家電レビュー

「持ち運べるエアコン」が暑い夏に1台3役で活躍!

ユアサプライムスのスポットクーラー「YNSC-3D」。カラーはスタイリッシュなグラファイト

ユアサプライムスのスポットクーラー「YNSC-3D」を自宅で使ってみました。本機は持ち運びができるサイズなので、エアコンの風が届きにくい場所にも移動させて使えます。関東地方は通常よりも早く梅雨が明けて夏本番を迎えてしまいましたが、複数の冷房器具を組み合わせながら猛暑を涼しく乗り切る工夫を考えてみたいと思います。

コンセントにつなぐだけで、すぐに涼しくなる

YNSC-3Dは箱から取り出して、電源ケーブルをコンセントにつなげばすぐに使える冷房器具です。本体の組み立てや設置工事も不要。猛暑対策の即戦力として働いてくれます。直販サイトの価格は34,800円。

本機は一般的なエアコンと同じコンプレッサー方式を採用しています。本体天面からは、外気との温度差がおよそ-7.5℃の、冷たい空気が吹き出します。主に吹き出し口の手前近くをスポットで冷やす1~2人向けの冷房器具ですが、シンプルな送風機能も搭載しているので、リビングルームのエアコンと併用して、涼しい風を部屋の中に回すサーキュレーター代わりにもなります。空気の吹き出し口を自動でスイングさせる機能も併用すると効率的です。

本体天面の送風口。自動で回転させて向きを変えるスイング機能も搭載されています

また冷却運転と合わせて室内の湿気が取り除けます。冷却を行なわず、除湿単体での運転も可能です。内蔵タンクに貯められる水の容量が約1.7Lと、専用の除湿機に比べるとやや少なめですが、タンクの水がオーバーフローしないように自動で停止する機能も付いているので安心です。雨の日に室内用の物干し台と併用して洗濯物を乾かしたり、北向きの部屋の湿気取りとしてもマルチに活躍します。

除湿機能も搭載。背面に吸い取った水を約1.7L貯められるタンクがあります
タンクの容量は小さめですが、満水時に自動で本体をオフにするストッパー機能もあります

1台で3役。冷風・送風・除湿対応

送り出す風量の強さは冷風が「強・弱」の2段階、送風が「強・中・弱」の3段階から選べます。除湿は風量が弱めに固定された状態で、起動後10分間運転/5分間停止を繰り返します。

冷風・送風・除湿の各機能運転中には、1/2/4/8時間の自動オフタイマーが設定できます。

本体天面にタッチセンサー式のコントロールパネルを搭載。タイマー機能を活用すれば節電にもつながりそうです

本機はスポットエアコンなので、人に距離を寄せて使うスタイルが基本になります。「弱」の設定でも風に勢いがあるので、しっかりと涼感が得られます。風を直接受けてしまうとかえって肌寒く感じられたり、手元に置いた紙類が舞ってしまいます。風量と吹き出し口の角度を調整すると使い心地が快適になります。

置き方で注意すべき点は、運転中に背面から排熱が放出されることです。つまり背面側を壁に近付け過ぎて設置したり、狭い空きスペースに本機を押し込めて使わないように注意したいです。部屋の換気もまめに行なうと良いでしょう。

設置時の注意点は背面の排気口を塞いでしまわないこと

移動も楽々、エアコンのない部屋でも涼しく

本体のサイズは約24×20×48.5cm(幅×奥行き×高さ)。見た目の「持ち運べるサイズ感」に対して重さが約12kgあるので、実機を持ち上げると意外に重く感じられるかもしれません。天面には折り畳めるハンドルが付いているので持ち運びやすく、大人であれば無理なく宅内を持ち歩けると思います。

本体天面に折り畳み式のハンドルを搭載。重さは約12kgありますが、ハンドルを持てばスムーズに持ち運べます

YNSC-3Dの高い可搬性が活かせると、宅内のエアコンの設置ができない場所、あるいはエアコンの冷気が届きにくい場所もスポットで冷やせます。この時期はキッチンで調理中に、あるいは風呂あがりに汗をかいてしまうので、スポットエアコンがあると大変重宝しました。

筆者宅は寝室にエアコンがありません。隣接する部屋のエアコンをつければ寝室も快適な室温に調整できるため、敢えて増設する必要を感じていなかったのですが、連日猛暑日が続くと寝ている間にも暑さ疲れが蓄積してしまいます。ユアサプライムスのスポットエアコンがあれば快適に眠れました。

