トピック
e-bikeが大好きになって次の車体へ向けて愛車を手放す 中古車市場がない状況での売却レポート
2024年5月16日 10:05
2021年の春に購入したミヤタのグラベルロードバイクe-bike「ROADREX 6180」。購入して数カ月後にまさかの新型が発売されるというつらい仕打ち? にもあったけど、車体には何の不満もトラブルもなく、e-bikeの利点や楽しさをいろいろと体験させてもらった。
でも、そんなROADREX 6180の乗り換えを考えた。不満があったわけではないが、e-bikeがおもしろいだけに、乗れるうちに違うモデルにも乗ってみたくなったのだ。
実はすでにROADREX 6180を手放してしまったのだが、そもそもe-bikeを売るのは初めての経験だったので、ちょうどいいやとばかりに今回は愛車の「売却」までのことを紹介させていただく。日本市場で初期にe-bikeを購入したユーザーはその楽しさを実感し、次の新車購入を考えている人も少なくないだろう。
しかし、よく考えるとe-bikeの記事で「買う」ことを取り上げたものは見かけるが、売ることを題材にした記事は読んだことがないので、ひょっとしたらこれが初の「e-bikeを売る記事」なのかもしれない
中古e-bike流通のしくみを作ってほしい
e-bikeの中古車はまだまだ少ないはずなので、この車種はこれくらいの値段という前例が少ない。ゆえに個人間売買の場合、いくらの値が適当なのか迷うのだ。高すぎればいつまでも売れないし、安すぎたら損である。そこで欲しいのが相場価格だ。
クルマやオートバイの業界では中古車流通の要とも言える大規模オークション会場が全国各地にあり、販売店での買い取りや下取りのしくみもある。それに「査定士」の資格制度があるため中古車の評価基準が明確にあり、その評価に市場の状況を加味したものが「相場」として設定される。
余談だが筆者はずいぶん前、自動車販売会社に勤めていたことがあり、そのときに中古自動車査定士の資格を取っていた。そして実際にお客様のクルマの査定もしてきたが、減点法など明確に決まっていたので、相見積もりの商談時でも他社との下取り価格に大差がなかったことを覚えている。
一方でe-bike市場(自転車全般)にはまだ業界的な中古車流通構造がなくて、買い取りや下取りはショップ単位のルールで対応していることがほとんど。それにそもそもの話として、新古車はともかくユーザーから売りに出されるe-bikeが少ないので、まだまだ市場を形成できるレベルではないと思う。
それゆえに相場価格がないのは仕方ないことだが、他の趣味の世界を見ていると、その世界の人口が増えるにはユーザー間で活発な売り買いがあることも大事な要素だと思うので、e-bikeにはユーザー同士の売り買いに役立つ相場価格は欲しい。また、e-bikeは売るほうも買いたいほうも、どこに基準を置いて値段を考えればいいかまだ見えていないので、ざっくりとしたチェックポイントも同時にわかるとよりいいと思う。
個人的な意見になるかもしれないが、ショップや専門業者による利用しやすい買い取りor下取り制度も増えて欲しい。こうした制度が広まって、買い取り、下取りの件数が多くなれば「中古車」という手頃に買えるe-bikeの数が増えるだろう。
そう、e-bikeでは「欲しいモデルが高くて手が出せない」というケースが多いだけに、もとは高額ながら中古車ゆえに買いやすくなった車両が多くなれば、それに応じてe-bikeに乗る人が増えるのではないだろうか。
そして、中古車を買った人がe-bikeを気に入ってくれたら、次は新車を買うという流れも期待でき、それが繰り返されたらe-bike市場はグンと成長するはずだ。
そんなことを考えているときに大きな動きがあった。スペシャライズドがCPOと呼ぶ認定中古車の販売も始めたのだ。
