家電ラボの徹底「本音」レビュー
円形じゃないルンバ!? 発売前の最新「ルンバ s9+」を試してみた
2020年2月19日 14:12
人間の代わりに掃除をしてくれるロボット掃除機。ロボット掃除機といえば「ルンバ」という方も多いのではないだろうか。2002年に発売した当初はオモチャやキワモノ扱いされたルンバだったが、地道にアップデートを重ね、今では自動で床掃除をしてくれるロボット掃除機としてすっかり定着した感がある。
ルンバはパワフルな掃除力と賢いスマートナビゲーション、そして丸いデザインが特徴だった。今回登場した新モデル「ルンバ s9+」は、見た目が大きく異なる。これまでの円形ではなく、Dの字形になったのだ。
メーカー名 | アイロボットジャパン |
---|---|
製品名 | ルンバ s9+ |
価格 | 186,780円 |
「s9シリーズ」は、クリーンベース(自動ゴミ収集機)が付属する「s9+」とロボット掃除機本体のみの「s9」があり、日本では前者のみ発売される。アメリカでは、s9シリーズは水拭きロボット掃除機「ブラーバ ジェットm6」と同時発売されており、予想を大幅に上回る売上を記録。s9シリーズは週に1,000台以上もクラウドに登録されており、Wi-Fiに接続してアプリから操作もできる。
将来のアップデートプログラムへの対応も見据え、最新の部品で構成し、中身の構造も変えた「ルンバ s9+」(以下、s9+)。一足先に使用する機会を得たので、じっくり使ってみた。
外見だけでなく中身も刷新
本体をDの形にしたことで、中身の構成も大きく変えたという。モーターもすべて新規設計し、大きくなった。またクリーンベースは従来モデルのi7+と似ているが、互換性はない。本体の構造が違うため、台座の形状が異なるからだ。
大きな変更点の一つが「PerfectEdgeテクノロジー」を搭載し、部屋の隅や壁際にもアプローチできるようになったことだ。コーナーブラシは左上の角に1個搭載しており、これまでの丸い形では届かなかった隅にも入り込めるようになった。
ゴム製のデュアルアクションブラシは、実測で約24cm。我が家で愛用しているi7+は約17cm。幅が広くなったので、一度に広いエリアの床を清掃できる。
CPUは4つのコアを持つクアッドコアに強化。赤外線センサーも強化され、壁の位置を検知し、壁際まで掃除する。これまでできなかった、ゴミの溜まりやすい隅まで入り込んで掃除できるとのこと。コーナーブラシのアームはi7+が3本だったが、s9+は5本。長さは短くなっている。Dの角の部分に搭載されているので、長いブラシにしなくても隅まで届くようになったからだ。5本のアームでゴミをしっかりとらえ、かき出して吸い込んでいく。
また、vSLAMテクノロジーは、カメラで毎秒23万400カ所以上のポイントを取得するという。取得したデータで周囲の環境を詳細にマッピングし、どこにいてもロボット自身の現在位置を正確に把握することができる。そのため、家中の間取りを学習・記録し、最適な清掃パターンを選択する「Imprintスマートマッピング」も、ズレがほとんどないとのことだ。
Wi-Fiは2.4GHzと5GHzの両対応。iRobot Homeアプリを使って、どこからでも掃除をコントロールできる。自分の予定に合わせて清掃時間を事前予約したり、外出先から操作したり、その場にいなくても設定できる。スマートスピーカーに対応しているので、音声での操作も可能だ。
このように、ハード面では現時点で搭載できうる限りの最新テクノロジーで構成されている。ファームウェアのアップデートで、制御の改善や新しい機能の追加を予定しており、それを見越したものだという。
前は苦手だった「隅のゴミ」も取れるようになった!
何度かトレーニングモード(掃除機能をオフにした走行のみ)で走行し、先にマップを完成させた。家電ラボの1F(リビング+キッチン+ランドリースペース)の間取り学習は完璧。あとからそれぞれ部屋ごとに区切り、わかりやすいように名前をつけておく。
清掃モードで運転をスタートして気がついたのは、i7+より音が大きめなこと。デュアルアクションブラシが大きいからなのか、摩擦音が気になる。モーターの音も大きくなり、ゴロゴロと床に響くようになってしまった。テストしていた木造のテラスハウスでは、夜間に使えないレベルだと感じた。
掃除をスタートさせると、まず部屋の内側を規則正しく掃除してから、念入りに壁際を掃除していく。取り残した細かい部分は、あとから「あっ、忘れてた」といった雰囲気で慌てて戻って掃除していくようで、生き物のような動きがおもしろい。清掃にかかった時間は30分~45分。回を重ねるごとに隅々まで掃除するようになった。
今回、Dの字形になったということで、ゴミをどの程度隅まで取り切れるのか確かめるために、リビングの真ん中、ソファの横(隅)、テーブルの下、窓際(カーテン)の下、キッチンの隅、ランドリースペースの隅の合計6カ所に砂を撒いて、掃除を開始。その結果に注目したい。
(1)リビングの中心、障害物がない場所
(2)植木鉢が邪魔する部屋の隅。ルンバは十分入るスペース
(3)窓際。カーテンがあり、下には段差もある
(4)リビングにあるテーブルの下
(5)キッチンのシンク下
(6)ランドリースペースの隅
