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コーヒーメーカー4機種飲み比べ。1万円以下のモデルどう違うの?

湯沸かしや抽出を自動で行ない、コーヒーを淹れる手間を減らす家電「コーヒーメーカー」。手軽に「コーヒーのある暮らし」を実現したい人にもぴったりのアイテムです。コーヒーメーカーは機種によって味が異なりますが、実際に飲んでみなければその違いはわかりにくいでしょう。

そこで今回は、家電 Watch編集部で1万円程のコーヒーメーカーを4機種使用し、同じ豆でどれくらい味が違うか比較しました。合わせて、使いやすさやお手入れのしやすさについてもレポートします。使用するのは以下の4機種で、すべてミル非搭載のドリップ式。

  • タイガー「コーヒーメーカー ADC-A061」
  • メリタ「メリタ ノアプラス SKT551B」
  • ラドンナ「Toffy アロマドリップコーヒーメーカー K-CM5」
  • サーモス「真空断熱ポット コーヒーメーカー ECK-1000」

各機種の取扱説明書に従い、最大量でコーヒーを抽出。使用したコーヒー粉は「成城石井 プレミアムマイルドブレンド」と「サンパウロコーヒー 深い味わいのカフェインレス珈琲」の2種類です。

以下に記す感想は、編集部5名と筆者のものです。まずは各機種の基本的な特徴をご紹介します。

今回使ったコーヒー粉。左から「成城石井 プレミアムマイルドブレンド」(やわらかな味わいと甘みのある爽やかな酸味が特徴)、「サンパウロコーヒー 深い味わいのカフェインレス珈琲」(グアテマラをベースにモカ・コロンビアをブレンド)
左から、「タイガー コーヒーメーカー ADC-A061」、「メリタ メリタ ノアプラス SKT551B」、「ラドンナ Toffy アロマドリップコーヒーメーカー K-CM5」、「サーモス 真空断熱ポット コーヒーメーカー ECK-1000」
各機種の基本仕様(価格は5月1日時点)

2段階濃度を調節できる「タイガー コーヒーメーカー ADC-A061」

タイガー コーヒーメーカー

「タイガー コーヒーメーカー ADC-A061」は、マイルド/ストロングの2段階で濃度を調節できる「テイストマイスター」を付属している点が大きな特徴。表裏を変えてセットするだけでお湯の注ぎ方と豆の浸し時間が変わり、簡単に濃さを調節可能。実売価格は5,780円。

マイルドでの抽出は、周りの4つの穴からお湯がフィルター内に注がれ、あっさりした味わいになります。ストロングでの抽出は、6つの穴にお湯が集まってフィルターに注がれ、濃い味わいになります。

マグカップに直接ドリップも可能。付属の専用カップトレイを設置することで、手持ちのマグカップに直接ドリップできます。対応するマグカップは、高さ7~10cm、容量250ml以上。

タンク容量は810mlで、一度に抽出できる杯数は6杯(120ml/杯)。サーバーはステンレス製。運転終了後、スイッチを入れたままにすると保温も可能です(目安時間15分)。タンクは着脱式で、水洗い可能。フィルターの対応サイズは1×2または102。

本体サイズは154×272×301mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は1.9kg。

コーヒー専業メーカーが手掛ける「メリタ ノアプラス SKT551B」

メリタ ノアプラス

世界で初めて「ペーパードリップシステム」を考案した、コーヒー専業メーカーであるメリタのコンパクトモデルです。蒸らし機能を採用し、しっかりとした味わいを特徴としています。実売価格は6,900円。

タンク容量は700mlで、一度に抽出できる杯数は5杯(125ml/杯)。味の調節機能は非搭載。しずく漏れ防止や、オートオフ機能など、毎日使うのに便利な機能を備えています。

ステンレスサーバーは保温ポットになっていて、抽出から1時間後も約78℃と温かい状態を保てます。タンク着脱は不可で、直接水を注ぐ仕様です。

本体サイズは269×152×311mm(同)で、重量は1.7kg。紙フィルターの対応サイズは1×2または102。

かわいいデザインが特徴の「ラドンナ Toffy アロマドリップコーヒーメーカー K-CM5」

ラドンナ Toffy アロマドリップコーヒーメーカー

3段階に濃さを調節でき、マイルド/ミディアム/ストロングから選べます。メッシュフィルターを採用し、紙フィルター不要で抽出可能(中挽粉を利用)。実売価格は7,700円。