この制度はスペシャライズドショップやCPO店が買い取った(下取りも)車両を整備してから保証を付けて中古車として販売するもの。それだけに中古車を探しているユーザーにはおおいにメリットがある。また、メーカーが自銘柄の車両を適正価格で販売していくと、それが中古車の相場価格になってくる。すると、ユーザーは新車を選ぶ際に再販に有利な車種を選べるし、売る場合も値段の根拠が見えるわかりやすい状況で売ることができるのだ。
繰り返しになるが、e-bikeを売る人が増えると中古車が増える。そして、それはe-bikeの世界の入口を広げることに繋がる。
いろいろなものの値段が上がった現在、新車価格を下げることはまず無理だと思うが、それではe-bikeはいつまで経っても「興味はあるが高くて手を出しにくい自転車」のままなので、ユーザーを増やすには「買いやすい中古車」が絶対に必要だと感じている。筆者も次のe-bikeのために手放すことにしたのだから。
他のメーカーもそれぞれのやり方で中古車への取り組みを強化してもらい、ユーザーにとってメリットの多い中古車流通のシステムを作って欲しいと思う。
下取りならともかく、売るだけなら個人間売買かも
さて、筆者の売却話に戻ろう。まずは「どうやって売る?」から調べることになった。乗りたいモデルが決まっているのなら販売店で「下取りができるか?」を聞いてみるのがいちばんだが、今回は単に売ることだけが目的。そのため新車も売る販売店ではなくて、中古パーツや中古車を扱うお店に買い取りを依頼するほうがよさそうだった。今回の記事では触れていないが趣味性の高いe-bike(自転車)の中古車を扱うお店も多いので、売りたい場合はその手のお店を利用するのもいいだろう。
お店にコンタクトを取る前、どれくらいの値段が付いているか知りたかったので、車種名から検索したところヒットしたのは1台のみ。やっぱり少ないなぁと思いつつページを見ると、表示されていた価格は「これくらいのお金が入ったらいいな」と考えている数字に近いモノだった。
筆者の値付けの読みとしてはいいところを突いていたようだが、お店の売値がその数字ということは、買い取り時に提示されるのはもっと低い値段であることは明白。ある程度は予想していたがこれには落胆した。とはいえ、相場が決まっていないe-bikeなので慎重な値付けになるのは当然だろう。
そんなことでお店に買い取りを依頼するのは「他も試したがどうにも売れない場合」の最終手段とすることにした。
お店に頼まない売り方と注意点
筆者が取った方法はまず知り合いに声を掛けること。目の届く範囲に渡るのであれば、引き渡し後に何かあっても対応できるのでこの方法での販売がいちばんの希望だった。
そして、値段は前出の同型中古車を参考としてみたが、こちらは保証が付けられないので、それを加味してお店より下げた値付けにすることにした。
ただ、それでも引き取り手はすぐに出てこなかったので、平行してインターネットのオークションとフリマサイトを利用した。
売るとなった場合は引き渡し後にトラブルが起きないよう準備することは大事。せっかくスムーズに取り引きが済んだのに、渡したあとに不具合が出てしまい、返品や返金といった話が出たらすべて台無しだ。
そこで出品するe-bikeは事前に自転車店で点検をしてもらい、異常がないか、交換が必要なパーツはあるかといった部分を明確にしておいたほうがいいだろう。
ちなみに筆者は購入時からプロショップでお世話になっていて、パーツ交換からパンク修理まで依頼していた。理由はプロの作業には仕上がりのよさや安心感といった価値があるからだ。
これはDIYを否定しているわけではない。自転車趣味において整備やカスタマイズのためのDIYは楽しみのひとつであることは重々承知している。筆者もバイクやクルマで散々DIYをしてきたし、DIY派が多いクルマのチューニング誌で編集をしていた経験もあるからDIY賛成派でもある。
でも、いろいろ見てきた経験から「プロの仕事のスゴさ」がわかっている。だからe-bikeを買うときはプロショップで買って、整備などは極力お店に依頼しようと思っていたのだ。だから、今回の売却前にはショップに一度預けていた。
