家電製品レビュー
ケーブルなしで動く! 「スマート扇風機」で我が家の夏が一変するかも
2021年7月14日 08:00
じめじめした梅雨のまっただなか、プラススタイル(+Style)の「スマート扇風機」をお借りして、筆者宅にお試しで導入してみることにした。家族が多くの時間を過ごすリビングのある2階は、日中はとりわけ熱が溜まりやすい。本格的な夏が来れば夜も寝苦しくなるので、そうなる前に対策したいところ。
エアコンに送風機、サーキュレーターと、冷房器具はすでにいくつもある。でも、どうにも室内を効果的に冷やせている気がしない。そこに扇風機を1台追加したところで、焼け石に水(風?)みたいなことになるかもしれないという不安がありつつも、スマートな扇風機であれば、我が家をスマートに涼しくしてくれるのでは、という期待もあった。で、いざ「スマート扇風機」を使ってみたら……今年の夏は余裕で乗りきれそうな予感がする。
スマホで操作できる。バッテリーで動いて、自分好みにカスタムも!
「スマート扇風機」は、スマート家電機器メーカーの+Styleが5月に発売した製品だ。「すっきりしたデザインのオシャレな扇風機」という雰囲気だが、「スマート」とうたっていることもあって、従来の扇風機にはない様々な機能と特徴を持っている。そのなかでも筆者として注目したいポイントは4つ。
1つは、同社の他のスマート家電と同様、スマートフォンと連携し「独自の+Styleアプリからワイヤレスで動作設定ができる」こと。電源のオンオフはもちろんのこと、風量を12段階で、左右の首振り角度を0/30/60/90/120度の5段階でそれぞれ調整可能だ。
一定時間稼働後に自動で電源を切るオフタイマー機能を備え、アプリ上では簡単なスライダー操作で素早く時間指定ができる。電源のオンも含めて自動化したいときのために「スケジュール設定」機能もあり、たとえば就寝時刻の少し前からオンにして、30分ごとに風量を小さくしていきながら、最後にオフにする、といった設定もできるようになっている。
2つ目は「バッテリー内蔵」であること。バッテリーだけで動作させられるので、電源ケーブルの届く/届かないに関係なく、好きな場所に置いて、配線なしにすぐ使えるのが魅力だ。バッテリーによる動作時間は風量設定などに左右され、最大2~30時間。もちろん電源ケーブルを接続した給電状態で、バッテリー残量を気にすることなく使い続けることもできる。
3つ目は「マグネット式の電源コネクタを採用している」こと。本体台座にある充電端子に近づけるだけでコネクタがくっつき、充電が即座に始まるようになっている。取り外す時も力を入れず、軽く引っ張るだけ。この着脱の容易さは、気軽に持ち運んで使えるバッテリー内蔵扇風機のメリットをより活かすギミックにもなっている。
そして4つ目は「サーキュレーター代わりにもなる」というところ。台座から伸びる、スマート扇風機の羽根を含むヘッド部分を支えるポールは真ん中で分離できるようになっていて、2段階の高さに変えられる。短くすれば背の低いサーキュレーターのように、つなげれば背の高い扇風機になる。
床面付近から空気を循環させたいときは背を低く、直接風を浴びて涼みたいなら背を高く、といったように、使い方や使う場所に合わせてカスタマイズできるのが面白い。ネットワークにつながるという意味での「スマート」さを持つだけでなく、扇風機としての仕組み自体も「スマート」なのが、+Styleのスマート扇風機の特徴というわけだ。
電源ケーブルがないだけで、圧倒的な「自在さ」
機能面でいろいろな特徴のあるスマート扇風機だが、なんといっても他にはない利点は、その「自在さ」だと思う。内蔵バッテリーで動作するおかげで、電源ケーブルなしでどこでもすぐ使えるというのが大きいのだけれど、スマート扇風機を使いはじめると、この「電源ケーブルなし」というのが、反対にこれまでの扇風機(家電)をいかに不便にしていたか、ということに気付くのだ。
通常の電源ケーブルのある扇風機を移動させるときは、コンセントから抜き、使いたい場所に置いて、再びコンセントに差し込む、という手順になるだろう。このとき、もっと細かいところまで言うと、持ち運ぶときは引きずらないようにケーブルをまとめて慎重に持ち運ぶ、なんていう気遣いも必要になる。
設置後もコンセントが届く範囲かどうかを確かめ、届かないなら延長ケーブルを使うか考えなければならない。さらに、人が通りそうな場所に置くときは、ケーブルに足を引っ掛けたりしないように、位置やケーブルの取り回しを工夫することも必要になってくるはずだ。
一方で、バッテリー内蔵のスマート扇風機だと、コンセントもケーブルのことも、何も考えなくていい。ただ移動して、好きな場所に置くだけ。首振りさせるときは、風が届く範囲を考えて本体の向きを調整する作業が必要になるけれど、せいぜいそのくらいの手間だ。
我が家の場合、扇風機を使いたい場所は仕事部屋か、食事中のダイニングか、夜の寝室のだいたい3カ所。1日のうち、この3カ所にいちいち持ち運んで使うのが、全く苦にならない。おそらく扇風機本体の軽さもあるだろう。約2.6kgという重量は、その数字以上に軽く感じる。
