家電ラボの徹底「本音」レビュー
角煮はホロホロ、カレーはまろやかに! 時短だけじゃなく“おいしい”電気圧力鍋
2021年10月5日 08:00
使用頻度が高い家電といえば、冷蔵庫、洗濯機、エアコン。そして我が家では最近、電気圧力鍋も毎日のように愛用している。短時間ででき、火の番をする必要がなく、ほったらかしにできるところが何よりもラク。昔、母が使っていた「オモリ式」圧力鍋のシュッシュッシュッという大きな音が苦手だったが、電気圧力鍋を使えばそんな怖い思いをすることもない。
電気圧力鍋は圧力調理のほかにも、低温調理、炒め、蒸し、ベイクまでできる製品もあるので、1台でいろいろ作れて便利だ。今回試したのはシロカ「おうちシェフPRO SP-2DM251」(以下、おうちシェフPRO)。圧力調理、無水調理、蒸し調理、炊飯、スロー調理、温め直し、低温調理、炒め、発酵、温度調理の1台10役と、多機能な電気圧力鍋だ。
さらに同製品は業界最高クラスの高圧力95kPaと、自動減圧による調理時間の短縮を実現している。一般的な圧力鍋は70kPa前後なので、「時短」に期待が高まる製品だ。店頭予想価格は15,800円前後。
独自の技術「スマートプレッシャー」ってなに?
注目したいのは、独自技術「スマートプレッシャー技術」だ。一般的な電気圧力鍋は70kPa前後で設定されているものが多い中、同製品は95kPaと高い圧力で調理できる。さらに、圧力を一定に制御可能だ。一般的な電気圧力鍋は圧力にバラつきがあり、圧力が上がったり下がったりすることで栄養が食材の内部から外に出てしまうが、圧力を一定に保つことで栄養成分が逃げず、味が染み込むというメリットがあるとのことだ。
減圧時間を短縮する「自動減圧機能」も搭載されている。一般的な圧力鍋は調理後にゆっくりと減圧するが、おうちシェフPROは自動排気を行なう。そのため、肉じゃがなら従来モデルの圧力鍋と比較して約30%の時短が可能になっている。
豚の角煮が短時間でもめちゃくちゃやわらかい
他社の電気圧力鍋(70kPa)とおうちシェフPROで豚の角煮を作ってみた。おうちシェフPROではレシピ通りの分量で、豚バラ肉は3cm程度の厚さに切り、オートボタンのおすすめ調理で設定してスタート。圧力は95kPa、調理時間のトータルは48分と表示された。取扱説明書には圧力時間が15分と記載されていたので、他社の電気圧力鍋でも同じように圧力時間を15分に設定して調理を行なった。
電気圧力鍋の場合、調理終了後にブザーが鳴った後、圧力ピンが下がるまで待つタイプが多い。ピンが下がっても教えてくれないため気がつかず、「いつの間に……」ということがよくあるが、おうちシェフPROは強制排気後にブザーが鳴るので、できあがりがわかりやすい。
また、蒸気が排出される圧力切替弁には蒸気フタがついているので、蒸気がほとんど出ない。他社製では強制排気モードになると勢いよく蒸気が吹き出るタイプもあるが、おうちシェフPROは蒸気が吹き上がることもなく、音が静かだった。蒸気が当たる場所では壁紙なども心配になるが、これなら蒸気がほとんど外に漏れないので安心して使える。
できあがった豚の角煮のやわらかさは全く違う。95kPaのおうちシェフPROで圧力調理した豚の角煮は、ほろほろ。箸がスッと入るやわらかさだ。一方、他社製の70kPaで調理した豚の角煮は筋張っていて、脂の部分も弾力が残っており、表面もかたい。
また、高い圧力を一定にキープして作った効果なのか、短時間でも味が染みていたので驚いた。
調理するときに気になったのは、フタが閉めにくいこと。フタと本体のマークをしっかり合わせないとはまらない。アソビがなく、丁寧にマークを合わせなければならないのは、ストレスに感じた。他社製のフタが外れるタイプもこのような閉め方になっているが、簡単にスッと閉められる。開閉についてはもう少し改善してほしいところだ。
カレーやスープは「角がとれたまろやかさ」に
子供たちも喜ぶ、我が家でよく作るポークカレーを作ってみた。ポークカレーは先に肉と野菜を圧力調理し、カレールウを加えて温め直しを行なう。圧力時間は13分で、調理時間は49分と表示された。今回の圧力は70kPaだったので、この電気圧力鍋が出せる最大の圧力ではない。最大にしたほうが短時間で終わるかと思ったが、半分にしか切らなかったじゃがいもが崩れているのを見て納得できた。にんじんは甘く、タマネギはとろとろ。自然な甘さと、コクがよく出ている。