夏はキッチンに立って煮炊きをするだけでも汗をかいてしまいます。「持ち運べるエアコン」があればキッチンもまた涼しく快適になります
バスルームはエアコンの設置が難しかったり、風呂あがりは閉め切っているので夏場は熱気がこもりがちに。「持ち運べるエアコン」が風呂あがりの汗を引かせてくれました

ハンドル付きで持ち運びやすい。エアコンとの使い分けで節電にも貢献

こうしたスポットクーラー/ポータブルクーラー製品は近頃人気のようなので、ライバルのポータブルクーラーとサイズを比べてみます。アイリスオーヤマの「IPA-2203G」は縦横の幅がユアサプライムスのYNSC-3Dよりも少し大きいだけでなく、本体の高さが約70cmあります。底面にキャスターがあるので平面の移動はしやすそうですが、持ち上げる必要がある場合は気合いが要るかもしれません。

シロカの「SY-D151」は床占有面積はYNSC-3Dとほぼ変わらず、背丈がやや低い約41.4cm。本体固定のキャリングハンドルも付いているので可搬性に優れています。量販店の店頭で体感した感触ですが、風量がYNSC-3Dよりも若干弱いように感じられました。

YNSC-3Dの本体に固定されている電源コードの長さは約1.8mあるので、少し高い位置にある壁コンセントにも届きます。巻き取って本体に収納する機能はないので、場所を移動する際にはケーブルを踏まないように注意が必要です。

ユアサプライムスは、YNSC-3Dの稼働時に消費する電力が低く、スポット対応の冷房器具であることからエアコンよりも経済的だとアピールしています。5月の製品発表時には「本機を8時間使用した場合、国内の電源周波数地域が50Hzのエリアでの電気代は約51円になる」と伝えていました。当時と今とでは電気料金も変わっているため、あくまで目安ですが、毎日8時間・30日使っても電気料金への負荷が1,500円前後に収まるのであれば比較的安心と言えます。

気になる運転中の振動を抑える方法

使う前に気になっていたポイントとしては、運転中に発生する騒音がありました。筆者も集合住宅に住んでいるので、本機を使うと近所に迷惑をかけないか不安でした。

結論を言えば、YNSC-3Dは運転時にそこそこ大きめな運転音が発生します。ただその種類はファンノイズではなく、ファンの回転動作に伴う本体の振動に起因するものです。本体をフローリングに直置きしてしまうと床が震えて“ブーン”とうなりはじめます。

振動ノイズの強さは運転モード順に並べると「冷風=除湿>送風」となります。冷風のレベルを「強」にしてしまうとテレビの音声が聴こえにくくなったり、YNSC-3Dを近くに置くとスマートスピーカーが音声コマンドを聞き取れなくなることもありました。

ノイズを防ぐ対策としては、ホームセンターなどに売っているクッションマットやコルクマットをYNSC-3Dの足もとに敷く手が有効でした。振動が抑えられ、本体がうなる音もより静かになります。本機を移動させて使う時に、一緒にさっと持ち運べるサイズのマットがあればベストです。

運転時には本体の振動が床に伝わって騒音になってしまいます。床との間にクッションマットを敷くと振動が抑えられます

夜間の静かな時間帯はなるべく冷風のレベルを「弱」にしたり、ほかの冷房器具や薬局で販売されてる冷感グッズも併用すると安心です。

夏だけでなく除湿機能で長く活躍してくれそう

ふだんは家族と一緒に過ごす大きな部屋に、昼間や夜間遅くに一人でいる時間帯には、スポットエアコンがあれば十分に涼しいことが実感できました。スマートに節電もでき、エアコンに頼りすぎることなく夏の暑さを乗り切れると思います。

YNSC-3Dは本体の背面と左右側面に取り外し可能なフィルターがあります。付着するホコリを掃除機で吸い取ったり水で洗って丁寧にメンテナンスを続ければ、故障を避けて長く使えるでしょう。

本体背面と左右側面に取り外せるフィルターがあります。まめにホコリを取り除けば冷却効率が下がりません

今年は梅雨の時期がとても短かった気がしますが、湿気の多い季節には除湿機能をフル回転させたり、夏の前後の温かい春と秋には送風機能も役立てたり、YNSC-3Dは年間を通じて長く活躍してくれるお得な家電です。ユアサプライムスはヒーター器具も手がけているので、願わくば暖房機能付きのスポットエアコンも近い将来に商品化してほしいですね。

山本 敦