家電ラボの徹底「本音」レビュー

ティファールの3L電気圧力鍋「ラクラ・クッカー」と「クックフォーミー」。どっちを買うべき?

家電プロレビュアー・石井和美が、レビューハウス「家電ラボ」で徹底的に試した「本音」の製品レビューコーナーです。
左が「ラクラ・クッカー コンパクト」、右が「クックフォーミー 3L」

今年はコロナ禍でテレワークが増加し、家で調理をする回数も増えたことにより、電気圧力鍋のニーズが高まっている。調理家電がよく売れていることもあり、各社からもさまざまな電気圧力鍋が登場した。いろいろ試してみたが、我が家に合っていたのはティファールの「クックフォーミー エクスプレス」だ。

短時間で仕上がる圧力調理と、ボタンを押したらほったらかしで、ほかの家事をしながら料理をおまかせできる便利さは、一度使ってしまうと手放せなくなる。操作部にレシピや手順が表示されるので、初心者も迷わず操作できるのも特徴だ。

ただ「クックフォーミー エクスプレス」は6Lサイズ。6人分まで対応しており、本体が大きいので場所をとる。我が家は4人家族で、翌日のお弁当やおかずの分もあわせて作っているので重宝しているが、大きくて置き場所に悩む方も多いだろう。

2020年4月に発売されたティファールの「ラクラ・クッカー コンパクト電気圧力鍋」(以下、ラクラ・クッカー)は約3Lで4人分まで作ることができるコンパクトタイプだ。小さな電気圧力鍋を探しているなら、これはぴったりかも……と思っていたところへ、10月には同じ容量3Lの電気圧力鍋「クックフォーミー 3L」(以下、クックフォーミー)が発売された。

同じメーカー、同じ容量で、同じような本体サイズ。ただし、公式オンラインショップを見るとラクラ・クッカーは26,400円、クックフォーミー3Lは62,700円(ともに税込)と価格に開きがある。その差はどこにあるのか。正直なところ、どちらが使いやすいのか。実際に試してみた。

低温調理ができる自由度が高いラクラ・クッカーと、短時間で全自動調理できるクックフォーミー

圧力調理は、内部の蒸気を逃がさないように密閉して圧力を高め、100℃以上の高温で食材を加熱する調理方法だ。ふつうの鍋よりも高温で調理ができるので、調理時間を短縮できる。そんな圧力調理をカンタンにできるのが電気圧力鍋だ。

ラクラ・クッカーは圧力調理 、蒸す、煮る、炒める、低温調理(58~90℃、最大22時間)、3つのレシピモード(カレー、角煮、肉じゃが)、炊飯、最大12時間の予約調理が可能で、消費電力は700W。オリジナルレシピ(50レシピ)が付属している。

メーカー名ティファール
製品名ラクラ・クッカー コンパクト電気圧力鍋 CY3501JP
価格26,400円(税込)
ラクラ・クッカーは炊飯器のようなサイズ
マニュアル調理が多く、操作はシンプル
内鍋は底が丸く、対流しやすい形。取っ手がない
圧力調理後、蒸気排出ボタンを押す必要がある
フタは取り外せる。キッチンが狭いと置き場所に困ることも

クックフォーミーは、圧力調理、蒸す、煮る、炒める、炊飯、最大15時間の予約調理が可能で、消費電力は900W。オリジナルレシピは210も付属している。また、クックフォーミー専用アプリに対応しており、レシピ検索や作り方の確認が簡単にできる。

メーカー名ティファール
製品名クックフォーミー 3L CY8708JP/CY8701JP
価格62,700円(税込)
クックフォーミーは内鍋に取っ手がある分、横幅が少し広い
材料も作り方も表示部で確認できる
内鍋の取っ手は持ち運び時に便利
排気は自動で行なってくれるので、蒸気排出ボタンはない
炊飯器のようにフタは上に開く
クックフォーミーシリーズは専用のアプリがある。これがとても便利!
レシピは210種類もある。材料から検索でき、カンタンなレシピが多い

ラクラ・クッカーはマニュアル操作することを前提とした仕様であり、低温調理ができることが特徴。一方、クックフォーミーは内蔵レシピを選ぶと、後はクックフォーミーが食材や分量、作り方を教えてくれるので、調理準備がよりスムーズで時短につながる。また、排気までを全自動で行なってくれるので、手間がかからない。ラクラ・クッカーは圧力調理後に蒸気排出ボタンを押す必要がある。

注目したのは消費電力だ。ラクラ・クッカーは700W、クックフォーミーは900Wと、200Wの差がある。圧力調理には予熱が必要となるが、消費電力が高いほうが予熱時間は短くなる。

本体の大きさはほぼ同じ、フタと操作性は大きく異なる

ラクラ・クッカーの本体サイズは26×28.5×28.3cm(幅×奥行き×高さ)、クックフォーミーの本体サイズは32.4×31.4×26.8cm(同)。鍋に取っ手がある分、クックフォーミーのほうが横幅は少し広い。