そうして「ある程度の自信が持てる」状態としたうえで売りに出したが、値付けは検索で見つけた同車種よりも低い値段をで設定した。理由は簡単。店と個人で似たような車体が売っていた場合、たいていは保証などある店を選ぶのが普通だろうから、保証が付けられないこちらは安くないと誰も見向きもしないと思ったからだ。
そんな感じの値付けだったが、安い買い物ではないので最初の値付けから徐々に値下げは必要となった。そして、ある程度まで下げたときに買い手が見つかった。まあ、値下げはしたがいい値段で引き取ってもらえたので買い手の方にはとても感謝している。
見てもらうための工夫と配送のこと
さて、オークションやフリマサイトに出品するときは写真を載せるのだが、このときに意識したいのが状態がよくわかるような写真を撮ること。「自分が探しているときにはどこが見たいのか」という視点から撮る箇所を考えて、さらにどの向きから撮ればわかりやすいかを意識したい。「だいたいこの辺」という撮り方でなく「説明を書かなくても載せた意味が伝わる」くらいにわかりやすい写真が理想だ。
クローズアップしたほうがいいのはカスタム部のほか「傷」だ。傷の印象は個人で違うので自分では「たいしたことない」と思っていても他の人が見たら「ひどい傷」と捉えるかもしれない。
以前、中古のカメラ用品を中古店で買ったとき、店員さんから「外装に傷がある」と言われたので、見てみると傷なんてない。そこで「傷はどこですか」と聞いてみたら、スカしてわかる程度の線傷があった。なるほどと思いつつ「これを傷と呼ぶか」と意識の違いに驚いたこともあるので傷や痛みは文字ではなくて写真で伝えるほうがいいだろう。そのためにも「わかりやすく撮る」のだ。
大事なトップ画像は車両全体がよく見える位置から撮ること。基本は右面からの真横写真だが、このときはカメラの高さ(構える高さ)を少し変えるだけで見え方が違ってくるので構えながら高さを変えてみるといい。そして、自分でいちばんカッコいいと思った高さで撮るのだ。また、車体の撮影している面に日が当たるよう、置く向きにも気を使うと見やすくてきれいな写真が撮れるだろう。
さて、今度は売れたあとのことだ。買い手との連絡や支払いはサイトのシステムがあるのでスムーズにやれるが問題は受け渡し。オークションやフリマサイトに用意されている配送メニューにe-bikeのような大型のものに対応する項目はないので、配送手段は基本的に売り手が探す必要があるのだ。
筆者が調べたところ、ヤマト運輸グループ企業のヤマトホームコンビニエンス株式会社に「らくらく家財宅急便」というサービスがあって、これはe-bikeの発送が依頼できるし自宅まで引き取りに来てくれる便利なサービス。問い合わせ電話にかけて費用を聞いてみたところ東京~大阪あたりまでで約25,000円とのことだった。他への送料やサービスの詳細はをチェックして欲しい。
筆者のROADREX 6180を買ってくれた方のご自宅と筆者の家は片道約150kmあった。これをらくらく家財宅急便で送るとおそらく2万円を切る値段(あくまで予想)で収まると思うが、今回は買い手の方がこちらまでクルマで取りに来てくれると言ってくれたので、配送ではなく直接会っての引き渡しになった。
ただ、全行程を走ってもらうのもわるいので、こちらもクルマにROADREX 6180を積み、お互いにとって半分くらいの地点にある高速道路のパーキングエリアで引き渡しとなった。
買い手の方と会うのは緊張するものだが、会ってみたらとても感じのいい人であった。そんな人に大事に乗ってきたROADREX 6180を引き取ってもらえることに安心したしうれしかった。また、車体を見せながら出品時の解説文に書ききれなかった細かい点を伝えられたこともよかったと思う。
なお、引き取ってくれた方は整備士の仕事をしているとのことだったので、引き渡し後のことも安心できたのであった。
さて、ROADREX 6180は誌面から引退したわけだけど、購入時からここまでの記事を読んでいただいた-bike Watch読者の皆様には感謝です。ありがとうございました。
機会があればまた違うモデルでのレポートを掲載するかもしれませんが、そのときはあらためてよろしくお願いします。