家電ラボの徹底「本音」レビュー
シャープ「ヘルシオ ホットクック」vs.アイリスオーヤマ「電気圧力鍋」、それぞれの得意料理を検証!!
2019年12月27日 00:00
共働き家庭の増加を背景に、料理を少しでもラクにしたいというニーズが高まっている。特にほったからかしで調理できる電気調理鍋や電気圧力鍋は、ここ数年で注目されている家電だ。
今回はそんな中から、発売されたばかりシャープの少人数用電気無水鍋「ヘルシオ ホットクック KN-HW10E」(以下、ホットクック)と、こちらも少人数用で売れているアイリスオーヤマの「電気圧力鍋 KPC-MA2」(以下、電気圧力鍋)を比較してみた。ホットクックと電気圧力鍋の仕上がりと使い勝手は、どのように違うのだろうか。
ホットクックと電気圧力鍋の違い
ホットクックはほったらかしで料理ができる自動調理鍋だ。自動で温度調整から、内蓋にぶら下がったスティック状の「まぜ技ユニット」で、適切なタイミングでのかき混ぜまで行なってくれるので、材料を入れたら料理が出来上がるのを待つのみ。その便利さから2015年の発売以来、15万台以上売れている。ただ、本体が大きく(特に横幅)、置き場所の問題で導入を見送る、という声をよく聞いた。
従来モデルの容量は2.4Lタイプで2~6人分、1.6Lタイプで2~4人分だったが、2019年11月に登場した新モデルは1.0Lで、1~2人分。シルエットも大きく変わり、1.6Lタイプから設置幅を約40%も削減。製品サイズは220×305×240mm(幅×奥行き×高さ)で、以前のように横幅をとらずスッキリとしており、これならキッチンのどこかに置けそう……と思わせるサイズだ。
また、付属の蒸しトレイで2種類のメニューが同時に調理できる「上下2段調理」が可能で、自動調理メニューは63種類。AIoTクラウドサービス「COCORO KITCHEN」と連携することで、メニューをダウンロードできるとともに、ライフスタイルに合ったメニュー提案や、画面と音声で材料や手順のアシストなどもしてくれる。消費電力は350W。
メーカー名 | シャープ |
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製品名 | ヘルシオ ホットクック KN-HW10E |
実勢価格 | 37,286円(税込) |
一方、2019年9月に発売されたアイリスオーヤマの電気圧力鍋は、製品サイズが約282×286×213mm(幅×奥行き×高さ)で容量が2.2L。電気圧力鍋としてはコンパクトで1~3人分の調理に向いており、卓上でグリル鍋としても使えることが特徴。
65種類の自動調理メニューを搭載しており、電気圧力鍋にはめずらしく液晶画面でメニューや手順、残り時間などを確認できる。なお電気圧力鍋なので、ホットクックにはない「おもり」「圧力表示ピン」といった部品がある。圧力は1.7気圧で、消費電力は800W。
メーカー名 | アイリスオーヤマ |
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製品名 | 電気圧力鍋 KPC-MA2 |
実勢価格 | 14,220円(税込) |
今回は、付属レシピの共通するメニューを同時に作ってみた。それぞれの火力に合った水分量や食材の分量で比較したかったため、それぞれの付属レシピ通りに調理している。
調理時間はほぼ同じ、食材の固さが大きく異なる「クリームシチュー」
クリームシチューの材料は、鶏もも肉、玉ネギ、ジャガイモ、ニンジンで、どちらも同じ。市販のルーは使わず、小麦粉、牛乳などを入れる。ホットクックは、まず大きなビニール袋に具材を入れて薄力粉を加え、袋を振って具材に薄力粉をまんべんなくまぶしてから内釜に入れる。水やバター、白ワイン、ローリエなどを一緒に入れて、途中で牛乳を加えて仕上げる。
電気圧力鍋は先に具材を内釜に入れてから、圧力調理後にフタを開けて牛乳や生クリームを入れて一煮立ちさせる。なお、電気圧力鍋は操作パネルで設定をするほかに、圧力調理をする際は必ずおもりを「密閉」にしておく必要がある。こちらを「排気」にすると圧力調理にはならないので、注意が必要だ。