ラクラ・クッカーはフタを取り外せるので洗うのは楽だが、外したとき水滴が下にこぼれやすいのと、置き場所に困ることがありそう。クックフォーミーは炊飯器のように上に開くタイプとなっていて、上部のスペースが必要となる。

フタの仕様が異なるので好みが分かれそう

消費電力で変わる調理時間、クックフォーミーの方が時短

まずは白米を炊飯してみた。米2合をそれぞれのレシピ通りに、30分ほど水に浸けておいた。ラクラ・クッカーは電源をONしてから圧力調理が始まるまでの予熱時間が11分50秒で、調理時間8分、蒸らし15分。浸水時間をのぞいて約35分で炊き上がる。

圧力調理後は排気ボタンを押す。勢いよく蒸気が出るのでちょっと怖い
約35分でごはんを炊くことができた
底におこげができている

クックフォーミーは予熱時間が8分50秒、調理時間3分、蒸らし15分で約27分。ラクラ・クッカーよりも8分早く炊飯することができた。

蒸気は自動排出。ボタンを押す必要はない
ラクラ・クッカーで炊いたごはんよりもつややか
もちもちで弾力もすごい

ラクラ・クッカーで炊いたごはんはおこげができていた。弾力はあるが、ツヤはいまひとつの印象だ。クックフォーミーの方がつややかで弾力がある。おこげはなく、まわりにおねばのようなものがびっしりついている。みずみずしさもあり、粒立ちもよく、もちもちのごはんを楽しめた。

クックフォーミーで炊いたごはんのほうが甘みは強く、つややかで弾力もある

予熱時間も含め調理時間が短く、高火力で炊飯できるクックフォーミーの方が美味しいと感じた。

なお、お手入れについてはラクラ・クッカーのほうがラク。ごはんこびりつかずに、つるんと落ちた。

ごはんがするんととれたのはラクラ・クッカー
こびりついたのはクックフォーミー。ただ、やわらかいスポンジでこするとすぐに落ちた

調理方法が異なる肉じゃが

肉じゃがは、ラクラ・クッカーとクックフォーミーで作り方が異なる。材料を入れて圧力をかけて一気に仕上げるのがラクラ・クッカー、「炒める」機能を使っていったん炒めてから煮込むのがクックフォーミーだ。

ラクラ・クッカーは材料をすべて内鍋に入れ、「レシピ」→「肉じゃが」→「7分」を選択し、フタを閉めて調理スタート。ブザーが鳴ったら蒸気排出ボタンを押し、圧力を抜く。圧力表示ピンが下がったことを確認し、フタをあけ、器に盛って出来上がりだ。圧力調理までの予熱時間は16分42秒かかった。

作り方はシンプル。材料をすべて入れてボタンを押すだけ
7分の圧力調理を行なう

クックフォーミーは鍋をセットし、「レシピ」メニュー→「メインディッシュ」→「肉じゃが」を選択。次に「4人分」を選択すると調理時間が表示されるので、OKボタンを押す。「下準備」画面では食材の分量が表示されるので、準備が整ったらOKボタンを押し、確認画面が表示されたら「はい」を選択する。

予熱が完了したら、油、豚肉、じゃがいも、玉ネギを入れ、肉の色が変わるまで炒め、OKボタンを押す。すると調味料を入れるように表示されるので、指示通りに進めていく。調味料を入れて混ぜ合わせたらフタを閉めて固定し、予熱が完了したら圧力調理スタート。ブザーが鳴ったら完了だ。

材料も操作部の画面で確認できる
予熱時にインジケーターが表示される
予熱が完了すると「炒める」手順が表示される
レシピ通りに最初は炒める。ラクラ・クッカーにこの行程はない
炒め終わったらボタンを押すと、次は調味料を入れるように指示が出る
調味料を入れて混ぜる
フタを閉める。このように細かい手順を省略せず教えてくれるので、初心者でも迷わない
圧力調理は3分と表示された

ラクラ・クッカーの操作はとてもシンプルだが、ブザーが鳴ったら自分で蒸気排出ボタンを押して排気をする必要がある。音が大きく、勢いよく蒸気が出るので最初は押すのが怖かったが、何回か押しているうちに慣れた。

クックフォーミーはとにかく丁寧で、ひとつひとつ手順を確認でき、迷わず調理を進めることができる。レシピ本を見なくても本体の表示部を見て作ることができるので、初心者でも安心だ。肉じゃがは炒めてから圧力をかける本格的な調理方法だが、手順通りにボタンを押すと本体側で加熱モードを切り換えてくれるので、迷わない。ただ、その分ボタンを押す回数がとても多いので、わずらわしさを感じる方もいるかもしれない。

感心したのは、クックフォーミー専用のアプリだ。アプリでレシピを検索し、スマホで確認できるのは嬉しい。手順も写真付きで、とても見やすいため筆者も活用している。材料を買い物リストに登録できるので、これを見ながら買い物したところ、とても使いやすかった。残念ながら、このアプリはラクラ・クッカーには対応していない。