広い場所(1)のカラーサンドに関しては、問題なく一度で取り切っていた。デュアルアクションブラシの幅が狭いi7+では2回走行しないと取れない幅だが、s9+は1回で済む。広い場所は往復する回数が減り、掃除のスピードも早い。そして、隅などは以前のルンバシリーズとは大きく異なり、念入りに掃除するようになっている。狭い場所に入り込んでも、バックして出てこられる。動きは動画で撮影したのでまとめて見てほしい。
今回、隅の方に多めのカラーサンドを撒くという、ルンバにとっては意地悪なテストにしてみたが、従来モデルと比較すると格段とゴミの回収率がアップしている。i7+では苦手だった掃除ポイントも、ほぼ取り切れていた。
次の写真は、同じ条件でs9+とi7+を走行させて、ゴミの回収率を比較してみたもの。左の列がs9+、右がi7+だ。
一部、植木鉢があるソファと壁の間はうまく入れず、隅にゴミが残ることが多かった。スペースに余裕はあるものの、障害物の配置などによって対処できていない様子だった。
なお、デュアルアクションブラシの幅が大きいこともあり、数ミリの微妙な段差に少しでもかかってしまうと、ブラシが浮いてしまってゴミを取れないことがあった。床面との間を密着させることで微細なゴミまで吸引できるが、片側が少しでも浮くとブラシが床から離れてしまい、とたんに回収率が下がってしまう。
広い平らな場所は効率良く掃除できるが、段差がある部屋の隅などは吸いきれない部分があったため、古い住宅で、特に段差があるような家屋ではゴミが取れないことがあるかもしれない。
ガッカリポイントはカーペットを押してしまうこと
これまでのルンバは毛足の長いカーペットも難なく上り、カーペットの上までしっかり掃除していた。愛用しているi7+はカーペットを引きずることも、上で止まることもなく、安心して任せられた。
しかし、s9+はカーペットを上れずに押してしまう。カーペットが壁際に押しつぶされてぐちゃぐちゃになることも……。何度も試したが、ほぼ乗り越えられなかった。ラボにあるカーペットは小さめで軽いものだったので、s9+で掃除をする前には、いったん片づけることで対処した。
よく見ると、カーペットのフチに乗り上げる際、最初に当たるのがデュアルアクションブラシで、そこが引っかかってしまっているようだ。
丸形のルンバシリーズは前方真ん中にある前輪で滑るように上り、その後に左右の車輪が乗る。デュアルアクションブラシは車輪の真ん中に収まっているので、カーペットの毛に引っかからない。s9+は何度やっても引っかかって、前に押してしまうのだ。本体の動きを制御すれば対応できそうなので、ファームウェアのアップデートに期待したい。
前モデルから引き続き搭載されている便利機能「場所を指定して掃除」
ルンバが部屋の状況を学習して記憶するので、リビングルームからキッチンへのルートなども賢く判断してくれる。Robot HOMEアプリから、どの部屋をいつ掃除するかを指定可能だ。本体はリビングに設置しているが、一番遠いランドリールームへも迷わず真っ直ぐに進む。部屋の状況をきちんと記憶しているので、途中で障害物に当たることもない。
Robot HOMEアプリの「進入禁止エリア」機能で、ルンバが進入できないエリアを簡単に設定することができる。デュアルバーチャルウォールとの併用も可能だ。ペットの飲み水が入った容器などを避けたい場合は、同機能を使うと便利だ。
お手入れを気にする必要なし! ゴミ捨ては月1程度でOK
デュアルアクションブラシはゴム製で、髪の毛などが絡みつくことはほとんどないため、ブラシのお手入れがほぼ不要となる。
本体のダスト容器は、これまで横にスライドして捨てていたが、上から外せるようになった。持ち上げる必要もなく、簡単にお手入れできる。水洗いも可能だ。
また、s9+はクリーンベース(自動ゴミ収集機)が搭載されている。掃除が完了すると、ルンバ本体のダスト容器のゴミをクリーンベース内の密封型紙パックに自動で排出。ダスト容器30杯分ものゴミを収納できるので、ほぼ毎回やらなければならないゴミ捨てを省略できる。さらに集めたゴミは紙パックごと捨てられるので、ホコリが舞い散らない。クリーンベースのゴミ捨ては、使用頻度にもよるが月に1回程度で十分だ。
ゴミがダスト容器に溜まると吸引力も落ちるが、毎回空の状態にしてくれるので安心して使える。自動ゴミ収集はi7+のときにとても感動した機能だ。ボタン1つで掃除が終わり、お手入れもほぼしなくて済むので、一度使うと便利で手放せない。
高級スティック掃除機を3~4台購入できる価格となりそうだが……
ルンバも遂にDのデザインに変わっていくのかと思いきや、すべてのルンバがD型に移行するわけではないとのこと。i7に置き換わるモデルではなく、あくまでもs9+はスペシャルモデルだという。基本は今まで通り、丸い形をベースに開発していくそうだ。
個人的にも特別な「s9+」は欲しいところだが、高いと思っていた「i7+」を超える価格で悩んでいる。ルンバ1台で、高級スティック掃除機が3~4台は買える価格だ。とはいえ、これまでにない高い清掃能力と、ファームウェアのアップデートでさらなる展開が期待できる進化版ルンバは魅力的。最新のハイスペックな家電に興味のある方は、ぜひお試しいただきたい。