いつも他メーカーの電気圧力鍋でカレーを作っているが、子供たちからは「今日のカレー、すごく美味しい!」と好評。野菜がとても甘く、1日置いたカレーのように味が落ち着いており、まろやかだ。
ミネストローネなどのスープも、やさしい甘さが家族に好評だった。また、手羽先がとろりとやわらかくなった薬膳スープや、ごはんと一緒に炊き込めるカオマンガイ風の料理なども大好評。レシピは家庭料理から世界の料理までそろっているので、外食がなかなか難しい時期でも家庭でいろいろな料理を楽しむことができた。どれも総調理時間は45分ほどでできてしまうので、手軽にチャレンジできる。
低温調理もおまかせ
おうちシェフPROは低温調理もできる。温度は5℃単位で50~70℃に設定可能。1℃単位で設定できないのは少々残念だが、サラダチキンなどもやわらかくできた。
サラダチキンはオートモードで調理できる。表示部を見ると65℃で90分と表示された。密閉できる袋に味付けした胸肉を入れて、あとはおまかせ。しっとりとしたサラダチキンはいくらでも食べられそうだ。
気に入ったのは付属レシピに掲載されていたローストポーク。調理時間は4時間かかるが、お店で食べるような薄ピンク色に。白ワイン、はちみつ、塩、粒マスタードを混ぜたソースをかければちょっとしたパーティー料理になる。
低温調理をするときには気をつけたいことも。圧力調理以外をするときは、圧力切替弁のつまみを切り替えなければならない。しかし、これがフタに覆われているのでうっかり忘れてしまうことがあった。また密閉と排気の位置についても何の表示もないので、最初はつまみの位置がこれで合っているのか不安になる。ガイドをつけるなど、初心者向けにもう少しわかりやすくしてもらえるとありがたい。
「高圧力」がすべての食材に向くわけではない
95kPaという高圧力で調理することで、どんな食材を使った料理でも時短で作れるのではないか……と期待してカボチャの煮物を作ってみたが、圧力が高すぎて煮崩れてしまった。
短時間に設定しても、圧力を上げていくまでの時間、減圧までの時間のトータルでやわらかくなりすぎてしまう。圧力時間は5分で設定したが、箸でつかむことができないほど崩れてしまった。90kPaは野菜などには向かないようで、オートモードも野菜メニューは70kPaで設定されていることが多い。
この高圧力が向いているのは、短時間でかたい肉をやわらかくしたり、魚を骨までやわらかくしたりする料理だ。野菜などでは圧力が高すぎて不向き。付属の取扱説明書やレシピには圧力が記載されていないので、オートモードに設定して表示部で圧力レベルをチェックしてみたが、95kPaで調理するレシピは少なかった。
大容量タイプも販売してほしい!
使用後の手入れもラクだ。フタのゴムパッキンはカンタンに外すことができ、他社製品にはない蒸気フタも、サッと洗うだけで汚れが取れるので苦にならない。
使いやすさに関しては、少し不便なところもあった。オートモードの圧力レベルがレシピに記載されておらず、本体でメニューを設定しないと確認できないのだ。電気圧力鍋に慣れてくると、オートモードではなくマニュアルモードで調理したいときも増えてくるが、レシピには食材ごとに推奨される圧力レベルが表示されていないので応用しづらい。
この製品のユニークなところは「圧力レベルを選べる」という点で、50~95kPaの範囲で調整できる。野菜は70kPa、かたまり肉は95kPaといった目安が知りたいのだが、現状ではレシピや取説に記載されていない。
豚の角煮のようなレシピや骨までやわらかく魚を煮込むのには高圧力が向いているが、前述のように「短時間で調理したい」と安易に高圧力に設定してしまうと、食材によっては煮崩れてしまうことが多々ある。食材ごとの圧力の目安がわかったら、食事作りにもっと活用できると思う。
個人的に高圧力よりも魅力に感じたのは、調理中に同じ圧力でキープできる独自のスマートプレッシャー技術。これは同製品の大きな強みで、他社製の電気圧力鍋よりも味がよく染みて、野菜などの甘みが増す。おうちシェフPROで作ると子供たちから「いつもよりコクがある」「野菜が甘い」と褒められるので、我が家に数多くある電気圧力鍋の中でも、最近は出番が多い。
おうちシェフPROは1~3人用なのでコンパクトなサイズが魅力。ただ、4人家族の我が家では容量が小さくて足りない。スマートプレッシャー技術が気に入ったので、大容量タイプも欲しいところ。「美味しく、手軽に煮込みたい」という方にぜひ注目していただきたい電気圧力鍋だ。