クリームシチューは、自動調理メニューとしてホットクックと電気圧力鍋のどちらにも登録されている。メニュー名を選んで調理をスタートすると調理時間が表示される仕組みだ。メニュー上での調理時間は、ホットクックは牛乳を最後に加えて一煮立ちさせるところまで含めて45分、電気圧力鍋は最後の一煮立ちは別で43分。
電気圧力鍋のほうが早く終わると思っていたが、圧力調理後に牛乳を加えて手動設定し、5分ほど煮込む必要があったので、時間がかかる。実際のところは50分ほどかかった。
ホットクックのほうが小麦粉の割合が多く、かなり濃厚な味わいで、電気圧力鍋のほうがさらりとしている。このあたりの濃度については、1回作ってみて、あとから好みに合わせて調整できる。
全く違ったのが野菜と肉の食感だ。電気圧力鍋のほうがトータルの調理時間は5分ほど長くかかってしまったが、肉はホロホロでやわらかい。ジャガイモやニンジンにもスプーンがスッと入る。かなり長時間煮込んだようなシチューだ。
一方、ホットクックは肉も野菜もしっかり火は通っているものの、電気圧力鍋ほど煮込んだ感じはない。特にニンジンはしっかりした食感が残っている。ふだん小一時間で作っているシチューやカレーの具材の固さはこちらの方が近い。
このシチューは、食材をカットするサイズも異なっている。電気圧力鍋はジャガイモを2等分、ホットクックは8等分している。レシピをいろいろ比較していて気付いたが、下処理後の食材サイズはホットクックよりも電気圧力鍋のほうが大きい場合が多い。圧力をかけているので、大きい食材でも短時間でやわらかく仕上げることができるのだ。
また、細かく切る手間がないので、食材の準備時間は電気圧力鍋のほうが短時間で終わる。今回の場合、電気圧力鍋でジャガイモ1個を切るのに1回、ホットクックは4回ずつ切ることになる。レシピを比較すると、全体的にホットクックのほうが細かく切らなければならない料理が多いが、個人的に準備は手早く済ませたいので、下準備という点では電気圧力鍋のほうに魅力を感じた。
無水調理でしかも短時間! 「カボチャの煮物」はホットクックが絶品
カボチャの煮物は、ホットクックで無水調理ができる。電気圧力鍋は、カボチャがひたひたに隠れるくらいの水や調味料を入れる。
調理時間はホットクックが20分、電気圧力鍋が41分。2人分程度の量であれば、ホットクックのほうが圧倒的に早い。電気圧力鍋の場合、加圧時間は短くても、減圧などに時間がかかるためだ。
ホットクックで作ったかぼちゃの煮物はホクホクだが、電気圧力鍋で作ったほうは、少し水っぽい。同じカボチャだが、これだけ食感が異なることに驚いた。味付けについては、ホットクックのほうが濃いめの味つけとなった。また酒を多めに入れているので、出来たては酒の香りが残っていたが、食卓に出す頃には酒の香りが抜けていた。
電気圧力鍋も無水調理はできるが、ホットクックのほうが無水調理レシピが多い。時間もホットクックのほうが短く、ちょっとした惣菜を作るのであれば、ホットクックのほうが出番は多い。電気圧力鍋は圧力、減圧などを含めると時間がかかり、20分では作れないため、ホットクックのほうが手軽だと感じた。
「サンマの甘露煮」は電気圧力鍋のほうが圧倒的に早い
骨までやわらかく煮込み、骨ごと食べたい「サンマの甘露煮」の調理時間は、やはり圧力をかけるほうが早い。ホットクックは無水調理で約2時間半かかったが、電気圧力鍋は1時間で終わった。時間がかかる煮込み料理は、電気圧力鍋のほうが得意だ。
ただ、電気圧力鍋は水や調味料をたっぷり入れているので、少し水っぽさを感じた。骨まで食べられるが、少し小骨が気になるところも。ホットクックのほうがふっくらしており、骨もとてもやわらかく、出来たては格別で子ども達にも好評だった。
味の染み方に大差がなかった「ブリ大根」
ブリ大根の調理時間は、ホットクックが40分で、電気圧力鍋が50分。大根はホットクックが半月切り、電気圧力鍋は輪切りで、ブリはホットクックがそのまま、電気圧力鍋が4等分だった。
電気圧力鍋は内鍋が横に広く、水や調味料を多めに使用するが、上のほうは大根が煮汁に浸かっておらず、味の染み方にムラがあった。ホットクックと電気圧力鍋では味の染み方は同程度だったが、電気圧力鍋のほうが大根がやわらかく、箸がスッと入った。