タンク容量は650mlで、一度に抽出できる杯数は5杯(120ml/杯)。サーバーはガラス製ですが、保温プレートを備えます。保温プレートは抽出後30分で電源が自動で切れる、消し忘れ防止機能付き。タンク着脱は不可で、直接水を注ぐ仕様です。

本体サイズは160×200×275mm(同)で、重量は1.5kg。

最大8杯抽出可能な「サーモス 真空断熱ポット コーヒーメーカー ECK-1000」

サーモス 真空断熱ポット コーヒーメーカー

1Lの真空断熱ポットへ直接ドリップできるコーヒーメーカーです。濃さの調節機能はありませんが、ハンドドリップを再現した「スパイラルドリップ方式」を採用し、コーヒー豆本来の味をしっかり引き出します。デジタル表示のタイマー付きで、ドリップ予約もできます。実売価格は10,530円。

タンク容量は1,000mlで、一度に抽出できる杯数は8杯(110ml/杯)。サーバーはステンレス製魔法びん構造。タンクは着脱式で、水洗い可能。紙フィルターの対応サイズは1×4または103(4~7人用)。

本体サイズは235×245×380mm(同)で、重量は3.4kg。

タイガーはさっぱり寄りの味わい、水タンクが取り外せて便利

タイガーで抽出したコーヒー

「タイガー コーヒーメーカー ADC-A061」は、「テイストマイスターを裏返すだけで味は本当に変わるのか?」という懸念がありましたが、マイルド・ストロングでは苦みに差がはっきりとでました。「ストロングはしっかり苦味が感じられるので、朝シャキッとしたい時にいいかも」という意見も。

マイルド・ストロングはいずれもさっぱり・すっきり寄りの味わい。濃い味が好きな人よりも、さっぱり派の人に向いている印象。

使い方は簡単で、コンセントを差し込み、スイッチをONにすればドリップ開始。とくに水タンクの使い勝手の良さは際立ちました。取り外し可能な水タンクは、水道から直接水を注げ、フタ付きのため危なげなく持ち運びもできます。

気になったのは、出来上がった時がわかりにくかった点。「お湯や蒸気が止まった時」が抽出終了のタイミングで、音によるお知らせもありません。スイッチは手動でOFFにする仕様で、OFFにしない限りは加熱されます。説明書には「保温したい場合も15分をめどにOFFにするように」と記載。うっかり消し忘れると煮詰まらせてしまう心配があります。

セットした向きで味が変わる「テイストマイスター」。「マイルド」と印字された面を上に向けると「マイルド」な味わいに
給水タンクの取り外しは簡単
ペーパーフィルターを設置する際に、ややシワが寄りやすいように感じた
本体下部の電源スイッチをONにするとランプが点灯する
カップに直接抽出できる

メリタはバランスのよい味わい

メリタで抽出したコーヒー

「メリタ ノアプラス SKT551B」は、「一番好み」という意見がもっとも多くありました。コーヒー専業ブランドが手掛ける製品だけあって、コーヒーらしい香りが感じられるような、バランスのよい味わいでした。できるだけ豆の個性を感じたい人にも向いているでしょう。

電源スイッチを入れると抽出開始します。自動で電源が切れるので煮詰まる心配がないのもうれしいポイント。保温ポットは、コーヒーを注ぎやすいです。

ただし、抽出する前の準備についてはやや不便に感じました。給水タンクは取り外しが不可で、水を注ぐ際は、給水口が狭いため慎重に注ぐ必要があります。

また、保温ポットはロゴとハンドルを一直線にして正しくセットしないとコーヒーが漏れる原因に。「カチッ」など音がするわけではないので、「正しくセットできたかな?」と使いはじめは不安を覚えるかも。

ペーパーはよれずにセットしやすい印象
水はタンクの目盛りを目安に入れる:1杯約125ml、2杯約250ml、3杯約375ml、4杯約500ml、5杯約625ml
自動で電源は切れるが、安全のために手動で電源ボタンをオフにする必要がある

ラドンナはコーヒーオイルが際立つ味わい

ラドンナで抽出したコーヒー

「ラドンナ Toffy アロマドリップコーヒーメーカー K-CM5」は、今回比較した機種の中では唯一、洗って使うメッシュフィルターを採用。メッシュフィルターは紙フィルターよりもコーヒーオイルが多く抽出されやすく、コーヒーの香りや味をダイレクトに感じられるのが特徴です。

実際飲んでみると、編集部の中では「香ばしい」「酸味が際立っている」といった意見がある一方、「渋味を感じる」といった意見もありました。なお、マイルドとストロングの味の違いもくっきりでる印象でした。