操作部の画面よりも、アプリのほうが検索しやすく見やすい
手順もカラー写真で表示されるのでわかりやすい
買い物リスト機能も便利

ラクラ・クッカーで作った肉じゃがは、じゃがいもが崩れるほどやわらかくなった。じゃがいもの種類や大きさにもよるが、予熱時間と圧力時間が長いので、圧力時間はもう少し短くてもよさそうだ。

クックフォーミーで作った肉じゃがは、逆に少しかために仕上がった。ただ、最初に肉を焼いているのでうまみが濃く、食感もよい。ラクラ・クッカーの方は、すべて一度に煮込んでいるので、肉のうまみと食感がいまひとつだった。

ラクラ・クッカーはじゃがいもがやわらかくなりすぎた。加圧時間は5分程度でもよかったかも
クックフォーミーはあっという間に完成。最初に炒めているので肉のうまみが強い

チキンカレーも作ってみたが、やはりラクラ・クッカーは材料を全部入れて一度に圧力調理、クックフォーミーは玉ネギなどを炒めてから圧力調理という、肉じゃがとほぼ同じ手順だった。クックフォーミーの方が材料も多く、複雑な味わいに仕上がっている。

ラクラ・クッカーのチキンカレー。材料をすべて入れてから圧力をかける
クックフォーミーは、玉ネギなどを最初に炒める。使用する調味料も多い
クックフォーミーのほうが複雑な味。ラクラ・クッカーはトマトの酸味が際立っており、これはこれで美味しい

低温調理と圧力調理で作るローストビーフは好みが分かれそう

ローストビーフを作ってみた。低温調理ができるラクラ・クッカーと、低温調理機能が搭載されていないクックフォーミーでは、調理方法が大きく異なる。

ラクラ・クッカーは塊肉に塩胡椒をして密封できる袋に入れ、65℃で1時間30分に設定。袋ごと水に入れて調理する。肉の分量は4人分で400g。低温で時間をかけてじっくり加熱する。

低温調理ができるラクラ・クッカー
1時間30分後、表面の色が変わっている

クックフォーミーは、「レシピ」メニューから「ローストビーフ」を選択。下準備で塩胡椒してから塊肉をバターで焼き、焦げ目をつける。ワインを入れてアルコールを飛ばし、圧力調理を3分、完了後に8分ほどそのまま保温して完成。予熱などを含め、調理時間は30分程度だった。

クックフォーミーでは最初に肉の表面に焦げ目をつける
その後、圧力調理をする

低温調理で作ったローストビーフはやわらかくジューシー。焼き目をつけ、圧力調理で作ったローストビーフは表面が香ばしく、しっかりした食感だ。好みが分かれそうだが、想像するローストビーフの食感に近かったのは、低温調理で作ったラクラ・クッカーのローストビーフだった。クックフォーミーのレシピはラクラ・クッカーでも作ろうと思えば作れるが、低温調理レシピはクックフォーミーでは作れない。低温調理を楽しみたい方はラクラ・クッカーを選択してほしい。

左がラクラ・クッカーで作ったローストビーフ、右がクックフォーミーで調理したローストビーフ
低温調理(左)のほうがやわらかくジューシー

料理初心者はクックフォーミー、中級者以上はラクラ・クッカーが便利

クックフォーミーは、ナビ通りに進められて迷わずに調理できる。スマホの専用アプリもとても見やすく、調理の過程を確認しやすいため、料理が苦手な方や初心者の方におすすめできる。

クックフォーミーの一番のおすすめポイントは、900Wとハイパワーであること。一般的な電気圧力鍋は600~700Wが多いが、900Wだと予熱時間が短いので、圧力調理や煮込みなどの調理が早い。もちろんマニュアル調理もできるので、コツをつかんだら切り換えられる。また、排気まで自動で行なってくれるので手間がかからない。

クックフォーミー専用アプリも便利だ。ハロウィンのレシピなど、季節に合わせたレシピもどんどん追加されるとのことなので、飽きずに長く使えそうだ。ただ本体はWi-Fiなどにつなげられるわけではないので、新しいレシピが追加されても本体にダウンロードすることはできない。

ラクラ・クッカーは低温調理が優秀。レシピに掲載されていた低温調理レシピは、甘酒、おぼろ豆腐、塩豚、ローストビーフ、鶏ハムなど。こういった料理を日常的に作りたいのであれば、ラクラ・クッカーがおすすめだ。

それぞれ特徴は異なるものの、ふだんの料理が短時間で、しかも美味しくできることは変わらない。電気圧力鍋はとても便利なので、ぜひ自分の料理スタイルに合うものを選んでほしい。

自分の料理スタイルに合ったタイプを選ぼう

石井 和美

家電プロレビュアー。白物家電や日用品のお役立ちグッズなどを中心に製品レビューを得意とする。テストスペースとして守谷市に一戸建てタイプの「家電ラボ」開設し、冷蔵庫や洗濯機など、大型家電のレビューも行なっている。レビュー歴10年以上。

http://kaden-blog.net/