「筑前煮」はホットクックが便利。まぜ技ユニットでムラなく短時間でできる
続いて筑前煮を作ってみた。調理時間はホットクックが30分で、電気圧力鍋が50分。
まぜ技ユニットでかき混ぜているホットクックは、ムラなく味が染み渡っている。電気圧力鍋は全体的に食材がやわらかく仕上がっており、特に肉は口の中でほろっと崩れるやわらかさを楽しめた。
調理時間もトータルで考えると、こういった煮物はホットクックが強い。放っておくだけで、これだけムラなく味の染みた筑前煮が30分でできるのは嬉しい。
ホットクックは、ごはんを炊きながら蒸し調理ができるのだが……
ホットクックは蒸しトレイが付属している。蒸しトレイは穴が空いており、基本的に蒸し調理用となっている。
内釜に1合のお米をセットし、その上に野菜を載せた蒸しトレイを置いて、炊飯と蒸し野菜を同時に2段調理してみた。調理時間は約30分。
すると、ごはんにニンジンの水分が落ちて色がついてしまった。またおこげもあり、ごはんは全体的に固い印象だ。炊飯については、あまり期待しないほうがいいかもしれない。
2段調理ができるのは大きな特徴だが、炊飯と同時に調理するよりも、2種類のおかずやつまみを作るほうが美味しくできそうだ。たとえば、下で煮物、上で枝豆を蒸す、といった組み合わせだ。
その他にも蒸しトレイを使って冷凍ごはんをあたためたり、肉まんを蒸したりできる。
電気圧力鍋はグリル鍋として卓上で鍋を楽しめる
電気圧力鍋は背が低く、フタも取り外せるのでグリル鍋として使用できる。1~2人分の鍋にちょうど良いサイズで、「鍋モード」を使い、火力は5段階で調節可能。
おたまなどで中身をすくうときも、一般的なグリル鍋のように無理なくできる。調理鍋としてキッチンに埋もれることなく、テーブルで使えるので、グリル鍋としても使いたい方は出番が多くなりそうだ。
惣菜系を作りたいならホットクック、時間のかかる煮込み料理は電気圧力鍋
我が家もふだんはホットクック(2.4L)と電気圧力鍋(アイリスオーヤマ、ティファール)などを使い分けているが、ちょっとした煮物などはホットクックのほうが早く、使い勝手がよい。まぜ技ユニットでかき混ぜてくれるので、仕上がりもムラがなく、短時間でも味がしみていて美味しく仕上がる。
電気圧力鍋は、骨までやわらかくする甘露煮、早くやわらかくしたいチャーシューなど、しっかり煮込み料理をしたい方に向いている。「時間のかかる調理を短時間で終わらせたい」という方にぴったりだ。
温度設定ができるのはどちらも魅力だ。ホットクックの「発酵」メニューは、35~65℃の1℃単位で手動で設定できる。アイリスオーヤマの電気圧力鍋は、30~100℃の5℃単位で温度を制御できる。他社の電気圧力鍋は細かく温度設定できないタイプも多いので、アイリスオーヤマの電気圧力鍋は優秀だ。ただ、5℃単位なので、デリケートな低温調理を行ないたいのであれば、1℃単位で設定できるホットクックのほうが使い勝手がよい。
ユーザビリティに関しては、圧倒的にホットクックが上だ。アイリスオーヤマの電気圧力鍋は他社と比較すると操作性も良く、液晶パネルも見やすいが、ホットクックはひとつひとつの手順を音声で教えてくれるからありがたい。
例えば「美味しくできますように」「あとはまかせてね」「加熱していますよ~」「わくわく~。出来上がりを楽しみにしていてくださいね」「一生懸命頑張っています」といった音声があるが、途中で急に話しかけてくるのでビクッとすることも。とはいえ、追加で食材を入れる場合は音声で教えてくれたり、調理終了10秒前に教えてくれたりするなど、きめ細やかだ。アイリスオーヤマの電気圧力鍋は、ブザーの音が小さく、他の用事をしているときに聞こえないときもあった。
また、ホットクックはインターネットにつながる「IoT」機能も備えており、調理メニューはインターネット経由でダウンロードして追加可能だ。決まったメニューだけでなく、自分の好みのメニューをダウンロードして追加できるので、飽きずに長く使える。
コンパクトになり、使いやすくなったホットクックと電気圧力鍋。それぞれ得意、不得意があるので、作りたい料理にあわせて選んでほしい。