とにかく好きなときに、好きな場所で、のたうち回る電源ケーブルに悩まされることなく、最も涼しくなれるベストなポジションに置いて使える自在さがある。
もちろんバッテリーを充電しないとそのうち止まってしまうので、ロボット掃除機のように充電場所にする「定位置」を決めておいた方がいい。けれど、それにしたってマグネット式の電源コネクタでパチッとくっつければ一瞬で充電を始められるし、そこから再び持ち出すときも軽く取り外せばいいだけだから、面倒に感じるところはほぼゼロなのだ。
室内サイクリング用の「風」としても大活躍
筆者としては、スマート扇風機にもう1つ期待していたことがあった。それは、運動不足解消のために毎日励んでいる室内サイクリング用の冷房にちょうどいいのでは? ということ。
室内サイクリングで一番の課題は「暑さ」だ。屋外を自転車で走る場合は走行風があるのであまり問題にならないが、一生懸命ペダルをこいでも風が発生しない室内サイクリングでは、エアコンで室温を下げるか、常にサーキュレーターや扇風機の風を浴びていないと熱中症になる危険がある。
なので、室内サイクリングは意外に冷房が生命線だったりもするのだけれど、それでいてペダルをこぎ始めた後になって、エアコンやサーキュレーターをオンにするのを忘れていた……なんてことに気付いたりするのだ。だったら自転車を降りて電源を入れればいいのでは? と思うかもしれないが、そうもいかない事情がある。
筆者がもっぱら楽しんでいる室内サイクリング/ランニングのためのバーチャルフィットネスアプリ「Zwift」では、オンラインで他の人とトレーニングしたり競ったりできるイベントがある。そのスタート後に自転車を降りてしまうと、当たり前だけれど、あっという間に置き去りにされてしまう。だからといって暑さを我慢して走り続けることもできないので、結局置いていかれるのを覚悟で自転車を降りるか、家族を呼んで電源を入れてもらうか、どちらかしかなかった。
そんな面倒を防ぐのに、スマート扇風機が役に立ってくれる。室内サイクリングをするときは、Zwiftの補足情報の表示や画面操作のために、必ず手の届くところにスマートフォンやタブレットを置いている。この手元にある端末のアプリでスマート扇風機のオンオフや風量などをいつでもコントロールできるわけだから、電源オンを忘れていたとしても問題ない。なんなら走行速度に合わせて風量を調整することも(手動操作になるけれど)できるので、よりリアルな走行感を演出することさえ可能だ。
でもって、アプリには他のスマート家電と連携設定が可能な「スマートモード」という機能もあり、これをうまく活用することでさらに便利になる。たとえば同じく+Styleの「スマートWi-Fiプラグ」と組み合わせるパターンがわかりやすいだろう。
スマートWi-Fiプラグには通電ボタンがあり、そのボタンのオンオフを契機に、スマート扇風機を動作させる連携設定ができる。つまり、自転車に乗った状態で手の届く場所にスマートWi-Fiプラグをセットしておけば、ボタンをオンにしたときにスマート扇風機の電源を入れ、風量を最大に設定する、といった自動化が可能なのだ。
これで、アプリを立ち上げる必要すらなく、ワンプッシュでスマート扇風機をオンにでき、電源入れ忘れのトラブルとは無縁になる。「レーススタートまであと1分しかない!」と焦りそうなタイミングでも、最小限の前準備で室内サイクリングに臨めるわけだ。
オンにする設定とは反対に、もう一度スマートWi-Fiプラグのボタンをプッシュしたときにスマート扇風機をオフにする連携設定を追加するのもアリ。普段の暮らしのなかだけでなく、趣味にもスマート扇風機は大活躍してくれることがわかったのだった。
「あと一歩」なところもあるが、使い勝手の良さはピカイチ
スマートフォンからの操作や他のスマート家電との連携が可能で、バッテリー内蔵によるフレキシブルな使い方もできるなど、普通の扇風機にはない使い勝手を実現しているスマート扇風機。室内をピンポイントで効果的に冷やせることも確認でき、我が家の冷房器具のなかで最も稼働率が高くなるほど。
いいところばかりで欠点がないように見えるかもしれないが、個人的には「あと一歩」と感じる部分もある。1つは、上向きの角度が不足していて、一般的なサーキュレーターのように室内の空気を循環させる目的では使いにくいこと。そういうこともあって、背を低くして使うことはほとんどないし、使い方自体は通常の扇風機と結局変わることがなかった。
もう1つは、細かいところだけれど、本体の台座部分にある充電端子の位置がわかりにくく、かがんでのぞき込むようにしながらケーブルを接続しなければならないこと。マグネット式で軽々と脱着できるという長所が完璧には活かされていないように思う。端子付近の見やすい場所にシールを貼っておくなどの工夫で解決できるものの、できれば最初からマークが入っているとありがたいかも。
それでもアプリ操作やバッテリー内蔵による使い勝手の良さを考えると、わざわざ従来の扇風機に「戻る」ことはもはやありえないと思えるほど。キャンプでテント内の冷房に使うのも便利そうだし、小型のソーラーパネルや高出力ポータブルバッテリーなどと組み合わせて、クリーンエネルギーな扇風機として動かし続けるのも面白そう。アイデア次第で活躍の幅はもっと広がりそうだ。