老師オグチの家電カンフー

電気圧力鍋で発酵調理ができる!? ならば納豆を作ってみようではないか

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです

 安くて健康に良い、しかし好き嫌いが極端に分かれる食品といえば、納豆です。そんな納豆が大好きで、ほぼ毎朝のように食べています。スーパーで安く売っている納豆は1パック40gほどと少ないので、一気に2〜3パックはいきますね。

 パックを開いて薄いビニールを取り外し、カラシとタレの袋を開けてかける、その一連の作業がもどかしい。自分で納豆を作れば、こんな手間もなく、好きなだけ食べられるのではないかと思い立ちました。

 使用したのは、アイリスオーヤマの電気圧力鍋。「低温・発酵調理」の機能が備わっています。自動メニューには、とりハム、ローストビーフ、塩麹、しょうゆ麹、クリームチーズ、ヨーグルト、甘酒といったレシピが用意されています。残念ながら、納豆は自動メニューにありませんが、手動で温度と時間を設定すれば作れるはずです。

アイリスオーヤマ「電気圧力鍋 KPC-MA2」
まずは「豚の角煮」で圧力調理を試してみた。豚バラブロックと長ねぎ、生姜を調味料(酒、みりん、醤油など)とともに内鍋に入れ、アルミホイルで落し蓋をする。自動メニューからレシピ番号を選択、ディスプレイの指示に従って、ふたのレバーを「密閉」にセットして調理開始
55分後に完成。これまで作ってきた角煮の中でも、もっとも簡単な作り方ですね。下茹でしていないけど臭みも問題なし。やわらかく出来上がりました。ほったらかし調理は楽です
「鯖の味噌煮」も簡単。熱湯をかけて臭みを取った切り身と調味料を入れて、自動メニューから選ぶだけ。こちらも圧力調理で、調理時間は55分
完成。これは毎週でも作りたい味です

 発酵調理で最初に作ったのは、自動メニューのヨーグルトです。牛乳500mlとタネとなる市販のヨーグルト50gを入れて5時間10分。当たり前のように牛乳がヨーグルトになりました。

 発酵調理は、普通の料理にはない魅力がありますね。食材Aに味付けBでABになるのが普通の料理だとすると、発酵調理では食材AがそのままBに変化する、錬金術的な不思議さがあります。金ではありませんが、菌のマジック!

右を左に変えてみせます。いろいろなヨーグルトがありますが、オーソドックスな「明治ブルガリアヨーグルト」を使用
5時間ほどでヨーグルトが完成。味も、元の「明治ブルガリアヨーグルト」がしっかりコピーされています

 さて、いよいよ手動メニューで納豆を作ってみます。ざっくり手順を書いてみますが、結構時間がかかります。

 1.大豆を水に浸して冷蔵庫に入れる(18時間〜20時間)
 2.大豆を煮る、もしくは蒸す(方法によって1時間〜数時間)
 3.発酵させる(24時間〜48時間)
 4.冷蔵庫で熟成させる(数時間〜数日)

 発酵に必要なタネ菌は、ヨーグルトと同じように市販の納豆を使ってもいいですし、粉末状態で売られている納豆菌もあります。発酵温度は40℃に設定。発酵時間は24時間以上かかりますが、今回使用した電気圧力鍋の仕様では最大で14時間10分なので、少なくとも2回に分けてセットする必要があります。

 これまで2回作ってみましたが。大豆が大きめだったせいか、発酵時間が24時間では足りなかったようです。納豆の粘りとニオイにはなりますが、まだ市販の納豆の美味しさには到達していません。プロの方からすれば、「発酵をナメるな」だと思いますが。

20時間ほど水に浸した大豆を付属の「蒸しプレート」に入れて蒸す。加圧10分(できあがり50分)で丁度いい固さに仕上がりました
粉末の納豆菌。一度沸かして冷ましたお湯10mlにつき、耳かき山盛り1〜3杯(0.1g〜0.3g)入れて菌液を作る
蒸し上がった大豆に菌液を加えて、殺菌したスプーンで混ぜて発酵開始。発酵温度は40℃。コタツや湯たんぽなどを使って発酵させる方法もあるが、温度管理は電気圧力鍋のほうが圧倒的に簡単
発酵から24時間。納豆らしい色(茶色)と香りに

 次は、発酵時間を48時間に伸ばしてみる予定ですが、それだとトータルで丸3日以上かかりますからね。この原稿の締切には間に合いません。それとも、短い発酵時間で済むように「ひきわり」状態から発酵させるか。

 悩んでいたところ、「人間にも粘り強さが求めらる」、「ネバーギブアップ」なんてフレーズが頭の中に浮かび、虚脱感でいっぱいになっております。現時点での結論は、「市販の納豆はエラい」ですね。

混ぜてみた。ちゃんと糸を引いている。しかし、食べてみると発酵が中までは進んでいないようで、納豆というより大豆の味がする
殺菌した容器に入れて冷蔵庫で一晩熟成させる。数日経つとより粘りが生まれるというが

小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>