直感的に操作しやすいのも魅力です。味の調整はダイヤルを回すだけででき、「DRIPボタン」を押せば抽出できます。抽出中は青いランプが点滅し、完了すると点灯に切り替わるため、抽出終了のタイミングもわかりやすいです。一方で、給水口が非常に狭く、水を注ぐ際に気を遣う点は気になりました。

なお、最低抽出量は2杯分から。1杯分約120mlのため、マグカップ派であればそれほど不便には感じなさそうです。

メッシュフィルターはペーパーを使い捨てる必要がなく、何度も洗って使えるからエコ
ダイヤルを回すだけで味が調節できる
抽出中に青いランプが点滅、抽出が完了すると点灯に変わる
本体背面のほうにある給水口は狭め

サーモスは、コクや風味がしっかり感じられる

サーモスで抽出したコーヒー

「サーモス 真空断熱ポット コーヒーメーカー ECK-1000」は、味については全体的に好評でした。コクや風味が感じられる味わいで、「ちょっと高めなだけあっておいしい」といった声も。

タッチパネル式で、「電源」を入れて「DRIP」を押せば抽出を開始します。抽出状況がわかりやすいのが特徴で、ドリップ中はコーヒー豆マークの点滅で、ドリップの状況をお知らせ。ドリップ完了後にはブザーがなります。給水タンクは取り外せるのは便利ですが、フタがないため、こぼさないように持ち運ぶ必要があります。

ボタンは上から、DRIP(ドリップ開始ボタン)、TIMER(タイマー予約ボタン)、電源
給水タンクは取っ手付きでフタはなし

洗いやすさは? 手入れ面を比較

「タイガー コーヒーメーカー ADC-A061」は、お手入れのしやすさは高評価。洗うパーツが多いですが、形状がシンプルで細かいパーツもないため、洗いやすいです。カップに直接ドリップすれば、サーバーを洗う必要もありません。

タイガー:水洗いが必要なパーツ

「メリタ ノアプラス SKT551B」は、本体パーツで水洗いが必要なのは、内部フィルターのみ。ただし、ステンレス保温ポットのフタは4つの部品で構成されており、分解して洗浄する必要があります。「バネ」「パッキン」といった細かい部品が多いため、紛失の懸念があるのが難点。また、パッキンをセットする向きも理解しておく必要があるでしょう。

メリタ:水洗いが必要なパーツ

「ラドンナ Toffy アロマドリップコーヒーメーカー K-CM5」は、水洗いが必要なパーツは4点のみで複雑なパーツもなく、お手入れのしやすさはおおむね好評。

ただし、フィルターはメッシュのため、ペーパーのように粉をサッと捨てられない点は面倒に感じました。また、ガラスポットは、急激な冷却による割れなどがあるため、扱いには注意が必要です。

ラドンナ:水洗いが必要なパーツ

「サーモス 真空断熱ポット コーヒーメーカー ECK-1000」は、水洗いが必要なパーツは給水タンク、ポット容器、ドリッパー、計量スプーンのみ。

メリタ同様、ポットは部品が多くお手入れが面倒。フタを分解するとシャフト、バネ、シャフトカバーに分かれ、正確に取り付けないと漏れの原因に。正しく組み立てるには慣れが必要でしょう。

サーモス:水洗いが必要なパーツ
サーモス:フタを分解した時のパーツ

異なる味わいで好みや使いやすさを決め手に

今回は、1万円程で買えるコーヒーメーカーの味・使い勝手・お手入れのしやすさを比べました。

タイガーは、シンプルで使い勝手がいい、という印象でした。給水タンクの取り外しができるため、パーツもシンプルでお手入れも苦になりにくかったです。マグカップに直接ドリップできるため、1人用には便利に使えそう。

メリタは、本格派の味を求める人にも合っている製品でした。ただし、フタの部分に細かいパーツがある点や、給水口が狭い点など使い勝手で気になるポイントがありました。

ラドンナは見た目の可愛さが気に入ればおすすめ。直感的に操作しやすく味が3段階調整できる点はよいです。

サーモスは、使いやすさや味は好評でした。最低抽出量は4杯以上(1杯約110ml)なので、大人数や一度にたくさん飲む人向きです。

コーヒーメーカーの味の違いは確認しにくいものですが、飲み比べてみると、機種によってしっかり味に違いがでました。いずれも手の届きやすい価格なので、普段使い以外にギフトとしても良さそうです。

福永 太郎

フリーランスの編集者・ライター。ライフスタイル系メディアの家電記事の担当を経て独立。現在は複数のWebメディアに寄稿。