感じられますが、その時点でクーラーを停止して数分経つと「やっぱり暑いかも」という気がしてきます。
それと、騒音はそこそこします。やはり熱交換器の動作音は「ゴーッ」という感じでウルサめ。真横にこのクーラーを置いて読書や勉強……となると、ちょっと苦しいかもしれません。このタイプのクーラーにおいては仕方のないことだと思いますが、肉体労働寄りの作業をしつつ使うなら「全然問題ない」というレベルの音ではあります。
唐突に思ったのは、室内で自転車トレーニングやZwift(屋内サイクリングに使えるアプリ)などをする時、こういうスポットクーラーがあると快適なのでは? と。体の熱を効率良く奪えそうなスポットクーラーなので、より快適に室内トレーニングができるかもしれません。
ちょっと気になったのは、風量と風の流れ。風量は弱風/中風/強風/AUTOに切り替えられますが、全体的に風量が多めという印象です。弱風にしても結構強めの風が出てくる感じ。
また、ルーバーがあって風の向きは調節できますが、風の直進性がイマイチという感じ。吹き出し口から出た風が、1mくらいで周囲に拡散しているような形です。例えば2mくらい離れた場所に置いて、上半身だけに風を送るような使い方はちょっと難しいと思います。
ただ、恐らくこういったスポットクーラーは、「一時的に冷たい風が得られればいい」「とりあえず手っ取り早く冷風を浴びられればいい」という使い方だと思いますので、風量や風の直進性うんぬんを評価するのは的外れという気もします。騒音、最適な風量、風の流れまで意識するなら、やはり壁型などのエアコンになっちゃいますネ。
なにげに良さげなのが、連続排水のための排水ホース取付口の位置。本体背面の少し高い位置にあります。
このポータブルクーラーは運転中に生じたドレン水(除湿水)を本体内部で蒸発させて熱気と同時に排出するノンドレン方式なので、通常はこの排水ホース取付口を使わないと思います。ですが、湿度の高い状況下で連続的に使うとなると、ドレン水の蒸発と排出が追いつかなくなるそうです。となるとやはり、本体外部に連続的に排水する必要が出てきます。
連続排水する場合、上記排水ホース取付口に付属ホースをつなぎ、ホースの先から流れ出る排水を何らかの容器で受ける必要があります。本機の場合は排水の出口がやや高い位置なので、排水を受ける容器にあまり制限がないように思います。ボトルでも、バケツでも、トレイでも、いろいろな高さの容器を使えると思います。ともあれ、実際に連続排水で使ってみました。
んん〜イイなぁアイリスオーヤマのポータブルクーラー。連続排水も扱いやすいし、冷却能力も十分あるし、そーんなには場所も取らないし。スポットクーラーとしては色々とバランスが良いと感じました。筆者的には買っちゃおうかナ的な気分。ともあれ、なかなかイイ感じで使えるスポットクーラーなので、興味のある方はチェックしてみてください。